第1章 高齢化の状況(第3節 事例集)

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第3節 前例のない高齢社会に向けた対策・取組の方向性

事例集

(高齢者が高齢者に日常的な支えを提供している取組の例)

○高齢者が高齢者の日常の用事や手間を手伝い助け合っている事例

千葉県流山市の「特定非営利活動法人市民助け合いネット」では、平成16年4月から、高齢者が日常生活を低額な謝礼で支え合う有償ボランティア活動に取り組んでいる。

サービスを提供したい人を「提供会員」として、予め提供できるサービスの内容、活動可能な地域、曜日等を登録しておく。登録提供会員は、現在192名で男女がほぼ同数になっている。さらに、サービスを利用したい「利用会員」からの要請を受けて、事務局で要請にマッチしたサービスを提供できる提供会員を選定し、サービス提供の打診をする。活動が可能であれば、サービス提供に赴いてもらい、サービスを提供した後、予め利用会員が購入している利用券を受け取って事務局に持参し精算するという流れになっている。登録した利用会員は現在187名で、年齢についての制約はないが30歳代から90歳代まで幅広く利用しており最も多いのは60歳代となっている。

同ネットの代表は「申請があった時に最も気を遣うのが、利用会員と提供会員のマッチングです。ボランティア活動として長く続いていくためには、気軽に、気楽にサービスを利用してもらうことが大事なのですが、双方の相性がうまくいかないケースは長続きしません。」と語っている。

3年前から週に1度、買い物の代行を依頼している80歳代のある女性は「買物をして下さる方は、お願いした魚が売り切れていたら別の献立を考えてそれに見合ったものを買ってきてくれたり、体調を配慮して買物に反映したりしてくれるので、とても助かります。私は一人暮らしなので買物の後、上がってもらってお茶とお茶菓子でおしゃべりをするのもとても楽しみです。」と話す。

特定非営利活動法人市民助け合いネット

また、夫の通院の送迎を依頼しているという60歳代のある女性は「市役所で紹介してもらったことやボランティアの方が営利を目的とせずに活動してくれるのでとても安心できます。また、階段の歩行介助などタクシーでは期待できない気配りをしてくれるのもありがたいです。無償では繰り返し利用していくうちに頼みづらくなってくるので、低額でも有償であるほうがよいと思います。」と語る。

一方、提供会員として通院の送迎、家具の配置換え、庭の草刈等の活動をしている70歳代のある男性は「電球の交換、タンスの移動など家庭の中のちょっとしたことに不便を感じている方を男手でサポートできるのでやりがいがある。喜んでもらえるのがとても嬉しい。」と話す。

同ネットでは、提供会員の報酬として1時間あたり600円、会の運営事務費として同200円の計800円(自宅に来てもらう活動の場合は別途交通費として1回200円を受領。)を利用会員が利用券で支払うが、提供会員の8割は、これをその都度精算(換金)するのではなく「貯金」をしているという。自分がサービスを利用したいときに備えて貯めておくことが可能となっている。また、ある程度まとまった金額になった時にまとめて下ろすことも可能で、会員の中にはそれを使って配偶者に海外旅行をプレゼントした人もいたという。

今後の課題としては、現実にも・散見されるとのことであるが、利用者に相互の信頼が成り立たなくなるような振る舞いが起こるとトラブルに発展するケースもあることがあげられた。

同代表は「苦情の電話が来ることもありますが、活動の趣旨を説明して理解を求めていくしかありません。当人どうしが気持ちよくサービスを利用し、提供するためには、自己を律する心がけも必要だと思います。」と、うまく「サービスを利用する」ためには「サービスに依存すること」、「サービスに過度の期待をすること」を慎む必要があることを説明している。

そして、「この活動は、介護保険制度の訪問介護では利用できない部分を補完している側面もあると感じています。支援を必要としている方がこのサービスを利用することでより安心して充実した日常生活をおくれ、サービスを提供する人もこの社会貢献活動を通して喜びを感じていただければ、高齢者が支え合うというネットの活動にとってこれに過ぎる喜びはありません。」と話している。

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