第2章 平成29年度高齢社会対策の実施の状況(第2節 4)

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第2節 平成29年度高齢社会対策の実施の状況(4)

4 生活環境

「生活環境」については、高齢社会対策大綱において、次の方針を示している。

高齢者の居住の安定確保に向け、高齢者向け住宅の供給を促進し、重層的かつ柔軟な住宅セーフティネットの構築を目指すとともに、住み慣れた地域の中で住み替えの見通しを得やすいような環境整備を進める。また、高齢者のニーズを踏まえ将来にわたり活用される良質な住宅の供給を促進し、併せて、戸建てや共同住宅の特性の違いにも留意しつつ、それらが適切に評価、循環利用される環境を整備することを通じ、生涯にわたって豊かで安定した住生活の確保を図るとともに、高齢者が保有する住宅の資産価値を高め、高齢期の経済的自立に資するとともに、その資産の次世代への適切な継承を図る。

地域における多世代間の理解や助け合いを行える地域コミュニティづくりを推進する。地域公共交通ネットワークを再構築するとともに、福祉・医療等の生活機能や人々の居住をまちなかや公共交通沿線に立地誘導し、徒歩や公共交通で移動しやすい環境を実現するため、コンパクト・プラス・ネットワークを推進する。また、快適な都市環境の形成のために水と緑の創出等を図るとともに、活力ある農山漁村の再生のため、高齢化の状況や社会的・経済的特性に配慮しつつ、生活環境の整備等を推進する。

高齢者を含む全ての世代の人が安全・安心に生活し、社会参加できるよう、住宅等から交通機関、まちなかまでハード・ソフト両面にわたり連続したバリアフリー環境の整備を推進する。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催も視野に取組を進める。

関係機関の効果的な連携の下に、地域住民の協力を得て、災害から高齢者を守るとともに、高齢者が交通事故や犯罪の当事者となることを防止し、高齢者が安全に生活できる環境の形成を図る。また、成年後見制度が一層利用されるように環境整備を図る。

(1)豊かで安定した住生活の確保

「住生活基本計画(全国計画)」(平成28年3月閣議決定)に掲げた目標(〔1〕結婚・出産を希望する若年世帯・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現、〔2〕高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現、〔3〕住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保、〔4〕住宅すごろくを超える新たな住宅循環システムの構築、〔5〕建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新、〔6〕急増する空き家の活用・除却の推進、〔7〕強い経済の実現に貢献する住生活産業の成長、〔8〕住宅地の魅力の維持・向上)を達成するため、必要な施策を着実に推進している(表2-2-13)。

表2-2-13 「住生活基本計画(全国計画)」(平成28年3月閣議決定)における高齢社会対策に関する目標、成果指標及び基本的な施策

目標2 高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現

(1) 高齢者が安全に安心して生涯を送ることが出来るための住宅の改善・供給

(2) 高齢者が望む地域で住宅を確保し、日常生活圏において、介護・医療サービスや生活支援サービスが利用できる居住環境を実現

【指標】

  • 高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合

    2.1%(平成26)→4%(平成37)

  • 高齢者生活支援施設を併設するサービス付き高齢者向け住宅の割合

    77%(平成26)→90%(平成37)

  • 都市再生機構団地(大都市圏のおおむね1,000戸以上の団地約200団地が対象)の地域の医療福祉拠点化

    0団地(平成27)→150団地程度(平成37)

  • 建替え等が行われる公的賃貸住宅団地(100戸以上)における、高齢者世帯、障害者世帯、子育て世帯の支援に資する施設の併設率

    平成28~平成37の期間内に建替え等が行われる団地のおおむね9割

  • 高齢者の居住する住宅の一定のバリアフリー化率※

    41%(平成25)→75%(平成37)※一定のバリアフリー化率:2箇所以上の手すり設置又は屋内の段差解消

【基本的な施策】

(1)住宅のバリアフリー化やヒートショック対策を推進するとともに、高齢者の身体機能や認知機能、介護・福祉サービス等の状況を考慮した部屋の配置や設備等高齢者 向けの住まいや多様な住宅関連サービスのあり方を示した「新たな高齢者向け住宅のガイドライン」を検討・創設

(2)まちづくりと調和し、高齢者の需要に応じたサービス付き高齢者向け住宅等の供給促進や「生涯活躍のまち」の形成

(3)公的賃貸住宅団地の建替え等の機会をとらえた高齢者世帯・子育て世帯等の支援に資する施設等の地域の拠点の形成

(4)公的保証による民間金融機関のバックアップなどによりリバースモーゲージの普及を図り、高齢者の住み替え等の住生活関連資金の確保

(5)高齢者の住宅資産の活用や住み替えに関する相談体制の充実

資料:国土交通省
ア 次世代へ継承可能な良質な住宅の供給促進
(ア)持家の計画的な取得・改善努力への援助等の推進

良質な持家の取得・改善を促進するため、勤労者財産形成住宅貯蓄の普及促進等を図るとともに、独立行政法人住宅金融支援機構の証券化支援事業及び勤労者財産形成持家融資を行っている。

また、住宅ローン減税等の税制上の措置を活用し、引き続き良質な住宅の取得を促進した。

(イ)高齢者の持家ニーズへの対応

住宅金融支援機構において、親族居住用住宅を証券化支援事業の対象とするとともに、親子が債務を継承して返済する親子リレー返済(承継償還制度)を実施している。

(ウ)将来にわたり活用される良質なストックの形成

「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(平成20年法律第87号)に基づき、住宅を長期にわたり良好な状態で使用するため、その構造や設備について、一定以上の耐久性、維持管理容易性等の性能を備え、適切な維持保全が確保される「認定長期優良住宅」の普及促進を図った。

イ 循環型の住宅市場の実現
(ア)既存住宅流通・リフォーム市場の環境整備

平成30年4月の「宅地建物取引業法の一部を改正する法律」(平成28年法律第56号)の施行に向け、登録講習機関が実施する既存住宅状況調査技術者講習による技術者の育成を通じ、建物状況調査(インスペクション)の実施体制の整備を進めるほか、全国における改正宅建業法に関する説明会の開催等を通じ、適正なインスペクションの普及促進を図った。

