第1章 高齢化の状況(第2節6(2))
第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向
6 高齢者の生活環境
(2)高齢者の安全・安心
ア 交通事故は増加傾向
65歳以上の高齢者の交通事故死者数をみると、平成21(2009)年は2,452人で14(2002)年より減少しつつあるが、交通事故死者数全体に占める割合は年々増加しつつあり、21(2009)年は49.9%と統計が残る昭和42(1967)年以降で最高となっている。ただし、高齢化の影響による高齢者人口の増加によるものが大きく、65歳以上人口に対する交通事故死者数の割合は、8(1996)年以降減少し続けている(図1-2-6-4)。
一方で、高齢運転者による交通事故件数についてみると、年々増え続けている。65歳以上の高齢運転者(原付以上)による交通事故件数は、平成21(2009)年は104,870件と、20(2008)年に比べ2.7%増加した。しかし、高齢化の影響による高齢者人口の増加によるものが大きく、高齢者の運転免許保有者に占める高齢者の事故件数の割合は、16(2004)年をピークに減少傾向にある(図1-2-6-5)。
イ オレオレ詐欺・恐喝の被害者の約7割が高齢者
犯罪による65歳以上の高齢者の被害の状況について、刑法犯被害認知件数でみると、平成9(1997)年は11万7,740件であったが、20(2008)年には15万5,316件に増加している。実数としては、近年減少傾向にあるが、全被害認知件数の10.4%を占めており、緩やかな増加傾向にある。
また、振り込め詐欺・恐喝事件のうち、いわゆるオレオレ詐欺・恐喝事件の平成21(2009)年の認知件数は3,057件であり、銀行での声掛けの強化等を背景に前年と比べて59.9%減少した。なお、21(2009)年の被害者中、65歳以上の割合は70.1%となっている。
一方、還付金等詐欺事件の平成21(2009)年の認知件数は299件で、銀行での声掛け強化等を背景に前年と比べて93.4%の減少となった。なお、21(2009)年の被害者を分析したところ、65歳以上の割合は65.6%となっている。
65歳以上の高齢者の住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)についてみると、平成20(2008)年は710人であり、全死者数の63.2%を占め、14(2002)年以降、増加傾向にある(図1-2-6-6)。
ウ 消費トラブルの被害が依然として10万件を超えている
全国の消費生活センターに寄せられた契約当事者が70歳以上の相談件数は、平成17(2005)年度に139,533件とピークを迎え、その後減少し、近年では横ばい傾向が続いているものの、依然として10万件を超えている(図1-2-6-7)。また、寄せられた相談について販売方法・手口をみると、21年度においては、家庭訪販が21.5%、次いで電話勧誘が10.3%となっている。
エ 虐待を受けている高齢者の7割が要介護認定
平成20年度に1,800市町村(特別区を含む)で受け付けた養護者による高齢者虐待に関する相談・通報件数は、高齢者虐待についての事業者、住民の理解が進んだことなどにより、21,692件と19年度(19,971件)よりも1,721件(8.6%)増加した。性別でみると女性が全体の約8割を占めており、年齢階級別では「80~84歳」が24.0%と最も多い。また、虐待を受けているもののうち、約7割が要介護認定を受けており、そのうち、「要介護3」が21.5%と最も多く、次いで、「要介護2」が19.5%、「要介護1」が19.0%の順であった。
なお、虐待の加害者は、「息子」が40.2%と最も多く、次いで、「夫」17.3%、「娘」15.1%となっている(図1-2-6-8)。