第2章 高齢社会対策の実施の状況(第3節 1(3))

[目次]  [前へ]  [次へ]

第3節 分野別の施策の実施の状況

1 就業・所得

(3)公的年金制度の安定的運営

ア 持続可能で安定的な公的年金制度の確立

我が国の公的年金制度は、年金を受給する高齢者世代をサラリーマンや自営業者等の現役世代が支える世代間扶養の仕組みを基本としており、年金は高齢者世帯の収入の7割を占めるとともに、国民の4人に1人が年金を受給しているなど、国民生活において欠くことのできないものとなっている。

こうした公的年金制度の基本的な考え方や重要性については、「ねんきん月間」(11月)等における広報等を通じて啓発を図った。

基礎年金の国庫負担割合の引上げについては、「国民年金法等の一部を改正する法律」(平成16年法律第104号。以下「平成16年年金改正法」という。)において、法律の本則上国庫負担割合を2分の1とするとともに、附則において3分の1から2分の1に引き上げる道筋を明確に示した。この道筋を踏まえ、17年度及び18年度においてそれぞれ基礎年金の国庫負担割合の引上げを実施した(図2-3-6)。

図2-3-6 基礎年金国庫負担割合の引上げとその道筋

平成19年度においては、前年度に引き続き、19年度以降の負担割合を現行の3分の1に1000分の25を加えた割合から、3分の1に1000分の32を加えた割合に引き上げることとされており、「国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律」(平成19年法律第27号)が平成19年3月に成立した。

年金額については、物価の変動に応じて自動的に額を改定することとなっている。平成18年度の年金額については、17年平均の全国消費者物価指数(生鮮食品を含む総合指数)の下落分に合わせて、実際に給付されている物価スライド特例水準の額を0.3%引き下げたところであるが、19年度の年金額については、全国消費者物価指数の前年比変動率プラス0.3%となったものの、名目手取り賃金変動率が0.0%となったことから、18年度と同額にすることとしている。

イ 個人のライフスタイルの選択に中立的な公的年金制度の構築

平成16年年金改正法においては、多様な生き方、働き方に対応した制度とする観点から、在職老齢年金制度の改善(60歳台前半の在職中の老齢厚生年金一律2割支給停止の廃止等)、次世代育成支援の拡充(育児休業中の保険料免除措置の対象を1歳未満から3歳未満に拡充する等)、障害年金の改善(障害基礎年金と老齢厚生年金等の併給を可能とする等)、離婚時の厚生年金の分割等の改正を行った。

このうち平成18年度においては、障害年金の改善等が施行された。また、19年度の施行事項である離婚時の厚生年金の分割についても円滑に実施されるよう必要な措置を講じた。

ウ 公的年金制度の一元化の推進

平成18年4月に「被用者年金制度の一元化等に関する基本方針について」が閣議決定され、その後、この閣議決定を踏まえ、残された課題について検討した結果、同年12月に「被用者年金一元化の基本的な方針と進め方について」が政府・与党間で合意された(表2-3-7)。

