第1章 高齢化の状況(第3節 2-3)

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第3節 <視点2>先端技術等で拓く高齢社会の健康(3)

3 インターネット・リテラシー

(1)インターネットの利用状況(総務省「通信利用動向調査」(平成28年))

インターネットの利用は高齢層にも着実に広がっている。総務省の通信利用動向調査(平成28年)によれば、60代では75.7%、70代では53.6%、80歳以上でも23.4%の人がインターネットを利用し、これらの年齢層ではいずれも平成22(2010)年と比べると平成28(2016)年は利用率が上昇している(図1-3-2-30)。このようにインターネットの利用が広がっている環境において、インターネットを正しく理解し、自分で情報選択を行うことができる力は、健康維持の観点からも役立つものと思われる。

(2)医療や健康情報のインターネットでの入手

今般の内閣府の調査では、健康に関するインターネット活用についても調査を行った。「医療や健康に関する情報をインターネットで調べることがあるか」との問いに対しては、回答者全体の3割強が「インターネットで調べることがある(計)」という結果であった。インターネットを使って得る情報の種類については、最多は「病気について(病名や症状、処置方法)」(22.6%)、次いで「病院などの医療機関」(14.0%)、「薬の効果や副作用」(13.6%)となった(表1-3-2-31)。

図1-3-2-31 医療や健康に関する情報をインターネットで調べることがあるか(複数回答)
(%)
医療や健康に関する情報をインターネットで調べることがある(計) 31.1
■病気について(病名や症状、処置方法) 22.6
■病院などの医療機関 14.0
■薬の効果や副作用 13.6
■自分でできる運動(体操ストレッチ等)やマッサージの方法 6.4
■栄養バランスのとれた食事 4.7
■健康食品や滋養強壮剤 4.1

主観的な健康状態別にみると、健康状態が「良い」「まあ良い」「普通」ではいずれも3割以上が「インターネットで調べることがある(計)」のに対し、「あまり良くない」は約2割、「良くない」では1割弱にとどまった(図1-3-2-32)。

次に都市規模別でみると、「インターネットで調べることがある(計)」は大都市と中都市では平均より高く、小都市と町村では平均より低い結果となった。「病気について(病名や症状、処置方法)」はどの都市規模も2割前後でそれほど大きな差は見られなかったが、「病院などの医療機関」の情報を調べるという回答は大都市(18.8%)と小都市(10.3%)、町村(10.5%)の間に8ポイントを超える差も見られ、病院の立地が比較的多いと思われる東京23区や政令指定都市のほうが、インターネットで医療機関の情報を調べるという人の率が高い結果となった(図1-3-2-33)。

図1-3-2-33 医療や健康に関する情報をインターネットで調べることがあるか(複数回答、都市規模別)
(%)
病気について(病名や症状、処置方法) 病院などの医療機関
大都市 23.5 18.8
中都市 23.6 14.5
小都市 22.0 10.3
町村 19.2 10.5

性・年齢別では、50代後半では男性の約6割、女性の約7割が「インターネットで調べることがある(計)」としているが、年齢が高いほど「調べる」者の率は低く、80歳以上では男性で8.6%、女性では2.1%にとどまった。「栄養バランスのとれた食事」に関する情報を得ているとの回答は、50代後半女性では約7人に1人(14.4%)が調べていた一方で、50代後半男性では30人に1人程度(3.4%)と低く、11.0ポイントの開きが見られたが、60代前半男性(6.5%)や60代後半男性(7.0%)では同じ年齢層の女性との差が0.2~0.3ポイント差と低い結果が見られた(図1-3-2-34)。

図1-3-2-34 医療や健康に関する情報をインターネットで調べることがあるか(複数回答、性・年齢別)
(%)
インターネットで調べることがある(計) 栄養バランスのとれた食事
全  体 31.1 4.7
〔性・年齢〕
男性 55~59歳 62.4 3.4
60~64歳 57.5 6.5
65~69歳 36.6 7.0
70~74歳 25.9 1.6
75~79歳 21.1 3.1
80歳以上 8.6 1.6
女性 55~59歳 71.2 14.4
60~64歳 50.8 6.7
65~69歳 32.9 7.3
70~74歳 16.6 4.1
75~79歳 7.5 1.1
80歳以上 2.1 0.5

