第1章 高齢化の状況

[目次]  [戻る]  [次へ]

第3節 一人暮らし高齢者に関する意識

3 将来の準備に関する意識

(1)子供のいない男性は、約1/3が看護や世話を頼みたい相手がいない

病気のなどの時に看護や世話を頼みたいと考える相手は、子供がいる人は男女ともそれぞれ「子」が41.0%、58.2%と最も多い。子供がいない女性は、「兄弟姉妹親戚」(35.4%)が最も多く、次いで「あてはまる人はいない」(21.5%)となっている。一方、子供がいない男性が頼りたい相手は「あてはまる人はいない」(35.0%)、次いで「そのことでは頼りたいと思わない」(22.6%)となっている(図1-3-7)。

図1-3-7 頼りたい人(看護や世話)(複数回答)

(2)要介護度が低ければ「現在の自宅」で介護を希望する人が約2/3

日常生活において介護を必要とする程度別に一人暮らし高齢者の希望する介護場所をみると、日常生活能力がわずかに低下した状態では、「現在の自宅」(66.6%)が最も多く、「介護施設」(10.3%)や「高齢者向きのケア付き住宅」(9.5%)は、それぞれ1割程度となっている。

また、排泄や入浴などに一部又は全介助が必要な状態になると、「現在の自宅」(27.0%)と「介護施設」(29.2%)がほぼ同程度になる。さらに、一人で立ち上がったり、歩いたりできず排泄や入浴などに全介助が必要な状態の人になると、「介護施設」が42.6%となり、「現在の自宅」の15.5%を大きく上回る。何らかの支援が必要、一部に介助が必要、全部介助が必要と、要介護度が高くなるにつれて、「現在の自宅」での介助を希望する人が減少し、「介護施設」や「高齢者向きのケア付き住宅」での介護を希望する者が増加する(図1-3-8)。

図1-3-8 介護や支援が必要になった場合に希望する介護の場所

(3)約4割の人は孤独死を身近に感じている

孤独死を身近に感じるかについてみると、「とても感じる」「まあ感じる」を合計した『感じる』とする人が44.5%、「あまり感じない」「まったく感じない」を合計した『感じない』とする人が52.1%となっている。

会話の頻度別にみると「感じる」とする人は、毎日会話する人は38.2%、1ヶ月に1~2回の会話がある人は63.4%と、約2倍の差がある(図1-3-9)。

図1-3-9 孤独死を身近に感じる割合

(4)終末期医療・葬儀・お墓について約4割の人が考えていない

終末期医療、葬儀、お墓について「考えていない」人(「全く考えていない」と「あまり考えていない」の合計)は、それぞれ41.8%、35.6%、36.6%となっており、終末期医療、葬儀、お墓それぞれについて約4割の人が考えていない(図1-3-10)。

図1-3-10 今度おこるかもしれないことへの備え

現時点では不安が必ずしも顕在化していない場合であっても、病気になったとき、生活上介助が必要になったときなど、将来起こることかもしれないことへの不安は大きい。不安の解消に向けては様々な取組が考えられるが、地域の関係者が連携して、当該地域の状況を踏まえ、工夫を凝らした取組例も見られる。

