第3章 令和8年度高齢社会対策(第2節 1)
第2節 分野別の高齢社会対策(1)
1 就業・所得
(1) 年齢に関わりなく希望に応じて働くことができる環境の整備
① 高齢期を見据えたスキルアップやリ・スキリングの推進
○ 労働者のキャリアプラン再設計や企業内の取組の支援を行うキャリア形成・リスキリング推進事業において、労働者等及び企業に対しキャリアコンサルティングを中心とした総合的な支援を実施する。
○ 在職中も含めた学びの促進のため、教育訓練給付制度の活用により、労働者個人の主体的な能力開発・キャリア形成を支援する。
○ 都道府県単位で組織される地域職業能力開発促進協議会において、地域の実情やニーズに即した公的職業訓練の設定や実施、職業訓練効果の把握、検証等を実施する。
○ 生涯学習のニーズの高まりに対応するため、大学においては、社会人選抜の実施、夜間大学院の設置、昼夜開講制の実施、科目等履修生制度の実施、長期履修学生制度の実施等を行い、履修形態の柔軟化等を図って、社会人の受入れを一層促進する。
○ 大学等が、その学術研究・教育の成果を直接社会に還元し、履修証明プログラムや公開講座を実施する等の高度な学習機会を提供することを促進する。
○ 高等教育段階の学習機会の多様な発展に寄与するため、短期大学卒業者、高等専門学校卒業者、専門学校等修了者で、大学における科目等履修生制度等を利用し一定の学習を修めた者については、大学改革支援・学位授与機構において審査の上、「学士」の学位授与を行う。
○ 放送大学においては、テレビ・ラジオ放送やインターネット等の身近なメディアを効果的に活用して、幅広く大学教育の機会を国民に提供する。
② 企業等における高齢期の就業の促進
ア 知識、経験を活用した高齢期の雇用の確保
○ 高年齢者雇用安定法で義務付けられた高年齢者雇用確保措置を講じていない事業主に対しては、公共職業安定所による指導等を実施するほか、事業主の努力義務である高年齢者就業確保措置については、適切な措置の実施に向けた周知啓発を実施する。また、高齢・障害・求職者雇用支援機構の70歳雇用推進プランナー等により、高年齢者就業確保措置に関する技術的事項についての相談・助言を行う。
○ 労働施策総合推進法に基づき、労働者の一人一人により均等な働く機会が与えられるよう、労働者の募集・採用における年齢制限禁止の義務化の徹底を図るべく、指導等を行う。
○ 企業における高年齢者の雇用を推進するため、65歳以上の年齢への定年延長や66歳以上の年齢への継続雇用制度の導入又は他社による継続雇用制度の導入を行う事業主、高年齢者の雇用管理制度の見直し又は導入等や高年齢の有期雇用労働者を無期雇用労働者に転換する事業主に対する助成措置や相談援助による支援を実施する。特に、継続雇用延長・定年引上げに係る具体的な制度改善提案を実施し、企業への働きかけを行う。
○ 日本政策金融公庫(中小企業事業)の融資制度(地域活性化・雇用促進資金)において、エイジフリーな勤労環境の整備を促進するため、60歳以上の者等の雇用等を行う事業者に対しては、当該制度の利用に必要な雇用創出効果の要件を緩和する措置を実施する。
○ 地域における高齢者の就業促進に当たり、地方公共団体の意向を踏まえつつ、都道府県労働局と地方公共団体が一体となって地域の雇用対策に取り組むための雇用対策協定の活用を図る。
○ 「高年齢者の労働災害防止のための指針」の周知を行うとともに、中小企業等に対し、エイジフレンドリー補助金による支援や労働災害防止団体による個別事業場支援の利用勧奨を行い、高年齢者の安全衛生対策を推進する。
○ 高年齢者の労働災害が多い業種を対象とする労働災害防止マニュアルを作成し、事業者による高年齢者の労働災害防止対策の推進を図る。
○ 国家公務員については、「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」を踏まえた取組を進めるとともに、暫定再任用制度を適切に運用することにより65歳までの雇用確保に努めるほか、令和13年度の定年引上げの完成を見据えた必要な取組の検討を進める。
