第1章 高齢化の状況(第2節 コラム2)

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第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向

コラム2 日本、スウェーデンにおける家族介護者支援に関する動き

平成14(2002)年10月から19(2007)年9月までの間に、家族の介護・看護を理由に離職又は転職した人(前職が雇用者)は、約50万人であり、増加傾向にある。また、介護開始時に就業していた人のうち、約2割が介護開始当時の仕事を辞めていること、家族介護をしながら働いている人のほとんどが介護休業を取得せずに、年休、欠勤、遅刻、早退で介護に対応しているという調査結果もあるi

  • i 「介護休業制度の利用状況等に関する研究」労働政策研究・研修機構 2006年

我が国においては、高齢者の数も、その割合も、さらに上昇していくと見込まれており、それとともに、仕事と介護の両立という課題に直面する人も増加すると考えられる。こうした状況を受けて、介護休業制度に加え、昨年6月から新たに介護休暇制度が創設されたところである。

高齢化率が18.5%(22(2010)年)のスウェーデンiiでは、介護を必要とする高齢者であっても、在宅介護サービスiiiを受けながら自宅で暮らし続けるケースが多く、9割を超える高齢者が在宅で過ごしている。家族介護者への支援は、介護は社会的に行われるものという認識から重要視されてこなかったが、家族介護者の増加を背景に、家族介護者支援を求める声が高まり、9(1997)年には高齢者等の介護をする家族等への支援が地方自治体の努力義務とされ、21(2009)年には義務化された。また、国から地方自治体に対する助成が行われてきたこともあり、地方自治体による家族介護者支援は着実に進み、すべての地方自治体でレスパイトケア(家族介護者のための休養の提供等の支援)が提供されており、地方自治体によっては、24時間体制の緊急支援や一時預かりサービスを提供しているところもある。

  • ii スウェーデンに関する記述は、以下の資料を参考にした。
  • スウェーデン社会省「ファクトシートNo.18 スウェーデンにおける高齢者介護」
  • スウェーデン保健福祉庁「Care of older people in Sweden 2008
  • Lennarth Johansson, the National Board of Health and Welfare “Family Care of Older People in Sweden:Current policy development”, 2010
  • iii 日常生活(買い物、調理、掃除、洗濯を始め、食事、入浴、着替えや起着床など)への支援といったホームヘルプサービスを中心に、訪問看護、外出支援、配食サービス、巡回やアラーム装置による見守り支援などのサービスが提供されている。

14(2002)年時点で、65歳以上の在宅の要介護者のうち81%が家族からの介護を受けており、公的な在宅介護サービスのみという人は15%である。

子どもが親の介護を行う場合、仕事との両立が課題になるが、スウェーデンでは、もとより多様で柔軟な働き方が浸透しており、加えて、重い病気にかかった者を看護する(看取る)ための近親者介護休暇制度ivがある。また、家族介護者への介護手当の支給や、一定の要件を満たす家族介護者については、地方自治体が雇用する制度もある。

  • iv 被介護者1人につき複数の介護者(親族、同居人、友人、隣人等)が取得可能。取得日数は60日間(のべ)。給与の80パーセントが「親族手当」として支給。

我が国における状況をみると、介護保険により提供されるサービスや介護休業や介護休暇などを始めとするライフステージに合わせた多様で柔軟な働き方ができる環境づくりと併せて、家族介護者を支える民間団体による活動が広がりを見せている。

特定非営利活動法人「介護者サポートネットワークセンター・アラジン」(以下、「アラジン」)は、家族介護をする人の支援(ケアする人のケア)を目的に、平成13(2001)年に発足した(特定非営利活動法人として16(2004)年に認証。)。

介護が始まると、日々の介護による心身への負担感や社会からの孤立感を感じることが多い。しかし、ともすると家族介護は家庭内の問題であり、やって当然だという考え方に縛られて、家族介護をする人のケアやサポートの必要性が見過ごされてきた。こうした視点に立ち、「アラジン」では、東京都を活動の拠点にして、家族介護者のケアやサポートのしくみづくりを実践している。具体的には、<1>電話や訪問などによる家族介護者に対する相談・援助、<2>家族介護者を支援する人材の養成、<3>家族介護者の交流の場(介護者の会)の立ち上げや運営の支援とネットワークの推進、<4>介護者調査や研修・フォーラムの開催、などである。

こうした活動を続けてきた結果、15(2003)年の発足時は、会員は約80名だったが、今は155人にまで増えた。今後に向けて、「アラジン」の牧野史子理事長は、「心身ともに疲れ、経済的にも精神的にも追い詰められて逼迫した介護者が多い。介護者の実態を把握し、介護者の生活を支援するような法制度の整備を求めるとともに、市民ができる介護者を支えるしくみを各地域の中で作っていきたい」と語る。

家族介護者への支援基盤の充実を図るとともに、家族介護は家庭の中だけの問題ではないとの認識を社会全体に広めることで、より家族介護をしやすい社会環境が実現される。そのためには、こうした民間団体による活動の広まりが鍵になるだろう。

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