コラム4 高年齢者と若年者の雇用について
平成22(2010)年11月より、今後の高年齢者の雇用・就業機会の確保のための総合的な対策を検討することを目的として「今後の高年齢者雇用に関する研究会」が開催され、23(2011)年6月に「今後の高年齢者雇用に関する研究会報告書 ~生涯現役社会の実現に向けて~」が公表された。
本報告書では、急速に進展する我が国の少子高齢化に伴う労働力人口の減少を跳ね返し、経済の活力を維持するためには、若者、女性、高年齢者など全ての人が可能な限り社会の支え手となることが必要であると指摘している。
若年者や高年齢者の就労実態について、年齢階級別の完全失業率をみてみると、15~24歳、25~34歳といった若年層はほかの年齢層に比べて完全失業率が高く、65歳以上はほかの年齢層に比べて完全失業率が低くなっている(図1)。
一方、常用労働者の有効求人倍率をみてみると、19歳以下及び65歳以上は求人倍率がほかの年齢層に比べて高くなっている(図2)。新卒労働市場では、未就職卒業者が発生している一方で、若年者の確保に苦慮している中小企業もあることから(図3)、若年層には、求人と求職のミスマッチが生じていると言える。
また、新卒労働市場において厳しい状況が続き、企業における人件費が限られている中で、高年齢者雇用を進めることにより若年者の雇用機会が減少するなど、若年者雇用と高年齢者雇用の代替性が指摘されることがある。これに対して、「今後の高年齢者雇用に関する研究会」で実施した企業に対するヒアリング(23(2011)年2月)では、専門的技能・経験を有する高年齢者と基本的に経験を有しない若年者とでは労働力として質的に異なるという意見や、新卒採用の数は高年齢者の雇用とのバランスではなく、景気の変動による事業の拡大・縮小等の見通しにより決定しているといった意見があった。
将来的には、特に若年者の労働力供給が減少し、必要な人材の確保が難しくなると見込まれることから、長期的な視野をもち、若年者の雇用対策や高年齢者の雇用促進を同時に進めて、年齢にかかわりなく意欲と能力のある労働者を適切に活用することが重要な課題となっている。