第1部 陸上交通の安全

第1章 道路交通の安全

第1節 道路交通事故のすう勢と交通安全対策の今後の方向

1 道路交通事故のすう勢

(1) 道路交通事故の現状

我が国の交通事故による死者数は、昭和45年に1万6,765人を数えたが、46年以降着実に減少に向かい、54年には8,466人とほぼ半減した。その後増勢に転じ、平成4年には1万1,451人に達したが、翌年から再び減少傾向に転じ、11年には9,006人となった。しかしながら、12年には、死者数が9,066人と5年ぶりに増加し、また、負傷者数は1,155,697人、交通事故件数は931,934件となり、共に過去最高を記録した。

第6次の交通安全基本計画において、「年間の交通事故死者数を平成9年までに1万人以下とし、さらに、平成12年までに9,000人以下とすることを目指すものとする」とし、各般の交通安全対策を鋭意推進した結果、交通事故による死者数は平成8年に9,942人と1万人を切り、11年には9,006人まで減少し一定の成果を挙げることができたが、12年には9,066人となり、遺憾ながら目標を達成するに至らなかった。

近年の交通死亡事故の発生状況をみると、その特徴は次のとおりである。

  • 1) 65歳以上の高齢者の死者数が高水準で推移しており、全死者数の約3分の1を占めている。このうち、高齢者の歩行中の死者数が高齢者の死者数の約5割を占め、また、高齢者の自動車運転中の死者数が増加している。
  • 2) 高齢者が第1当事者(交通事故の当事者のうち、過失が最も重い者又は過失が同程度の場合は被害が最も軽い者)となった自動車運転中の死亡事故件数が急増している。
  • 3) 自動車乗車中の死者数が高水準で推移しており、その約6割はシートベルト非着用である。
  • 4) 夜間における死亡事故件数が高水準で推移している。

これは、

  • ア 高齢化の進行により、死亡事故の当事者となる比率の高い高齢者人口及び高齢運転免許保有者数が増加していること
  • イ シートベルト着用が徹底していないこと
  • ウ 国民生活や経済活動の24時間化等に伴って増加した夜間の交通量が、近年においても増加傾向で推移していること

等によるものと考えられる。

(2)道路交通を取り巻く状況の展望

我が国の道路交通を取り巻く今後の状況を展望すると、運転免許保有者数、車両保有台数、自動車走行台キロ共に着実に増加することが見込まれる。また、このような道路交通の量的拡大に加え、交通死亡事故の当事者となる比率の高い高齢者人口の増加は、道路交通にも大きな影響を与えるものと考えられる。

(3)道路交通事故の見通し

道路交通を取り巻く状況は、経済社会情勢の動向に伴い今後複雑に変化すると見込まれ、将来の交通事故の状況については、正確には見極め難いところであるが、自動車走行台キロの増加等事故発生の諸要因を一定の前提の下に推定し、将来の交通事故を予測すると、歩行中及び自動車乗車中の事故や、高齢者の死者数が増加するものと見込まれ、現状よりもなお一層憂慮すべき事態になることが懸念される。

2 道路交通安全対策の今後の方向

量的・質的に変化していく道路交通を背景とした厳しい道路交通事故状況に対処していくためには、人命尊重の理念に立つことはもちろんのこと、交通事故がもたらす大きな社会的・経済的損失をも勘案し、交通事故のない安全な交通社会を実現することを理想として、 経済社会情勢の変化を踏まえつつ、交通事故の実態に十分対応した交通安全対策を積極的に推進する必要がある。

交通安全対策の推進に当たっては、交通事故防止対策の充実による事故発生の抑制、被害軽減対策の充実による死者数及び重傷者数の抑制並びに事故発生後の被害者等の負担の軽減を図ることが重要である。

このため、従来の交通安全対策を基本としつつ、効果的な対策への改善を図るとともに、有効性が見込まれる新規施策を推進することとし、対策の実施に当たっては、目標を設定して、その実施後においては、効果評価を行い、必要に応じて改善するという枠組みの確立を図ることとする。

また、市民参加型社会の進展、高齢化、国際化、情報化等の社会情勢の変化に対応した施策の展開を図るとともに、高齢者、身体障害者、交通事故被害者等の視点にも十分配慮することとする。

さらに、交通の安全は、交通需要や交通の円滑性・快適性と密接な関連を有するものであるので、自動車交通量の拡大の抑制等によりこれらの視点にも十分配慮するとともに、沿道の土地利用や道路利用の在り方も視野に入れた取組を行っていくものとするほか、防災の観点にも適切な配慮を行うこととする。

このような観点から、道路交通環境の整備、交通安全思想の普及徹底、安全運転の確保、車両の安全性の確保、道路交通秩序の維持、救助・救急体制の整備、損害賠償の適正化と被害者対策の推進、交通安全に関する科学技術の振興等の各般の交通安全対策を充実し、関係機関・団体の緊密な連携の下に、総合的かつ計画的に推進することとする。特に、次の重点施策及び新規施策を強力に推進する。

(1)高齢者の交通安全対策の推進

高齢化の進行に伴い、今後とも増加することが懸念されている高齢者の交通事故を防止するため、高齢者に対して、加齢に伴う身体機能の変化が歩行者又は運転者としての交通行動に及ぼす影響を理解させるとともに、道路及び交通の状況に応じて安全に道路を通行するために必要な実践的技能及び交通ルール等の知識を取得させることを目標として、参加・体験・実践型の交通安全教育及び高齢者交通安全指導員(シルバーリーダー)の養成を積極的に推進するほか、各種の普及啓発活動の推進や、反射材の活用等交通安全用品の普及に努め、高齢者への交通安全意識の普及徹底を図る。

また、「平坦性が確保された幅の広い歩道」、高齢者等感応信号機、昇降装置付立体横断施設、コミュニティ道路等の整備、生活ゾーンにおける交通規制の充実や住居系地区等におけるコミュニティ・ゾーンの形成等により、バリアフリー化を始めとする歩行空間の整備を行うとともに、追越しのための付加車線、分かりやすい道路標識等の整備を推進し、高齢者等が安心して暮らせる道路環境づくりを行う。さらに、高齢者の安全運転対策として、高齢者講習の充実、更新時講習における高齢者学級の拡充、高齢者が乗りやすい自動車の開発促進等を推進する。

(2)シートベルト及びチャイルドシート着用の徹底

自動車乗車中の死亡事故においてシートベルト非着用者が高い割合を占めていること等を踏まえ、シートベルト及びチャイルドシートの着用効果及び正しい着用方法についての理解を求め、正しい着用の徹底を図る。あわせて、後部座席におけるシートベルトの着用推進を図る。

このため、地方公共団体、関係機関・団体等との協力の下、あらゆる機会・媒体を通じて積極的に普及啓発活動を展開するとともに、シートベルト及びチャイルドシート着用義務違反に対する指導取締りの充実を図る。特に、チャイルドシートについては、正しい着用を指導する指導員の養成、チャイルドシートと座席との適合表の公表の促進、型式ごとの安全性に関する比較情報の提供、地方公共団体等が行うチャイルドシートの再利用活動の促進等を図る。

(3)安全かつ円滑な道路交通環境の整備

事故が多発しているなど道路交通安全の観点から問題が生じている箇所について重点的に対策を講ずるとともに、交通管制システム・信号機の高度化、道路標識の高輝度化・大型化・可変化、道路標示の高輝度化等を推進する。また、道路の面的整備等と交通規制を組み合わせたコミュニティ・ゾーンの形成、歩道の整備、自転車道の整備、休憩・情報提供等の機能を持つ「道の駅」の整備等の推進を図る。このほか、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)の推進や交通需要マネジメント(TDM:Transportation Demand Management)施策の推進を図るとともに、交通の状況や地域の特性に応じた総合的な駐車対策を推進する。さらに、災害に強い道路及び交通安全施設等の整備、的確な交通規制の実施等災害時における交通安全を確保するための施策を推進する。

(4)交通安全教育の推進

幼児から成人に至るまでの段階的かつ体系的な交通安全教育及び高齢者、身体障害者等に対する適切な交通安全教育を実施するため、国、地方公共団体、警察、学校、関係民間団体及び家庭が互いに連携を図るとともに、指導者の養成・確保、教材等の充実、参加・体験・実践型の教育の普及を図る。また、運転者教育に関しては、安全に運転しようとする意識の育成及び危険予測・回避能力の向上を図る観点から、免許取得前教育、免許取得時教育、免許取得後の再教育の充実を図る。

(5)車両の安全性の確保

平成11年6月の運輸技術審議会答申に基づき設置された、産・官・学が参加する車両安全対策総合検討会における検討結果を踏まえつつ、車両の安全基準の拡充・強化を図る。また、先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)の開発・普及を図るほか、自動車の安全性に関する比較情報等を自動車使用者に提供する自動車アセスメント事業を推進する。さらに、自動車使用者からの自動車不具合情報の収集・分析の強化に努めるなど、リコール制度の充実を図る。

(6)効果的な指導取締りの実施

 死亡事故等重大事故に直結する悪質・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いた効果的な指導取締りの実施などを推進する。特に、暴走族による悪質事犯に対して、取締り体制等を充実することにより、その指導取締りの強化を図る。

