第2章 高齢社会対策の実施の状況(第3節1(3))

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第3節 分野別の施策の実施の状況

1 就業・所得

(3)公的年金制度の安定的運営

ア 持続可能で安定的な公的年金制度の確立

我が国の年金制度は、年金を受給する高齢者世代をサラリーマンや自営業者等の現役世代が支える世代間扶養の仕組みを基本としている。公的年金は高齢者世帯の収入の7割を占め、6割の高齢者世帯が年金収入だけで生活するなど、国民生活において欠くことのできないものとなっている。
この公的年金制度を持続可能なものとし、その信頼を確保するための財政上の措置として、基礎年金国庫負担割合2分の1の維持が必要不可欠となっている。この観点から、平成23年度政府予算では、財政投融資特別会計から一般会計への特例的な繰入金などの臨時の財源を確保し、基礎年金国庫負担割合2分の1を維持することを盛り込むとともに、第177回通常国会に所要の法案を提出した。
また、現行制度における無年金・低年金問題への対応も極めて重要な課題となっている。将来の無年金・低年金の発生を防止し、国民の高齢期における所得の確保をより一層支援する観点から、国民年金保険料の納付可能期間を2年から10年に延長する等の措置を行うことを盛り込んだ「国民年金及び企業年金等による高齢期における所得の確保を支援するための国民年金法等の一部を改正する法律案(年金確保支援法案)」を第174回通常国会に提出した。本法案は第176回臨時国会において一部修正の上、衆議院で可決され、参議院で継続審議の取り扱いとなっている。
なお、平成23年度の年金額は、平成22年の物価水準が平成17年の物価と比較してマイナス0.4%となったことから、マイナス0.4%の引下げとなった(老齢基礎年金(40年加入の場合):月額65,741円(▲267円))。


イ 個人のライフスタイルの選択に中立的な公的年金制度の構築

年金制度改革については、年金制度を例外なく一元化し、すべての人が「所得が同じなら同じ保険料」を負担し、納めた保険料を基に受給額を計算する「所得比例年金」の創設などを骨格とする新たな年金制度について、国民的な議論を行って、平成25年の国会に所要の法案を提出することとしている。


ウ 公的年金制度の一元化の推進

上述のとおり、年金制度を例外なく一元化することを含めた新たな年金制度を創設するための法案を、平成25年の国会に提出することとしている。
こうしたことを踏まえ、平成22年6月には、総理を議長とする「新年金制度に関する検討会」において、新たな年金制度の基本原則を取りまとめたところである。さらに、同年10月に、内閣総理大臣を本部長とする「政府・与党社会保障改革検討本部」を設置した。同本部の下に設置された「社会保障改革に関する有識者検討会」や「社会保障・税に関わる番号制度に関する検討会」等の議論も踏まえ、同年12月に「社会保障改革の推進について」を閣議決定し、年金制度を含む社会保障制度の改革について、検討のスケジュールを示した。


エ 日本年金機構による適切な運営と年金記録問題への対応

日本年金機構については、厚生労働大臣が定めた中期目標に基づき、日本年金機構により作成された平成22年度計画を認可し、その着実な実施を求めることにより、公的年金制度の適切な運営の確保に努めた。
具体的には、年金記録問題への対応については、紙台帳検索システムによる紙台帳等とコンピューター記録との突合せ業務を平成22年10月から開始するとともに、インターネットでの記録確認をより使いやすいものとした「ねんきんネット」サービスを平成23年2月末から開始し、また、自宅でパソコンが使えない方のために一部の市区町村や郵便局で年金記録の提供を行えるようにした。
また、国民年金の収納事務については、平成22年度の現年度納付率が平成21年度と同程度の水準(60.0%)を確保することを目標に、市場化テスト受託事業者との情報交換・連携体制の整備等を行った。
厚生年金保険等の適用・徴収事務については、それぞれ増員による体制強化を図るとともに、各年金事務所ごとに行動計画を策定し、計画的に取り組んだ。
年金給付の請求書を受け付けてから年金が決定され、年金証書が請求者の方々に届くまでの所要日数を設定した「サービススタンダード」の達成状況の改善に向けては、特に達成率の低い障害厚生年金について、増員による審査体制の強化等を行った。
なお、紙台帳等とコンピューター記録との突合せ業務の入札において発生した日本年金機構職員による情報漏えい事案等を受け、日本年金機構に対して、再発防止のための取組を指示するとともに、それらの実施状況を把握し、監督していくこととした。

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