65歳以上の要介護等の高齢者の割合について,人口千人当たりの数でみると,在宅の要介護者は49.3, 特別養護老人ホームの在所者は11.7, 老人保健施設の在所者は 5.0となっている。また, 病院・一般診療所に6か月以上入院している65歳以上の高齢者は, 人口千人当たり16.3となっている。これらの割合は, 年齢階層が上がるにつれて大きく増加する傾向がある。
65歳以上の死亡者の生前の状況やその死亡者の介護者の状況等を調査した「人口動態社会経済面調査」(平成7年度)(厚生省)によると, 主に介護をしていた者については, 「世帯員」が66.8%,「世帯員以外の親族」 5.5%,「病院・診療所の職員」が16.4%などとなっている。
「世帯員」又は「世帯員以外の親族」であった主な介護者の平均年齢は60.4歳であり, これが「妻」では71.4歳, 「長男の妻」54.2歳, 「長女」54.3歳となっている。
生活自立・寝たきり度の変化について,同じく「人口動態社会経済面調査」(平成7年度)(厚生省)をみると,「寝たきり」の割合は,死亡「3年前」に 7.7%であったものが,「1年前」17.2%,「6か月前」25.6%となり,「1か月前」には53.8%と半数を超える。平均寝たきり期間は 8.5か月である。
また,「世帯員」又は「世帯員以外の親族」であった主な介護者が日常生活上困ったり,悩んだりしたことについて,同調査をみると,「ストレスや精神的負担が大きかった」52.7%,「十分睡眠がとれなかった」45.7%,「家を留守にできなかった」41.8%などとなっている。
高齢者の社会的活動への意識について,「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成7年度)(総務庁)でみると,同好会,サークル活動などへの参加を通じて,社会とのかかわりを持って生活したいかについては,意欲を示す者が7割を超える。アメリカ,ドイツ等と比較しても高いものとなっている。
高齢者の各種サークルや団体への参加状況について,「高齢者の地域社会への参加に関する調査」(平成5年)(総務庁)でみると,60歳以上で何らかのサークルや団体に参加している者は63.0%となっており,参加している者は1人で平均 1.8種類の団体に参加している。
一方,この調査において「参加したものはない」とした者にその理由を尋ねたところ,「家庭の事情がある」が34.2%,「健康・体力に自信がない」が31.6%と両者の割合が高くなっている。
高齢者が居住地域に感じる問題点について,「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成7年度)(総務庁)でみると,「医院や病院への通院に不便」が22.9%と最も多く,次いで「日常の買物に不便」20.6%,「水害,地震など自然災害が心配」20.2%となっている。自然災害への関心は,阪神・淡路大震災の影響のためか,前回調査から大きく増加した。
また,高齢者が現在住んでいる住宅に感じる問題点について,同調査でみると,「住まいが古くなりいたんでいる」19.3%,「住宅の構造や設備が高齢者には使いにくい」13.5%,「住宅に関する経済的負担が重い」11.5%などとなっている。「住宅の構造や設備が高齢者には使いにくい」が前回調査より増加しており,関心の高まりがうかがわれる。
高齢者世帯の住宅について,最低居住水準を満たしているかを 「住宅統計調査」(平成5年) (総務庁) でみると,高齢者夫婦主世帯(夫婦のいずれかでも65歳以上の夫婦世帯) では99.2%,65歳以上の高齢者単身主世帯では95.0%が水準を満たしている。ただし,借家に住む世帯では,水準を満たしていない世帯が,高齢者夫婦主世帯で 3.6%,高齢者単身主世帯で12.3%ある。
住宅における高齢者のための設備の工事の状況について,「住宅統計調査」(平成5年) (総務庁) でみると,持ち家であって昭和64年・平成元年から調査時期までに高齢者のための設備の工事をした主世帯は 112万世帯であり,持ち家に居住する主世帯総数に占める割合は 4.6%である。
60歳以上の高齢者の外出先について,「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」(平成7年) (総務庁) でみると,よく出かける場所は,「商店・スーパーマーケット」が49.7%と最も多く,次いで「病院・診療所」35.4%,「友人・知人の家」27.8%,「銀行・信用金庫」21.7%となっている。
高齢者の交通安全に関して,65歳以上の高齢者の交通事故死者数を「交通事故統計」(平成8年)(警察庁)でみると, 3,145人で交通事故死者全体の31.6%を占めている。交通事故死者数は,平成4年までは16〜24歳の若者が多かったが,5年以降,高齢者が若者の死者数を上回るようになっている。
高齢者と犯罪,災害に関し,犯罪による65歳以上の高齢者の被害について「犯罪統計書」(警察庁)で刑法犯被害認知件数をみると,平成8年は 102,654件である。7年に比較すると 8,459件, 9.0%増加した。被害認知件数全体に占める割合も増加傾向にある。
また,「消防白書」(自治省)によると,65歳以上の高齢者の火災による死者数は,平成7年で 918人であり,全死者数の約半分を占めている。
「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」 (平成7年度)(総務庁)(以下「国際比較調査」という。)でみると,「老後における子供や孫など家族とのつきあいについてどのように考えているか」の問いに対し,我が国の高齢者は,アメリカ,ドイツとは対照的に「いつも一緒に生活できるのがよい」とする者が多くなっている。ただし,減少傾向がみられる。
国際比較調査において,夫婦の家事分担に関して配偶者のいる者に尋ねると,夫が家事をすることについて我が国は,「妻と平等に分担すべきだ」とする割合が調査対象国の中で最も少ない。ただし,「家事はしなくてもよい」という答えは減り,「ある程度は分担すべきだ」が増えてきている。
我が国の高齢者は,男系の子や孫と同居し,家事は主に妻の役割と意識するのが従来の姿であったが,次第に変化をみせ,アメリカやドイツに近づいてきている。
高齢者の幸福感について,国際比較調査でみると,「自分が同年配の人と比べて幸せだと思うか」については,我が国だけが「自分は幸せである」とする答えが最も多くなっている。他の調査対象国は「ほかの人と同じくらいである」が最も多くなっている。
逆に,高齢者の不安感に関して,国際比較調査をみると,我が国は,アメリカ,ドイツと比較して,「自分自身の健康への不安」,「独りぼっちで頼るものがない不安」,「経済的な生活が成り立たなくなるかもしれない不安」,「子供達が自分のことを気にかけてくれない不安」,「介護が必要な状態になるのではないかとの不安」のいずれについても,不安に思う傾向が強い。
我が国の高齢者は,戦後,経済が急速に成長する中で,都市化や核家族化など社会の大きな変化も経験してきた。高齢者の幸福感が強い反面,不安感もあるのは,これまで豊かさを達成してきたことへの幸せは感じながらも,社会の高齢化など,これからも続く社会の変化に対する不安も持っているとみることができる。