(7)救助・救急体制の整備

 交通事故による負傷者の搬送途上又は救急現場における応急処置、救急医療等の充実を図る観点から、救急救命士の養成・配置等の促進、ドクターカーの活用の推進を図るとともに、消防・防災ヘリコプターによる救急業務、ドクターヘリによる救命医療の実施を推進する。また、交通事故による負傷者の救命率を向上させるため、心肺そ生法等の応急手当の普及に努めるとともに、事故車両等から自動的に緊急通報等を行うシステムの普及を図る。さらに、救命救急センター等の整備促進を図る。

(8)被害者対策の充実

近年増加している交通事故による重度後遺障害者の救済対策を充実するため、また、精神的打撃を受けているだけでなく、交通事故に係る知識、情報が乏しいことが少なくない交通事故被害者等の心情に配慮した対策を推進するため、重度後遺障害者に対する介護料の支給及び重度後遺障害者の治療・看護を専門に行う療護センターの設置・運営に対する援助措置の充実、被害者等が事故相談を受けられる機会の充実、被害者等への事故概要、捜査経過等の情報の提供、被害者連絡制度の充実、行政処分に関する情報の適切な提供等被害者対策の充実を図る。

(9)交通事故調査・分析の充実

効果的な交通安全対策を実施するためには、事故が発生した状況について、運転者等の行動のみならず、走行環境面、車両構造面等の様々な角度から交通事故に係る情報を収集し、その事故が発生した要因を解明する必要がある。この事故調査・分析の充実強化を図る観点から、交通事故総合分析センターの充実・活用を図るとともに、官民の保有する交通事故調査・分析に係る情報提供の充実を図る。

(10)市民参加型の交通安全活動の推進

交通の安全は、住民の安全意識により支えられることから、安全で良好なコミュニティの形成を図るため、交通安全対策に関して住民が計画段階から実施全般にわたり積極的に参加できる仕組みづくり、住民や道路利用者が主体的に行う「ヒヤリ地図」の作成、交通安全総点検等により、市民参加型の交通安全活動を推進する。
 また、交通安全対策に関する行政及び民間団体間の定期的な連絡協議の場の設置や、交通安全に関する各種情報の集約・提供体制の整備を図ることにより、国、地方公共団体、民間団体等が一体となった交通安全活動推進体制を強化する。

3 交通安全基本計画における目標

交通事故による死傷者数を限りなくゼロに近づけ、国民を交通事故の脅威から守ることが究極の目標であるが、当面、自動車保有台数当たりの死傷者数を可能な限り減少させるとともに、平成17年までに、年間の24時間死者数を、交通安全対策基本法施行以降の最低であった昭和54年の8、466人以下とすることを目指すものとする。そのため、国の関係行政機関及び地方公共団体は、国民の理解と協力の下、2に掲げる諸施策を総合的かつ強力に推進する。

第2節 講じようとする施策

1 道路交通環境の整備

道路交通事故については、道路種別、沿道条件、道路構造、交通状況等が複雑に絡み合って構成される発生地点付近の道路交通環境が大きく影響しているものと考えられる。
このため、道路交通環境の整備については、交通事故防止の観点から、高規格幹線道路から地区内道路に至る適切に機能分担された安全な道路交通網の体系的整備を進めるとともに、緊急に交通の安全を確保する必要がある道路において、交通安全施設等の整備、効果的な交通規制の推進等により安全な道路交通環境を形成することとする。

交通安全施設等の整備に当たっては、事故が多発しているなど道路交通安全の観点から問題が生じている箇所ごとに、当該箇所における事故の特性や発生要因について分析を行い、その結果を踏まえて対策を立案実施することとし、また、対策の実施後においては、整備結果の評価を行い、必要に応じて対策の立案・実施段階にフィードバックすることにより、着実に事故削減を図ることとする。

また、道路交通の安全の確保は、歩行者等道路を利用する人々の日常の生活、経済・社会活動と密接に関係することから、地域住民や職業運転者等の意見を道路交通環境の整備に反映させるとともに、整備の進ちょく状況、効果等について公表を行うこととする。

そのほか、道路交通の円滑化を図ることにより交通安全の推進に資するため、道路利用の仕方に工夫を求め、輸送効率の向上や交通量の時間的・空間的平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)施策を総合的に推進するとともに、最先端の情報通信技術(IT:Information Technology)を用いて人と道路と車両を一体のシステムとして構築し、画期的に道路交通環境の安全性を高める高度道路交通システム(ITS)の開発・普及等を推進する。

(1)道路の新設・改築による交通安全対策の推進

ア 適切に機能分担された道路網の整備
基本的な交通の安全を確保するため、高規格幹線道路から居住地域内道路に至るネットワークによって適切に機能が分担されるよう道路の体系的整備を推進するとともに、他の交通機関との連携強化を図る道路整備を推進する。

  1. 自動車、自転車、歩行者等の異種交通を分離し、交通流の純化を促進するため、高規格幹線道路から居住地域内道路に至るネットワークを体系的に整備するとともに、特に自転車・歩行者専用道路等の整備を積極的に推進する。
  2. 通過交通の排除と交通の効果的な分散により、都市部における道路の著しい混雑、交通事故の多発等の防止を図るため、バイパス及び環状道路等の整備を推進する。
  3. 幹線道路で囲まれた居住地域内や歩行者等の通行の多い商業地域内等においては、通過交通をできる限り幹線道路に転換させるなど道路機能の分化により、生活環境を向上させるため、補助的な幹線道路、区画道路、歩行者専用道路等の系統的な整備、区画道路におけるコミュニティ道路や歩車共存道路(歩道等の設置が困難な場合において、ハンプや狭さく等を組み合わせることにより車の速度を抑制し、歩行者等の安全な通行を確保する道路)等の交通安全施設の整備等を総合的に実施する。
  4. 国民のニーズに応じた効率的な輸送体系を確立し、道路混雑の解消等円滑な交通流が確保された良好な交通環境を形成するため、道路交通、鉄道、海運、航空等複数の交通機関の連携を図るマルチモーダル施策を推進し、鉄道駅等の交通結節点、空港、港湾の交通拠点へのアクセス道路の整備等を実施する。

イ 改築による道路交通環境の整備
交通事故の多発等を防止し、安全かつ円滑・快適な交通を確保するため、次の方針により道路の改築事業を強力に推進する。

  1. 歩行者及び自転車利用者の安全と生活環境の改善を図るため、歩道等を設置するための既存道路の拡幅、既存の道路に歩道等の設置が困難な場合における小規模バイパスの建設、自転車の通行を歩行者や車両と分離するための自転車道の設置などの道路交通の安全に寄与する道路の改築事業を積極的に推進する。また、交通の安全を確保し、併せて余暇活動の増大に対応した歴史や自然に親しめる大規模自転車道の整備を推進する。
  2. 交差点及びその付近における交通事故の防止と交通渋滞の解消を図るため、交差点の立体交差化等を推進する。
  3. 一般道路の新設・改築に当たっては、交通安全施設についても併せて整備することとし、道路標識、中央帯、車両停車帯、道路照明、防護さく等の整備を図る。また、歩行者の安全を確保するため必要がある場合には、スロープや昇降装置の付いた立体横断施設の整備を図る。
  4. 道路の機能と沿道の土地利用を含めた道路の利用実態との調和を図ることが交通の安全の確保に資することから、交通流の実態を踏まえつつ、沿道からのアクセスを考慮した副道等の整備、植樹帯の設置、路上駐停車対策等の推進を図る。
  5. 商業系地区等における歩行者及び自転車利用者の安全で快適な通行空間を確保するため、これらの者の交通量や通行の状況に即して、幅の広い歩道、自転車道、コミュニティ道路、歩車共存道路、車両の通行を禁止又は制限したショッピングモール等の整備を推進する
  6. 交通混雑が著しい都心地区、鉄道駅周辺地区等において、人と車の交通を体系的に分離するとともに、歩行者空間の拡大を図るため、地区周辺の幹線道路、ペデストリアンデッキ、交通広場等の総合的な整備を推進する。
  7. 歴史的街並みや史跡等卓越した歴史的環境の残る地区において、地区内の交通と観光交通、通過交通を適切に分離するため、歴史的地区への誘導路、地区内の生活道路、歴史的みちすじ等の整備を体系的に推進する
  8. 鉄道駅周辺等で自転車等の大量放置の見られる箇所について、道路事業等による自転車駐車場(原動機付自転車の駐車を含む。)の整備を推進する。

ウ 災害発生等に備えた安全の確保
豪雨・豪雪、地震、火山噴火等による災害が発生した場合においても、安全で安心な生活を支える道路交通を確保するため、阪神・淡路大震災や一般国道229号豊浜トンネル崩落事故、有珠山火山噴火災害による一般国道230号や道央自動車道の被害等を踏まえ、異常気象時において地域の孤立等を避けるための生命線となる道路の整備や道路の防災対策、緊急輸送道路を中心とした橋りょう等の耐震補強、雪崩・地吹雪対策を実施するとともに、道路防災週間等を通じた道路利用者への道路防災対策の普及・啓発を推進する。