コラム:自治体と民間業者による高齢者の見守り体制の強化~見守りネットワークの充実~
  • 東京都練馬区は、東京都全体と比べた場合、高齢化率は概ね平均的な数値であるものの、年齢構成上50歳代の比率が高いことが特徴である。昭和60年代に流入した世代が高齢化していることがうかがわれ、今後、高齢化が急速に進展することが懸念されている。
  • 平成26年9月、練馬区は、郵便やガス等の17団体と高齢者見守りネットワーク協定を締結し、地域で事業を行うNPOやボランティア団体なども含めた民間事業者等の協力を得ることで見守りを充実・強化した。
  • 地域の助け合いに加え、見守り協定団体によるゆるやかな見守り体制を構築することにより、孤独死が発生しないように地域全体を網羅する重層的な見守りを実施、今後更なるネットワークづくりを目指している。
  • 具体的には、郵便局や毎月ガスの検針を行っている東京ガスグループでは、各戸を訪問した際に、郵便物が溜まっているなどの異変に気が付いた場合、異変の状況を総合的に勘案して、高齢者相談センターへ通報することとしている。
  • また、光が丘地区の自治会や団地の管理組合などで構成された「光が丘地区連絡協議会」は、見守りを希望する人が朝起床後、予め渡しているマグネット式ステッカー(「無事です。」と記載されたもの)をドアの外側に張り、見守る立場のボランティアがそのマグネットを確認後ポストに返却するという、見守りの仕組みを立ち上げている。
コラム:ニュータウンの高齢者宅へのホームステイ~近隣大学による試み~
  • 愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンは、日本三大ニュータウンの一つで1968年に入居を開始した。入居者全体がまとまって高齢化してしまうことは、ニュータウンの抱える課題のひとつである。
  • この課題解決に向けて、ニュータウンの近隣にキャンパスをもつ中部大学が、地域活性化・学生共育をうちたて、ホームステイなどの、ニュータウンの高齢者と中部大学の学生の交流事業を立ち上げた。
  • ホームステイを行ったのは、平成25年に3世帯、26年に3世帯。夫婦世帯以外にも、単身世帯へのホームステイも行った。3泊4日間の日程で、学生らは高齢者と一緒に老人クラブ活動等にも参加し、普段は行かない近所の美術館に足を運ぶ人もいた。
  • 「今後、地域の活性化や、世代間交流に大学生や高齢者が抵抗感をもたずに積極的に参加できるような社会を作っていくため、事業を長く続けられるように制度を整えていきたい。」と同大学の杉村特任教授は語る。
  • ホームステイが、大学で学んでいることを実践する場となるよう、授業のカリキュラムなどの見直しの計画もすすめ、事業説明会の案内をする世帯をこれまでの100世帯から2万世帯に増やすことによって、より多くの高齢者に関心を持ってもらえることを目指している。
  • また、介護の必要な人や認知症の人がいる世帯にホームステイしたり、期間を1週間に延ばしたりと、新たな取組への挑戦にも意欲を示している。
コラム:被災前のコミュニティの復活・維持を目指して~復興公営住宅サポーターの取り組み~
  • 釜石市は、東日本大震災で地域コミュニティにも甚大な被害を受け、今までの地縁的なつながりが途絶えがちになった。このため、それまでの地縁的な繋がりを維持しつつ、活気あるまちづくりを進めるためにも地域コミュニティの維持を積極的に働きかけることが必要になった。
  • 釜石市の平成27年2月の総人口は36,332人、うち65歳以上の高齢者は12,899人で、高齢化率は35.5%と、全国の高齢化率を上回っている。
  • 釜石市社会福祉協議会は、平成26年2月から復興公営住宅サポート事業をスタートさせ、仮設住宅で生活相談を行ってきた3名のサポーターを配置した。
  • 復興公営住宅サポーターは、3棟の復興公営住宅を対象に、年間1,100回程度の戸別の訪問、800件程度の面接を行い、住民それぞれの状況を踏まえた支援に努めている。また、地域との関わりを拡げられるよう、地域住民との交流を図るサロンを130回開催した。
  • 今後、被災から時間が経過するにつれて、復興支援全体の規模やそのあり方が見直されることが予想される。被災者への生活や困りごとの相談などで培った活動の実績を活かし、疲弊した地方の再建や社会づくりに向け、恒常的な事業への展開や新たな取り組みを視野にいれて活動していくこととしている。
コラム:「新しい東北」の創造に向けた取組
  • 東北地方は、震災前から人口減少や高齢化等、現在の地域が抱える課題が顕著であった。このため、復興を単なる原状復帰にとどめるのではなく、これを契機に地域の課題を克服し、我が国や世界のモデルとなる「新しい東北」を創造することが期待されており、先駆的な取組を加速するための先導モデル事業として次のような取組を実施している。
  • 岩手県大槌町では、地域コミュニティの互助・共助による生活支援等を目的とした「コミュニティ・サポート」のモデル事業が実施されている。高齢者が支援を受けるだけではなく、支える側として、学びや健康などにつながるコンテンツ(地域交流会の開催、地域資源マップの作成など)を提供している。さらに高齢者自身が活動する際の支援を受けられる地域の新しい場所として「コミュニティー・サポートセンター」の整備などを行っている。
  • 宮城県石巻市では、24時間対応の在宅医療・看護・介護等を目指した「次世代型地域包括ケア」の推進に向けた取組が行われている。市民を対象に、地域包括ケアシステムの構築に向け理解を深める研修や、住民向けのボランティア活動立ち上げ講座を開催するなど、仮設住宅から移転した後の地域コミュニティの育成を目指し、市民も巻き込みながら進められている。
  • 宮城県気仙沼市では、タブレット端末等を活用し、プリペイド決済方式で日用品等を購入できる無人販売所システムを設置。買い物や移動が不便な利用者にとって利便性の高いサービスを展開している。
  • 福島県いわき市では、これまで公的主体の運営が主であったオンデマンドバスを民間主導で運行する取組を始めている。自宅と加盟店舗の間を無料で送迎してもらうことができ、交通手段が限られる高齢者の外出を促進することや、車内での高齢者の交流が活発化することが期待される。
  • 岩手県、宮城県、福島県の一部の保育所では、仮設住宅に住む高齢者が保育所の給食を利用できる事業が実施されている。栄養士による適切な食事管理と、園職員や園児らによる見守りが、高齢者の生活不活発病(廃用症候群)などの防止につながることが期待される。
[目次]  [戻る]  [次へ]