第1章 高齢化の状況(第2節5)
第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向
5 高齢者の社会参加活動
○近所の人たちとの交流が弱まっている
- 60歳以上の高齢者の近所の人たちとの交流について、「親しくつきあっている」が減少
- 一方、「あいさつをする程度」が増加しており、近所同士の結びつきが弱まっている(図1-2-5-1)
○高齢者のグループ活動への参加は約6割で、今後の参加したい高齢者は約7割
- 60歳以上の高齢者のグループ活動への参加状況について、59.2%が何らかのグループ活動に参加しており、10年前と比べて15.5ポイント増加(図1-2-5-2)。
- 今後の参加意向について、「参加したい」(「参加したい」、「参加したいが、事情があって参加できない」と回答した人の計)と考える人は70.3%となっており、過去の調査と比較すると増加(図1-2-5-5)
〔コラム1:家族介護は家庭内だけの問題なのか?〕
~男性介護者の活動を通じて見えてきたこと~
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- 要介護者等と同居している主な介護者(介護する人)の4人に1人(28.1%)は男性である。男性介護者は家事に不慣れ・相談できる相手を見つけにくい等、精神的にも身体的にも余裕のない孤立した介護生活に追い込まれる例が見られ、離職・転職により、経済的な面でも困難を抱える男性介護者は少なくない。
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- このような背景から、近年、男性介護者が集まって話し合い、情報を共有する場や、男性介護者を支援する活動が広がっている。
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- ここでは2つの取組を紹介。
- 平成6年に「荒川男性介護者の会『オヤジの会』」(東京都荒川区)の活動が始まった。
- 2か月に1回、夕方に開催される定例会では本音で話し合う懇親会と介護についての勉強会を実施。
- 夜の外出が難しい人もいるため、区の社会福祉協議会と連携し、平成20年に「ふれあい粋・活サロン『男性介護者サロンM』」を開始。2か月に1回、昼間に開催している。
- 当初の7名だった会員は、現在は約30名まで会員が増えた。
- また、平成21年3月、「男性介護者と支援者の全国ネットワーク(通称「男性介護ネット」)」が結成された。主に、<1>調査・研究とそれを踏まえた政策提言、<2>男性介護者や支援団体間の交流や情報交換を図るための交流会やワークショップ等の開催、<3>情報の発信などを行っている。
- また、152名の男性介護者の思いや経験を述べた『男性介護体験記』を発行するなど、多くの人たちと一緒に介護感情を分かち合い、さらには、地域の共有財産として「経験知」を蓄えていくための取組を行っている。
〔コラム2:高齢者の雇用促進〕
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- 60才以上の高齢者が全従業員の3割以上で、幅広い年齢を雇用している静岡県磐田市の機械器具製造会社を紹介。
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- 全従業員237人の平均年齢は45.8歳、うち60歳以上の従業員は79人であり、全従業員の3割を超える。さらに27人は70歳以上で、最高齢は89歳。一方、いちばん若い社員は16歳であり、10代から80代までの幅広い年齢で構成された、いわば“3世代同居企業”。
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- 製造工程が多数あるために多様な業務があり、その中から高齢者に向いている仕事、あるいは高齢者にもできる仕事を選択できることから、多くの高齢者の雇用が可能となっている。
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- きっかけは1990年代前半。バブル期に若者が採用できなかったため、「募集 健康なおじいちゃん!おばあちゃん!」と題したチラシを配布し、90歳までの元気な方を募集したのが始まりだった。
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- 実際に働く最高齢の女性の方は「家にいても退屈だが、ここで働いていると楽しい」と話し、最高齢の男性の方は「ここに来て、世間話をしながら笑うことで、ボケ防止にもなる。元気なうちはずっと働きたい」と生き生きとした表情で話している。