第1章 高齢化の状況(第3節 トピックス)

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第3節 〈特集〉高齢者の住宅と生活環境をめぐる動向について(トピックス)

事例1 福岡県大牟田市 ~住宅施策と福祉施策のコラボによる課題解決~

事業の目的・概要

福岡県大牟田市(人口105,753人、高齢化率38.1%(令和6年4月1日現在))では、平成28年から令和元年までの3年間で1,138件の新たな空き家等が発生し、空き家戸数は2,912件にのぼった。一方で、住まいを必要としている人の中には、身寄りのない高齢者や親族に頼ることができず連帯保証人となる人がいないなどの理由で住宅の確保が難しい人や、入居後の見守り支援などが必要な人も存在している。

市ではこれらの課題を解決すべく、平成25年6月、不動産・福祉・医療・法律・行政・学識経験者といった専門家で構成する大牟田市居住支援協議会(以下「協議会」という。)を設立し、住宅確保の相談や入居後の生活支援に取り組んでいる。この協議会の事務局は市とNPO法人(居住支援法人)大牟田ライフサポートセンター(以下「センター」という。)が担っており、住まい探しや空き家活用の相談対応のほか、連帯保証人や身元保証人等の確保といった支援をセンターが行うことにより、入居の支援と入居後の支援が可能となる体制を構築し、住まいの確保と暮らしの支援を行っている。

事例1の図

具体的な取組内容

空き家活用の推進を目的に住宅確保要配慮者向けWEB住情報システム「住みよかネット」を開設した。入居希望者は住みたい住宅を検索することができ、協議会が空き家所有者と入居希望者との間に入り、それぞれの具体的な要望を調整し、成約に向けたマッチングを行っている。

また、入居後の生活に困難がある人等については、市が必要な福祉サービスへつなぐほか、センターが本人等と話し合い、居住支援法人としてその困難を取り除く支援を行っている。具体的には、必要に応じてセンターが連帯保証人になることや入居後の見守り、入院や施設への入所が必要となった際の身元保証、支援対象者が亡くなった場合の遺品整理や住居の片づけ、葬儀等の死後事務委任等のサービスを設けている。

事業効果

取組開始後、入居や建物に関する各種相談等の件数は徐々に増え、特に令和3年度から様々な相談に対応可能となったことや空き家所有者へのヒアリングを行ったことなどから大幅に増加している。

入居希望者は、一般の賃貸住宅よりも低家賃で空き家に入居できるようになったことに加え、センターが身元保証や入居後の見守り支援を行うことで、それまでは入居が難しかった人も入居が可能となった。また、センターの支援により空き家所有者や不動産事業者の不安も軽減でき、円滑なマッチングにつながっている。さらに、そのままでは老朽化し、倒壊の危険や景観、治安に悪影響を与え得る空き家を有効活用することができるとともに、入居者がその地域で暮らし続けることにつながる。また、現在は近隣自治体居住者からの入居相談もあり、住宅確保要配慮者の広範囲な受け皿になっている。

今後の展開

今後人口減少が進み、さらに空き家は発生し続けると予測されるため、空き家所有者向けのセミナー、相談会、空き家所有者予備軍への啓発などに引き続き取り組んでいくこととしている。

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