第2章 令和6年度高齢社会対策の実施の状況(第3節 3)

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第3節 〈特集②〉新たな高齢社会対策大綱の策定について(3)

3 大綱の概要

報告書で示された基本的考え方や施策の方向性を踏まえ、政府は新たな大綱を令和6年9月13日に閣議決定した。以下、大綱に盛り込まれた主な施策等を紹介する。

(1) 年齢に関わりなく希望に応じて活躍し続けられる経済社会の構築

年齢に関わらない活動機会の拡大という観点では、自己啓発を実施した労働者の割合が20代以上において年齢層が高くなるほど低くなっていることや、高齢期の就業意欲も高い状況にあること、地域における社会参加活動を進めるために必要なこととして簡単に社会参加活動に参加できる仕組みや実施されている社会参加活動内容の周知・広報、社会参加活動を行うことのできる場の提供を挙げる人が多いこと等を踏まえ、高齢期を見据えたスキルアップやリ・スキリングの推進、企業等における経験やスキルに基づく配置、成果に基づく評価・処遇等に関する専門家の助言など雇用の質の向上のための環境整備、ハローワークのマッチング強化等の多様な就業機会の提供、地域社会の担い手確保に向けたプラットフォームの構築等の施策を盛り込んだほか、働き方に中立的な年金制度の構築を目指して、更なる被用者保険の適用拡大等に向けた検討を進めることとした。

また、高齢社会に関するあらゆる世代の理解の促進という観点では、年齢層が高いほどインターネット利用率が低いこと、年齢層が低いほど社会保障制度への関心が低いこと、年齢層が高いほど金融教育を受けた経験があると回答した人が少ないこと等を踏まえ、幅広い世代における加齢に関する理解の促進、高齢期のデジタル・デバイドの解消、早い段階からの社会保障教育やライフステージに応じた金融経済教育の推進等の施策を盛り込んだ。

(2) 一人暮らしの高齢者の増加等の環境変化に適切に対応し、多世代が共に安心して暮らせる社会の構築

一人暮らしの高齢者の増加等に対応できる環境の整備という観点からは、医療・介護の複合ニーズが高まる85歳以上人口が増加を続け令和42年には1,170万人まで達する見込みであること、65歳以上の要介護者数の増加に伴い、更なる介護職員の確保が必要と見込まれていること、介護離職等により約9.2兆円もの経済損失が生じているとの試算があること等を踏まえ、まず、地域包括ケアシステムの構築の一層の推進を図ることとした。この点に関連し、大綱策定後、第217回通常国会において、地域医療構想について、令和22年頃を見据えた医療提供体制の確保のため、入院医療だけではなく、外来・在宅医療、介護との連携、人材確保等を含めた地域の医療提供体制全体の課題解決を図る新たな地域医療構想とすること等を内容とする、「医療法等の一部を改正する法律案」が提出されている。その他、介護人材の確保の推進、介護現場の生産性向上、仕事と介護を両立できる雇用環境の整備等の推進、身寄りのない高齢者等の支援の充実等の施策も盛り込んだ。身寄りのない高齢者等への必要な支援の在り方については、現在、厚生労働省が開催する地域共生社会の在り方検討会議等において検討が進められている。

現役世代(若年・中高年層)も含め、単身高齢者等が孤独・孤立の状態となることの予防に資する取組については、孤独・孤立対策を担当する内閣府特命担当大臣の下に「安心・つながりプロジェクトチーム」を開催し、検討が進められている。

また、高齢者の入居について賃貸人の約7割が拒否感を有していること、空き家数がこの20年間で約1.8倍の385万戸に増加していること、老後の生活の不安として移動が困難になることを挙げる人の割合が人口規模の小さい市町村ほど高くなっていること等を踏まえ、住宅・福祉等の関係者が連携した地域における総合的・包括的な居住支援体制の整備等を通じた居住支援の充実、空き家の有効活用等の空き家対策の推進、地域公共交通の「リ・デザイン」の加速化や自動運転技術の社会実装に向けた取組の推進等による地域における移動手段の確保等の施策を盛り込んだ。

(3) 加齢に伴う身体機能・認知機能の変化に対応したきめ細かな施策展開・社会システムの構築

身体機能・認知機能の変化に配慮した環境の整備という観点からは、まず、令和22年には65歳以上の認知症の人の数が584.2万人にまで達する見込みであること等を踏まえ、認知症基本法に基づき、認知症基本計画を策定し、認知症の理解増進や早期発見・対応のための関係機関間の連携強化等の施策の総合的かつ計画的な推進を図ることとしたほか、個人情報を円滑に共有しうる枠組み(消費者安全確保地域協議会等)への金融機関の参加の促進による必要な支援につなぐ取組の推進等、金融経済活動における認知機能の低下した人への支援強化等の施策を盛り込んだ。なお、認知症基本計画については、大綱策定後、令和6年12月3日に閣議決定された。

また、加齢に伴う難聴等感覚器機能の低下については、早期スクリーニングや定期ケアの重要性について、普及啓発を図ることとした。その他、認知機能の変化に応じた交通安全対策の推進や高齢期の特性に配慮した防災・防犯対策の推進等の施策を盛り込んだ。

(4) 数値目標及び参照指標

(1)~(3)で挙げた施策を含め、大綱に盛り込まれた内容の計画的かつ効果的な推進等の観点から、大綱では、施策の進捗状況や施策に関連する社会状況等の把握等のため、数値目標及び参照指標を設定している。また、施策の進捗状況の検証・評価を踏まえ、必要な改善を行うための仕組みの構築を図ることとしている。

図2-3-2 高齢社会対策大綱(令和6年9月13日閣議決定)(概要)
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