第1章 高齢化の状況(第3節 コラム5)

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第3節 地域における高齢者の「出番」と「活躍」~社会的孤立を超えて地域の支え手に~

コラム5 限界的な集落のコミュニティ再生

一般的に、住民の半数以上が65歳以上で、生活道や林野の整備、冠婚葬祭など共同体としての機能を果たせなくなり、維持が限界に近づいている集落のことを「限界集落」という。
我が国の高齢化率(65歳以上人口の総人口に占める割合)は23.1%であるが、平成67(2055)年には40%を超えると予想されており、「限界集落」やそれに近づきつつある集落は、日本の未来を先取りした姿だともいえる
そのような地域では、地域コミュニティとしての機能を維持・再生するための様々な取組が行われている。


岐阜県高山市高根地域は、高齢化率が5割に近づいている。この地域は豪雪地帯という特徴があり、高山市社会福祉協議会が中心になって、高山市の遊休施設を活用して冬季の高齢者住宅(「冬季ファミリーホーム『のくとい館』」(以下、「のくとい館」))を開設し、冬季には他地域からの除雪ボランティア組織を結成して、「のくとい館」を中心に雪下ろしを実施している。遠くで暮らす「のくとい館」の入居者の家族からは、「こんなに安心して過ごせた冬は初めて」との喜びの声が多数上がっている。「のくとい館」は交流サロンや餅つき大会など地域住民との交流を中心とした行事を行うことで、地域の拠点としても機能しつつある。

コラム5の写真1

また、高齢者グループ「高根町の元気を出す会」により、流木オブジェや寒干し大根などの新たな特産品づくりが行われており、冬の間除雪作業しかすることのなかった高齢者にとっては、働く楽しさを感じ、生きがいを持って過ごせるようになったということである。


鹿児島県南さつま市金峰町大阪地区では、地区内の高齢化率は60%を超えて地域コミュニティの維持・存続が危ぶまれている。
この地区では、特定非営利活動法人「プロジェクト南からの潮流」が中心となって、住民の手作りによる遊歩道への道標設置、住民参加による眺望所の整備などを行っている。地域住民が作業のために毎日会って話をすることで元気が出ること、作業をやり遂げた喜びをみんなで味わうことが何よりの成果だという。また、鹿児島市に住む子供たち(60歳以上)が帰ってきて作業の手伝いを始めたことにより、今後の集落に明るい日差しが見えたと感じている。
登り窯や陶芸教室も運営されており、交流人口は前年度の3倍を超えたが、定住人口は減少を続けている。この地域が単なる「いいところ」で終わるのではなく、陶芸の里に加えて生産性のある第一次産業の育成を行い、定住人口を増やすことが今後の課題と考えている。

コラム5の写真2

高齢化がますます進行する我が国では、このように高齢化では国より何歩も先に進んでいる地域の取組も参考にしながら、今後の日本全体の在り方を考えていくことが必要ではないだろうか。

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