既存住宅売買に活用可能な瑕疵担保責任保険については、関連制度との連携や、新たな保険商品の開発等を通じ、利用件数が増加した。

さらに、住宅リフォーム事業の健全な発達及び消費者が安心してリフォームを行うことができる環境の整備を図るため、住宅リフォーム事業者の業務の適正な運営の確保及び消費者への情報提供等を行うなど、一定の要件を満たす住宅リフォーム事業者の団体を国が登録する「住宅リフォーム事業者団体登録制度」を実施している。

長期優良住宅化リフォーム推進事業により、既存住宅の長寿命化に資するリフォームの取組を支援した。

「住みたい」「買いたい」既存住宅を選択できるようにするため一定の既存住宅に対し、国の関与のもとで事業者団体が標章(「安心R住宅」)を付与する仕組みを創設し、平成29年12月に運用を開始した。

(イ)高齢者に適した住宅への住み替え支援

高齢者等の所有する戸建て住宅等を、広い住宅を必要とする子育て世帯等へ賃貸することを円滑化する制度により、高齢者に適した住宅への住み替えを促進した。

また、同制度を活用して住み替える先の住宅を取得する費用について、住宅金融支援機構の証券化支援事業における民間住宅ローンの買取要件の緩和を行っている。

さらに、高齢者が住み替える先のサービス付き高齢者向け住宅に係る入居一時金及び住み替える先の住宅の建設・購入資金について、住宅融資保険制度を活用し、民間金融機関のリバースモーゲージの推進を支援している。

ウ 高齢者の居住の安定確保
(ア)良質な高齢者向け住まいの供給

平成23年10月の「高齢者の居住の安定確保に関する法律等の一部を改正する法律」(平成23年法律第32号)の施行により創設された「サービス付き高齢者向け住宅」の供給促進のため、整備費に対する補助、税制の特例措置、住宅金融支援機構の融資による支援を行った。

さらに、高齢者世帯などの住宅確保要配慮者の増加に対応するため、民間賃貸住宅や空き家を活用した住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度等を内容とする新たな住宅セーフティネット制度を平成29年度に創設し、住宅の改修や入居者負担の軽減等への支援を行った。

また、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅について、利用者を保護する観点から、前払金の返還方法や権利金の受領禁止の規定の適切な運用を引き続き支援している。

(イ)高齢者の自立や介護に配慮した住宅の建設及び改造の促進

「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」(平成13年国土交通省告示第1301号)の普及など住宅のバリアフリー化施策を展開した(表2-2-14)。

表2-2-14 高齢者が居住する住宅の設計に係る指針の概要
○ 趣旨
  • 高齢者が居住する住宅において、加齢等に伴って心身の機能の低下が生じた場合にも、高齢者がそのまま住み続けることができるよう、一般的な住宅の設計上の配慮事項を示すとともに、現に心身の機能が低下し、又は障害が生じている居住者(要配慮居住者)が住み続けるために必要とされる、当該居住者の状況に応じた個別の住宅の設計上の配慮事項を示すもの。
○ 主な内容
  • 一般的な住宅の設計上の配慮事項
    • 1住宅の住戸専用部分に関する部屋の配置、段差、手すり、通路・出入口の幅員、階段、便所、浴室等
    • 2一戸建て住宅の屋外部分のアプローチ、階段等
    • 3一戸建て住宅以外の住宅の共用部分及び屋外部分の共用階段、共用廊下、エレベーター、アプローチ等
  • 要配慮居住者のために個別に配慮した住宅の設計の進め方
    • 1要配慮居住者及び住宅の特性の把握
    • 2住宅の設計方針の検討及び住宅の設計
    • 3設計の反映の確認
資料:国土交通省

住宅金融支援機構においては、高齢者自らが行う住宅のバリアフリー改修について高齢者向け返済特例制度を適用した融資を実施している。また、証券化支援事業の枠組みを活用したフラット35Sにより、バリアフリー性能等に優れた住宅に係る金利引下げを行っている。さらに、住宅融資保険制度を活用し、民間金融機関が提供する住宅の建設、購入改良等の資金に係るリバースモーゲージの推進を支援している。

バリアフリー構造等を有する「サービス付き高齢者向け住宅」の供給促進のため、整備費に対する補助、税制の特例措置、住宅金融支援機構の融資による支援を行った。

(ウ)公共賃貸住宅

公共賃貸住宅においては、バリアフリー化を推進するため、原則として、新たに供給するすべての公営住宅、改良住宅及び都市再生機構賃貸住宅について、段差の解消等一定の高齢化に対応した仕様により建設している。

この際、公営住宅、改良住宅の整備においては、中高層住宅におけるエレベーター設置等の高齢者向けの設計・設備によって増加する工事費について助成を行った。都市再生機構賃貸住宅においても、中高層住宅の供給においてはエレベーター設置を標準としている。

また、老朽化した公共賃貸住宅については、計画的な建替え・改善を推進した。

(エ)住宅と福祉の施策の連携強化

「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(平成13年法律第26号)に基づき、都道府県及び市町村において高齢者の居住の安定確保のための計画を定めることを推進した。また、生活支援・介護サービスが提供される高齢者向けの賃貸住宅の供給を促進し、医療・介護と連携した安心できる住まいの提供を実施した。

また、市町村の総合的な高齢者住宅施策の下、シルバーハウジング・プロジェクト事業を実施するとともに、公営住宅等においてライフサポートアドバイザー等のサービス提供の拠点となる高齢者生活相談所の整備を促進した(図2-2-15)。

図2-2-15 シルバーハウジング・プロジェクトの概念図
(オ)高齢者向けの先導的な住まいづくり等への支援

スマートウェルネス住宅等推進事業により、高齢者等の居住の安定確保・健康維持増進に係る先導的な住まいづくりの取組に対して補助を行った。

(カ)高齢者のニーズに対応した公共賃貸住宅の供給

公営住宅については、高齢者世帯向公営住宅の供給を行った。また、地域の実情を踏まえた地方公共団体の判断により、高齢者世帯の入居収入基準を一定額まで引き上げるとともに、入居者選考において優先的に取り扱うことを可能としている。