○ 地方公務員についても、国家公務員と同様に、定年を段階的に引き上げて65歳とすることとされており、定年引上げの適切かつ円滑な運用に向けて、必要な助言等を行う。
イ ゆとりある職業生活の実現等
○ 労働者の健康の保持や仕事と生活の調和を図るため、労働時間等設定改善指針の周知・啓発や、企業における働き方・休み方の改善に向けた検討を行う際に活用できる「働き方・休み方改善ポータルサイト」による情報発信などにより労使の自主的な取組を支援するほか、年次有給休暇の取得促進や、勤務間インターバル制度の導入促進等を行う。
③ 高齢期のニーズに応じた多様な就業等の機会の提供
ア 多様な形態による就業機会・勤務形態の確保
(ア)多様な働き方を選択できる環境の整備
○ 高年齢者雇用安定法を踏まえ、定年引上げや継続雇用制度の導入等に加えて、雇用以外で働く機会を提供する創業支援等措置を導入することで働き方の選択肢を増やし、今後も高齢者の就業促進をより一層図っていく。
○ 生涯現役地域づくり環境整備事業を実施し、先駆的なモデル地域の取組の普及を図る。
○ シルバー人材センター事業について、各シルバー人材センターにおける就業機会の確保や会員拡大等の取組への支援を行うとともに、特に、サービス業等の人手不足分野や介護、育児等の現役世代を支える分野での就業機会の開拓・マッチング等を推進し、高年齢者の生きがいの充実、就労による社会参加への促進等を図る。
○ 労働者協同組合制度について、周知広報やモデル事業を通じた制度の活用促進に取り組むことで、高齢者がこれまでの豊富な経験を生かし、地域のニーズに応じた働く場を創出する取組を促進する。
○ 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保に向けて、パートタイム・有期雇用労働法の着実な履行確保を図る。
○ 労働政策審議会同一労働同一賃金部会の報告を踏まえた省令、指針等の改正を行い、その円滑な施行、適用に向けた周知・広報等に取り組む。
○ 労働基準監督署と都道府県労働局が連携し、同一労働同一賃金の更なる遵守の徹底に取り組む。
○ 企業における非正規雇用労働者の待遇改善等を支援するため、「働き方改革推進支援センター」において、労務管理等の専門家による無料の個別相談支援やセミナー等を実施する。
○ 「多様な正社員」制度の導入・定着を図るため、制度導入支援セミナーや「多様な働き方の実現応援サイト」での好事例の周知、企業への社会保険労務士などによる導入支援等を実施する。
○ 副業・兼業については、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」等の周知を実施する。
(イ)情報通信を活用した遠隔型勤務形態の普及
○ 適切な労務管理下におけるテレワークの導入・定着促進を図るため、テレワークに関する労務管理とICTの双方についてワンストップで相談できる窓口での相談対応や、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」の周知、中小企業事業主に対するテレワーク勤務制度導入への助成、情報セキュリティに関するガイドラインの周知を行う。
○ 事業主等を対象としたセミナー等の開催、中小企業を支援する団体と連携した全国的なテレワーク導入支援制度の構築を実施する。また、テレワークによる働き方の実態やテレワーク人口の定量的な把握を行う。
イ 高齢者等の再就職の支援・促進
○ 求職活動支援書の交付を希望する高年齢離職予定者に対して必ず事業主が交付するよう公共職業安定所において指導・助言を行う。求職活動支援書の作成に当たって、ジョブ・カードを活用することが可能となっていることから、その積極的な活用を促す。
○ 公共職業安定所において、特に65歳以上の高年齢求職者を対象に、本人の状況に即した職業相談や職業紹介、求人開拓等の支援を行う生涯現役支援窓口を設置するとともに、当該窓口において、高年齢求職者を対象とした職場見学、職場体験等の機会を提供する。