エ 地域に応じた安全の確保
交通の安全は、地域に根ざした課題であることにかんがみ、沿道の地域の人々のニーズや道路の利用実態、交通流の実態等を把握し、その特性に応じた道路交通環境の整備を行う。
また、積雪寒冷特別地域においては、冬期の安全なモビリティを確保するため、冬期積雪・凍結路面対策として適時適切な除雪や凍結防止剤散布の実施、交差点等における消雪施設等の整備、流雪溝、チェーン着脱場等の整備を推進する。さらに、安全運転の確保に資するため、気象、路面状況等を収集し、道路利用者に提供する気象情報システムの整備を推進する。

(2)交通安全施設等整備事業の推進

 交通事故の多発している道路その他緊急に交通の安全を確保する必要がある道路について、平成8年度から14年度までを計画期間とする交通安全施設等整備事業七箇年計画に基づき、交通安全施設等を次の方針により整備することとし、安全かつ円滑・快適な交通環境の確立を図る。

また、平成15年度以降も、交通事故発生状況等を勘案し、総合的かつ計画的な交通安全施設等整備事業の推進を図る。

ア 事故多発地点対策の推進

  1. 自動車交通の安全と円滑を確保するため、事故多発地点のうち緊急度の高い箇所について、詳細な事故分析を行い、これに基づき交差点改良、視距の改良、付加車線等の整備を改築事業による整備等と併せて重点的に実施する。また、道路の構造等に応じて、中央帯の設置、バス路線等における停車帯の設置及び防護さく、道路標識、道路標示、区画線等の交通安全施設等の整備を推進する。
     整備後においては、その効果を評価し、対策効果が不十分な箇所においては、事故発生要因の分析・対策立案段階に立ち返り、追加的な対策を講ずる。
     また、効果的な事故削減対策のノウハウを整理・蓄積し、これを適切に活用することにより、幅広く交通事故の削減を図る。
  2. 道路の構造及び交通の実態を勘案して、交通事故が発生する危険性が高い場所等に信号機を設置する。既存の信号機については、交通状況の変化に合理的に対応できるように、集中制御化、系統化、速度感応化、多現示化、右折感応化等の高度化を推進する。特に、幹線道路で夜間等横断交通が極めて少なくなる場所については、信号機の閑散時半感応化,閑散時押ボタン化を推進する。また、必要のある場所には、バス感応化等を行う。
  3. 道路の構造、交通の状況等に応じた交通の安全を確保するために、道路標識の高輝度化・大型化・可変化、標示板の共架、設置場所の統合・改善、道路標示の高輝度化等の交通安全施設等の整備を推進するほか、交通事故発生地点を容易に把握し、速やかな事故処理及び的確な事故調査が行えるようにするとともに、自動車の位置や目的地までの距離を容易に確認できるようにするためのキロポスト(地点標)の整備を推進する。また、見通しの悪いカーブで、対向車が接近してくることを知らせる対向車接近システムの整備を推進するとともに、幹線道路の単路における速度超過による事故を防止するための高速走行抑止システムを整備する。さらに、依然として多発している夜間死亡事故に対処するため、道路照明・視線誘導標等の設置による夜間事故対策を推進する。

イ バリアフリー化を始めとする歩行空間等の整備

  1. 歩行者及び自転車利用者の安全で快適な通行を確保するため、歩行者等の交通事故が発生する危険性の高い区間等について、改築事業等による整備と併せて歩道及び自転車道等の整備を引き続き重点的に実施する。
     その際、快適な通行空間を十分確保した幅の広い歩道の整備に努めるとともに、既存の道路に歩道等の設置が困難な場合においては、その歩道等の代替として既存の道路と並行した歩行者専用道路、自転車歩行者専用道路等の整備を推進する。
     また、通過車両の進入を抑え、歩行者等の安全確保と生活環境の改善を図るため、コミュニティ道路、歩車共存道路等の整備を推進するとともに、見やすく分かりやすい道路標識・道路標示とするため、道路標識の高輝度化・大型化・可変化、標示板の共架、設置場所の統合・改善等を行い、視認性の向上を図る。
  2. 高齢者、身体障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保するため、駅、公共施設、福祉施設、病院等の周辺を中心に「平坦性が確保された幅の広い歩道」、音響信号機、高齢者等感応信号機、歩行者感応信号機、待ち時間表示装置、昇降装置付立体横断施設、自転車駐車場、身体障害者用の駐車ます等を有する自動車駐車場等を整備するとともに、改築事業等と併せた電線類の地中化を推進する。あわせて、道路標識の高輝度化・大型化・可変化、道路標示の高輝度化等を推進する。
     また、駅前等の交通結節点において、エレベーター等の設置、スロープ化や建築物との直結化が図られた立体横断施設、交通広場等の整備を推進し、歩きたくなるような安全で快適な歩行空間を積極的に確保する。
     特に、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(平成12年法律第68号。交通バリアフリー法)に基づき、重点整備地区に定められた駅の周辺地区等においては、公共交通機関等のバリアフリー化と連携しつつ、誰もが歩きやすい幅の広い歩道、道路横断時の安全を確保する機能を付加した信号機等の整備が面的かつネットワークとして行われるよう配慮する。
     さらに、バリアフリー歩行空間が有効に利用されるよう、高齢者を始めとする歩行者等に対して、視覚障害者誘導用ブロック、歩行者用の案内標識等により、公共施設の位置や施設までのバリアフリー経路等を適切に案内する。
     このほか、積雪による歩道幅員の減少や凍結による転倒の危険性の増大など、冬期特有の障害に対し、鉄道駅周辺、中心市街地、通学路等、特に安全で快適な歩行空間の確保が必要な所において、歩道等の除雪の重点的な実施や、交通バリアフリー法の特定事業としての融雪施設、流雪溝、雪覆工の整備を推進する。
  3. 高齢運転者の増加に対応するため、道路標識の高輝度化・大型化・可変化、道路標示の高輝度化等高齢運転者に見やすい道路標識・道路標示の整備を図る。
  4. 児童・幼児の通行の安全を確保するため、歩道等の整備、押ボタン式信号機、歩行者用灯器等の整備、立体横断施設の整備、横断歩道等の拡充により、通学路、通園路の整備を図る。
  5. 市街地における安全かつ円滑・快適な道路交通環境を効率的に確保するため、交通安全施設等の整備と併せ、道路空間と一体となって交通安全施設と同様に機能する歩行者用通路や交通広場などの整備を推進する。

ウ 円滑・快適で安全な道路交通の確保

  1. 交通に関する情報の収集、分析及び伝達並びに信号機、道路標識及び道路標示の操作その他道路における交通の規制を広域的かつ総合的に行うため、交通管制エリアの拡大等交通管制システムの充実・高度化を図る。
  2. 幹線道路において、交通の変動実態を的確に把握し、予想される変動に対応した信号制御を行うため、信号機の高度化を図る。
  3. 多数の路上駐車のため安全で円滑な道路交通が阻害されている都市内の道路において、交通安全施設としての駐車場、路上駐車施設、駐車場案内・誘導システム、違法駐車抑止システムの整備を図るなど、総合的な駐車対策を推進する。
     また、過労運転に伴う事故防止や近年の高齢運転者等の増加に対応して、都市間の一般道路において追越しのための付加車線や「道の駅」などの休憩施設等の整備を積極的に推進する。
  4. 分かりやすく使いやすい道路交通環境を整備し、安全で円滑な交通の確保を図るため、交通監視カメラ、各種車両感知器等の整備、道路・交通等に関する情報(異常気象に関する情報や都市間のルート選択に資する情報を含む。)を迅速かつ的確に提供する道路情報提供装置、交通情報板、路側通信設備等の整備、時間別・車種別等の交通規制の実効を図るための視認性・耐久性に優れた大型固定標識及び路側可変標識の整備並びに利用者のニーズに即した系統的で分かりやすい案内標識及び中央線変移システムの整備を推進する。特に、主要な幹線道路の交差点及び交差点付近における大型案内標識や交差道路標識の整備を重点的に進めることとし、外国人に分かりやすいローマ字併用表示・シンボル表示を積極的に取り入れ、国際化の進展への対応に努める。
     また、道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication System)の整備・拡充を積極的に推進する。

エ 災害に強い交通安全施設等の整備
 地震、豪雨、豪雪等による災害が発生した場合においても安全な道路交通を確保するため、交通管制センター、交通監視カメラ、各種車両感知器、交通情報板等の交通管理施設の整備及び通行止め等の交通規制を迅速かつ効果的に実施するための道路災害の監視システムの開発・導入、交通規制資機材の整備を推進する。あわせて、災害発生時の停電に起因する信号機の機能停止による混乱を防止するため、予備電源として信号機電源付加装置の整備を推進する。
 また、隣接都道府県を含めた広域的な交通情報を収集するとともに、交通流・量を適正に配分・誘導するための交通情報を提供する広域的な交通管理体制の整備を推進する。

(3)高速自動車国道等における交通安全施設等の整備

 高速自動車国道等においては、緊急に対処すべき交通安全対策を総合的に実施する観点から、一般道路における交通安全施設等整備事業七箇年計画とも連携を図りつつ、高速自動車国道等における交通安全対策に関する事業計画に基づき、交通安全施設等の整備を計画的に進めるとともに、渋滞区間における道路の拡幅等の改築事業、適切な道路の維持管理、道路交通情報の提供等を積極的に推進する。

