コラム3 東日本大震災被災地における高齢者の活動
東日本大震災では多くの人が被災し、今も多くの人が避難生活を送っている。被災者のために何かできないか、住民自らが復興の担い手になろうと、そういう思いをもって活動をしているボランティア団体やNPOも多い。
東日本大震災被災地において被災者支援を行っている高齢者グループの活動を紹介する。
「ふくしま民話茶屋の会」の取組(福島県福島市)
ふくしま民話茶屋の会は、メンバー約30人の平均年齢は約70歳。自治会の協力を得ながら、主に福島市内の仮設住宅を訪問し、民話を通じて交流を図っている。避難生活を送っている人には高齢者も多い。震災と原発事故で、長期化し、先の見通しの立たない避難生活で沈みがちな気持ちを、少しでも癒すことはできないかと始められた活動である。
1回の訪問は60分から90分で、6~7話の民話を語り、紙芝居も行っている。雰囲気を出すために、囲炉裏の模型を置くなどの演出も行っている。何を語るかは参加者に会ってから決めているそうで、福島市で語り伝えられている民話の中から、元気が出るような話や滑稽話を選んでいるとのこと。ときには、お手玉で遊んだりわらべ歌を楽しんだりすることもある。
あたたかい"ふくしま弁"で語られる民話は、参加者にとても喜ばれている。昔のことを懐かしく思い出されるのか、涙を浮かべて熱心に聞き入ってくれることも多いとのこと。
今後も定期的に来てほしいとの要望もあり、要望がある限り何回でも訪問したいとのことである。
「新生おおつち」の取組(岩手県大槌町)
「新生おおつち」は、自分たちの町のことは自分たちで考え、行動しようと「町内ぐるっと見守りたい」の基本理念を掲げ、地域で高齢者や子育て世帯、次世代の子供たちを見守っていこうとの思いから立ち上がったボランティア団体である。
活動の一つとして、平成24年7月から「華ぼっくり」の製作・販売を行っている。「華ぼっくり」というのは、地元の松ぼっくりに全国の方々から頂いた端切れや着物等で細工した、ブローチやコサージュ、髪飾りのこと。仮設住宅の集会所等で高齢の女性が製作したものを、団体を通じて販売している。これまでに800個以上を売り上げているとのことである。諸経費を除いた利益のほとんどが製作者に渡るようにしてあり、収入と生きがいにつながっている。これまでは、主に県内で開催される各種イベント等で販売されてきたが、今後は、新たな販売ルートの開拓も検討されている。
また、平成25年4月20日からは、団体の事務所内にコミュニティサロン「華カフェ」をオープンした。華カフェの周辺一帯は津波により浸水した地域であり、震災以降、集会ができる場所がなかった地域だけに、気軽に立ち寄り、おしゃべりを楽しめる場所になったと喜ばれている。