都市再生機構賃貸住宅においては、高齢者同居世帯等に対する入居又は住宅変更における優遇措置を行っている(表2-2-16)。

表2-2-16 公営住宅等の高齢者向け住宅供給戸数
年度 高齢者対策向
公営住宅建設戸数
サービス付き高齢者向け
住宅登録戸数
都市再生機構賃貸住宅の優遇措置戸数 住宅金融支援機構の
割増貸付け戸数
賃貸 分譲
平成10年度 2,057 3,143 571 3,714 34,832
11 2,333 4,349
(946)
531 4,880 11,831
12 1,476 8,265
(2,317)
212 8,477 4,951
13 1,216 10,344
(4,963)
123 10,467 2,822
14 1,203 8,959
(4,117)
149 9,108 1,115
15 627 7,574
(3,524)
45 7,619 558
16 724 5,510
(3,353)
0 5,510 244
17 1,333 2,944
(1,662)
0 2,944 60
18 859 2,957
(1,294)
0 2,957 18
19 507 1,529
(843)
0 1,529 0
20 303 1,221
(684)
0 1,221 0
21 537 1,286
(612)
0 1,286 0
22 726 773
(386)
0 773 0
23 238 453
(309)
0 453 0
24 433 31,094 522
(309)
0 522 0
25 430 109,239 471
(368)
0 471 0
26 260 146,544 372
(305)
0 372 0
27 328 199,056 486
(303)
0 486 0
28 319 215,955 329
(293)
0 329 0
資料:国土交通省
(注1)サービス付き高齢者向け住宅登録戸数は、各年度末時点における総登録戸数である。
(注2)都市再生機構賃貸住宅の優遇措置戸数には、障害者及び障害者を含む世帯に対する優遇措置戸数を含む(空家募集分を含む)。
(注3)優遇措置の内容としては、当選率を一般の20倍としている。(平成20年8月までは10倍)
(注4)( )内は高齢者向け優良賃貸住宅戸数であり内数である。
(注5)住宅金融支援機構の割増(平成10年に制度改正)貸付け戸数は、マイホーム新築における高齢者同居世帯に対する割増貸付け戸数である。この制度は平成17年度をもって廃止されたが、平成17年度中に申込みを受け付けた貸付け戸数を平成18年度以降に表示した。
(キ)高齢者の民間賃貸住宅への入居の円滑化

高齢者等の民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するため、地方公共団体や関係事業者、居住支援団体等が組織する居住支援協議会や平成29年度に改正された「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の推進に関する法律」(平成19年法律第112号)に基づいた居住支援法人が行う相談・情報提供等に対する支援を行った。

(2)高齢社会に適したまちづくりの総合的推進

バリアフリー施策を効果的かつ総合的に推進するため、平成12年3月、閣議口頭了解により「バリアフリーに関する関係閣僚会議」が設置され、平成16年6月、同会議は政府が一体となってバリアフリー化に取り組むための指針として「バリアフリー化推進要綱」を決定した。その後、障害の有無、年齢、性別等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方であるユニバーサルデザインの浸透を踏まえ、平成20年3月、「バリアフリーに関する関係閣僚会議」において、同要綱を改定し、バリアフリーとともにユニバーサルデザインを併せて推進することを明確化し、取組方針として生活者・利用者の視点に立った施策の展開を明記した「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」を決定した。また、閣議口頭了解の一部改正によって同会議を改組し、「バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する関係閣僚会議」を設置した。

ア 共生社会の実現に向けた「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づく取組の推進

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、共生社会の実現に向けたユニバーサルデザインの街づくり、心のバリアフリーを推進し、大会以降のレガシーとして残していく施策を実行するため、平成29年2月、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣を議長とする「ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議」にて、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を決定し、本行動計画に基づき共生社会に向けた各施策に取り組んだ。

また、本行動計画に基づく、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号。以下、「バリアフリー法」という。)及び関連施策のあり方に関する検討結果を踏まえ、交通事業者によるハード対策・ソフト対策一体となった取組の推進、バリアフリーのまちづくりに向けた地域における取組強化、バリアフリー法の適用対象の拡大、利用者へのバリアフリー情報の提供の推進等の措置等を講ずることを内容としたバリアフリー法の改正法案を閣議決定し、第196回国会に提出した。

イ 多世代に配慮したまちづくり・地域づくりの総合的推進

高齢者等すべての人が安全・安心に生活し、社会参加できるよう、高齢者に配慮したまちづくりを総合的に推進するため、市町村にバリアフリー法に基づく基本構想の作成を働きかけるとともに、バリアフリー環境整備促進事業を実施した。

環境価値、社会的価値、経済的価値を新たに創造し、「誰もが暮らしたいまち」・「誰もが活力あるまち」を実現することを目標とする「環境未来都市」構想の推進に向け、平成29年10月に「地方創生に向けたSDGsの取組」をテーマに、千葉県柏市において、第7回国際フォーラムを開催し、「環境未来都市」構想に基づく各都市の取組状況等を国内外に広く周知した。

高齢化の進行や人口減少等を含めた社会構造変化や環境等に配慮した持続可能なまちづくりを進めることが不可欠であり、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取組は、地方創生の実現にも資するものである。このため、「まち・ひと・しごと創生総合戦略2017改訂版」(平成29年12月22日閣議決定)において、地方創生の一層の推進に当たって、持続可能な開発目標(SDGs)の主流化を図る旨等を盛り込むとともに、新たに「地方創生に向けた自治体SDGs推進事業」を盛り込んだ。本事業は、地方公共団体のSDGsの達成に向けて、「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」を選定し、その成功事例を普及展開するものあり、平成30年2月から3月にかけては、「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」を公募した。

商店街振興組合などが行う商店街活性化の取組のうち、商店街の空き店舗を活用して、高齢者交流拠点としての機能を担うコミュニティ施設を設置・運営する事業などへの支援を実施した。

誰もが身近に自然とふれあえる快適な環境の形成を図るため、歩いていける範囲の身近な公園を始めとした都市公園等の計画的な整備を行っている。

また、河川等では、高齢者にとって憩いと交流の場を提供する役割を果たしている。

さらに、地方創生の観点から、「生涯活躍のまち」の取組を推進し、中高年齢者等が希望に応じて地方やまちなかに移り住み、様々な世代と交流しながら、健康でアクティブな生活を送り、必要な医療・介護を受けられるような地域づくりを目指している。平成29年10月現在で245の地方公共団体が「生涯活躍のまち」に取り組む意向を示しており、79団体が既に取組を進めていた。平成29年度には、関係府省が連携して地方公共団体の取組を支援する「生涯活躍のまち形成支援チーム」の対象団体を7団体から16団体へ拡大し、取組の過程で浮上した課題の解決に向け、検討、助言等を行った。加えて、平成28年度にとりまとめた「『生涯活躍のまち』構想の具体化に向けたマニュアル」等を活用し、「生涯活躍のまち」の参考となる事例やノウハウ等の周知に努めた。

