[目次]  [前へ]  [次へ]

コラム2 劇団包括~認知症の対応を知ってもらうために~

昨今、認知症の高齢者が増加しており、認知症への社会の理解が深まることが重要とされている。

ここでは、愛知県豊田市と地域包括支援センターとの共働で行われている認知症の知識の啓発活動について紹介する。

平成24年7月愛知県豊田市役所高齢福祉課と地域包括支援センターとの共働による劇団「劇団包括」が結成された。この劇団は、認知症の方々が住みなれた地域で安心して暮らせるよう、地域住民へ認知症状や対応の仕方などを、わかりやすく寸劇をとおして伝えていくことを目的としている。

これまで地域包括支援センター独自の取組として、寸劇などを取り入れ介護予防教室を行っているところもあったが、行政と複数の地域包括支援センターが連携して劇団を結成し、認知症の知識の啓発活動を行うことは、県内の政令市や中核市の中でもユニークな取組である。

「劇団包括」は、アルツハイマーデーにちなんだ講演会にて平成24年9月8日(土)に旗揚げ公演を行った。内容は、認知症の初期症状がみられる高齢者本人の不安と家族や友人のとまどい、地域包括支援センターと関わった後の周囲の対応の変化を、30分程度の寸劇をとおして伝えるもの。劇団メンバーは、豊田市役所高齢福祉課職員、市内22カ所の地域包括支援センターのうち複数の地域包括支援センター職員、豊田市基幹包括支援センター職員で役者と裏方スタッフ合わせ総勢40名で、講演会にきていた550名の観客を魅了した。

その後12月には豊田市小原地区老人クラブの要請で公演も行った。こちらでは、規模を縮小し、役者8名で15分程度の内容にしたものを披露した。公演を行う地域の地域包括支援センターと協力して実施するため、その地域ならではの話題や地名等を取り入れた寸劇となり、お客さんにも親しみやすい内容となっていた。また、楽しく理解してもらうことを心がけており、笑いを誘うようなシナリオにしているため、会場には常に笑いと拍手が起こっていた。認知症の方への対応の仕方を、①怒らない②否定しない③目を見て話すと簡単に3つのポイントにまとめて劇中に織り込んでおり、お客さんはうなずきながら見入っていた。劇を観ている途中で、劇の進展を予想している人もおり、劇の内容が誰でも想像のつきやすいものにしてあることで、理解がより得られやすくなっていた。観終わった人からは、「認知症の人も悩んでいる事がわかった」「演技がうまいし面白い」「もっと認知症のことを勉強したくなった」などの感想が聞かれた。今後も、アルツハイマーデーでの公演とともに、市主催の講演会や地域行事など依頼があれば応じていく。シナリオはまだ1つしかないが、今後他バージョンを作成していく予定で、後々は市民も参加できる形にしたいという構想もある。

「劇団包括」公演の様子
[目次]  [前へ]  [次へ]