第2章 高齢社会対策の実施の状況(第3節 1(1))
第3節 分野別の施策の実施の状況
1 就業・所得
(1)高齢者の雇用・就業の機会の確保
ア 知識、経験を活用した65歳までの雇用の確保
少子高齢化の急速な進行等を踏まえ、平成16年6月に成立・公布された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」(平成16年法律第103号。以下「改正高年齢者雇用安定法」という。)により、18年4月から、少なくとも年金支給開始年齢までは働き続けることができるようにするため、男性の年金の支給開始年齢の引上げに合わせ25年4月1日にかけて段階的に65歳までの定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の改正高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者雇用確保措置を講ずることが事業主に対し義務付けられた。
公共職業安定所においては、事業主に対して、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の指導を行い、その際は、都道府県高年齢者雇用開発協会の高年齢者雇用アドバイザーが同行又はフォローアップ相談を行うなど、各都道府県労働局と同協会とが密接な連携を図り、効果的かつ効率的な指導・援助等を実施している。
また、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等を行った事業主、それに伴う高年齢者の雇用割合が一定割合を超える事業主等を対象として、継続雇用定着促進助成金の支給を行うことにより、継続雇用制度等の推進及び定着を図った(表2-3-1)。
継続雇用定着促進助成金 | |||||||
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・ 定年の引き上げや継続雇用制度の導入等を行った事業主、及びそれに伴う高年齢者の雇用割合が一定割合を超える事業主、並びに定年の引上げ等の措置を円滑に運用するため、研修等を実施した事業主に対して助成 |
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中高年齢者試行雇用奨励金 | |||||||
・ 中高年齢者を一定期間試行的に受け入れて就業させる事業主に対して助成 |
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高年齢者等共同就業機会創出助成金 | |||||||
・ 45歳以上の中高年齢者3人以上が共同で新たに法人を設立して事業を開始し中高年労働者を雇い入れ、継続的な雇用・就業の場を創設・運営する場合に、当該事業の開始に要した経費の一定割合を助成 |
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特定求職者雇用開発助成金 | |||||||
・ 60歳以上65歳未満の求職者を公共職業安定所又は無料・有料職業紹介事業者の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して助成 |
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労働移動支援助成金 | |||||||
・ 定年、解雇等により離職が予定されている高年齢者等のうち、離職後再就職を希望するものについて、在職中からの求職活動や再就職、労働移動前後の講習等を支援する事業主に対して助成 |
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資料:厚生労働省 |
さらに、改正高年齢者雇用安定法の円滑な施行を図るため、賃金・人事処遇制度の見直しや継続雇用制度の導入等の促進について事業主団体を通じて指導・相談を行う「65歳雇用導入プロジェクト」を実施している。
公務部門においては、国家公務員及び地方公務員の定年退職者等を対象として、フルタイム又は短時間の勤務形態による65歳までの在職(上限年齢については、満額年金の支給開始年齢に合わせて3年に1歳ずつ引上げ)を可能とする再任用制度の活用を基本としながら、高齢者雇用を推進している。
イ 中高年齢者の再就職の援助・促進
中高年齢者をめぐる雇用情勢は、平均を大幅に下回る有効求人倍率にみられるように、やや改善はみられるものの依然として厳しく、中高年齢者はいったん離職すると再就職は厳しい状況にある(図2-3-2)。
図2-3-2 完全失業率・有効求人倍率の推移
このため、公共職業安定所を中心に、中高年齢者に対する職業相談、職業紹介等の体制の整備や積極的な求人開拓の実施、求人における年齢制限の緩和に向けた指導・啓発等を行っている。
また、改正高年齢者雇用安定法に基づき、「事業主都合の解雇等」又は「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準に該当しなかったこと」により離職する中高年齢者が希望するときは、事業主は、その職務の経歴、職業能力等の再就職に資する事項や再就職援助措置を記載した書面(以下「求職活動支援書」という。)を作成・交付しなければならず、その指導・啓発等も行っている。