また、地域再生法に基づく特例措置に係る「生涯活躍のまち」の地域再生計画の認定は、累計で17市町、17計画、「生涯活躍のまち」分野の取組に関する地方創生推進交付金等の交付決定は、累計で96団体、120事業となるなど、各地で特色のある「生涯活躍のまち」の形成が進んでいる。

ウ 公共交通機関等の移動空間のバリアフリー化
(ア)バリアフリー法に基づく公共交通機関のバリアフリー化の推進

公共交通機関のバリアフリー化については、バリアフリー法に基づき、公共交通事業者等に対して、鉄道駅等の旅客施設の新設若しくは大規模な改良又は車両等の新規導入に際しての公共交通移動等円滑化基準への適合義務、既設の旅客施設・車両等に対する適合努力義務を定めるとともに、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において、平成32年度末までの整備目標を定めている。なお、公共交通移動等円滑化基準については、公共交通分野のバリアフリー水準の底上げを図るため、平成28年10月から開催している検討委員会の下、同年度末までに改正の内容の方向性を整理し、平成29年度はその検討結果を踏まえ、必要な追加的検討を行うとともに、具体の改正作業を行った。交通政策基本法(平成25年法律第92号)に基づく交通政策基本計画(平成27年2月閣議決定)においても、バリアフリーをより一層身近なものにすることを目標の1つとして掲げており、これらを踏まえながらバリアフリー化の更なる推進を図っている。

(イ)ガイドライン等の策定

公共交通機関の旅客施設、車両等について、ガイドライン等でバリアフリー化整備の望ましい在り方を示し、公共交通事業者等がこれを目安として整備することにより、利用者にとってより望ましい公共交通機関のバリアフリー化が進むことが期待される。そのため、旅客施設については、平成25年6月に必要な見直しを行った「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」、車両等については、平成25年6月に必要な見直しを行った「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」に基づきそれぞれバリアフリー化を進めている。なお、当該2つのガイドラインについては、公共交通移動等円滑化基準と同様に、平成28年度末までに整理された改正の内容の方向性を踏まえ、平成29年度において追加的検討を行うとともに、具体の改正作業を行った。また、旅客船については平成19年8月に必要な見直しを行った「旅客船バリアフリーガイドライン」、ユニバーサルデザインタクシーについては、平成24年3月に創設した標準仕様ユニバーサルデザインタクシーの認定制度、ノンステップバスについては、平成27年7月に必要な見直しを行った標準仕様ノンステップバスの認定制度によって更なるバリアフリー化の推進を図っている。

(ウ)公共交通機関のバリアフリー化に対する支援

高齢者の移動等円滑化を図るため、駅・空港等の公共交通ターミナルのエレベーターの設置等の高齢者の利用に配慮した施設の整備、ノンステップバス等の車両の導入などを推進している(表2-2-17)。

表2-2-17 高齢者等のための公共交通機関施設整備等の状況

(1)旅客施設のバリアフリー化の状況(注)

  1日当たりの平均利用者数
3,000人以上の旅客施設数
平成28年度末 1日当たりの平均利用者数
3,000人以上かつトイレを
設置している旅客施設数
平成28年度末
段差の解消 視覚障害者
誘導用ブロック
障害者用トイレ
鉄軌道駅 3,559 3,098(87.0%) 3,343(93.9%) 3,328 2,801(84.2%)
バスターミナル 46 42(91.3%) 41(89.1%) 39 28(71.8%)
旅客船ターミナル 15 15(100%) 10(66.7%) 13 11(84.6%)
航空旅客ターミナル 35 31(88.6%) 35(100%) 35 34(97.1%)
(注)バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)に基づく公共交通移動等円滑化基準に適合するものの数字。

(2)車両等のバリアフリー化の状況

  車両等の総数 平成27年度末移動等円滑化
基準に適合している車両等
鉄軌道車両 52,212 35,343(67.7%)
ノンステップバス
(適用除外認定車両を除く)
45,467 24,241(53.3%)
リフト付きバス
(適用除外認定車両)
14,962 901(6.0%)
旅客船 663 267(40.3%)
航空機 612 594(97.1%)
(注)「移動等円滑化基準に適合している車両等」は、各車両等に関する公共交通移動等円滑化基準への適合をもって算定。

(3)福祉タクシーの導入状況(ユニバーサルデザインタクシーを含む)

平成28年度末15,128両
(タクシー車両総数226,010両(平成27年度末))
資料:国土交通省

このための推進方策として、鉄道駅等旅客ターミナルのバリアフリー化、ノンステップバス、ユニバーサルデザインタクシーを含む福祉タクシーの導入等に対する支援措置を実施している。

(エ)歩行空間の形成

移動は就労、余暇等のあらゆる生活活動を支える要素であり、その障壁を取り除き、全ての人が安全に安心して暮らせるよう、信号機、歩道等の交通安全施設等の整備を推進した。

高齢歩行者等の安全な通行を確保するため、1幅の広い歩道等の整備、2歩道の段差・傾斜・勾配の改善、3道路の無電柱化、4立体横断施設へのエレベーターや傾斜路の設置、5歩行者用案内標識の設置、6歩行者等を優先する道路構造の整備、7自転車道等の設置による歩行者と自転車交通の分離、8生活道路における速度の抑制及び通過交通の抑制・排除並びに幹線道路における交通流の円滑化を図るための信号機、道路標識、道路構造等の重点的整備、9バリアフリー対応型信号機の整備、10歩車分離式信号の運用、11見やすく分かりやすい道路標識・道路標示の整備、12信号灯器のLED化等の対策を実施した。

また、「無電柱化の推進に関する法律」(平成28年法律第112号)に基づき、無電柱化の推進に関する施策の総合的、計画的、かつ迅速な推進を図るための無電柱化推進計画の策定を進めた。

生活道路において、区域を設定して最高速度30km/hの区域規制を実施するとともにその他の安全対策を必要に応じて組み合わせた「ゾーン30」の整備や、路側帯の設置・拡幅、ハンプ設置等の道路整備等、ソフトとハードが連携した歩行者・自転車利用者の交通安全対策を推進した。

さらに、積雪や凍結に対し、鉄道駅周辺や中心市街地等の特に安全で快適な歩行空間の確保が必要なところにおいて、歩道除雪の充実、消融雪施設等のバリアフリーに資する施設整備を実施した。