表2-3-7 公的年金制度一覧
○国民年金制度 (平成17年度末(平成18年3月末)現在)
区分 被保険者数[1] 老齢基礎年金等受給権者数[2] 年金扶養比率 老齢基礎年金平均年金月額(繰上げ・繰下げ除く) 実質的な支出総費用額 積立金 積立比率 保険料(平成18年4月) 老齢基礎年金
支給開始年齢
簿価ベース
[時価ベース]
簿価ベース
[時価ベース]
万人 万人 万円 兆円 兆円 兆円
第1号被保険者 2,190 3.6 9.7 [9.7] 4.7 [4.6] 13,860
第2号被保険者 3,705 2,434 2.96 5.8 65歳
第3号被保険者 1,092
合計 6,988
(参考)公的年金加入者合計 7,045  
(注)1.上記のほか、老齢福祉年金受給者数は、5万人である。
2.第1号被保険者には、任意加入被保険者を含む。
3.老齢基礎年金等受給権者数は、老齢基礎年金受給権者数に、旧国民年金法による老齢年金受給権者数、被用者年金制度の65歳以上の旧法老齢(退職)年金の受給権者数等を加えたものである。
4.老齢基礎年金平均年金月額は、繰上げ・繰下げ支給分を除いた老齢基礎年金受給権者に係る平均年金月額である。このほかに、繰上げ・繰下げ支給分の老齢基礎年金受給権者および旧国民年金法による老齢年金受給権者に係る分を含めた老齢基礎年金等平均年金月額は5.3万円である。
5.実質的な支出総費用額は、給付費から基礎年金勘定からの受入を控除した額に基礎年金勘定への繰入を加えたものである。
6.積立金[時価ベース]は、旧年金福祉事業団から承継した資産に係る損益を含めて、年金資金運用基金における市場運用分の運用実績を時価ベースで評価したものである。なお、承継資産に係る損益の厚生年金・国民年金への按分は、厚生年金・国民年金のそれぞれの積立金の元本平均残高の比率により行っている。
7.公的年金加入者合計は、被用者年金被保険者と、第1号・第3号被保険者の合計である。
○被用者年金制度 (平成16年度末(平成17年3月末)現在)
区分 適用者数[1] 老齢(退職)年金受給権者数(老齢・退年相当)[2] 年金扶養比率 老齢(退職)年金平均年金月額(老齢・退年相当)(繰上げ・繰下げ等除く) 実質的な支出総費用額 積立金
簿価ベース[時価ベース]
積立比率
簿価ベース[時価ベース]
保険料率
(平成18年4月)
老齢(退職)年金
支給開始年齢
(平成18年度)
[1]
[2]
万人 万人 万円 兆円 兆円 兆円 報酬比例部分
厚生年金保険 3,249 1,117 2.91 16.9 30.7 137.7 [138.2] 5.3 [5.2] 14.288 一般男子・女子 60歳
国家公務員共済組合 109 63 1.73 22.4 1.9 8.7 [8.9] 7.2 [7.3] 14.638 坑内員・船員 57歳
地方公務員共済組合 311 155 2.00 23.2 5.0 38.1 [38.8] 10.9 [10.9] 13.738 定額部分  
私立学校教職員共済 44 5.14 21.8 0.3 3.2 [3.3] 10.5 [10.6] 11.168 一般男子・共済女子 62歳
合計 3,713 1,343 2.76 17.9 38.0 187.6 [189.2] 6.0 [6.0] 厚年女子 60歳
坑内員・船員 58歳
(注)1.厚生年金保険の老齢(退職)年金受給権者数及び平均年金月額には、日本鉄道、日本電信電話、日本たばこ産業及び農林漁業団体職員の各旧共済組合において厚生年金保険に統合される前に裁定された受給権者に係る分を含む。
2.共済組合の老齢(退職)年金受給権者数には減額退職年金に係る分を含む。(厚生年金保険に含まれている旧三公社共済組合、旧農林漁業団体職員共済組合に係る分についても同じ。)
3.老齢(退職)年金平均年金月額は、老齢基礎年金を含んだものである。ただし、繰上げ・繰下げ支給(減額退職年金を含む)を選択した者と、報酬比例部分の支給開始年齢に到達しているが、定額部分の支給開始年齢に到達していない者は除外している。
4.実質的な支出総費用額は、給付費から基礎年金交付金を控除した額に基礎年金拠出金を加えたものである。
5.厚生年金保険における坑内員及び船員の保険料率は、15.456%であり、日本鉄道及び日本たばこ産業の各旧共済組合の適用法人及び指定法人であった適用事業所に使用される被保険者に係る保険料率は、それぞれ15.69%及び15.55%である。また、農林漁業団体等の適用事業所に使用される被保険者に係る保険料率は、15.058%である。
6.厚生年金保険の積立金には厚生年金基金が代行している部分の積立金は含まれていない。
7.厚生年金保険の積立金[時価ベース]は、旧年金福祉事業団から承継した資産に係る損益を含めて、年金資金運用基金における市場運用分の運用実績を時価ベースで評価したものである。なお、承継資産に係る損益の厚生年金・国民年金への按分は、厚生年金・国民年金のそれぞれの積立金の元本平均残高の比率により行っている。
8.積立比率とは、前年度末に保有する積立金が、実質的な支出のうち、保険料拠出によって賄う部分(国庫・公経済負担を除いた部分)の何年分に相当しているかを表す指標である。(前年度末に保有する積立金が、国庫・公経済負担や追加費用を含めた実質的な支出総額の何年分に相当しているかを表す積立度合とは異なる。)

エ 社会保険庁改革の推進

社会保険庁改革については、内部統制の強化、業務の効率化、保険料収納率の向上、国民サービスの向上等を図る観点から、内閣官房長官主宰の「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」及び厚生労働大臣主宰の「社会保険新組織の実現に向けた有識者会議」の取りまとめに沿って、「ねんきん事業機構法案」及び「国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案」を第164回国会に提出した。

しかしながら、その後、改めて議論が生じ、平成18年12月にこれらの二法案は審議未了廃案となるとともに、与党において新たな改革案が取りまとめられ、公的年金に係る財政責任・管理責任は国が担いつつ、その運営に関する業務を新たに非公務員型の公的新法人を設けて行わせる方針の下で、「日本年金機構法案」を第166回国会に提出するなど、真に国民の信頼を得ることができる新組織を実現していくこととしている。

[目次]  [前へ]  [次へ]