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第2章 第3節 2 健康・介護・医療等分野に係る基本的施策

第3節 分野別の施策の実施の状況

2 健康・介護・医療等分野に係る基本的施策

「健康・介護・医療等分野に係る基本的施策」については、高齢社会対策大綱において次のような方針を明らかにしている。

我が国において少子高齢化や疾病構造の変化が進む中で、生活習慣及び社会環境の改善を通じて、全ての国民が共に支え合いながら希望や生き甲斐を持ち、高齢期に至っても、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会を実現し、長寿を全うできるよう、生涯にわたる健康づくりを総合的に推進する。

高齢者介護については、介護を国民皆で支え合う仕組みとして創設された介護保険制度の着実な実施を図る。また、高齢者が可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするため、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の確立を目指す。加えて今後急速に増加することが予想される認知症を有する人が地域において自立した生活を継続できるよう支援体制の整備を更に推進する。

また、今後も高齢化の進展等で医療費の増加が見込まれる中、引き続き安心して良質な医療を受けることができるよう、人口構造の変化に対応できる持続可能な医療保険制度を構築する。

(1)健康づくりの総合的推進

ア 生涯にわたる健康づくりの推進

平成12年に策定した「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」を推進するため、「適度な運動」、「適切な食生活」、「禁煙」に焦点を当てた「すこやか生活習慣国民運動」(平成20年から実施)を更に普及、発展させた「Smart Life Project」を平成23年から開始し、民間企業と連携した職域における取組や、企業の経済活動等を通じて、生活習慣病対策の一層の推進を図った。

さらに、健康な高齢期を送るためには、壮年期からの総合的な健康づくりが重要であるため、市町村が健康増進法に基づき実施している健康教育、健康診査、機能訓練、訪問指導等の健康増進事業の一層の推進を図った(表2-3-3)。

表2-3-3 健康増進事業の一覧
種類等 対象者 内容 実施場所
健康手帳の交付 ・40歳以上の者 ○特定健診・保健指導の記録
○健康教育、健康相談、健康診査、機能訓練、訪問指導等の記録
○生活習慣病の予防及び健康の保持のための知識
○医療に関する記録等必要と認められる事項
 
健康教育 ・個別健康教育 ・40歳から64歳までの者で特定健康診査及び健康診査等の結果、生活習慣病の改善を促す必要があると判断される者(特定保健指導又は保健指導対象者は除く) ○疾病の特性や個人の生活習慣を具体的に把握しながら、継続的に個別に以下の健康教育を行う
・高血圧個別健康教育
・脂質異常症個別健康教育
・糖尿病個別健康教育
・喫煙者個別健康教育
市町村保健センター
医療機関等
・集団健康教育 ・40歳から64歳までの者
・必要に応じ、その家族等
○健康教室、講演会等により、以下の健康教育を行う
・一般健康教育
・歯周疾患健康教育
・骨粗鬆症(転倒予防)健康教育
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)健康教育
・病態別健康教育
・薬健康教育
健康相談 ・重点健康相談 ・40歳から64歳までの者
・必要に応じ、その家族等
○幅広く相談できる窓口を開設し、以下の健康相談を行う
・高血圧健康相談
・脂質異常症健康相談
・糖尿病健康相談
・歯周疾患健康相談
・骨粗鬆症健康相談
・病態別健康相談
市町村保健センター等
・総合健康相談 ○対象者の心身の健康に関する一般的事項に関する指導、助言
健康診査等 健康診査 ・健康診査 ・健康増進法施行規則第4条の2第4号に規定する者 ○必須項目
・既往歴の調査等(服薬歴・喫煙習慣の状況に係る調査含む)
・自覚症状及び他覚症状の有無の検査
・身長、体重及び腹囲の検査等
・BMIの測定
・血圧の測定
・肝機能検査(血清GOT、GPT、γ-GTP)
・血中脂質検査(中性脂肪、HDL-コレステロール、LDLコレステロール)
・血糖検査
・尿検査(糖、蛋白)