(オ)道路交通環境の整備

高齢者等が安心して自動車を運転し外出できるよう、生活道路における交通規制の見直し、付加車線の整備、道路照明の増設、道路標識・道路標示の高輝度化、信号灯器のLED化、「道の駅」等の簡易パーキングエリア、高齢運転者等専用駐車区間の整備等の対策を実施した。

(カ)バリアフリーのためのソフト面の取組

国民一人ひとりがバリアフリーについての理解を深めるとともに、高齢者、障害者等の困難を自らの問題として認識し、自然に快くサポートできるよう、高齢者、障害者等の介助体験・擬似体験等を内容とする「バリアフリー教室」の開催や目の不自由な方への声かけや列車内での利用者のマナー向上を図る「ひと声マナー」キャンペーンといった啓発活動等ソフト面での取組を推進している。

高齢者や障害者等も含め、誰もが屋内外をストレス無く自由に活動できるユニバーサル社会の構築に向け、ICTを活用した歩行者移動支援施策を推進している。「ICTを活用した歩行者移動支援の普及促進検討委員会」(委員長:坂村健東洋大学情報連携学部INIAD学部長)においてとりまとめられた提言を踏まえ、施設や経路のバリアフリー情報等の移動に必要なデータを継続的に収集する方法、効率的に整備・更新する手法の検討を実施するとともに、歩行空間の段差や幅などに関する情報を入力してデータ化するツールの提供を行った。また、新横浜駅から横浜国際総合競技場(日産スタジアム)までを対象として、勾配や段差の情報を含んだ屋内外シームレスな電子地図等を整備し、段差のない経路を案内するナビゲーションサービスの実証実験を実施するとともに、東京駅周辺において音声案内による実証実験を実施した。

(キ)訪日外国人旅行者の受入環境整備

訪日外国人旅行者の移動円滑化を図るため、エレベーター・スロープ等の設置等を、補助制度により支援した。

エ 建築物・公共施設等のバリアフリー化

バリアフリー法に基づき、建築物のバリアフリー化を引き続き推進するとともに、同法に基づく認定を受けた優良な建築物(認定特定建築物)のうち一定のものの整備に対して支援措置を講じることにより、高齢者・障害者等が円滑に移動等できる建築物の整備を促進している(図2-2-18、図2-2-19)。

図2-2-18 バリアフリー化された建築物のイメージ

窓口業務を行う官署が入居する官庁施設について、バリアフリー法に基づく建築物移動等円滑化誘導基準に規定された整備水準の確保などにより、高齢者等をはじめすべての人が、安全に、安心して、円滑かつ快適に利用できる施設を目指した整備を推進している。

社会資本整備総合交付金等の活用によって、誰もが安全で安心して利用できる都市公園の整備を推進している。また、都市公園については、バリアフリー法に基づく基準等により、主要な園路の段差の解消、車いすでも利用可能な駐車場やトイレの設置など、公園施設のバリアフリー化を推進している。

オ 活力ある農山漁村の再生

高齢者や女性等の交流、地域の伝統文化の継承、地域の農産物や特産品の生産活動に寄与するための拠点施設等を整備した。

農山村地域においては、集落が市町村、NPO法人等多様な主体と連携を行い、農山漁村の持つ豊かな自然と「食」を、福祉、教育、観光等に活用した都市と農山漁村との共生・対流等を推進する取組を支援した。

また、社会福祉法人等が高齢者のデイサービスの一環として利用する農園の整備や、高齢者を対象とした生きがい農園の整備等を実施した。

さらに、人・農地プランの見直しや、集落営農の組織化・法人化、新規就農者の定着のための経営・技術指導等を効率的・効果的に進められるよう、普及指導員やJAのOB、リタイアした高齢農業者等のノウハウを活用する地域連携推進員の活動を支援した。

農山漁村の健全な発展と活性化を図るため、農山漁村地域の農林水産業生産基盤と生活環境の一体的・総合的な整備を推進し、都市にも開かれた美しくゆとりある農山漁村空間の創出を図った。

また、高齢者等による農作業中の事故が多い実態を踏まえ、効果的に高齢農業者の安全意識を向上させるため、専門性を有した農作業安全アドバイザーによる啓発活動の取組を支援するとともに、農作業安全の全国運動を実施した。

加えて、「漁港漁場整備法」(昭和25年法律第137号)に基づき策定された「漁港漁場整備長期計画」(平成29年3月閣議決定)を踏まえ、防風・防暑・防雪施設や浮き桟橋等の就労環境の改善に資する施設整備を実施した。

(3)交通安全の確保と犯罪、災害等からの保護

ア 交通安全の確保

近年、交通事故における致死率の高い高齢者の人口の増加が、交通事故死者数を減りにくくさせる要因の一つとなっており、今後、高齢化が更に進むことを踏まえると、高齢者の交通安全対策は重点的に取り組むべき課題である。

高齢者にとって安全で安心な交通社会の形成を図るため、平成28年3月に中央交通安全対策会議で決定した「第10次交通安全基本計画」(計画期間:平成28~32年度)等に基づき、1生活道路等における人優先の安全・安心な歩行空間の整備、2参加・体験・実践型の交通安全教育、3交通安全教育を受ける機会の少ない高齢者を対象とした個別指導、4シルバーリーダー(高齢者交通安全指導員)を対象とした交通安全教育、5高齢運転者対策等の交通安全対策を実施した。

また、歩行中及び自転車乗用中の交通事故死者に占める高齢者の割合が高いことを踏まえ、歩行者及び自転車利用者の交通事故が多発する交差点等における事故防止の重点化や、自転車道や自転車専用通行帯、自転車の通行位置を示した路面表示等の自転車通行空間の整備等により、自転車利用環境の総合的な整備を推進した。

さらに、踏切道の歩行者対策として「踏切安全通行カルテ」により、踏切道の現状を「見える化」しつつ、踏切道改良促進法(昭和36年法律第195号)に基づき、高齢者等の通行の安全対策を推進した。