ア 事故削減に向けた総合的施策の集中的実施
 安全で円滑な自動車交通を確保するため、事故多発地点のうち緊急度の高い箇所について、雨天、夜間等の事故誘発要因の詳細な分析を行い、これに基づき中央分離帯強化型防護さく、道路照明施設、自発光式視線誘導標、可変速度規制標識、排水性舗装、高視認性区画線の整備等を重点的に実施するとともに、道路構造上往復の方向に分離されていない二車線の区間(暫定供用区間)については、高視認性ポストコーン、高視認性区画線の設置による簡易分離施設の視認性の向上を図るなど、総合的な事故防止対策を推進する。
 また、事故発生後の救助・救急活動を支援する緊急開口部の整備やサービスエリア等における緊急離着陸用ヘリポートの整備等も併せて実施する。

イ 安全で快適な交通環境づくり
 過労運転やイライラ運転を防止し、安全で快適な自動車走行に資するより良い走行環境の確保を図るため、インターチェンジの改良等による渋滞対策、高速バス利用の利便性の向上、混雑するサービスエリアやパーキングエリアの駐車ますの増設、道路交通情報提供施設の整備等利用者サービスの向上等を推進する。

ウ 高度情報技術を活用したシステムの構築
 道路利用者の多様なニーズにこたえ、道路利用者へ適切な道路交通情報等を提供する道路交通情報通信システム(VICS)等の整備を推進し、積極的に全国への展開を図るとともに、渋滞の解消及び利用者サービスの向上を図るため、高速自動車国道等の有料道路の料金所で一旦停止することなく、自動的に料金の支払いを可能にするノンストップ自動料金支払いシステム(ETC: Electronic Toll Collection System)等の高度道路交通システム(ITS)の整備を推進する。

(4)効果的な交通規制の推進

 道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、道路網全体の中でそれぞれの道路の社会的機能、道路の構造、交通安全施設の整備状況、交通流・量の状況等地域の実態等に応じた効果的な交通規制を行う。

ア 地域の特性に応じた交通規制
 主として通過交通の用に供される道路については、駐停車禁止、転回禁止、指定方向外進行禁止、進行方向別通行区分等交通流を整序化するための交通規制を、また、主として地域交通の用に供される道路については、一方通行、指定方向外進行禁止等を組み合わせ、通過交通を抑制するなど、良好な生活環境を維持するための交通規制を、さらに、主として歩行者及び自転車利用者の用に供される道路については、歩行者用道路、車両通行止め、路側帯の設置等歩行者及び自転車利用者の安全を確保するための交通規制を強化する。
 特に、生活の場である住居系地区等においては、歩行者等の安全の確保に重点を置いたゾーン規制を実施し、コミュニティ・ゾーンの形成を図る。

イ 安全で機能的な都市交通確保のための交通規制
 安全で機能的な都市交通を確保するため、計画的に都市総合交通規制を推進し、交通流・量の適切な配分・誘導を図る。また、路線バス、路面電車等大量公共輸送機関の安全・優先通行を確保するための交通規制を積極的に推進する。

ウ 幹線道路における交通規制
 幹線道路については、交通の安全と円滑化を図るため、道路の構造、交通安全施設の整備状況、交通の状況等を勘案しつつ、速度規制及び追越しのための右側部分はみ出し通行禁止規制等について見直しを行い、その適正化を図る。

エ 高速道路における交通規制
 新規供用の高速道路については、道路構造、交通安全施設の整備状況等を勘案し、安全で円滑な交通を確保するため、適正な交通規制を実施するとともに、既供用の高速道路については、交通流の変動、道路構造の改良状況、安全施設の整備状況、交通事故の発生状況等を総合的に勘案して、交通実態に即した交通規制となるよう見直しを推進する。特に、交通事故多発区間においては、大型貨物自動車等の通行区分規制、追越しのための右側部分はみ出し通行禁止規制、速度規制等の必要な安全対策を推進する。
 また、交通事故、異常気象等の交通障害発生時においては、その状況に即し、臨時交通規制を迅速、的確に実施し、二次障害の防止を図る。

オ 事故多発地域における重点的交通規制
 交通事故の多発する地域、路線等においては、最高速度の指定、追越しのための右側部分はみ出し通行禁止等の効果的な交通規制を重点的に実施する。

カ 災害発生時における交通規制
 災害発生時は、緊急交通路を確保し、それに伴う混乱を最小限に抑えるため、被災地への車両の流入抑制等の交通規制を迅速かつ的確に実施する。
 また、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)による通行禁止等の交通規制を的確かつ迅速に行うため、信号制御により被災地への車両の流入を抑制するとともに、迂回指示・広報を行い、あわせて、災害の状況や交通規制等に関する情報を提供する交通情報板等の整備を推進する。

(5)コミュニティ・ゾーンの形成

 住居系地区や商業系地区において、通過交通の進入を抑え、歩行者等の安全等地区内の生活の安全を確保するため、交通事故が多発しているなどの問題が生じている地区を抽出した上で、歩行者の歩行等に車両の通行を調和させるという考え方の下に、ハンプや狭さく等が整備されたコミュニティ道路等の面的整備とゾーン規制等の交通規制を適切に組み合わせて、良好なコミュニティ・ゾーンの形成を図る。
 特に、歩行者、自転車、自動車等が集中し錯そうする商業系地区においては、コミュニティ・ゾーンの形成と併せて、バリアフリー歩行空間の整備、自転車走行空間の整備など各交通モードの安全で快適な通行空間の整備を総合的に実施する。
 整備の立案・実施に当たっては、コミュニティ・ゾーンの形成が身近な生活道路の利用の在り方に密接に関係することから、整備の立案段階において、関係住民との意見交換を行う等理解と協力を得ることに十分配慮する。
 事業実施後は、事故の発生状況調査や通過交通量調査、改善状況等に関する地域住民等へのヒアリング等を実施し、対策の効果を評価するとともに、対策効果が不十分な場合は、事故発生要因の分析・対策立案段階に立ち返り、追加的な対策の実施を適切に講ずる。

(6)高度道路交通システムの整備

 最先端の情報通信技術(IT)等を用いて、人と道路と車を一体のシステムとして構築し、安全性、輸送効率及び快適性の向上を実現するとともに、渋滞の軽減等の交通の円滑化を通じて環境保全に寄与することを目的とした高度道路交通システム(ITS)の推進を図る。そのため、ITS全体構想に基づき、産・官・学が連携を図りながら、研究開発、フィールドテスト、インフラの整備、普及及び標準化に関する検討等の一層の推進を図るとともに、国際協力を積極的に進める。

ア 道路交通情報通信システムの整備
 安全で円滑な道路交通を確保するため、リアルタイムな渋滞情報、所要時間、規制情報等の道路交通情報を提供する道路交通情報通信システム(VICS)の整備を推進し、積極的に全国への展開を図るとともに、情報提供の充実及び対応車載機の普及を図る。

イ 新交通管理システムの推進
 高度化された交通管制センターを中心に、個々の車両等との双方向通信が可能な光ビーコンを媒体として、交通流・量を積極的かつ総合的に管理することにより、高度な交通情報提供、動的経路誘導、車両の運行管理、公共車両の優先通行、交通公害の減少、安全運転の支援、歩行者の安全確保等を図り、交通の安全及び快適性を確保しようとする新交通管理システム(UTMS: Universal Traffic Management Systems)の構想に基づき、システムの充実、キーインフラである光ビーコンの整備等の施策の推進を図る。

ウ スマートウェイ・スマートゲートウェイ・スマートカープロジェクトの推進
 障害物や車線逸脱等の情報を通信によりリアルタイムでやり取りすることによって、従来不可能であったドライバーの発見の遅れに対する情報提供、判断の誤りに対する警告、ドライバーの操作支援を行い、安全で安心な走行支援の実現と道路交通事故の低減を図る走行支援システムについて、国際電気通信連合(ITU)で国際標準となったノンストップ自動料金支払いシステム(ETC)の技術を活用し、1) 道路(スマートウェイ)、2) 自動車と道路側システムの間を結ぶ高度な情報通信(スマートゲートウェイ: 知能通信)及び3) 高速走行する自動車(スマートカー)に関する技術の三位一体となった研究開発を進め、早期実現・普及を図る。

エ 道路運送事業に係る高度情報化の推進
 安全で環境に配慮した円滑な自動車の運行を実現するため、公共交通機関の利用促進に資する利用者支援システム、運行支援システム及び物流の効率化に資する運行管理支援システム、荷物管理支援システム等の整備を推進する。

