第1章 高齢化の状況(第2節 1)
第2節 高齢期の暮らしの動向(1)
1 就業・所得
(1) 労働力人口に占める65歳以上の者の比率は上昇傾向
令和6年の労働力人口は、6,957万人であった。労働力人口のうち65~69歳の者は400万人、70歳以上の者は546万人であり、労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は13.6%と長期的には上昇傾向にある(図1-2-1-1)。

また、令和6年の労働力人口比率を見ると、65~69歳では54.9%、70~74歳では35.6%となっており、いずれも上昇傾向である。75歳以上は12.2%となり、平成27年以降上昇している(図1-2-1-2)。

雇用情勢について、完全失業率を見ると、60~64歳では、平成23年以降低下傾向にあったが、令和3年は、前年からの新型コロナウイルス感染症の影響により3.1%に上昇し、令和6年は2.8%となった。また、65~69歳では、令和3年の2.7%から令和6年は2.5%へ、70歳以上では、令和3年の1.2%から令和6年は1.1%へそれぞれ低下した。(図1-2-1-3)。

(2) 就業状況
ア 就業者数及び就業率は上昇している
65歳以上の就業者数及び就業率は上昇しており、特に65歳以上の就業者数を見ると21年連続で前年を上回っている。また、就業率については10年前の平成26年と比較して65~69歳で13.5ポイント、70~74歳で11.1ポイント、75歳以上で3.9ポイントそれぞれ伸びている(図1-2-1-4)。

イ 「医療,福祉」の65歳以上の就業者は10年前の約2.3倍に増加
令和6年における65歳以上の就業者を主な産業別に見ると、「卸売業,小売業」が133万人と最も多く、次いで「医療,福祉」が115万人、「サービス業(他に分類されないもの)」が104万人、「農業,林業」が93万人などとなっている。
令和6年における産業別の65歳以上の就業者を10年前と比較すると、「医療,福祉」が64万人増加し、10年前の約2.3倍となっている。次いで「サービス業(他に分類されないもの)」が32万人、「卸売業,小売業」が26万人と、それぞれ増加している。
また、令和6年における各産業の就業者に占める65歳以上の就業者の割合を見ると、「農業,林業」が51.7%と最も高く、次いで「不動産業,物品賃貸業」28.6%、「サービス業(他に分類されないもの)」が22.3%、「生活関連サービス業,娯楽業」が19.6%などとなっている(図1-2-1-5)。

ウ 60代後半の男性の6割以上、女性の4割以上が就業している
男女別に就業状況を見ると、男性の場合、就業者の割合は、60~64歳で84.0%、65~69歳で62.8%となっており、65歳を過ぎても、多くの人が就業している。また、女性の就業者の割合は、60~64歳で65.0%、65~69歳で44.7%となっている。さらに、70~74歳では、男性の就業者の割合は43.8%、女性の就業者の割合は27.3%となっている(図1-2-1-6)。

エ 60歳以降に非正規の職員・従業員の比率は上昇
役員を除く雇用者のうち非正規の職員・従業員の比率を男女別に見ると、男性の場合、55~59歳で10.3%であるが、60~64歳で41.3%、65~69歳で67.8%と、60歳を境に大幅に上昇している。また、女性の場合も、55~59歳で58.1%、60~64歳で72.6%、65~69歳で83.2%となっており、男性と比較して、60歳以降においても非正規の職員・従業員の比率はおおむね高い割合となっている(図1-2-1-7)。

オ 現在収入のある仕事をしている60歳以上の者のうち、「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答した者が約3割
現在収入のある仕事をしている60歳以上の者については約3割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しており、70歳くらいまで又はそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえる(図1-2-1-8)。

カ 70歳までの高年齢者就業確保措置を実施している企業は約3割
従業員21人以上の企業23万7,052社のうち、高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の割合は99.9%(23万6,920社)となっている。一方で、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業の割合は31.9%(7万5,643社)となっており、従業員301人以上の企業では25.5%と低くなっている(図1-2-1-9)。(注3)

(3) 経済的な暮らし向きについて心配がないと感じている60歳以上の者は65.9%
内閣府の調査では、経済的な暮らし向きについて「心配がない」(「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」と「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」の計)と感じている者の割合は全体で65.9%となっている(図1-2-1-10)。

(4) 高齢者世帯の所得はその他の世帯平均と比べて低い
高齢者世帯(65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯)の平均所得金額(令和4年の1年間の所得)は304.9万円で、その他の世帯(656.0万円)の約5割となっている。
なお、等価可処分所得(注4)を平均金額で見ると、高齢者世帯は221.1万円となっており、その他の世帯(325.9万円)の約7割となっている(表1-2-1-11)。
| 区分 | 平均所得金額 (平均世帯人員) |
平均等価可処分 所得金額 |
|---|---|---|
| 高齢者世帯 | 304.9万円 (1.54) | 221.1万円 |
| その他の世帯 | 656.0万円 (2.62) | 325.9万円 |
| 全世帯 | 524.2万円 (2.22) | 295.9万円 |
| 資料:厚生労働省「国民生活基礎調査」(令和5年)(同調査における令和4年1年間の所得) | ||
| (注1)高齢者世帯とは、65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯をいう。 | ||
| (注2)その他の世帯とは、全世帯から高齢者世帯と母子世帯を除いた世帯をいう。 | ||
また、高齢者世帯の所得階層別分布を見ると、150~200万円が最も多くなっている(図1-2-1-12)。

さらに、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯について、公的年金・恩給の総所得に占める割合別世帯数の構成割合を見ると、公的年金・恩給が家計収入の全てとなっている世帯が41.7%となっている(図1-2-1-13)。

(5) 世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高の中央値は全世帯の約1.4倍
資産の状況を二人以上の世帯について見ると、世帯主の年齢階級別の家計の貯蓄・負債の全般的状況は、世帯主の年齢階級が高くなるにつれて、1世帯当たりの純貯蓄(貯蓄から負債を差し引いた額)はおおむね増加し、世帯主が60~69歳の世帯及び70歳以上の世帯では、他の年齢階級に比べて大きな純貯蓄を有している。年齢階級が高くなるほど、貯蓄額と持家率が増加する一方、世帯主が30~39歳の世帯をピークに負債額は減少していく(図1-2-1-14)。

また、二人以上の世帯の貯蓄現在高について、世帯主の年齢が65歳以上の世帯と全世帯の中央値を比較すると、前者は1,604万円と、後者の1,107万円の約1.4倍となっている。二人以上の世帯の貯蓄現在高階級別の世帯分布を見ると、世帯主の年齢が65歳以上の世帯では、4,000万円以上の貯蓄を有する世帯が18.8%であり、全世帯(12.9%)と比べて高い水準となっている(図1-2-1-15)。

さらに、金融資産の分布状況を世帯主の世代別に見ると、世帯主の年齢が60歳以上の世帯が占める割合が令和元年には63.5%となっている(図1-2-1-16)。

世帯主が65歳以上の金融資産の保有割合を世代別に見ると、いずれの世代も「預貯金」が最も多く、次いで、「生命保険など」、「株式」などとなっている(図1-2-1-17)。

(6) 65歳以上の生活保護受給者の人数(被保護人員)はほぼ横ばい
生活保護受給者の人数の推移を見ると、令和5年における65歳以上の生活保護受給者は、前年と比べて横ばいになっている。また、年代別人口に占める生活保護受給者の割合を見ると、65~69歳では2.34%で、前年と比べて減少し、70歳以上では3.03%で、前年と比べて横ばいとなっている(図1-2-1-18)。
