平成22年度 高齢社会対策
第1 平成22年度の高齢社会対策
1 高齢社会対策関係予算
高齢社会対策を、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、調査研究等の推進の各分野にわたり着実に実施する。
一般会計予算における平成22年度の高齢社会対策の関係予算は、17兆4,872億円であり、各分野別では、就業・所得10兆6,134億円、健康・福祉6兆8,273億円、学習・社会参加140億円、生活環境94億円、調査研究等の推進231億円となっている。
2 高齢社会対策の推進
平成22年度における分野別の主な施策は次のとおりである。
(1)就業・所得
○高年齢者雇用確保充実奨励金の創設(厚生労働省)
高年齢者雇用確保充実奨励金を創設し、事業主団体が傘下事業主に対し希望者全員が65歳まで働ける制度及び何らかの形で70歳まで働けるための制度導入等の雇用確保措置の定着・充実等を目的とした事業を実施した場合に助成を行う。
○テレワークの普及・促進(総務省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省)
平成22年までにテレワーカーを就業者人口の2割とする目標の実現に向けて策定した、「テレワーク人口倍増アクションプラン」(平成19年5月テレワーク推進に関する関係省庁連絡会議決定、IT戦略本部了承)の着実・迅速な実施のため、産学官からなる「テレワーク推進フォーラム」と連携し、セミナーの開催等によるテレワークの普及活動を行う。
○シルバー人材センターの支援等(厚生労働省)
「教育、子育て、介護、環境」の分野を重点にシルバー人材センターと地方公共団体が共同して企画提案した事業の支援を拡大するほか、各シルバー人材センターにおいて会員が身近な地域で安心して働くことができるよう多様な就業機会を提供するとともに、適切な運営の確保を図る。
○年金記録問題への対応(厚生労働省)
年金記録問題については、その対応を「国家プロジェクト」と位置づけ、平成22年・23年度の2年間に集中的に取り組み、25年度までの4年間にできる限りの対策を進める。
○公平・透明で分かりやすい年金制度の検討(厚生労働省)
年金制度については、雇用の流動化など時代にあった、公平・透明で分かりやすい年金制度とする観点から、年金制度を例外なく一元化し、全ての国民が加入する「所得比例年金」と月額7万円の「最低保障年金」を骨格とする新たな年金制度のための法律を平成25年に成立させることとしており、今後、具体的な制度設計に向けた検討を進める。
○国民年金保険料の納付に関する改善措置(厚生労働省)
平成22年通常国会に提出した「国民年金及び企業年金等による高齢期における所得の確保を支援するための国民年金法等の一部を改正する法律案」には、保険料を納めやすくすることで、将来の無年金・低年金を防止する等の観点から、国民年金保険料をさかのぼって納付することができる期間を2年から10年に延長する等の措置を行うことを盛り込んでいる。
(2)健康・福祉
○介護サービス指導者等養成研修等事業(厚生労働省)
介護保険事業の見直しや新たな行政課題に対応するため、特に専門的な知見や一定の質の確保が必要な事業における都道府県研修の指導者等を養成し、質の高い介護サービスの全国展開に資することを目的とする介護サービス指導者等養成研修等事業を行う。
○市町村地域包括ケア推進事業(厚生労働省)
市町村における地域包括ケアを推進していくために、地域包括支援センター等を活用して、介護保険外のサービスや住宅関係の情報を含めた高齢者の地域生活を支えるサービス等に関する情報の収集・発信機能を強化する事業や、見守り活動等地域のネットワーク構築を支援する事業等を行う(全国で50ヶ所)。
併せて、集合住宅等に居住する高齢者に対し、24時間365日対応窓口を設置し、介護保険外のサービスを含めた関係事業者等が連携して総合的にサービスを提供する事業等を実施する。
○介護・福祉サービス基盤の整備(厚生労働省)
身近な日常生活圏域で介護予防から介護サービスの利用に至るまでの必要なサービス基盤を整備するため、「地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金」及び「介護基盤緊急整備等臨時特例基金」により、将来必要となる介護施設や地域介護拠点を緊急に整備するとともに、市町村が地域の実情に合わせて裁量や自主性・創意工夫をいかせるような介護・福祉サービスの基盤整備を支援していく。
