第2章 高齢社会対策の実施の状況(第3節1(4))
第3節 分野別の施策の実施の状況
1 就業・所得
(4)自助努力による高齢期の所得確保への支援
ア 企業年金制度等の整備
我が国の公的年金の上乗せの企業年金制度等には、確定給付型の企業年金として、厚生年金の一部を国に代わって支給するとともに、独自の年金を上乗せする「厚生年金基金」、企業独自の年金のみの「確定給付企業年金」、一定の要件を備えたものに税制上の特例を認めた「適格退職年金」がある。また、確定給付型の企業年金等に加え、国民の自助努力を支援するための選択肢として、拠出した掛金額とその運用収益との合計額を基に給付額が決定される「確定拠出年金」がある(表2-3-3)。
(年度末現在) | ||||||||||
年度 (平成) |
厚生年金基金 | 国民年金基金 | 確定拠出年金 | 確定給付企業年金 | ||||||
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基金数 | 加入員数 (万人) |
基金数 | 加入員数 (万人) |
企業型 承認件数 |
企業型 加入者数 (万人) |
個人型 加入者数 (万人) |
規約型 (件) |
基金型 (件) |
加入者数 (万人) |
|
5 | 1,804 | 1,192 | 72 | 58 | ||||||
6 | 1,842 | 1,205 | 72 | 67 | ||||||
7 | 1,878 | 1,213 | 72 | 70 | ||||||
8 | 1,883 | 1,210 | 72 | 73 | ||||||
9 | 1,874 | 1,225 | 72 | 72 | ||||||
10 | 1,858 | 1,200 | 72 | 73 | ||||||
11 | 1,835 | 1,169 | 72 | 77 | ||||||
12 | 1,801 | 1,140 | 72 | 76 | ||||||
13 | 1,737 | 1,087 | 72 | 79 | 70 | 9 | 0 | |||
14 | 1,656 | 1,039 | 72 | 77 | 361 | 33 | 1 | 15 | 0 | 3 |
15 | 1,357 | 835 | 72 | 79 | 845 | 71 | 3 | 164 | 152 | 135 |
16 | 838 | 615 | 72 | 75 | 1,402 | 126 | 5 | 478 | 514 | 314 |
17 | 687 | 531 | 72 | 73 | 1,866 | 173 | 6 | 833 | 597 | 384 |
18 | 658 | 522 | 72 | 69 | 2,313 | 219 | 8 | 1,335 | 605 | 430 |
19 | 626 | 478 | 72 | 65 | 2,710 | 271 | 9 | 2,480 | 619 | 506 |
20 | 617 | 466 | 72 | 62 | 3,043 | 311 | 10 | 4,397 | 611 | 570 |
21 | 608 | 460 | 72 | 58 | 3,301 | 340 | 11 | 6,795 | 610 | 647 |
資料:厚生労働省、企業年金連合会、国民年金基金連合会調べ、確定給付企業年金の加入者数は生命保険協会・信託協会・全国共済農業協同組合連合会「適格退職年金の契約状況調べ(速報値)」による。 | ||||||||||
(注)確定拠出年金法は平成13年10月より施行(個人型確定拠出年金については平成14年1月より施行)。 | ||||||||||
確定給付企業年金法は平成14年4月より施行。 |
企業型確定拠出年金において、加入資格年齢の引上げや、事業主に加え加入者の掛金拠出(マッチング拠出)を可能とし、この掛金の全額を所得控除の対象とすること等を盛り込んだ「国民年金および企業年金等による高齢期における所得の確保を支援するための国民年金等の一部を改正する法律案」を第174回国会に提出し、継続審議となった。
イ 退職金制度の改善
社外積立型の制度を導入する等の改善を促進するとともに、中小企業が退職金制度を導入するのを支援するため、中小企業退職金共済制度の普及促進等の施策を推進している。
ウ 高齢期に備える資産形成等の促進
勤労者財産形成年金貯蓄については、退職後の生活に備えての勤労者の計画的な資産形成のための自助努力を支援するため、元本550万円を限度として、利子等については非課税措置が講じられている。
また、平成14年に都道府県社会福祉協議会において、所有する住居に将来にわたり住み続けることを希望する低所得の高齢者世帯に対し、当該不動産を担保として生活資金の貸付けを行う長期生活支援資金貸付制度を創設したところであり、21年3月末現在、800件の貸付決定がなされている(21年10月に「不動産担保型生活資金」に名称変更)(表2-3-4)。
【目的】
一定の居住用不動産を有し、将来にわたりその住居に住み続けることを希望する高齢者世帯に対し、当該不動産を担保として生活資金の貸付けを行うことにより、その世帯の自立を支援することを目的とする。
【実施主体】
都道府県社会福祉協議会(申込窓口は市町村社会福祉協議会)
【貸付対象】
資金の貸付対象は次のいずれにも該当する世帯
- 借入申込者が単独で所有(同居の配偶者との共有を含む。)する不動産に居住していること。
- 不動産に賃借権、抵当権等が設定されていないこと。
- 配偶者又は親以外の同居人がいないこと。
- 世帯の構成員が原則として65歳以上であること。
- 借入世帯が市町村民税の非課税世帯程度の世帯であること。
【貸付内容】
貸付限度額 | 居住用不動産(土地)の評価額の70%程度 |
---|---|
貸付期間 | 貸付元利金が貸付限度額に達するまでの期間又は借受人の死亡時までの期間 |
貸付額 | 1月当たり30万円以内の額(臨時増額が可) |
貸付利子 | 年利3パーセント又は長期プライムレート(現在2.25%)のいずれか低い利率 |
償還期限 | 借受人の死亡など貸付契約の終了時から3月以内 |
償還の担保措置 | ・居住する不動産に根抵当権等を設定。 ・推定相続人の中から連帯保証人1名選任。 |
資料:厚生労働省
(注)長期プライムレートは平成21月4月1日現在
また、高齢者の財産管理の支援等に資する認知症高齢者等の権利擁護のための成年後見制度について周知を図っている(表2-3-5)。
○ 制度の趣旨
高齢社会への対応及び福祉の充実等の観点から、自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーション等の理念と本人の保護の理念との調和による柔軟かつ弾力的で利用しやすい制度への社会的要請にこたえる。
○ 概要
法定後見制度と任意後見制度の2つがある。法定後見制度については、各人の多様な判断能力及び保護の必要性の程度に応じた制度とするため、補助・保佐・後見の三類型に分かれている。
(1)法定後見制度(民法)
3類型 | 補助 | 保佐 | 後見 |
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判断能力の程度 | 不十分 | 著しく不十分 | 欠く常況 |
*補助:軽度の認知症者等が対象で、本人の同意の下で特定の契約の締結等について支援を受けられる。
(2)法定後見制度の充実(民法)
社会福祉協議会等の法人や複数の者が成年後見人となることを認め、また後見人の権限の濫用を防止するために監督体制の充実を図っている。
(3)任意後見制度(任意後見契約に関する法律)
自分の判断能力が低下する前に、本人が選ぶ後見人(任意後見人)に、将来の財産管理等について依頼するため、公正証書で任意後見契約をすることができる。
(4)成年後見登記制度(後見登記等に関する法律)
プライバシー保護の観点から、戸籍への記載に代わる公示方法として成年後見登記制度を設けている。
資料:法務省