第1章 高齢化の状況(第3節 トピックス3)
第3節 〈特集〉高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査(トピックス3)
デジタルを活用し高齢者と地域のつながりを生み出している事例1 ~DX(デジタル変革)による地域コミュニティの価値化~
事業の目的・概要
富山県朝日町(人口1万1,206人、高齢化率44.5%)では、(株)博報堂と連携して、高齢化や免許返納の増加を背景に、地域における移動の課題を持続的な形で解決するための事業を展開している。
ドライバー不足や財政上の課題により、既存のバスやタクシーによる解決が難しい中、地域住民・自家用車といった活用可能な資産をウェブ上でのマッチングシステムやドライバー向けアプリなどのデジタル技術を用いることで、高齢者の移動の課題のみならず、地域内の交流や外出機会の減少などのコミュニティの課題の解決も目指している。
具体的な取組内容
住民のふだんのマイカーでの移動のついでに、「共助」の精神をもとに、近所の困っている人を乗せる乗合サービス「ノッカル」に取り組んでいる。高齢化で免許返納も進み、自由な移動や交流がしづらい高齢者と、地域に貢献したい住民とを、「ノッカル」専用のマッチングシステムを使って相乗りさせる仕組みである。事業主体は行政でありつつ、運行管理を交通事業者、ドライバーを住民が担当し、地域全体での取組になっている。
事業効果・今後の展開
令和2年8月から実証実験を行い、利用者・ドライバーともに増え続け、令和3年10月からは本格実施している。コミュニティバス・タクシーと並ぶ、朝日町の公共交通として、高齢者の移動の選択肢の一つになっている。また、「ノッカル」をきっかけに住民同士の交流も加速しており、「世代を超えた交流」「移住者の地域への溶け込み」「高齢者の移動範囲の拡大」等の副次的効果も現れている。
今後は、「ノッカル」以外にも、日常のちょっとした困りごとを住民同士で解決する共助型サービスや、地域通貨を活用した地域内の移動需要を創出させる仕組み作りにも取り組むこととしている。
【ノッカルによる乗合の様子】