第1章 高齢化の状況(第1節 事例集)
助産院とデイサービスを併設し、赤ちゃんと高齢者が交流している事例(香川県高松市、特定非営利活動法人「いのちの応援舎」)
香川県高松市の特定非営利活動法人「いのちの応援舎」は、出産・子育て支援・高齢者支援の活動を三本柱として設立され、助産院、おやこ広場、病後児保育、デイサービスを併設した複合施設として平成18年2月に開所した。
もともと助産師として病院で働いていた理事長の「赤ちゃんの誕生から豊かな老後まで、みんなが集まれる施設を創りたい」という夢からスタートし、マンションの一室から始まった活動は、複合施設を開所することで実現に至った。開所するまでには資金面などの苦労もあり、現在もデイサービスは決して採算が取れている訳ではない。デイサービスで働くケアマネージャー始めヘルパーなどのスタッフは平均年齢50歳、支払われる賃金は十分なものではないが、皆が理事長の夢に賛同して集まっており、生きがいをもって働いている。
いのちの応援舎の1階にデイサービスと助産院、2階におやこ広場があり、デイサービスの利用者は通常朝9時から16時まで趣味活動や体操などのメニューをこなすが、おやこ広場に来た親子が帰りがけにデイサービスに立ち寄って話をしていったり、助産院で産まれた赤ちゃんを助産師がデイサービスまで抱っこしてきたりと、いのちの応援舎ならではの光景が見られる。おやこ広場に来ているお母さんたちはお母さんの先輩でもあるお年寄りたちに子育てについての知識などを聞いたりすることもある。一方、お年寄りは赤ちゃんを見ることで元気づけられる。赤ちゃんを抱かせてもらったお年寄りは、とても生き生きとした笑顔を見せる、赤ちゃんの持ついのちの力は本当にお年寄りに元気を与えると、理事長は話す。
赤ちゃんからお年寄りまで、人の一生に携わっていきたい、いのちの大切さを訴えていきたいと考える、理事長を始めとするいのちの応援舎のスタッフは、この世代を超えた交流を地域にも広めようと、公民館でのイベントもスタートさせた。第1回目に行われたイベントでは参加者は100人、高齢者向けの人形劇や子供からお年寄りまでが楽しめる楽器を使ったレクリエーションを行った。このイベントが好評だったため、第2回目を開催したところ、参加者は170人に増えたという。今後も継続的にイベントを行っていきたいと理事長は考えている。
核家族化が進んでおり、世代を超えた交流が減っている。「若い世代は高齢者の姿を見て生きることを学び、高齢者は若い世代から元気をもらい、また、自らの経験を伝えていく、そんな昔の大家族のような施設にしていきたい。そして、私たちの活動が地域にも広がっていくことで、皆がすべてのいのちを大切にしていってくれれば」という理事長の夢は、着実に実現されつつある。