このほか、高齢運転者対策については、平成28年中に高齢運転者による交通事故が相次いで発生したことを受け、平成28年11月15日に「高齢運転者による交通事故防止対策に関する関係閣僚会議」が開催された。これを受け、高齢運転者の交通事故防止について、関係行政機関における更なる対策の検討を促進し、その成果等に基づき早急に対策を講じるため、同年11月24日、交通対策本部(本部長:内閣府特命担当大臣)の下に関係省庁局長級を構成員とする「高齢運転者交通事故防止対策ワーキングチーム」を設置した。同ワーキングチームでは、内閣総理大臣からの指示を踏まえ、各種対策についてそれぞれ担当する省庁を中心に検討し、取り得る対策を早急に講じていくこととし、平成29年6月30日にそれまでの成果を取りまとめた。これを受け、同年7月には交通対策本部において、同ワーキングチームが取りまとめた施策を緊急かつ強力に推進することを決定した。引き続き、取りまとめた施策を推進するとともに、同ワーキングチームにおいて更なる対策について検討を行う。

この点、高齢運転者対策の推進を図るための「道路交通法の一部を改正する法律」(平成27年法律第40号)が平成29年3月12日に施行された。改正された道路交通法の円滑な運用に向けて、関連事務の実施体制・予算の確保、医師会等関係機関・団体との一層の連携、新制度の周知・広報等を推進した。

平成28年3月に策定した「高速道路での今後の逆走対策に関するロードマップ」に基づき、「2020年までに高速道路での逆走事故ゼロを目指す」目標を達成するため、インターチェンジやジャンクション部等でラバーポールや大型矢印路面標示の設置といった物理的・視覚的な抑止対策等を進めた。さらに対策のより一層の推進をはかるため、高速道路会社が民間企業から公募・選定した新たな逆走対策技術について検証を実施したほか、路車連携による逆走検知・制御技術に関する検討を開始した。

イ 犯罪、人権侵害、悪質商法等からの保護
(ア)犯罪からの保護

高齢者が犯罪や事故に遭わないよう、交番、駐在所の警察官を中心に、巡回連絡等を通じて高齢者宅を訪問し、困りごとや要望、意見等を把握するとともに、必要に応じて関係機関や親族への連絡を行ったほか、認知症等によってはいかいする高齢者を発見、保護する体制づくりを関係機関等と協力して推進した。

振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺については、特に高齢者の被害が多いオレオレ詐欺、還付金等詐欺、未公開株・社債等の取引を装う詐欺等に重点指向した取締活動を強化するとともに、高齢者への複線的な広報啓発活動、関係機関等と連携した官民一体となった予防活動を推進した。

また、高齢者をねらう悪質商法等の取締りを推進するとともに、口座凍結等の被害拡大防止対策、悪質商法等からの被害防止に関する広報啓発活動及び悪質商法等に関する相談窓口の周知を行った。

さらに、特殊詐欺や利殖勧誘事犯の犯行グループは、被害者や被害者になり得る者等が登載された名簿を利用しており、当該名簿登載者の多くは高齢者であって、今後更なる被害に遭う可能性が高いと考えられるため、捜査の過程で警察が押収したこれらの名簿をデータ化し、都道府県警察が委託したオペレーターがこれを基に電話による注意喚起を行うなどの被害防止対策を実施した。

加えて、今後、認知症高齢者や一人暮らし高齢者が増加していく状況を踏まえ、市民を含めた後見人等の確保や市民後見人の活動を安定的に実施するための組織体制の構築・強化を図る必要があることから、平成28年度に引き続き、市町村において地域住民で成年後見に携わろうとする者に対する養成研修や後見人の適正な活動が行われるよう支援した。

(イ)人権侵害からの保護

「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成17年法律第124号)に基づき、養介護施設従事者等による虐待及び養護者による虐待の状況について、平成28年度に引き続き必要な調査等を実施し、各都道府県・市町村における虐待の実態・対応状況の把握に努めるとともに、市町村等に高齢者虐待に関する通報や届出があった場合には、関係機関と連携して速やかに高齢者の安全確認や虐待防止、保護を行うなど、高齢者虐待への早期対応が推進されるよう必要な支援を行った。

なお、支援を必要とする高齢者の実態把握や虐待への対応など、高齢者の権利擁護や総合相談窓口の業務を円滑に行うことができるよう、各市町村に設置された「地域包括支援センター」の職員に対する研修については、引き続き実施した。

法務局・地方法務局等において、高齢者の人権問題に関する相談に応じるとともに、家庭や高齢者施設等における虐待等、高齢者を被害者とする人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を行い、その結果を踏まえ、事案に応じた適切な措置を講じるなどして、被害の救済及び人権尊重思想の普及高揚に努めている。平成29年度においても、引き続き高齢者施設等の社会福祉施設において入所者等及び家族が気軽に相談できるよう、特設相談所を開設するほか、全国一斉の「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間を設け、電話相談の受付時間を延長するとともに、休日も相談に応じるなど、相談体制の強化を図った。

(ウ)悪質商法からの保護

高齢者被害の掘り起こしと注意喚起を目的に「アクティブシニアのトラブル増加!60歳以上の消費者トラブル110番」を9月に実施した。

平成28年4月から施行された消費者安全法の改正を一部内容とする「不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律」(平成26年法律第71号。以下同法による改正後の消費者安全法を「改正消費者安全法」という。)では、地域社会における高齢者等の見守りネットワークの構築のため、地方公共団体において消費者安全確保地域協議会を設置できることが盛り込まれており、地方公共団体向けの説明会等を行った。また、消費者安全確保地域協議会を設置した地方公共団体の先進的事例を収集し、公表に向けて準備を行う等、各地域における見守りネットワークの設置促進に向け取り組んだ。消費者安全確保地域協議会における個人情報の取扱いの促進について通達を発出し、効率的な見守りの推進に取り組んだ。

消費者がトラブルに見舞われたとしても、相談窓口の存在に気付かなかったり、相談窓口があることは知っていたとしても、その連絡先が分からないことがあるため、消費者庁では、全国どこからでも身近な消費生活相談窓口につながる共通の電話番号である「消費者ホットライン」の事業を平成22年1月から実施している。平成27年7月1日からは、高齢者にとってもより覚えやすいものとなるよう3桁の電話番号「188」番での運用を開始した。

さらに、消費者トラブルに遭うリスクの高い高齢者等の被害防止のため、地方消費者行政推進交付金等を通じて、消費生活相談体制の整備や地域の見守りネットワークの推進等に向けた地方公共団体の取組を支援している。

