第1章 高齢化の状況(第2節1 コラム)
第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向
コラム 増加する高齢運転者と生活安心プロジェクトによる交通安全意識を高める国民運動
高齢者の交通安全対策については、平成15年1月、小泉総理大臣(当時)が、重点的に取り組むことを談話において表明し、同年3月、高齢運転者の交通安全対策などを柱とする「本格的な高齢社会への移行に向けた総合的な高齢者交通安全対策について」(平成15年3月27日交通対策本部決定)が定められ、各種取組が進められている。
75歳以上の高齢者についてみると、運転免許保有者数は283万人(平成19年12月時点)と増加し、75歳以上の運転者の死亡事故発生率も高くなっている、などの状況がある。これを受けて、(1)75歳以上の高齢運転者の免許証更新時において認知機能検査を導入、(2)高齢者講習を受講することができる期間を更新期間満了日の6月前に延長、(3)75歳以上の高齢運転者の自動車運転時に高齢運転者標識(いわゆる「もみじマーク」)の表示義務付け、などを内容とする道路交通法の改正が行なわれ、平成19年6月20日公布されている(施行は公布の日から(1)、(2)は2年以内、(3)は1年以内)。75歳以上の高齢運転者は、免許証更新時の認知機能検査により、検査結果に基づいた高齢者講習の実施による安全運転の支援や認知症の疑いがある場合には臨時適性検査を受けることになる。
さらに、平成10年に導入された運転免許証の自主返納制度を促すため、独自の取組を行う地方自治体が出てきている。中でも富山県富山市は、運転免許を全部自主返納する65歳以上の運転者を対象に、車に代わる公共交通機関の乗車券(2万円相当)等や運転免許証に代わる身分証明書となる顔写真付住民基本台帳カード等の取得経費を支給する制度を設けている。
国民の100人に一人が交通事故により死傷し、飲酒運転による死亡事故が大きな社会問題となるとともに毎日交通死亡事故が発生しているという状況の中、福田内閣では、「生活安心プロジェクト」の4つの国民運動の一つとして、悲惨な交通事故撲滅に向けた「交通事故死ゼロを目指す日」が設定された。平成20年は、2月20日及び4月10日(春の全国交通安全運動と連動した取組)の二日間とされ、交通安全に対する国民の更なる意識の向上を図り、高齢者を含め、国民一人ひとりが交通事故に注意して行動することにより、交通事故の発生を抑止し、近年の交通事故死傷者数の減少傾向を確実なものとするため、岸田内閣府特命担当大臣自らが先頭に立った街頭キャンペーンなどが実施された。
今後、2.5人に1人が高齢者、4人に1人が75歳以上の高齢者となることが予想される前例のない高齢社会となる中では、意欲や能力のある高齢者が社会で活躍できる環境づくりのためにも、高齢者等にとって重要な交通手段である地域公共交通の活性化・再生とともに、高齢者が安心して自動車を運転し外出できるような道路交通環境の整備等を着実に進めていくことが重要である。