第1章 高齢化の状況(第3節 トピックス5)

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第3節 国際比較調査に見る日本の高齢者の生活と意識の特徴(トピックス5)

トピックス5 コロナ禍でも家族とのきずなを大切に~特別養護老人ホーム等におけるアバターロボットを活用した取組~

社会福祉法人野の花会が運営する特別養護老人ホーム等では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、入居者への家族による面会制限を実施する中、少しでも入居者や家族の寂しさを解消するため、入居者の家族が遠隔操作をするカメラ付のアバターロボットを2施設に導入した。その取組について紹介する。

<アバターの導入>

社会福祉法人野の花会は、現在、鹿児島県内で特別養護老人ホームをはじめとした8施設を運営している。野の花会は、福祉を拓き文化を創る「福祉に文化を」を理念に昭和63年に創設され、創設当初から身体抑制・拘束ゼロの介護を当たり前として実践してきた。平成16年より自立支援介護の実践、平成21年に日中おむつゼロの達成、平成25年より5種類の介護ロボットや15種類の福祉用具を順次導入・活用して施設の入居者・スタッフともに負担の少ない介護に取り組んでいるという。

全国的に新型コロナウイルス感染症が拡大する中、法人が運営する36事業全体で感染防止に取り組んでいるが、その結果、家族との面会について制限せざるを得ず、入居者も家族となかなか会えずに寂しい日々を過ごしていたという。

こうした中、視覚・聴覚等を備えた、自らの分身となるロボットを入居者の家族が遠隔操作することにより、入居者とその家族がリアルなコミュニケーションや行動が実現できる、avatar-in株式会社製のANAアバターロボットコミュニケーション型(以下「アバター」という。)を令和2年9月に運営する2施設に導入し、入居者と家族との面会や夜間の居室見守りに活用しているという。(写真1)

写真1 自走するアバター

<アバターの効果>

アバターの利用を希望される家族等に対し、カメラ付のパソコンやネットワーク環境の事前準備が必要であることを確認の上、利用に当たっての手順書を作成して家族に郵送している。特に、遠方の家族等がパソコンを通じたアバターを操作することで、リアルなコミュニケーションが実現でき、まるでその場で会っているようだと喜ばれているという。(写真2、3)

写真2 入居者の家族が遠隔操作し、アバターで会いに行く
写真3 アバターが訪室して家族と話をしている様子

施設におけるタブレット端末での面会は、スタッフがマンツーマンで対応しなければならない場合が多いが、アバターは家族等による遠隔操作で自走して入居者のところまで行くことができるため、スタッフの負担軽減につながっているという。

さらに、家族からは、「またアバターを操作して面会したい。」、「認知症であってもお年寄りが家族の顔をみると自然に笑顔になるので嬉しい。」、「難聴により電話での会話は難しいが表情を見ながら大きな声で話せるので思いが伝わり嬉しい。」等、喜びの声が寄せられているという。

<面会以外でもアバターを活用>

アバターは家族との面会のほか、施設内の夜間の巡回にも活用し、スタッフがアバターを操作することで、スタッフが直接その場にかけつけなくても、手元のタブレット端末に映像が映され、見守りやコミュニケーションが行いやすく、スタッフの心身の負担軽減のみならず、スタッフを介した感染防止にも効果があるという。(写真4)

写真4 アバターを通じて会話を行っている様子
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