○ また、常用雇用への移行や継続雇用を目的として、就職困難者を公共職業安定所等の紹介により雇い入れる事業主に対する助成措置(トライアル雇用助成金、特定求職者雇用開発助成金)を実施する。
○ 早期再就職支援等助成金(再就職支援コース)により、離職を余儀なくされる高年齢者等の再就職を民間の職業紹介事業者に委託した事業主に対して助成措置を実施するほか、早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)により、高年齢者等を早期に雇い入れるとともに、前職よりも賃金を5%以上上昇させた事業主に対して助成措置を実施し、賃金上昇を伴う労働移動の促進を図る。また、早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)により高年齢者等の賃金上昇を伴う労働移動の促進を図る。
○ 高年齢退職予定者キャリア人材バンク事業を産業雇用安定センターにおいて実施し、高年齢者の就業促進を図る。
ウ 高齢期の起業の支援
○ 日本政策金融公庫において、高齢者等を対象に優遇金利を適用する融資制度により開業・創業の支援を行う。
(2) 公的年金制度の安定的運営
ア 働き方の多様化や高齢期の長期化・就労拡大に対応した年金制度の構築
○ 社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方等に中立的で、ライフスタイル等の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再分配機能の強化等により高齢期における生活の安定を図るため、更なる被用者保険の適用拡大等の内容が盛り込まれた令和7年年金改正法を、法律に定められたスケジュールに沿って着実に施行していく。
イ 年金制度等の分かりやすい情報提供
○ 年金制度の意義や基本的な仕組みとともに、短時間労働者等への被用者保険の適用拡大による被保険者のメリット等の令和7年年金改正法の内容や対象者、改正の効果等について、国民に分かりやすい周知・広報を進めていく。また、若年層を主なターゲットとして、SNSを通じてインフルエンサーを活用した周知・広報にも新たに取り組む。
○ 「学生との年金対話集会」を開催するとともに、教育現場の教員の意見を踏まえた年金教育教材の開発にも取り組む。
○ 公的年金シミュレーターについて、令和8年度から障害年金及びiDeCoの試算機能を追加して試験運用を開始するところ、利用方法に関する特設サイトの公開や解説動画の配信を行うことで、積極的に周知していく。
○ 保険料の納付実績や将来の給付に関して、ねんきん定期便において分かりやすく通知する。
(3) 高齢期に向けた資産形成等の支援
ア 資産形成等の促進のための環境整備
○ 勤労者財産形成貯蓄制度の普及等を図ることにより、高齢期に備えた勤労者の自助努力による計画的な財産形成を促進する。
○ 企業年金・個人年金については、令和7年年金改正法に基づき、iDeCoの加入可能年齢の引上げや企業年金の運用の見える化等の措置の円滑な施行に努める。また、iDeCo等の拠出限度額の引上げが令和8年12月1日に施行されることに伴い、iDeCoの更なる普及を図るため、各種広報媒体を活用した周知・広報を行う。
○ 退職金制度については、中小企業における退職金制度の導入を支援するため、中小企業退職金共済制度の普及促進のための施策を実施する。
○ 新しいNISAの活用を含む安定的な資産形成を目的としたイベント・セミナーの開催等により、適切な周知・広報を行う。
イ 資産の有効活用のための環境整備
○ 住宅金融支援機構において、高齢者が住み替え等のための住生活関連資金を確保するために、リバースモーゲージ型住宅ローンの普及を促進する。
○ 低所得の高齢者世帯が安定した生活を送れるようにするため、各都道府県社会福祉協議会において、一定の居住用不動産を担保として、世帯の自立に向けた相談支援に併せて必要な資金の貸付けを行う不動産担保型生活資金の貸与制度を実施する。