(3)インターネットの情報を行動の根拠にしているか。

「インターネットで調べることがある(計)」の者にインターネットで得た情報をどの程度行動の根拠にしているかを尋ねたところ、「ほぼ信用して行動の根拠にしている」者は全体の14.1%にとどまった(図1-3-2-35)。

単身世帯に着目すると、男性単身世帯では半数近く(47.4%)が「いずれの情報も参考程度で行動の根拠にはしない」と回答しているのに対し、女性単身世帯では半数近く(48.0%)が「他の情報とあわせて判断し有用な情報であれば行動の根拠としている」で、女性単身世帯の方がインターネットから得た情報を積極的に行動の根拠として用いているという結果であった。また、男性を世帯別にみると「ほぼ信用して行動の根拠にしている」との回答は単身世帯で最も低かったのに対し、女性を世帯別にみると、「ほぼ信用して行動の根拠にしている」は単身世帯が最も高い結果となり、同じ一人住まいであっても、男性と女性では反対の傾向が見られた。

(4)健康情報の測定と管理

歩数や血圧、体重など自分の健康情報を管理・測定しているかを聞いたところ、「測定・管理している」は男女ともいずれも6割弱で大きな差は見られなかった(図1-3-2-36)。

図1-3-2-36 自身の健康情報を測定・管理しているか(択一回答)
(%)
スマートフォンを
使って測定・管理
している
パソコンやタブレット
を使って測定・管理
している
記録装置つき測定器(歩
数計、活動量計、脈拍計)
などを使って測定・管理
している
上記以外の方法で
測定・管理している
測定・管理している(計)
男性計 3.9 1.1 31.4 20.3 56.6
男性 55~59歳 7.7 2.6 23.9 11.1 45.3
60~64歳 4.6 1.3 28.1 16.3 50.3
65~69歳 3.8 0.5 31.5 22.1 57.7
70~74歳 2.6 1.1 36.0 22.2 61.9
75~79歳 5.5 0.8 41.4 16.4 64.1
80歳以上 0.8 25.0 31.3 57.0
女性計 3.9 0.5 31.0 22.4 57.9
女性 55~59歳 13.6 17.8 15.3 46.6
60~64歳 6.1 26.3 21.8 54.2
65~69歳 2.3 0.9 34.7 22.8 60.7
70~74歳 3.1 0.5 36.8 21.2 61.7
75~79歳 1.1 0.6 38.5 24.1 64.4
80歳以上 1.1 0.5 26.7 26.7 55.1

性・年齢別でみると、男女ともに「測定・管理している(計)」と回答した割合は50代後半がもっとも低かった。また、男女ともに80歳以上は、60代後半や70代の同性と比べて「測定・管理している」の割合が低かった。

また、管理している方法を尋ねると、50代後半ではスマートフォンという回答が他の年齢層よりは高かった。しかし全般的に、「スマートフォンを使って測定・管理している」、「パソコンやタブレットを使って測定・管理している」との回答の割合は低く、女性50代後半及び男性50代後半を除いて1割にも満たず、測定・管理を行っている者の多くは歩数計や活動量計などの「記録装置つき計測器(歩数計、活動量計、脈拍計)などを使って測定・管理している」結果が見られた。

(5)考察

高齢期のインターネット利用が進む中で、医療や健康に関する情報を積極的にインターネットに求める行動が調査対象者の3割程度にみられ、特に年齢が低いほど行っている結果が明らかになった。女性単身世帯を除いては、得られた情報をほぼ信用して行動の根拠にしているという者の割合は低く、他の情報と合わせて判断したり単に参考にしたりするだけという者が大勢を占めた。

