コラム7 地域をつなぐ「くるくるバス」
人口約13,000人の町、福島県福島市の蓬莱地区は、まち全体が丘陵に立地していて坂道も多く、高齢者などには暮らしづらい地域とも言える。しかし、ここには、どこでも何度でも無料で乗れるコミュニティバス「くるくる」(くるくるバス)が走っている。
この「くるくるバス」は、地元の市民団体「まちづくりコミュニティ ぜぇね」(「ぜぇね」は福島県の方言で「いいね」という意味)が、平成20(2008)年に、家に閉じこもりがちなお年寄りの外出を支援したり、コミュニティづくりのために運行を始めた。
運賃は無料で、運行資金はバス車体の広告収入(協賛金)と、住民等からの寄付金や募金で賄っている。行政からの補助金は受けておらず、ガソリン代や人件費をはじめとする資金の確保には非常に苦労しているが、関係者の熱意と地域の人たちの協力で何とか運行を続けている。
「まちづくりコミュニティ ぜぇね」の事務所は蓬莱ショッピングセンター内にあり、「くるくるバス」の待合室にもなっていて、気軽に立ち寄れる居場所として多世代交流が図られている。
現在、蓬莱の東西3コースを1日5回(原則平日のみ)循環しており、1日70人ほどが利用している。利用者はお年寄りが多いが、子連れで買い物に出かけるお母さんの姿も見られる。23(2011)年の東日本大震災の際は、関係者も被害を受けて一時的に運行を止めたが、4日目からは運行を再開し利用者の信頼を得た。
蓬莱地区では、「くるくるバス」を地域で支え合うことにより、まちの活気と住民の交流が育まれている。