(7)交通需要マネジメントの推進

 依然として厳しい道路交通渋滞を緩和し、道路交通の円滑化を図るため、バイパス・環状道路の整備や交差点の改良等の交通容量の拡大策、交通管制の高度化等に加えて、パークアンドライド(鉄道駅等まで自家用車を利用し、駅等の周辺に設けられた駐車場に駐車し、電車等に乗り継ぐ形態)の推進、情報提供の充実、相乗りの促進、フレックスタイムの導入等により、道路利用の仕方に工夫を求め、輸送効率の向上や交通量の時間的・空間的平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)を推進する。
 また、都市圏における交通渋滞の緩和等を図るため、交通需要マネジメント実証実験に参加する事業者への支援を含め、交通需要マネジメントを推進する地方公共団体等への支援を行うとともに、広報・啓発活動を積極的に行う。

ア 公共交通機関利用の促進
 道路交通混雑が著しい一部の道路について、バス専用(優先)レーン、バス感知式信号機、公共車両優先システム(PTPS: Public Transportation Priority Systems)を整備するとともに、路面電車、モノレール等の公共交通機関の整備を支援し、鉄道、バス等の公共交通機関への転換による円滑な道路交通の実現を図る。
 また、鉄道・バス事業者による運行頻度、運行時間の見直し等により、利用者の利便性の向上を図るとともに、鉄道駅・バス停までのアクセス確保のために、パークアンドライド駐車場、自転車道、駅前広場等の整備を促進し、交通結節機能を強化する。
 さらに、バス路線に係る道路、バス停や公共車両優先システム(PTPS)の整備及びパークアンドバスライドやコミュニティバスの導入等バスの利用促進を図るための施策を総合的に実施するオムニバスタウン構想を推進する。

イ 自動車利用の効率化
 乗用車の平均乗車人数の増加及び貨物自動車の積載率の向上により効率的な自動車利用を推進するため、自動車相乗りの促進、共同配送システムの構築、車両運行管理システムの導入等による物流の効率化等の促進を図る。

ウ 交通需要の平準化
 交通需要のピーク時間帯の交通を分散するため、時差通勤・通学及びフレックスタイム制の導入を促進するとともに、道路交通情報の充実を図る。

(8)総合的な駐車対策の推進

 道路交通の安全と円滑を図り、都市機能の維持及び増進に寄与するため、交通の状況や地域の特性に応じた総合的な駐車対策を推進する。

ア 秩序ある駐車の推進

  1. 都市部における無秩序な路上駐車を抑制し、安全で円滑な道路交通を確保するため、都市機能、道路及び交通の状況等に対応した都市交通全体の駐車管理構想を策定し、駐(停)車禁止規制の適切な推進を図る。その一環として、短時間駐車の需要、路外駐車場の整備状況等を勘案しながら、交通の安全と円滑の上で支障がない場所については駐車の効用にも配意し、週末等における駐(停)車禁止規制の解除、パーキング・メーター等の設置を推進するなど、駐(停)車禁止規制の見直しを進める。
  2. 違法な駐停車が交通渋滞等交通に著しい迷惑を及ぼす交差点においては、違法駐車抑止システム等の整備を促進し、駐停車等をしようとしている自動車運転者に対して音声で警告を与えることにより、違法駐停車を抑制して交通の安全と円滑化を図る。
  3. 違法駐車の取締りに当たっては、高齢者、身体障害者等の移動の円滑化にも資するため、悪質・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置くとともに、車輪止め措置及びレッカー移動の効果的運用に努める等、重点的かつ効果的に推進する。
     なお、放置駐車違反については、都道府県公安委員会による指示及び使用制限命令の積極的な活用を図り、使用者責任を強力に追及する。

イ 駐車場等の整備

  1. 駐車場整備計画の調査を推進し、自動車交通がふくそうする地区等において、駐車場整備地区の指定を促進するとともに、当該地区において計画的、総合的な駐車対策を行うため、駐車場整備計画の策定を推進する。
  2. 大規模な建築物に対し駐車場の整備を義務付ける附置義務条例の制定の促進等を行うとともに、各種補助制度、融資制度や税制上の優遇措置等を活用した民間駐車場の整備を促進する。この場合、共同荷さばき駐車場の整備についても配慮する。
     また、都市機能の維持・増進を図るべき地区及び交通結節点等重点的に駐車場の整備を図るべき地域において、特定交通安全施策等整備事業や有料融資事業(無利子貸付制度)等を活用した公共駐車場の整備を積極的に推進する。
  3. 既存駐車場の有効利用を図るため、駐車場案内・誘導システムの整備と高度化を推進する。また、郊外部からの過剰な自動車流入を抑止し、都心部での交通のふくそうを回避するため、パークアンドライド、パークアンドサイクルライド(自家用車を駐車場に駐車し、自転車に乗り換える形態)の普及のための駐車場等の環境整備を推進する。

ウ 違法駐車締め出し気運の醸成・高揚
 違法駐車の排除及び自動車の保管場所の確保等に関し、国民への広報・啓発活動を行うとともに、関係機関・団体との密接な連携を図り、地域交通安全活動推進委員の積極的な活用等により、住民の理解と協力を得ながら違法駐車締め出し気運の醸成・高揚を図る。

(9)地域住民等と一体となった安全な道路交通環境の整備

 安全な道路交通環境の整備に当たっては、道路を利用する人の視点をいかすことが重要であることから、地域住民や道路利用者の主体的な参加の下に交通安全施設等の点検を行う交通安全総点検を積極的に推進するとともに、道路利用者等が日常感じている意見について、はがき、インターネット、「道の相談室」等を活用して取り入れ、道路交通環境の整備に反映する。
 また、交通の安全は、住民の安全意識により支えられることから、安全で良好なコミュニティの形成を図るために、交通安全対策に関して住民が計画段階から実施全般にわたり積極的に参加できるような仕組みをつくり、行政と市民の連携による交通安全対策を推進する。
 さらに、安全な道路交通環境の整備に係る住民の理解と協力を得るため、事業の進ちょく状況、効果等について積極的に公表する。

(10)その他の道路交通環境の整備

ア 重大事故の再発防止
 社会的に大きな影響を与える重大事故が発生した際には、速やかに当該箇所の道路交通環境等事故発生の要因について調査するとともに、発生要因に即した所要の対策を早急に講ずることにより、当該事故と同様な事故の再発防止を図る。

イ 道路使用及び占用の適正化等

  1. 道路の使用及び占用の抑制
     工作物の設置、工事等のための道路の使用及び占用の許可に当たっては、道路の構造を保全し、安全かつ円滑な道路交通を確保するため、原則として抑制する方針の下に適正な運用を行うとともに、道路使用許可条件の履行、占用物件等の維持管理の適正化を図り、特に、地下埋設物の管理について指導を強化する。
     また、道路使用状況を正確に把握することにより、道路使用による道路交通への影響を最小限にとどめるため、道路使用許可に係る事務の電子化を進める。
  2. 不法占用物件等の排除
     道路交通の妨害となる不法占用物件等については、強力な指導取締りによりその排除を行うとともに、不法占用等の防止を図るための啓発活動を沿道住民等に対して積極的に行う。
  3. 道路の掘り返しの規制等
     道路の掘り返しを伴う占用工事等については、無秩序な掘り返しと工事に伴う事故を防止するため、極力これを抑制するとともに、計画的な占用工事等の施行について合理的な調整を図る。さらに、掘り返しを防止する抜本的対策として共同溝等の整備を推進する。

ウ 道路法に基づく通行の禁止又は制限
 道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路の破損、欠壊又は異常気象等により交通が危険であると認められる場合及び道路に関する工事のためやむを得ないと認められる場合には、道路法(昭和27年法律第180号)に基づき、迅速かつ的確に通行の禁止又は制限を行う。また、危険物を積載する車両の水底トンネル等の通行の禁止又は制限及び道路との関係において必要とされる車両の寸法、重量等の最高限度を超える車両の通行の禁止又は制限に対する違反を防止するため、必要な体制の拡充・強化を図る。

エ 自転車利用環境の総合的整備

  1.  都市構造に応じた都市交通としての自転車の役割と位置付けを明確にしつつ、自転車を歩行者、自動車と並ぶ交通手段の一つとして、安全かつ円滑に利用できる自転車利用空間をネットワークとして整備する等、総合的な自転車利用環境を整備する必要がある。このため、自転車や歩行者、自動車の交通量に応じて歩行者、自動車とも分離された自転車道及び自転車専用道路、自転車が走行可能な幅の広い歩道である自転車歩行者道等を整備するとともに、自転車専用通行帯、普通自転車の歩道通行部分の指定等の交通規制を実施する。
  2.  自転車等の駐車対策については、その総合的かつ計画的な推進を図ることを目的として、自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(昭和55年法律第87号)による施策を総合的に推進する。
     このため、自転車等駐車対策協議会を設置して調査審議し、総合計画を策定するよう促進するとともに、自転車等の駐車需要の多い地域及び今後駐車需要が著しく多くなることが予想される地域を中心に自転車駐車場の整備を推進するため、交通安全施設等整備事業、都市計画街路事業等による自転車等の駐車場整備事業を推進する。また、大量の自転車等の駐車需要を生じさせる施設について自転車駐車場の設置を義務付ける条例の制定の促進及び自転車駐車場整備センター、日本自転車普及協会等による自転車駐車場整備事業の育成を図る。
     さらに、自転車駐車場の整備とあいまって、自転車等利用者の通行の安全を確保するための計画的な交通規制を実施する。
  3.  鉄道の駅周辺等における放置自転車等の問題の解決を図るため、自転車等駐車対策協議会の積極的な運営と総合計画の策定の促進を図ること等を通じて、地方公共団体、道路管理者、都道府県警察、鉄道事業者等が適切な協力関係を保持する。また、これにより、用地提供について鉄道事業者の積極的な協力が得られるようにし、効率的・総合的な自転車駐車場の整備を推進するとともに、地域の状況に応じ、条例の制定等による駅前広場及び道路に放置されている自転車等の整理・撤去等の推進を図る。
     特に、交通バリアフリー法に基づき、市町村が定める重点整備地区内における特定経路を構成する道路においては、高齢者、身体障害者等の移動の円滑化に資するため、違法駐車行為に係る自転車の取締りの強化、広報啓発活動等の違法駐車を防止する取組及び自転車駐車場の整備を重点的に推進する。
  4.  自転車利用者に対し、交通社会における責任の自覚を求めるため、自転車の点検整備、自転車の安全な乗り方、道路交通法(昭和35年法律第105号)その他の法令の遵守、正しい駐車方法等に関する教育及び広報活動を推進する。また、道路交通法その他の法令に定める正しい走行方法、正しい駐車方法について、道路上で明確に理解できるよう走行区分の明確化等の整備を推進する。さらに、自転車産業振興協会等の関係団体による正しい駐車方法等に関する教育及び広報活動を支援する。

