第1章 高齢化の状況(第3節 3)

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第3節 〈特集〉高齢者の住宅と生活環境をめぐる動向について(3)

3 まとめ

今回の調査の結果、住宅や居住地域に関する満足度と幸福感の程度との間には、強い正の相関関係がみられることが明らかとなっており、高齢期においても、個人の意欲や能力に応じて活躍できる持続可能なエイジレス社会を実現していくためには、加齢に伴う身体機能やライフスタイルの変化等に対応した居住環境を確保し、高齢者が地域において安心・安全に自立して暮らせるようにすることが重要である。

(1) 住宅の問題点に関する意識

現在の住宅の問題点について、全体では、住宅の老朽化や地震等の防災・防犯面での不安等を挙げた人の割合が特に高い。また、持家/賃貸住宅の別でみると、持家に居住している人については、住宅が広すぎることや部屋数が多すぎること、防災・防犯面での不安が、賃貸住宅に居住している人に比べ、特に高い割合となっている。他方、賃貸住宅に居住している人については、家賃等の経済的負担の重さや、台所・浴室等の住宅設備の使いにくさ、住宅が狭いこと等が、持家に居住している人に比べ、特に高い割合となっている。今後更に高齢化の進展が見込まれる中で、住宅のリフォーム支援や高齢者向け住宅の供給の促進など、高齢者の生活上のニーズと住宅のミスマッチの解消が課題となっている。

(2) 防災対策に関する意識

平成30年度の前回調査と比べ、地震等の災害への備えについて、「特に何もしていない」と回答した人の割合は大幅に低下し、避難場所の事前決定やハザードマップ等の防災情報を入手する等の備えをしていると回答した人の割合は大きく上昇している。一方で、ひとり暮らしの高齢者については、それ以外の高齢者と比べ、「特に何もしていない」と回答した人の割合は高く、また災害への備えに関する多くの項目において対策している人の割合が低い状況にある。今後、更にひとり暮らしの高齢者の増加が見込まれる中で、家具の転倒防止対策といった高齢者が一人で作業することが困難な対策へのサポートや、災害発生時における避難支援など、ひとり暮らしの高齢者に配慮した対策の推進が更に重要性を増している。

(3) 人間関係に関する意識

平成30年の前回調査と比べ、親しくしている友人・仲間が「たくさんいる」又は「普通にいる」と回答した人の割合は大幅に低下し、また地域に住み続けるために必要なこととして、「近所の人との支え合い」や「家族や親族の援助」を挙げた人の割合も低下している。さらに、人と話をする頻度が「毎日」と回答した人の割合は、平成30年の前回調査と比べ大幅な低下がみられ、特にひとり暮らしの高齢者については、4割弱(それ以外の高齢者の2分の1程度の割合)となっており、その傾向が顕著となっている。コロナ禍による影響等も踏まえつつ、望まない孤独・孤立に陥らないようにするための対策の推進が必要である。また、今後更にひとり暮らしの高齢者の増加が見込まれる中で、従来家族等が担ってきた日常生活等における様々なサポート等について、地域や社会においてどのようにその役割を担っていくかについても更なる検討が必要である。

(4) 生活環境に関する意識

地域の生活環境について重視することについては、医療・介護サービスの受けやすさや、移動や買い物の利便性等を挙げた人の割合が高い。一方で、現在の居住地域における不便や気になることについて、日常の買い物や医療機関への通院に関する不便、交通機関の使いにくさ・未整備等を挙げた人の割合が上位となっている状況にあり、地域で医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される地域包括ケアシステムの構築や、地域での日常生活における移動ニーズに対応する施策等の更なる充実を図っていく必要がある。

(5) 住み替えに関する意識

60歳以上で住み替えの意向がある人(状況次第で将来的に検討したいという人も含む。)の割合は全体の約3割に上っている。2(高齢期における住み替えに関する意識について)で示したように、住み替えの意向に関する傾向については、性別、年代、家族形態、持家/賃貸住宅の別、住み替え先として考えている住居形態・都市規模等によって様々な傾向がみられるところ、住み替えの意向を持つようになった理由については、総じて、健康・体力面での不安や、現在の住宅の住みづらさ、交通や買い物の不便等の利便性に係る課題、生活費の制約等が上位に挙がっており、(1)や(4)で明らかとなった課題等と共通する点がみられる。

住み替えに向けた望ましいサポートとしては、全体として、住み替え費用の支援、物件や支援制度の情報提供に関する支援、住宅の確保に関する支援等を挙げた人の割合が高く、地域の実情に応じて、転居費用の補助や、住み替えに係る相談窓口の整備、高齢者向けの住宅の供給等の施策の更なる充実が求められる。一方で、例えば、75歳以上の人は見守りや買い物等の身の回りの生活支援についてのニーズが大きいこと、持家に居住している人については現在の住居の処分に関する支援についてニーズが大きいこと、また、賃貸住宅に居住している人については住居を賃貸する場合の身元保証等のサポートについてニーズが大きいことなど、属性によって状況やニーズは様々であり、それらに応じたきめ細やかな支援の充実が必要となっている。

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