また、消費者側の視点から注意点を簡潔にまとめたメールマガジン「見守り新鮮情報」を月2回程度、行政機関のほか、高齢者や高齢者を支援する民生委員や福祉関係者等に向けて配信した。政府広報オンラインの「暮らしに役立つ情報」にはイラストとテキストを主としたコンテンツ「1選ぶ前に知っておきたい 「格安スマホ」の基本、2安易なクリックが落とし穴に?悪質アダルトサイトのトラブルにご注意を!」を掲載した。また、政府インターネットテレビへの掲載動画コンテンツとして「1トラブル急増!「お試し」のつもりが定期購入!?、260代も要注意!アクティブシニアに増える消費者トラブル」を制作し、消費者への周知活動を行った。

「平成29年版消費者白書」において、高齢者の消費生活相談の状況や、高齢者が巻き込まれる主なトラブルの例を取り上げ、広く国民や関係団体等に情報提供を行った。

業務停止を命ぜられた法人の役員等に対する業務禁止命令や、電話勧誘販売における過量販売への解除権といった、高齢者被害の防止のための新たな措置が盛り込まれた「特定商取引に関する法律の一部を改正する法律」(平成28年法律第60号)が、平成29年12月に施行された。

一人暮らしの高齢者の判断能力の低下等につけ込んで、大量の商品を購入させる被害事案が、店舗契約の事例も含めて発生していたことから、過量な内容の消費者契約について消費者に取消権を認める規定を新設した「消費者契約法の一部を改正する法律」(平成28年法律第61号)が、平成29年6月3日に施行された。「知っていますか?消費者契約法-民法・商法の特例となる規定について-」というリーフレットの作成・配布を通じて、消費者への周知活動を行った。

このような被害事案の発生・拡大の防止及び被害の回復を図る観点からは、消費者団体訴訟制度の活用が重要であり、平成28年10月から施行された「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」(平成25年法律第96号)により、特定適格消費者団体が消費者に代わって損害賠償等の請求に関する訴訟を追行できる制度が導入されたため、同団体が実効的に被害を回復できるよう、平成29年10月に施行された「独立行政法人国民生活センター法等の一部を改正する法律」(平成29年法律第43号)において、独立行政法人国民生活センターが特定適格消費者団体に代わって仮差押えの担保を立てることができる措置を盛り込み、消費者団体訴訟制度の機能強化を図った。

(エ)司法ソーシャルワークの実施

日本司法支援センター(法テラス)では、法的問題を抱えていることに気付いていなかったり、意思の疎通が困難であるなどの理由で自ら法的援助を求めることが難しい高齢者・障がい者に対して、地方公共団体、福祉機関・団体や弁護士会、司法書士会等と連携を図りつつ、当該高齢者・障がい者に積極的に働きかける(アウトリーチ)などして、法的問題を含めた諸問題を総合的に解決することを目指す「司法ソーシャルワーク」を推進している。

そこで、弁護士会・司法書士会と協議をして出張法律相談等のアウトリーチ活動を担う弁護士・司法書士を確保するなど、「司法ソーシャルワーク」の実施に必要な体制の整備を進めるとともに、地域包括支援センターや福祉事務所等の福祉機関職員を対象に業務説明会や意見交換会を実施するなどして、福祉機関との連携強化を図った。

なお、法テラスの設置根拠法である総合法律支援法の改正を受け、平成30年1月24日から、認知機能が十分でなく、法的サービスを自発的に求めることが期待できない方に対して、資力にかかわらず出張法律相談を実施する事業(特定援助対象者法律援助事業)を開始した。

ウ 防災施策の推進

病院、老人ホーム等の要配慮者利用施設を保全するため、土砂災害防止施設の整備を第4次社会資本整備重点計画に基づき重点的に実施するとともに、激甚な水害・土砂災害を受けた場合の再度災害防止対策を引き続き実施した。

災害時における高齢者等要配慮者の円滑かつ迅速な避難を確保するため、「平成28年台風第10号災害を踏まえた課題と対策の在り方(報告)」を踏まえ、関係行政機関・団体が連携して平成29年8月に「要配慮者利用施設における避難に関する計画作成の事例集」を作成し、全国にその知見を展開した。「水防法」(昭和24年法律第193号)及び「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(平成12年法律第57号。以下「土砂災害防止法」という。)が一部改正され、浸水想定区域内又は土砂災害警戒区域内に位置し、市町村地域防災計画に名称及び所在地を定められた高齢者等が利用する要配慮者利用施設の所有者又は管理者に対し避難確保計画の作成及び計画に基づく訓練の実施が義務づけられた。これら改正法の施行にあわせて、水害及び土砂災害に関する要配慮者利用施設における避難確保計画作成の手引き、避難計画点検マニュアル等を作成するとともに、同年8月「土砂災害防止対策基本指針」を変更し、要配慮者利用施設における避難確保計画の作成、計画に基づく訓練の実施が推進されるよう支援を行った。

また、土砂災害・全国防災訓練では、住民等が主体となりハザードマップを活用した実践的な避難訓練等を重点的に実施した。

さらに、土砂災害特別警戒区域における要配慮者利用施設の建築の許可制等を通じて高齢者等の安全が確保されるよう、土砂災害防止法に基づき基礎調査や区域指定の促進を図った。

住宅火災で亡くなる高齢者等の低減を図るため、春・秋の全国火災予防運動において、高齢者等の要配慮者の把握や安全対策等に重点を置いた死者発生防止対策を推進項目とするとともに、住宅用火災警報器や防炎品、住宅用消火器の普及促進など総合的な住宅防火対策を推進した。また、「敬老の日に『火の用心』の贈り物」をキャッチフレーズとする「住宅防火・防災キャンペーン」を実施し、高齢者等に対して住宅用火災警報器等の普及促進を図った。

災害情報を迅速かつ確実に伝達するため、全国瞬時警報システム(J-ALERT)との連携を含め、防災行政無線による放送(音声)や携帯メール等による文字情報等の種々の方法を組み合わせて、災害情報伝達手段の多様化を推進した。

山地災害からの生命の安全を確保するため、要配慮者利用施設に隣接している山地災害危険地区等について、治山施設の設置や荒廃した森林の整備等を計画的に実施した。

平成25年6月に「災害対策基本法」(昭和36年法律第223号)を改正し、高齢者や障害者などの要配慮者のうち災害発生時の避難に特に支援を要する者について「避難行動要支援者名簿」の作成を市町村長に義務づけるとともに、この名簿を消防機関や民生委員等の地域の支援者に情報共有するための制度を設けた。

これを受けて同年8月に「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」を策定・公表した。平成29年度においては、各市町村における名簿の作成状況等を把握するための調査を行った。

