第1章 高齢化の状況(第3節 トピックス4)
第3節 国際比較調査に見る日本の高齢者の生活と意識の特徴(トピックス4)
トピックス4 新型コロナウイルス感染拡大を踏まえた独居高齢者の見守り~岩手県陸前高田市における市内飲食業者等と連携した取組~
岩手県陸前高田市は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で孤立する一人暮らしの高齢者を支えるとともに、外出自粛で売上げが落ちた飲食業者等の支援も兼ねた高齢者見守り事業を開始した。その取組について紹介する。
岩手県陸前高田市は、平成23年3月に発生した東日本大震災で甚大な被害を受けており、現在も復興に向けて取り組んでいる。
東日本大震災の影響により、陸前高田市の総人口は震災以前に比べ大きく減少する一方、高齢化率は上昇を続け、令和2年度末現在において39.2%に達し、全国の高齢化率28.4%(令和元年10月1日現在)を大きく上回っている。また、高齢者のみの単独世帯や高齢者夫婦のみの世帯など、高齢者のみの世帯の割合は、全世帯の32.5%(全国の高齢者のみの世帯の割合は28.8%(令和元年))となっている。
震災以降、復旧・復興の状況や住宅環境等の変化による市民ニーズに対応しながら、JR大船渡線BRTや路線バス等の運行をしているところであるが、市内にはいまだに公共交通の空白地域や不便な地域が存在し、運転免許返納後などの高齢者は日常の買物や通院などの移動も厳しい状況にある。
こうした中、陸前高田市はSDGs未来都市として、「誰一人取り残さない」持続可能な社会の実現を目指しており、新型コロナウイルス感染症の影響により高齢者向けのイベントや外出機会の自粛による在宅の一人暮らし高齢者の孤立を防止するとともに、健康状態等を把握しながら、必要な支援につなげることを目的に、70歳以上の単身世帯(住民税非課税世帯)のうち、希望者に対し、市内の飲食業者等の夕食(1食当たり600円相当)を200円の自己負担(1食当たり400円と配送料280円を市が助成)で、週1回、レンタカー業者に依頼し、自宅玄関までに配達する高齢者見守り事業(令和2年9月末)を実施した。本事業は、コロナ禍で経済的な影響を受けている市内飲食業者やレンタカー業者の経済的な支援も兼ねている。
夕食の配達は、レンタカー業者とともに、市福祉部の職員をはじめ、実際の現場を体験し今後の業務にいかすため、福祉部以外の職員も研修として同行し、高齢者に声かけを行った。
本事業を利用された高齢者からは、「声をかけてくれる人がいるかと思うと安心できる。」、「配食のたびに体調などをやさしく聞いてくださり、とても心強い。」などの声が寄せられている。
そして、本事業については、高齢者夫婦のみの世帯や課税世帯などからも実施の要望があったことから、令和3年4月から全世帯に対象を拡大し、特に、70歳以上の高齢者のみ世帯等については、400円の自己負担(1食当たり200円と配送料400円を市が助成)で、食の楽しさを通じた市民の健康、活力ある地域づくりにもつなげていく予定である。