○福祉・介護人材の確保(厚生労働省)
福祉・介護人材の確保については、平成21年度に措置した取組を着実に実施するとともに、介護関係業務未経験者を雇い入れた場合の助成など雇用管理改善に取り組む事業主への支援に取り組む。さらに、人材の参入促進を図る観点から、介護に関する専門的な技能を身につけられるようにするための離職者訓練の充実を図るとともに、全国の主要なハローワークに設置する「福祉人材コーナー」において、きめ細かな職業相談・職業紹介、求人者への助言・指導等、また、他産業からの離職を余儀なくされた非正規労働者等が多数利用するハローワークにおいて、介護に関する情報提供及び「福祉人材コーナー」への誘導等の支援を実施していく。
○地域福祉等推進特別支援事業(厚生労働省)
地域福祉等推進特別支援事業において、高齢者等の地域社会における今日的課題の解決を目指す先駆的・試行的取組を行う自治体等への支援を行う。
○後期高齢者医療制度廃止後の新たな制度の検討(厚生労働省)
現行制度の問題点を解消するための取組を引き続き進めるとともに、「高齢者医療制度改革会議」において、後期高齢者医療制度廃止後の新たな制度の具体的なあり方について検討を進めていく。
(3)学習・社会参加
○地域活性化・雇用促進資基金(社会貢献型事業関連)(経済産業省)
地域活性化・雇用促進資基金(社会貢献型事業関連)の活用により、ソーシャルビジネス事業者の資金調達ニーズに対しては、民間金融を補完しつつ、日本政策金融公庫を通じてソーシャルビジネス事業者に対する融資を実施することで資金調達の円滑化に向けた環境整備を進め、事業活動の促進を目指す。
○シニア海外ボランティア事業(外務省)
豊富な知識、経験、能力を有し、かつ途上国の社会や経済の発展に貢献したいというボランティア精神を有する中高年が、海外技術協力の一環として、途上国の現場で活躍できるよう、シニア海外ボランティア事業を独立行政法人国際協力機構を通じ引き続き推進する。
(4)生活環境
○公共交通機関、建築物、道路等のバリアフリー化(国土交通省)
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号。以下「バリアフリー新法」という。)に基づき、公共交通機関、建築物、道路等のバリアフリー化の取組を推進する。
○歩行空間の形成、道路交通環境の整備(国土交通省、警察庁)
移動はあらゆる生活活動に伴い発生する要素であり、また、就労、余暇を支える要素である。したがって、その障壁を取り除き、すべての人が安全に安心して暮らせる道路交通環境づくりを行うことが重要な課題となっており、信号機、歩道等の交通安全施設等の整備を推進する。
○高齢者等居住安定化推進事業の創設(国土交通省)
高齢者等居住安定化推進事業を創設し、公的賃貸住宅や一定の要件を満たす高齢者専用賃貸住宅と、高齢者の生活を支援する施設や医療施設等を一体的に整備する場合、国が直接支援することとしている。
○住宅用火災警報器の普及促進等に要する経費(総務省)
高齢者や障害者等が安心して生活を営み、社会参加することができるよう、火災に対する安全性を効果的に確保するため、事業者の自発的取り組みを促し、日常の生活様式や非常時の行動特性等に対応した防火対策を普及促進する。
(5)調査研究等の推進
○がん超早期診断・治療機器総合研究開発プロジェクト(経済産業省)
小さながんを超早期に発見するため、信頼性の高い画像診断技術や、従来技術では困難であった超微小ながん等の治療のため、次世代放射線治療機器等の研究開発を行う。
○次世代機能代替技術研究開発事業(経済産業省)
生体内において幹細胞の増殖・分化・再生を促進する次世代再生医療技術や、小児にも適用可能な小型の埋込み型補助人工心臓の研究開発を行う。
○高齢歩行者・高齢自転車乗用者対策の充実のための調査に要する経費(警察庁)
高齢歩行者・高齢自転車乗用者の交通事故に関し幅広く実態調査を行い、明らかとされた課題解決のため、外国等の先進的な事例を参考にしつつ、我が国の交通環境に適した形での取り込み方策の検討を行い、新たな視点に立った高齢者事故抑止策を確立する。