同法改正においては、避難所における生活環境の整備等に関する努力義務規定も設けられ、この取組を進める上で参考となるよう、平成25年8月には、避難所運営に当たって留意すべき事項などを盛り込んだ、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を公表した。

平成28年度においては、避難所の確保と質の向上を促進するため、前年度に行った有識者による検討会での検討を踏まえ、高齢者などの避難所で特に配慮が必要となる方々への対応も記載するため、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を改定するとともに、「避難所運営ガイドライン」、「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」、「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」を公表して、平時から市町村が取り組むべき事項について、より具体的に示した。

しかしながら、平成28年4月14日に発生した熊本地震においては、必ずしも適切な避難所運営が行われなかった側面も指摘された。そのため、平成29年度においては、より円滑な避難所の運営に資するため、避難所運営ガイドライン等を補完するものとして、「平成28年度避難所における被災者支援に関する事例等報告書」を作成して公表した。

エ 東日本大震災への対応

東日本大震災に対応して、復興の加速化を図るため、被災した高齢者施設等の復旧に係る施設整備について、国庫補助率の引上げ等を行い、その復旧に要する経費の一部を助成した。

また、「地域医療介護総合確保基金」等を活用し、日常生活圏域で医療・介護等のサービスを一体的・継続的に提供する「地域包括ケア」の体制を整備するため、都道府県計画等に基づき、地域密着型サービス等、地域の実情に応じた介護サービス提供体制の整備を促進するための支援を行った。

あわせて、介護保険において、被災者を経済的に支援する観点から、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う帰宅困難区域等(帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域の3つの区域をいう。平成29年度に指定が解除された区域等を含む。)、上位所得層を除く旧避難指示区域等(平成25年度以前に指定が解除された旧緊急時避難準備区域等(特定避難勧奨地点を含む。)、平成26年度に指定が解除された旧避難指示解除準備区域等(田村市の一部、川内村の一部及び南相馬市の特定避難勧奨地点)、平成27年度に指定が解除された楢葉町の旧避難指示解除準備区域の3つの区域等をいう。)及び平成28年度に指定が解除された居住制限区域等(居住制限区域及び避難指示解除準備区域で、平成28年度に指定が解除された葛尾村の一部、川内村の一部、南相馬市の一部、飯舘村の一部、川俣村の一部、浪江町の一部及び29年4月1日に指定が解除された富岡町の一部をいう。)の住民について、介護保険の利用者負担や保険料の減免を行った保険者に対する財政支援を1年間継続した。なお、平成28年度に指定が解除された旧居住制限区域等の住民のうち上位所得層の住民については、利用者負担や保険料の減免を行った保険者に対する財政支援を平成29年9月末まで実施し、保険者の判断により、平成29年10月以降も利用者負担等の減免措置を行った場合は、特別調整交付金を活用して、財政の負担が著しい場合に減免額の一定の額について財政支援を行った。

日本司法支援センター(法テラス)では、平成24年度から引き続き、震災により、経済的・精神的に不安定な状況に陥っている被災者を支援するため、震災以降の取組を継続し、「震災 法テラスダイヤル」(フリーダイヤル)や被災地出張所における業務の適切な運用を行うなど、生活再建に役立つ法制度などの情報提供及び民事法律扶助を実施した。

被災地出張所は、弁護士のいる都市部への移動が困難な高齢者を始めとする被災者に対する法的支援の拠点として、平成24年度までに7か所(岩手県2か所、宮城県3か所、福島県2か所)設置されたが、上記の業務に加えて、出張所に来所することが困難な被災者のために、車内で相談対応可能な自動車を利用した仮設住宅等での巡回相談も実施した。

また、「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」(平成24年法律第6号、平成24年4月1日施行)に基づき、東日本大震災法律援助事業(東日本大震災に際し災害救助法が適用された市町村の区域(東京都を除く。)に平成23年3月11日において住所等を有していた者の法的トラブルについて、その者の資力状況にかかわらず、無料で法律相談を行う法律相談援助、震災に起因する紛争に関する弁護士・司法書士の費用等の立替え等を行う代理援助・書類作成援助に係る業務)を実施した。

(4)成年後見制度の利用促進

認知症高齢者等の財産管理や契約に関し本人を支援する成年後見制度について周知を図った(表2-2-20)。

表2-2-20 成年後見制度の概要
○ 制度の趣旨

本人の意思や自己決定の尊重、ノーマライゼーション等の理念と本人の保護の理念との調和を図りつつ、認知症等の精神上の障害により判断能力が不十分な方々の権利を擁護する。

○ 概要

法定後見制度と任意後見制度の2つがある。法定後見制度については、各人の多様な判断能力の程度に応じた制度とするため、補助・保佐・後見の三類型に分かれている。

(1)法定後見制度(民法)

3類型 補助 保佐 後見
対象者 判断能力が不十分な方 判断能力が著しく不十分な方 判断能力が欠けているのが
通常の状態の方

(2)法定後見制度の充実(民法)

社会福祉協議会等の法人や複数の者が成年後見人等となることを認め、また成年後見人等の権限の濫用を防止するために監督体制の充実を図っている。

(3)任意後見制度(任意後見契約に関する法律)

自分の判断能力が低下する前に、公正証書によって、本人が選ぶ後見人(任意後見人)に将来の財産管理を委ね、その財産に関する法律行為についての代理権を付与する旨の任意後見契約を締結することができる。

(4)成年後見登記制度(後見登記等に関する法律)

本人のプライバシー保護と取引の安全との調和を図る観点から、戸籍への記載に代わる公示方法として成年後見登記制度を設けている。

資料:法務省

成年後見制度は、認知症、知的障害その他の精神上の障害があることにより、財産の管理又は日常生活等に支障がある者を支える重要な手段であり、その利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、平成28年4月に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」(平成28年法律第29号)が成立し、本法律に基づき、「成年後見制度利用促進委員会」における議論を踏まえ、平成29年3月に「成年後見制度利用促進基本計画」を閣議決定した。基本計画には、利用者がメリットを実感できる制度、運用の改善、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり、不正防止の徹底と利用しやすさとの調和などの観点からの施策目標を盛り込んでいる。

また、成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づく措置として、成年被後見人及び被保佐人(以下「成年被後見人等」という。)の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう、成年被後見人等に係る欠格条項その他の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための措置を講ずる「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案」を平成30年3月に閣議決定し、国会に提出した。

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