オ 子供の遊び場等の確保
 子供の遊び場の不足を解消し、路上遊戯等による交通事故の防止に資するとともに、都市における良好な生活環境づくり等を図るため、平成8年度を初年度とする第6次都市公園等整備七箇年計画等に基づき、住区基幹公園、都市基幹公園等の整備を推進する。また、都市公園、学校等の各種公共施設を有機的に連絡し、災害時には避難路ともなる緑道の整備を促進する。
 さらに、繁華街、小住宅集合地域、交通頻繁地域等、子供の遊び場等の環境に恵まれない地域又はこれに近接する地域に、優先的に、主として幼児及び小学校低学年児童を対象とした児童館及び児童遊園を設置するとともに、公立の小学校、中学校及び高等学校の校庭及び体育施設、社会福祉施設の園庭等の開放の促進を図る。

カ 電線類の地中化の推進
 都市景観の整備、安全で円滑な道路交通や良好な歩行空間の確保等を図るため、従来の地中化方式よりもコンパクトで低コストな電線共同溝等による電線類の地中化を一層推進する。

2 交通安全思想の普及徹底

 交通安全教育は、自他の生命尊重という理念の下に、交通社会の一員としての責任を自覚し、交通安全意識と交通マナーの向上に努め、相手の立場を尊重し、他の人々や地域の安全にも貢献できる良き社会人を育成する上で、重要な意義を有している。交通安全意識と交通マナーを身に付けるためには、人間の成長過程に合わせ、生涯にわたる学習を促進していくことが必要である。
 このため、交通安全教育指針(平成10年国家公安委員会告示第15号)等を活用し、幼児から成人に至るまで、段階的かつ体系的に交通安全教育を行うとともに、高齢化が進展する中で、社会に参加する高齢者の交通安全を確保する観点から、高齢者に対する交通安全教育を強力に推進する。特に、自転車を使用することが多い児童、中学生及び高校生に対しては、将来の運転者教育の基礎としての自転車の安全利用に関する指導を強化する。
 学校においては、学習指導要領に基づき、関連教科や道徳、特別活動及び総合的な学習の時間を中心に、教育活動全体を通じて計画的かつ組織的な指導に努める。
 交通安全教育・普及啓発活動を行うに当たっては、参加・体験・実践型の教育方法を積極的に取り入れるとともに、教材の充実及び実施主体間の相互利用の促進を図るなどして、国民が自ら納得して安全な交通行動を実践することができるよう、必要な情報を分かりやすく提供することに努める。
 交通安全教育・普及啓発活動については、国、地方公共団体、警察、学校、関係民間団体及び家庭がそれぞれの特性をいかし、互いに連携を取りながら地域ぐるみの活動が推進されるよう促す。特に、交通安全教育・普及啓発活動に当たる地方公共団体職員や教職員の指導力の向上を図るとともに、地域における民間の指導者を育成することなどにより、地域の実情に即した主体的な活動を促進する。
 また、子供、父母、祖父母の世代間交流によって各世代が交通安全について互いに注意を呼び掛け合うことにより、効果的な交通安全教育・普及啓発活動の推進に努める。
 さらに、交通安全教育・普及啓発活動の効果を事後に確認することにより、効果的な実施に努めるとともに、交通安全教育・普及啓発活動の意義、重要性等について関係者の認識が深まるよう努める。

(1)段階的かつ体系的な交通安全教育の推進

ア 幼児に対する交通安全教育
 幼児に対する交通安全教育は、心身の発達段階に応じて、基本的な交通ルールを遵守し、交通マナーを実践する態度を習得させるとともに、日常生活において安全に道路を通行するために必要な基本的な技能及び知識を習得させることを目標とする。
 幼稚園・保育所においては、家庭及び関係機関・団体等と連携・協力を図りながら、日常の教育・保育活動のあらゆる場面をとらえて交通安全教育を計画的かつ継続的に行う。これらを効果的に実施するため、紙芝居や腹話術、視聴覚教材等を利用したり具体の場面を設定したりするなど、分かりやすい指導に努めるとともに、指導資料の作成、教職員の指導力の向上及び教材・教具の整備を推進する。
 児童館及び児童遊園においては、主として幼児を対象に、遊びによる生活指導の一環として、交通安全に関する指導を推進するとともに、母親クラブ等の組織化を促進し、その活動の強化を図る。
 関係機関・団体は、教材・教具の提供等を行うことにより、幼稚園・保育所において行われる交通安全教育の支援を行うとともに、家庭における適切な指導、交通安全についての積極的な話合い等が行われるよう保護者に対する交通安全講習会等の実施に努める
 また、交通ボランティアによる幼児に対する通園時の安全な行動の指導、保護者を対象とした交通安全講習会等の開催を促進する。

イ 児童に対する交通安全教育
 児童に対する交通安全教育は、心身の発達段階や地域の実情に応じて、歩行者及び自転車の利用者として必要な技能と知識を習得させるとともに、道路及び交通の状況に応じて、安全に道路を通行するために、道路における危険を予測し、これを回避して安全に通行する意識及び能力を高めることを目標とする。
 小学校においては、家庭及び関係機関・団体等と連携・協力を図りながら、教科「体育」、道徳、学級活動・児童会活動・学校行事等の特別活動、総合的な学習の時間等を中心に、学校教育活動全体を通じて、歩行者としての心得、自転車の安全な利用、乗り物の安全な利用、交通ルールの意味及び必要性等について重点的に交通安全教育を実施する。
 小学校における交通安全教育を計画的に実施し、効果的なものとするため、指導用参考資料等を作成・配布するとともに、交通安全教育の在り方や実践に関する調査研究、教員等を対象とした研修会等を実施する。
 関係機関・団体は、小学校において行われる交通安全教育の支援を行うとともに、児童に対する補完的な交通安全教育の推進を図る。また、父母等の保護者が日常生活の中で模範的な行動をとり、歩行中、自転車乗用中等実際の交通の場面で、児童に対し、基本的な交通ルールや交通マナーを教えられるよう保護者を対象とした講習会等を開催する。
 さらに、交通ボランティアによる通学路における児童に対する安全な行動の指導、児童の保護者を対象とした交通安全講習会等の開催を促進する。

ウ 中学生に対する交通安全教育
 中学生に対する交通安全教育は、日常生活における交通安全に必要な事柄、特に、自転車で安全に道路を通行するために必要な技能と知識を十分に習得させるとともに、道路を通行する場合は、思いやりをもって、自己の安全ばかりでなく、他の人々の安全にも配慮できることを目標とする。
 中学校においては、家庭及び関係機関・団体等と連携・協力を図りながら、教科「保健体育」、道徳、学級活動・生徒会活動・学校行事等の特別活動、総合的な学習の時間等を中心に、学校教育活動全体を通じて、歩行者としての心得、自転車の安全な利用、自動車の特性、危険の予測と回避、標識等の意味、応急手当等について重点的に交通安全教育を実施する。
 中学校における交通安全教育を計画的に実施し、効果的なものとするため、指導用参考資料等を作成・配布するとともに、交通安全教育の在り方や実践に関する調査研究、教員等を対象とした心肺そ生法も含めた研修会等を実施する。
 関係機関・団体は、中学校において行われる交通安全教育の支援を行うとともに、中学生に対する補完的な交通安全教育の推進を図る。

