第1章 高齢化の状況(第3節 トピックス)

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第3節 〈特集〉高齢者の住宅と生活環境をめぐる動向について(トピックス)

事例2 奈良県生駒市 ~官民連携で取り組むオーダーメイドの空き家対策~

事業の目的・概要

奈良県生駒市(人口116,819人、高齢化率29.6%(令和6年4月1日現在))は、昭和36年以降ニュータウンの開発による人口の増加とともに発展をしてきたが、それから60年以上が経過し居住者の高齢化が進んでいる。市が平成28年度に実施した空き家等実態調査では、今後の空き家活用について「売却したい」、「賃貸したい」との回答が多い一方、「買い手が見つからない」、「不動産業者等の情報」を求めているとの回答が多くあったことから、空き家の流通促進に取り組むこととした。

生駒市は、大阪中心部まで電車で20分と利便性が高く住宅のニーズがあることから、空き家一つ一つの物件についてカルテを作成し、オーダーメイドで対応方針を提案し、中古住宅市場に乗せるまでの支援を平成30年から実施している。

支援の実施に当たっては、民間の専門家の力を借りることが不可欠であったことから、7業種(宅建士、建築士、司法書士、銀行、NPO、土地家屋調査士、建築施工事業者)8団体と市が連携協定を締結し、「いこま空き家流通促進プラットホーム」(以下「プラットホーム」という。)を設立し、空き家の円滑な流通促進に取り組んでいる。

事例2の図

具体的な取組内容

市はプラットホームの事務局として空き家所有者の同意取得や意向確認等を行い、毎月開催する空き家流通促進検討会議に空き家情報を提供する。検討会議では、その空き家の流通阻害要因を特定し、その要因によって空き家の流通に向けてサポートする専門家を決定する。例えば相続登記されておらずそのままでは売買等ができないような場合は宅建士と司法書士が担当し、建物が老朽化しているような場合は宅建士と建築士が担当する。そして、担当する専門家が、当該空き家の状況や所有者の意向に沿って具体的な支援を行っていく仕組みである。支援の内容はマッチングだけでなく、除却の提案やそのサポート、擁壁に関する助言を行うといった防災面での改善などと幅広い。まさに、それぞれに最適なオーダーメイドの支援を行っている。

事業効果

平成30年5月のプラットホーム設立以降、取扱件数及び成約件数は順調に増加し、令和5年度末時点で、空き家の取扱件数143件に対し、成約件数は76件(53%)、媒介契約、相続登記、耐震診断等も含めた業務実績は103件(72%)と着実に成果を上げている。この成果もあり、平成28年に1,444棟あった空き家が、令和5年の調査で約1割減少し、1,306棟となった。

事例2のグラフ

今後の展開

プラットホームの認知度が上がり、空き家所有者からの相談も増えているため、それらの支援を引き続き行うとともに、更なる空き家の掘り起こしを行うこととしている。

また、住宅としてのマッチングだけでなく、空き家を民間学童保育所といった地域課題解決のための施設へ活用するプロジェクトも開始している。

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