さらに、求職活動支援書の作成や再就職援助措置を行う事業主に対しては、都道府県高年齢者雇用開発協会に設置されている再就職支援コンサルタントと連携を図り、相談・援助を行うとともに、一定の再就職援助措置を講じた事業主に対して助成する労働移動支援助成金の支給を行っている(表2-3-1)。
このほか、世帯主など特に再就職の緊急性が高い中高年齢者について、試行雇用を通じて常用雇用への移行を図ることを目的とした中高年齢者試行雇用事業や、中高年長期失業者に対して、民間のノウハウを活用した就職支援セミナー、カウンセリングの実施等による再就職支援を実施している。
また、地方公共団体と協同して、高年齢者職業相談室を地方公共団体の庁舎施設内等に設置・運営し、地方公共団体が行う生活相談との密接な連携を図りつつ、高年齢者を対象とした職業相談、職業紹介や求人者に対する雇用相談等を行っている。
さらに、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が各都道府県に設置する高齢期雇用就業支援コーナーにおいては、高齢者が自己の能力に関する認識を深めるとともに、高齢期においても希望と能力に応じて多様な働き方を選択し、その実現に向けて必要なキャリア・技能の向上を図っていくため、キャリアの棚卸し(労働者自らがどのような職業経歴を有し、それぞれの経歴においてどのような成果を上げ、また、どのような自己啓発等を行ってきたのか等を明確にすること)の支援等職業生活設計に関する相談・援助を行っている。
このほか、事業主団体と公共職業安定機関との協力の下、技能講習、合同面接会等を一体的に行うシニアワークプログラム事業を実施している。
ウ 多様な形態による雇用・就業機会の確保
高齢期には、個々の労働者の意欲、体力等個人差が拡大し、その就業に対するニーズも多様化することから、これらに対応した就業機会を確保していくことが重要である。
このため、社会に参加、貢献したいと希望する者に対しては、地域社会に根ざした臨時的・短期的又は軽易な就業機会を提供するシルバー人材センター事業の推進を図っている(平成18年3月末現在、シルバー人材センターの団体数は1,544団体、会員数は約77万人)。また、シルバー人材センターの会員による乳幼児の世話や保育施設への送迎などの育児支援等を行う子育て支援事業を実施している。
さらに、平成18年度から新たに65歳を超えても働くことができるよう、公共職業安定所において事業主に対し高年齢者を雇用することの利点を啓発するとともに、高年齢者の多様なニーズに対応した求人開拓や面接会を行う定年退職者等再就職支援事業を試行的に実施している。
退職後も自らの知識や経験をいかしたいという意欲を持つ企業等OB(OB人材)と、こうした人材をアドバイザーとして活用したいという中小企業とのマッチングを行うことで、中小企業の経営能力・技術力等の向上を支援しており、平成18年12月現在において、OB人材の登録人数は6,297人、マッチング実績は2,829件となっている。
エ 起業の支援
新事業の創出・育成は、新たな雇用を生み出すなど、我が国経済活性化にとって極めて重要である。そのような観点から、国民生活金融公庫や中小企業金融公庫を通じ、高齢者等を対象に優遇金利を適用する融資制度(女性、若者/シニア起業家支援資金)や、無担保、無保証人で融資を受けられる新創業融資制度を用意するなど、新事業の創出・育成に資する環境整備に取り組んでいる。
また、45歳以上の中高年齢者が共同で事業を開始し、中高年労働者を雇い入れ、継続的な雇用・就業の場を創設・運営する場合に、当該事業の開始に要した経費の一部を助成することにより、それまでの就業による職業経験をいかして起業しようとする中高年齢者を支援している(表2-3-1)。
オ 年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた取組
「雇用対策法」(昭和41年法律第132号)において、募集・採用時の年齢制限緩和の努力義務が規定されていることを踏まえ、事業主への周知啓発に努めている。
また、公共職業安定所で受理した求人のうち年齢不問求人の割合を平成19年度に50%以上とする目標を設定し、この目標の達成に向け、国民一般に対する求人年齢制限緩和の理解の浸透を図るため、〔1〕ポスターを利用した周知広報、〔2〕求人開拓の際や公共職業安定所の求人受理時において、パンフレット等を用いた求人年齢制限緩和についての個別事業主に対する勧奨・指導等、総合的かつ計画的な取組を実施した。
さらに、改正高年齢者雇用安定法に基づき、労働者の募集・採用に当たって、事業主が、やむを得ない理由により上限年齢(65歳未満のものに限る。)を設定する場合にその理由を提示することとしており、その指導・啓発等を行っている。
加えて、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向け、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構において、エイジフリーに向けた賃金・人事処遇制度及び職務のあり方等の研究、個別企業に対する相談・援助等の支援や幅広い普及啓発等を行う、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた基盤づくり事業(エイジフリー・プロジェクト)を実施している。