第1章 高齢化の状況(第3節 事例集)

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第3節 前例のない高齢社会に向けた対策・取組の方向性

事例集

(高齢者と支えを必要とする世代を結び付けている事例)

○高齢者が子育てを支援している事例(山梨市「おじいちゃん先生・おばあちゃん先生派遣事業」)

山梨県山梨市では、平成17年10月から「おじいちゃん先生・おばあちゃん先生派遣事業」を実施している。これは、市が意欲のある高齢者を「おじいちゃん先生」、「おばあちゃん先生」として登録し、派遣の申出があった市内の児童センター・学童クラブ、保育所等に市がコーディネートして派遣するという事業である。

平成17(2005)年10月に登録者28名でスタートし、18(2006)年度の登録者数は43名(男性22人、女性21人)となっている。登録者の年齢階層は、50代1人、60代17人、70代15人、80代10人で、最高齢の登録者は86歳となっている。

事業のスタート時には、登録者を集めるために老人クラブを通じての依頼や、山梨県の「ことぶきマスター制度」(山梨県が地域づくりのために必要な能力と貴重な経験を持つ高齢者を認定している制度)で認定されている方などに働きかけを行った。市の担当者によると、思っていた以上に「やってみたい」と言ってくれる人が多かったという。

派遣される手順としては、児童センター等の施設が作成・提出する年間行事実施予定表を市が取りまとめ、実施内容に応じて相応しい登録者をピックアップして連絡を取り、調整を行っている。登録者には、実際に派遣する前に施設の指導員等と打ち合わせを行うこととしている。

派遣される回数は、登録者の特技等によって異なり、月に2回程度から、年に数回程度まで様々である。

これまでの延べ実施回数は63回、派遣実人員は延べ113人となっており、指導を受けた児童は延べ1,641人にのぼっている。「先生」の派遣を申し込む施設も増えつつあり、現在までに市内16箇所の児童センター・学童クラブ、保育所等に派遣している。

「先生」の指導内容としては、昔の遊び、絵手紙の作り方、民謡など多伎にわたっており、年末年始には凧作りや書き初め、しめ縄飾り作りの授業も行った。

おじいちゃん先生・おばあちゃん先生派遣事業

昔は家庭や地域で伝承されてきたことで、今では伝えられなくなっていることを教えてくれる好機として、保護者からの評価も総じて好評であるという。

また、施設側からも、「先生」が来ることで子供たちが普段とは違う体験ができて、よい世代間交流の場になり、活気が生まれる効果があるという声も寄せられている。

実際に派遣されている「先生」に感想を聞くと、「子供たちは間違いを見抜くので、うっかりできない」、「大人相手と違って、子供は飽きやすいので、どれだけ引きつけることができるかに気をつかう」、「最後の御奉公、というつもりでやっている」など、絶好の生きがい作りの機会となっている。

また、市の担当者によると、山梨市でも核家族化の進展などで、地域のつながりが希薄になっていることが懸念されているが、この活動により地元の高齢者と子供たちとのつながりができることで、地域の繋がりの再生にも役立っているという。

さらに、「これまで順調に活動を拡大しつつあるが、今後は「先生」として登録してもらっている人を確保して、継続的に活動してもらうことが課題」とのことである。

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