エ 高校生に対する交通安全教育
 高校生に対する交通安全教育は、日常生活における交通安全に必要な事柄、特に、二輪車の運転者及び自転車の利用者として安全に道路を通行するために必要な技能と知識を習得させるとともに、交通社会の一員として責任を持って行動することができる健全な社会人を育成することを目標とする。
 高等学校においては、家庭及び関係機関・団体等と連携・協力を図りながら、教科「保健体育」、ホームルーム活動・生徒会活動・学校行事等の特別活動、総合的な学習の時間等を中心に、学校教育活動全体を通じて、自転車の安全な利用、二輪車・自動車の特性、運転者の責任、応急手当等について更に理解を深めるとともに、生徒の多くが、近い将来、普通免許等を取得することが予想されることから、免許取得前の教育としての性格を重視した交通安全教育を行う。特に、二輪車の安全に関する指導については、生徒の実態や地域の実情に応じて、二輪車の安全運転を推進する機関・団体等と連携しながら、安全運転に関する意識の高揚と実践力の向上を図るとともに、二輪車の実技指導等を含む交通安全教育の充実を図る。
 高等学校における交通安全教育を計画的に実施し、効果的なものとするため、指導用参考資料等を作成・配布するとともに、交通安全教育の在り方や実践に関する調査研究、教員等を対象とした心肺そ生法も含めた研修会、交通安全教育実践地域事業等を実施する。
 関係機関・団体は、高等学校において行われる交通安全教育の支援を行うとともに、高校生に対する補完的な交通安全教育の推進を図る。

オ 成人に対する交通安全教育
 成人に対する交通安全教育は、自動車等の安全運転の確保の観点から、免許取得時及び免許取得後の運転者の教育を中心として行うほか、社会人、大学生等に対する交通安全教育の充実に努める。
 運転免許取得時の教育は、自動車教習所における教習が中心となることから、教習水準の一層の向上に努める。
 免許取得後の運転者教育は、運転者としての社会的責任の自覚、安全運転に必要な知識及び技術、特に危険予測・回避の能力の向上、交通事故被害者の心情等交通事故の悲惨さに対する理解、交通安全意識・交通マナーの向上を目標とし、公安委員会が行う各種講習、自動車教習所等が受講者の特性に応じて行う運転者教育及び事業所の安全運転管理の一環として安全運転管理者、運行管理者等が行う交通安全教育を中心として行う。
 自動車の使用者は、安全運転管理者、運行管理者等を法定講習、指導者向けの研修会等へ積極的に参加させ、事業所における自主的な安全運転管理の活発化に努める。また、自動車安全運転センター安全運転中央研修所等の研修施設において、高度な運転技術、指導方法等を身に付けた運転者教育指導者の育成を図るとともに、これらの交通安全教育を行う施設の整備を推進する。
 また、社会人を対象とした学級・講座などにおける交通安全教育の促進を図るなど、公民館等の社会教育施設における交通安全のための諸活動を促進するとともに、関係機関・団体による実践活動を促進する。
 大学生等に対しては、学生の二輪車・自動車の利用等の実態に応じ、関係機関・団体等と連携し、交通安全教育の充実に努める。

カ 高齢者に対する交通安全教育
 高齢者に対する交通安全教育は、加齢に伴う身体機能の変化が歩行者又は運転者としての交通行動に及ぼす影響を理解させるとともに、道路及び交通の状況に応じて安全に道路を通行するために必要な実践的技能及び交通ルール等の知識を習得させることを目標とする。
 高齢者に対する交通安全教育を推進するため、国及び地方公共団体は、高齢者に対する交通安全指導担当者の養成、教材・教具等の開発など指導体制の充実に努めるとともに、参加・体験・実践型の交通安全教育を積極的に推進する。また、関係団体、交通ボランティア、福祉関係者等と連携して、高齢者の交通安全教室等を開催するとともに、高齢者に対する社会教育活動・福祉活動、各種の催し等の多様な機会を活用した交通安全教育を実施する。特に、交通安全教育を受ける機会のなかった高齢者を中心に、家庭訪問による個別指導、高齢者と日常的に接する機会を利用した助言等が地域ぐるみで行われるように努める。この場合、高齢者の自発性を促すことに留意しつつ、高齢者の事故実態に応じた具体的な指導を行うこととし、反射材の活用等交通安全用品の普及にも努める。
 また、高齢運転者に対しては、高齢者講習及び更新時講習における高齢者学級の内容の充実に努める。
 高齢者同士の相互啓発等により交通安全意識の高揚を図るため、老人クラブ、老人ホーム等における交通安全部会の設置、高齢者交通安全指導員(シルバーリーダー)の養成等を促進し、老人クラブ等が関係団体と連携して、「ヒヤリ地図」の作成等自主的な交通安全活動を展開し、地域・家庭における交通安全活動の主導的役割を果たすよう指導・援助を行う。
 さらに、家庭において適切な助言等が行われるよう、交通安全母親活動、世代間交流による交通安全普及啓発活動等の促進に努める。

キ 身体障害者に対する交通安全教育
 身体障害者に対しては、交通安全のために必要な技能及び知識の習得のため、地域における福祉活動の場を利用するなどして、障害の程度に応じ、きめ細かい交通安全教育を推進する。また、手話通訳員の配置、字幕入りビデオの活用等に努めるとともに、身近な場所における教育機会の提供、効果的な教材の開発等に努める。
 さらに、自立歩行ができない身体障害者に対しては、介護者、交通ボランティア等の身体障害者に付き添う者を対象とした講習会等を開催する。

ク 外国人に対する交通安全教育
 外国人に対する交通安全教育は、我が国の交通ルールに関する知識の普及を目的として推進するとともに、外国人向けの教材の充実を図り、効果的な交通安全教育を推進する。また、外国人を雇用する使用者等の交通安全意識を高め、雇用等されている外国人による積極的な講習会等への参加を促進する。

(2)交通安全に関する普及啓発活動の推進

ア 交通安全運動の推進
 国民一人一人に広く交通安全思想の普及・浸透を図り、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を習慣付けるとともに、国民自身による道路交通環境の改善に向けた取組を推進するための国民運動として、国の運動主催機関・団体を始め、地方公共団体の交通対策協議会等の構成機関・団体が相互に連携して、交通安全運動を組織的・継続的に展開する。
 交通安全運動の運動重点としては、高齢者の交通事故防止、子供の交通事故防止、シートベルト及びチャイルドシートの正しい着用の徹底、夜間(特に薄暮時)における交通安全、自転車の安全利用の促進、違法駐車の排除等、全国的な交通情勢に即した事項を設定する。また、交通安全運動の実施に当たっては、事前に、運動の趣旨、実施期間、運動重点、実施計画等について広く住民に周知することにより、市民参加型の交通安全運動の充実・発展を図る。
 さらに、地域の実情に即した効果的な交通安全運動を実施するため、地域の事故実態、住民のニーズ等を踏まえた実施に努め、地域の実態に応じた運動重点を定めるとともに、地域の実情に精通し、地域に密着したきめ細かい活動が期待できる民間団体及び交通ボランティアの活動の活性化、住民が主体的に参加する交通安全総点検、「ヒヤリ地図」の作成等の自主的な交通安全活動を促進する。
 また、事後に、運動の効果を検証、評価することにより、一層効果的な運動が実施されるよう配意する。

イ シートベルト及びチャイルドシートの正しい着用の徹底等
 シートベルト及びチャイルドシートの着用効果及び正しい着用方法についての理解を求め、正しい着用の徹底を図る。あわせて、後部座席におけるシートベルトの着用推進を図る。
 このため、地方公共団体、関係機関・団体等との協力の下、あらゆる機会・媒体を通じて積極的に普及啓発活動を展開する。
 特に、チャイルドシートについては、着用推進シンボルマーク等を活用しつつ、効果的な広報啓発に努めるとともに、正しい着用を指導する指導員を養成し、幼児の保護者等に対する指導・助言、情報提供等の充実を図る。また、地方公共団体、民間団体等が行うチャイルドシートの再利用活動の拡充を促進し、チャイルドシートを利用しやすい環境づくりを進める。
 さらに、チャイルドシートと座席との適合表の公表、分かりやすい取扱説明書の作成等、チャイルドシート製作者又は自動車製作者における取組を促すとともに、販売店等における利用者への正しい着用の指導・助言を促進する。

ウ 走行中の携帯電話の使用及びカーナビゲーション装置等の画像の注視の危険性に関する広報啓発
 自動車販売店、自動車用品販売店等において、また、各種講習会、交通安全運動等の機会をとらえ、走行中の携帯電話の使用及びカーナビゲーション装置等の画像の注視の危険性について、具体的事故事例等を紹介するなどして周知徹底を図る。
 また、事業所の安全運転管理者、運行管理者等による運転者に対する指導が徹底されるように努める。

エ 交通の安全に関する広報の推進
 交通の安全に関する広報については、テレビ、ラジオ、新聞、インターネット等の広報媒体を活用して、交通事故等の実態を踏まえた広報、日常生活に密着した内容の広報、交通事故被害者の声を取り入れた広報等、具体的で訴求力の高い内容を重点的かつ集中的に実施するなど、実効の挙がる広報を次の方針により行う。

  1.  家庭、学校、職場、地域等と一体となった広範なキャンペーンや、官民が一体となった各種の広報媒体を通じての集中的なキャンペーン等を積極的に行うことにより、高齢者の交通事故防止、シートベルト及びチャイルドシートの正しい着用の徹底、若年運転者の無謀運転の防止、飲酒運転の追放、違法駐車の排除等を図る。
  2.  交通安全に果たす家庭の役割は極めて大きいことから、家庭向け広報媒体の積極的な活用、地方公共団体、町内会等を通じた広報等により家庭に浸透するきめ細かな広報の充実に努め、子供、高齢者等を交通事故から守るとともに、暴走運転、無謀運転、飲酒運転等を追放する。
  3.  民間団体の交通安全に関する広報活動を援助するため、国及び地方公共団体は、交通の安全に関する資料、情報等の提供を積極的に行うとともに、全国民的気運の盛り上がりを図るため、報道機関の理解と協力を求める。

