第1章 高齢化の状況(第1節 事例集)
生涯現役を目指しこれから高齢期を迎える中高年者への支援(福岡県北九州市、運営:特定非営利活動法人里山を考える会)
北九州市は、平成18年6月に生涯現役を目指す50歳以上の者を対象とした生涯現役夢追塾を開塾した。その目的は、これから高齢期を迎える団塊の世代を中心に、今まで培ってきた技術や経験、能力や人脈等を活かしながら、退職後も生涯現役として社会貢献活動や経済活動などの担い手として活躍していく人材を発掘、育成するとともに地域や経済の活性化を図ることである。
塾生は、4月に公募され、5月に書類審査、面接を経て6月末に入塾する。入塾後は、7月から9月に基礎課程(全10講座)、9月から翌1月に専門課程(全20講座)、2月のインターン(オプション)を経て、3月に卒塾となる。これまでに1期生、2期生を送り出し、3期生の受け入れを進めているところである。定員は60名、講座時間は18:30から20:00(土日もあり)、受講料は年間5万円となっている。
基礎課程は、専門課程に進む前に自己能力の整理・再確認のための「夢探し」、「自分探し」の場として、全ての塾生を対象に行われる。ここでは、生涯現役で活動するための実例や課題点を学び、目標や夢を実現するため、自分の興味や強み、弱点などを明確にして自己認識を高める。さらにリーダーにふさわしいコミュニケーション能力を高めるための「コーチング」や、熟年世代のファイナンシャルプランといった経済面を考慮した「ライフデザイン」などが行われる。
専門課程は、それぞれの将来像に合わせて新しいスキルを身につけるためのもので、選択コースと各コース共通講座からなる。選択コースは次の4つのコースからの選択となる。(1)NPOコースは、特定非営利活動法人の設立を目指して、その基礎知識から実際の設立の方法、活動ノウハウ、設立後の課題までを学ぶ。(2)コーチングコースは、人を指導し、コンサルタントするための技術の習得を目標とし、能力の引き出し方、コミュニケーション技法、評価基準の設定法など指導者・教育者として必要な知識を学ぶ。(3)コミュニティビジネスコースは、地域の様々な問題を自営業や小規模ビジネスを通じて解決することを目指す新しいビジネススタイルについて、地域の課題の洗い出し方法、マネジメント方法、税金・法律の知識などを学ぶ。(4)起業独立コースは、起業独立に際しての心構え、経営戦略の立案、投資計画、資産調達計画、利益計画などを学ぶ。
講座の特徴として、地域に密着した講座内容、企業、自治体、NPOなど実際に地域で活躍中の多彩な講師陣、実践的で参加型の授業スタイル(少人数制)などが挙げられる。
塾生の状況を2期生51人についてみると、平均年齢60歳、最高齢69歳、最年少50歳、55~59歳が20人(39%)と最も多く、次いで60~64歳が13人(25%)、65~69歳が10人(20%)、男36人(71%)、女15人(29%)、現役28人(55%)、退職23人(45%)、また職業別では、会社員27人(53%)が最も多く、次いで公務員9人(18%)、経営者7人(14%)などとなっている。
2期生について意識変化の状況を例でみると、入塾時に「環境ビジネス関係の技術・事業のコンサル会社を起業したい。」、あるいは「介護者専用のカウンセラーをするとともに、介護者のデイサービスのシステムと個人相談コーナーを作りたい。」としていた者が、それぞれ卒塾時には「セールス技術の整理、実施体制、マーケットの確認を行い平成21年度中に会社を設立する。」、「メンタルケアスペシャリストの資格を取得後に、NPO法人に参加または、ボランティアで社会貢献をやっていきたい。」と、夢が一段と具体化し実現に向けたスケジュールが描かれたものとなっている。
また、夢の実現状況を1期生62人の卒塾後8ヶ月時点でみると、27人(44%)が独立、起業等を達成している。
(本事業は地域再生法に基づく「地域再生計画」として平成18年度に内閣府から認定された「団塊の世代を中心とした生涯現役型社会の環境づくり」の中核事業である。)