第1章 高齢化の状況(第3節 コラム7)

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第3節 地域における高齢者の「出番」と「活躍」~社会的孤立を超えて地域の支え手に~

コラム7 東日本大震災被災地における高齢者の活躍

東日本大震災では、多くの高齢者が被災して避難生活を余儀なくされ、自宅にとどまることができた人も、ライフラインが止まり流通が麻痺した中で困難な生活を強いられた。
介護ヘルパーの派遣や高齢者への配食サービスを行っている宮城県仙台市の特定非営利活動法人「あかねグループ」は、調理場で配食用の弁当をつくり終えた頃、震災に見舞われた。建物は大きな被害は免れたが、電気が消え電話も通じなくなった。しかし、「あかねグループ」のボランティアスタッフは、余震が続く中、雪が降り信号も消えた暗い町を、懐中電灯をたよりに歩き、お年寄りたちの安否を確認しながら弁当を配達して回った。家の中で震えているお年寄りもいたが、全員の無事が確認され、スタッフはようやく自宅に帰ることができた。こうした配食や介護サービスにかかわるメンバーの多くは高齢で、身内が津波の被害を受けたり自宅が被災して避難所生活を余議なくされた人もいたが、その後も避難所から事務所に通い活動を続けた。
宮城県山元町の市民団体「ふれあいの四季」では、高齢者がいつでも気軽に立ち寄ることができるカフェタイプの居場所を開設する準備をしていた矢先に、震災に見舞われた。借りるはずの場所が津波で流され、予定地での開設はできなくなったが、避難所に出向いて移動式の居場所を開設した。スタッフのほとんどは高齢であるが、学生ボランティアや県内から応援にかけつけたNPOの人も協力して本格的なコーヒーやクッキーを振る舞い、被災者にあたたかい気持ちを届けている。
今回の大災害では、被災者に対するきめ細かな取組が市民団体等によって行われ、また、市民団体間のつながりを生かして、震災直後から県外からも支援物資が届けられた。そうした民間団体間の連携をさらに強化し協働を進めるため、全国のNPO等民間団体からなる「東日本大震災支援全国ネットワーク」が結成された。政府や地方自治体による支援に加え、民間レベルでの被災地への支援活動も着実に全国に広がっている。

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