○選択項目〔医師の判断に基づき実施〕
・貧血検査(ヘマトクリット値、血色素量及び赤血球数)
・心電図検査
・眼底検査
市町村保健センター
保健所
検診車
医療機関等
・訪問健康診査 ・健康診査の対象者であって寝たきり者等 ○健康診査の検査項目に準ずる
・介護家族訪問健康診査 ・健康診査の対象者であって家族等の介護を担う者 ○健康診査の検査項目に準ずる
保健指導 ・健康診査の結果から保健指導の対象とされた者 ○動機付け支援
○積極的支援
市町村保健センター
保健所
医療機関等
歯周疾患検診 ・40, 50, 60, 70歳の者 ○検診項目・問診・歯周組織検査  
骨粗鬆症検診 ・40, 45, 50, 55, 60, 65, 70歳の女性 ○検診項目・問診・骨量測定  
肝炎ウイルス検診 ・当該年度において満40歳となる者
・当該年度において満41歳以上となる者で過去に肝炎ウイルス検診に相当する検診を受けたことがない者
○問診
○C型肝炎ウイルス検査
・HCV抗体検査
・HCV抗原検査(必要な者のみ)
・HCV核酸増幅検査(必要な者のみ)
○HBs抗原検査(必要な者のみ)
市町村保健センター
保健所
検診車
医療機関等
機能訓練 ・40歳から64歳までの者で疾病、外傷その他の原因による身体又は精神機能の障害又は低下に対する訓練を行う必要がある者 ○市町村保健センター等適当と認められる施設で以下を実施
・転倒予防、失禁予防、体力増進等を目的とした体操
・習字、絵画、陶芸、皮細工等の手工芸
・軽度のスポーツやレクリエーション
・交流会、懇談会等
市町村保健センター
老人福祉センター
介護老人保健施設等
訪問指導 ・40歳から64歳までの者であって、その心身の状況、その置かれている環境等に照らして療養上の保健指導が必要であると認められる者 ○家庭における療養方法等に関する指導
○介護を要する状態になることの予防に関する指導
○家庭における機能訓練方法、住宅改造、福祉用具の使用に関する指導
○家族介護を担う者の健康管理に関する指導
○生活習慣病の予防に関する指導
○関係諸制度の活用方法等に関する指導
○認知症に対する正しい知識等に関する指導
○その他健康管理上必要と認められる指導
対象者の居宅
資料:厚生労働省
(注)65歳以上の者については、介護予防の観点から別事業を実施している。
平成10年度より一般財源化されているがん検診についても、健康増進法に基づく健康増進事業として位置づけられている。

また、高齢化の進展等により今後も医療費の増加が見込まれる中で、国民皆保険を堅持していくためには、必要な医療は確保しつつ、効率化できる部分は効率化を図ることが重要であり、生活習慣病予防対策として、医療保険者において、平成20年度から特定健診・特定保健指導を行っている。平成23年度(速報値)の特定健診実施率は45.0%、特定保健指導実施率は15.9%であった。

健康で活力に満ちた長寿社会を実現するため、「高齢者の体力つくり支援事業」として、生活基盤の比重が仕事中心から地域社会へ大きく移行する年齢層が、それぞれの適性や健康状態に応じて無理なく継続できる運動・スポーツプログラムの普及啓発を行うとともに、高齢者の体力つくりに係るシンポジウムを開催した。

「第2次食育推進基本計画」に基づき、家庭、学校・保育所、地域等における食育の推進、食育推進運動の全国展開、生産者と消費者の交流促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化、食文化の継承のための活動への支援、食品の安全性の情報提供等を実施した。「生涯食育社会」の構築に向け、食育の実践等を促進する取組を支援した。

イ 健康づくり施設の整備等

一定の要件を満たした運動施設及び温泉施設を「運動型健康増進施設」、「温泉利用型健康増進施設」及び「温泉利用プログラム型健康増進施設」として認定し、健康を増進するための民間サービスの振興を図った。

また、散歩や散策による健康づくりにも資する取組として、地方公共団体等のまちづくりと一体となった「かわまちづくり」の推進を図っている。

そのほかに、高齢者の健康づくりの場としての森林の利用を推進するため、健康づくりに資する森林の整備を推進するとともに、森林体験活動の場となる実習林や体験施設などの整備等を実施した。

国立公園においては、主要な利用施設であるビジターセンター、園路、公衆トイレ等についてバリアフリー化を推進するなど、高齢者にも配慮した自然とのふれあいの場の整備を実施した。

都市公園においては、健康づくりの様々な活動が広く行われるよう高齢者等にも配慮した整備を推進している。

ウ 介護予防の推進

要介護状態等になることを予防し、要介護状態等になった場合でもできるだけ地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援するため、地域支援事業を推進するとともに、日常生活圏域で高齢者の生活の継続性が確保できるように、建物等の改修等により、介護予防サービス提供のための拠点整備を行った。

また、自立支援に効果の高い支援手法を明らかにする観点から、平成24年度から2年間かけて、13の自治体と協働して、二次予防事業対象者、要支援1から要介護2までの者を対象として、介護予防市町村強化推進事業を実施している。

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