65歳以上の高齢者人口は,「人口推計」(総務庁)でみると, 1,902万人(平成8年10月1日現在)となっており,総人口(1億 2,586万人)に占める割合(高齢化率)は15.1%となっている。1年前の平成7年10月1日現在の「平成7年国勢調査」(総務庁)と比較すると74万人の増,高齢化率 0.5%の上昇である。
高齢者のいる世帯について,「平成7年国勢調査」 (総務庁) でみると,65歳以上の親族のいる一般世帯数は 1,278万世帯であり,我が国の一般世帯全体(4,390万世帯)の29.1%を占める。
65歳以上の親族のいる一般世帯数は,前回の平成2年国勢調査より 205万世帯,19.1%増加しており,一般世帯全体の 7.9%増より高い伸びを示した。高齢者のいる世帯, 特に単独世帯, 夫婦のみの世帯には, 急速な増加がみられる。
我が国の平均寿命については,最近の状況を「平成7年簡易生命表」(厚生省)でみると,平成7年 (1995年) には男性が 76.36年 (前年より0.21年縮小) ,女性が 82.84年 (同0.14年縮小) であり, 阪神・淡路大震災やインフルエンザの大流行により, 男性が3年ぶり,女性が7年ぶりに前年を下回った。
出生の最近の状況を「人口動態統計」(厚生省)でみると,平成7年の出生数は118万 7,064人で6年と比べて5万 1,264人減,出生率(人口千人当たりの出生数)も6年の10.0から7年は 9.6となり,出生数,出生率ともに過去最低となった(8年推計値 1,203千人, 9.6)。また,合計特殊出生率も,平成6年にはやや持ち直しがみられたが,7年は1.42と過去最低を更新した。
我が国では婚姻外での出生が少なく,既婚者の出生児数は大きく低下していないことから,出生率低下は,主として初婚年齢の上昇 (晩婚化)や結婚しない人の増加(非婚化)によるものと考えられる。晩婚化・非婚化の進行に伴い, 結婚する人が減り, 結婚に伴う出生が減少して,出生率が低下する。
晩婚化に関して,未婚率の推移を「国勢調査」 (総務庁) でみると,昭和50年頃から25〜39歳の男性及び20歳代の女性で上昇が際立っている。また,生涯未婚率は,「人口統計資料集」 (厚生省) によれば,平成7年(1995年) に男性9.07%,女性5.28%と増加してきており,初婚年齢も上がってきている。
晩婚化の理由について,未婚者の意識を「第2回人口問題に関する意識調査」(平成7年)(厚生省)でみると,男女とも第1位の理由として「結婚を選択しない人の増加」を挙げ,次いで男性は「経済的ゆとりがない」,女性は「女性の経済力が向上」を挙げている。晩婚化は,まずは「選択肢の増大」の結果であると意識され,同時に経済的要因が影響しているとみられる。
平成8年(1996年) の労働力人口総数(15歳以上労働力人口) は, 6,711万人であったが, そのうち60歳以上は 880万人であり,13.1%を占めた。労働力人口の高齢化は着実に進んでおり,労働力人口総数が21世紀に入ると減少していくと予想される中で,今後一層進展していくものと見込まれる。
勤労期に蓄えた貯蓄は高齢期の消費に充てられることが多く,高齢期の長期化や高齢者の増加によって,貯蓄の取崩しが発生する。このため,貯蓄率は中長期的に低下する傾向にあるものと考えられる。
高齢化の進行に伴い,社会保障給付や公的な負担の増大,さらに家族の私的な負担の高まりが予想される。租税負担と社会保障負担を合わせた国民負担率(対国民所得)は,昭和45年度(1970年度)の24.3%から平成9年度(1997年度)の38.2%(当初見込み) へと上昇している。
高齢者世帯の年間所得(平成6年の所得)について,「国民生活基礎調査」(平成7年)(厚生省)でみると, 332.2万円であり,公的年金・恩給が55.1%と半分以上を占める。高齢者世帯の年間所得は全世帯の半分程度に過ぎないが,世帯人員一人当たりでは大きな差はみられなくなる。
高齢者世帯の貯蓄の状況を「国民生活基礎調査」(平成7年)(厚生省)でみると,貯蓄が「ある」が83.1%,「ない」が13.2%となっている。貯蓄なしを含めて300万円未満が42.8%を占め,1,000 万円以上は26.9%である。
高齢者の貯蓄に対する態度について,60歳以上を対象とした「高齢者の経済生活に関する意識調査」(平成7年)(総務庁)をみると,病気や介護が必要になった時など万一の場合以外には取り崩すべきではないとする者が最も多く,50.5%と半数を占める。
高齢者世帯の住宅・宅地資産について,「全国消費実態調査」 (平成6年) (総務庁) でみると,高齢者夫婦世帯では,「ある」は90.7%,「ない」は 9.3%である。資産額は,資産なしも含めて1000万円未満が19.9%であるが, 5,000万〜1億円未満が17.4%,1億円以上が14.5%となっている。
高齢者の不動産の譲与に対する態度について,60歳以上を対象とした「高齢者の経済生活に関する意識調査」(平成7年)(総務庁)をみると,老後の生活の資金を得るために活用(売却,賃貸又は担保にするなど)してもかまわないとする者は14.2%となっている。
高齢者の就業状況について,「高年齢者就業実態調査」(平成4年)(労働省)でみると,男子の場合,就業者の割合は,60〜64歳で71.6%である。不就業者であっても,60〜64歳の不就業者 (28.4%) のうち5割以上が就業を希望している。
女子の場合,就業者の割合は,60〜64歳で39.8%である。不就業者であっても,60〜64歳の不就業者 (60.2%) のうち3分の1が就業を希望している。
高齢者の就業意欲を外国と比較してみると,「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成7年度)(総務庁)によれば,我が国は,アメリカ,ドイツ等より仕事を続けている者の割合は高く,今後も仕事を続けたいという意欲もアメリカと並び高くなっている。