インターネットの広がりによって医療や健康に関する情報を積極的に入手することができる環境は、健康に関する意識の向上や、外部との接触機会の拡大という観点から、高齢期の健康にも効果が期待できる。しかしながらインターネットでは様々な情報が発信されており、得られた情報が必ずしも正しいものであるとは限らない。根拠のない情報や害となる情報である可能性も認識し、正しい情報を取捨選択する目を持つことが求められる。

(6)科学技術で健康を拓くためのインターネット・リテラシー

インターネットを利用して高齢期をより健康に暮らすためには、パソコンやインターネットを「使う」能力のみならず「正しく使う」能力が必要になる。単に情報を得るだけではなく、例えばその情報を取捨選択する能力や、個人情報漏えいなどの脅威から身を守る能力などが求められる。高齢期に入ってから初めてこうした能力を習得することは、一般的には難しいものと思われがちである。

【ICTによる豊かなシニアライフを目指して】

こうした見方に対し、「シニアが情報技術を身につけ、その技術を活用して中高年等の情報に関する学習支援、生きがい作り、仲間作り」を推進している高齢者の活動団体がある。

平成29年度に内閣府特命担当大臣の「社会参加章」を受章した名古屋市の「NPO法人PCマスターズ」は、名古屋市高齢者就業支援センターのパソコンインストラクター講習の修了者で結成されたグループで、16年間にわたりシニア向けのパソコン教室や個人指導を実施している(図1-3-2-37)。構成員の平均年齢は71歳(平成29年現在)。これまでの受講者は個人指導が約6,000名、講座指導が約4,000名で、初心者向けの講座からパソコン検定準2級対策講座まで幅広く提供している。ネット犯罪や情報流出の被害を防ぐためのセキュリティの観点も盛り込まれている。

図1-3-2-37 NPO法人PCマスターズ活動風景

シニアがシニアに教えることで、高齢期には習得が難しいのではないか、安全に利用できるのだろうか、といった点に応えるとともに、高齢期ならではのインターネットの役立て方の共有にもつながることが期待される。

【シニアがシニアに教える動きの広がり】

こうした取り組みはPCマスターズに限らない。数は少ないながらも各地に好事例が見られ、平成28年度及び29年度には、高齢期のIT活用の推進例として以下の2団体が内閣府特命担当大臣の「社会参加章」を受章した。

平成28年度に内閣府特命担当大臣の「社会参加章」を受章した宮崎市の「特定非営利活動法人シニアネット佐土原」は、社会福祉協議会で実施されたシニア向けパソコン教室の修了生が結成したグループで、高齢者の「ICTによる豊かなシニアライフ」を活動目標に、シニアがシニアに教えるパソコン教室を14年間にわたり開講し、延べ5,000名の修了生を送り出した。講座内容は「初めてのパソコン」「ワード・エクセル」「インターネットを学ぶ」「スマホを学び、楽しもう」といった「使う」能力を一から養うものや、宮崎公立大学との共催によるインターネット安全講座のように「正しく使う」能力を養うものであった。構成員の平均年齢が70歳を超えたことを機に平成30年3月にNPO法人を解散。しかし構成員全員が残り、NPO法人という形はとらないがこれからも今まで培ってきたスキルを活用して地域のために役立つ活動を無理なく続けていきたいとの目標を持っている。

平成29年度に受章した東京都世田谷区のNPO法人シニアSOHO世田谷は、中高年の地域活動への参加促進を図り、情報化社会の恩恵をシニアライフにももたらすことなどを理念として活動している。シニアがシニアに教えるiPhone, iPad講座で高齢期のITリテラシー向上に一役買っている。「10回同じことを聞かれても笑顔で応えるサロン」をモットーに、構成員の8割は65歳以上だという(平成29年現在)。

内閣府では、高齢者に困難と思われる内容で取組の成果を上げ、積極的な社会参加活動を実施している団体等を、よりよい高齢社会づくりの好事例として選考・授章している。詳しくは以下のウェブサイト参照。

○「エイジレス・ライフ実践事例」及び「社会参加活動事例」の募集と紹介https://www8.cao.go.jp/kourei/kou-kei/age_list_all.htm

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