オ その他の普及啓発活動の推進

  1.  高齢者の交通事故防止に関する国民の意識を高めるため、高齢者交通安全マークの積極的な普及・活用を図るとともに、他の年齢層に高齢者の特性を理解させるよう努める。また、高齢者の運転中の事故を防止するため、高齢運転者標識(高齢者マーク)を普及するとともに、高齢運転者標識を取り付けた自動車への保護意識を高めるように努める。
  2.  薄暮の時間帯から夜間にかけて重大事故が多発する傾向にあることから、夜間の重大事故の主原因となっている最高速度違反、飲酒運転等による事故実態・危険性等を広く周知し、これら違反の防止を図る。また、高齢歩行者を始めとする各年齢層の歩行者が、ドライバーから視認性の高い服装を着用し、反射材を活用する気運の醸成を図るとともに、自転車の灯火の点灯の徹底及び自転車の側面等への反射器材の取付けを促進するなど、夜間事故の防止を図る。
     さらに、薄暮時における自動車の前照灯の早期点灯を促す。
  3.  自転車利用者の交通マナーの向上を図り、自転車乗用中の交通事故や自転車による迷惑行為を防止するため、歩行者に配慮した通行等自転車の正しい乗り方に関する普及啓発活動を推進する。
  4.  国民が、交通事故の発生状況を認識し、交通事故防止に関する意識の啓発等を図ることができるよう、各種の交通事故関連情報を統合したシステムを開発し、これによりインターネットを通じて事故データ及び事故多発地点に関する情報の提供に努める。
  5.  自動車アセスメント情報や、安全装置の有効性、自動車の正しい使い方、点検整備の方法に係る情報、交通事故の概況などの情報を総合的な安全情報として取りまとめ、自動車ユーザー、自動車運送事業者、自動車製作者などの情報の受け手に応じ適時適切に届けることにより、関係者の交通安全に関する意識を高める。

(3)交通の安全に関する民間団体等の主体的活動の推進等

 交通安全を目的とする民間団体については、交通安全指導者の養成等の事業及び諸行事に対する援助並びに交通安全に必要な資料の提供活動を充実するなど、その主体的な活動を促進する。また、地域団体、自動車製造・販売団体、自動車利用者団体等については、それぞれの立場に応じた交通安全活動が地域の実情に即して効果的かつ積極的に行われるよう、全国交通安全運動等の機会を利用して働き掛けを行う。
 そのため、交通安全対策に関する行政・民間団体間及び民間団体相互間において定期的に連絡協議を行い、交通安全に関する国民挙げての活動の展開を図る。
 また、交通指導員等必ずしも組織化されていない交通ボランティア等に対しては、資質の向上に資する援助を行うことなどにより、その主体的な活動及び相互間の連絡協力体制の整備を促進する。
 さらに、交通の安全は、住民の安全意識により支えられることから、安全で良好なコミュニティの形成を図るため、住民や道路利用者が主体的に行う「ヒヤリ地図」の作成、交通安全総点検等住民が積極的に参加できるような仕組みをつくり、行政と市民の連携による交通安全対策を推進する。

3 安全運転の確保

 安全運転を確保するためには、運転者の能力や資質の向上を図ることが必要であり、このため、運転者のみならず、これから運転免許を取得しようとする者までを含めた運転者教育等の充実に努める。運転免許制度については、最近の交通情勢を踏まえて必要な改善を図る。
 また、企業・事業所等が交通安全に果たすべき役割と責任を重視し、企業・事業所等の自主的な安全運転管理対策の推進及び自動車運送事業者等の行う運行管理の充実を図るとともに、交通労働災害の防止等を図るための取組を進める。
 さらに、高度化、多様化する道路交通情報への国民のニーズへの対応や、道路交通の安全に影響を及ぼす自然現象に関する適時・適切な情報提供を実施するため、情報通信技術(IT)等を活用しつつ、道路交通に関する総合的な情報提供の充実を図る。

(1)運転者教育等の充実

 安全運転に必要な知識及び技能を身に付けた上で安全運転を実践できる運転者を育成するため、免許取得前から、安全意識を醸成する交通安全教育の充実を図るとともに、免許取得時及び免許取得後においては、特に危険予測・危険回避能力向上のための訓練を行う。
 また、これらの機会が、単なる知識や技能を教える場にとどまることなく、個々の心理的・性格的な適性を踏まえた教育、遺族の悲しみを始めとする交通事故の悲惨さの理解を深める教育等を行うことを通じて、運転者の安全に運転しようとする意識及び態度を向上させるよう、教育内容の充実を図る。

ア 運転免許を取得しようとする者に対する教育の充実

  1.  自動車教習所における教習の充実
     自動車教習所の教習に関し、交通事故の発生状況、道路環境等の交通状況を勘案しつつ、教習カリキュラムの見直し・検討を進めるほか、教習指導員等の資質向上、教習内容及び技法の充実を図り、教習水準を高める。
     また、教習水準に関する情報の国民への提供に努める。
  2.  取得時講習の充実
     原付免許、普通二輪免許、大型二輪免許及び普通免許を取得しようとする者に対する取得時講習の充実に努める。

イ 運転者に対する再教育等の充実
 取消処分者講習、停止処分者講習、違反者講習、初心運転者講習、更新時講習及び高齢者講習により運転者に対する再教育が効果的に行われるよう、講習施設・設備等の拡充を図るほか、講習指導員の資質向上、講習資機材の高度化並びに講習内容及び講習方法の充実に努める。
 また、実車を用いた参加・体験・実践型の運転者教育及びその施設・資機材の充実を図る。
 さらに、自動車教習所については、既に運転免許を取得した者に対する再教育も実施するなど、地域の交通教育センターとしての機能の充実に努める。

ウ 二輪車安全運転対策の推進
 取得時講習のほか、自動二輪車安全運転講習及び原付等安全講習の推進に努める。また、指定自動車教習所における交通安全教育体制の整備等を促進し、二輪車運転者に対する教育の充実強化に努める。

エ 高齢運転者対策の充実
 高齢運転者の交通事故防止を図るため、高齢者講習の充実及び更新時講習における高齢者学級の拡充に努め、運転適性検査器材等の活用及び実車の使用による個別安全運転指導の実施を通じて、高齢者の身体的な機能の変化を踏まえた適切な指導等を行う。

オ シートベルト及び乗車用ヘルメットの正しい着用の徹底
 シートベルト及び乗車用ヘルメットの正しい着用の徹底を図るため、関係機関・団体と連携し、各種講習・交通安全運動等あらゆる機会を通じて、着用効果の啓発等着用推進キャンペーンを積極的に行うとともに、シートベルト着用義務違反及びヘルメット着用義務違反に対する街頭での指導取締りの充実を図る。

カ 自動車安全運転センターの業務の充実
 自動車安全運転センターの行う通知、証明及び調査研究業務等の一層の充実強化を図るとともに、安全運転中央研修所における各種の訓練施設を活用し、高度の運転技能と専門的知識を必要とする安全運転指導者、職業運転者、青少年運転者等に対する参加・体験・実践型の交通安全教育の充実を図る。

キ 事業用自動車の運転者教育の充実
 事業用自動車の運転者には、一般の運転者よりも高い資質が求められていることから、事業者が運転者に安全教育を実施する際の教育指針を策定する。また、事業者に対して、事故・違反惹起運転者、初任運転者及び高齢運転者に対する特別な教育を実施することやこれらの運転者に適性診断を受診させることなどを義務付ける。

ク 自動車事故対策センターによる自動車運送事業等に従事する運転者に対する適性診断の充実
 自動車事故対策センターによる自動車運送事業等に従事する運転者に対する適性診断については、診断技術の向上と診断機器の充実を図るとともに、受診環境の整備を行い、受診を積極的に促進する。

ケ 交通事犯被収容者に対する教育活動等の充実
 交通事犯受刑者及び同事犯少年に対する教育活動については、生命尊重の精神及び遵法精神のかん養並びに被害者の視点に立った指導等に重点を置き、対象者の個別的な問題性に応じた交通安全教育の一層の充実に努める。また、交通事犯以外の被収容者に対しても、必要に応じて、一般啓発活動としての交通安全教育の実施を推進する。
 なお、交通事犯に係る少年に対する資質鑑別の在り方については、専門的立場から研究開発を更に進める。

コ 交通事犯者に対する保護観察の充実
 交通事犯に係る保護観察については、集団及び個別の処遇に当たる保護観察官並びに保護司の処遇能力の充実を図るとともに、処遇機材の整備並びに効果的処遇態勢及び処遇技法の開発を推進する。

サ 悪質危険な運転者の早期排除等
 行政処分制度の適正かつ効果的な運用を行うほか、危険性のある者に対する施策として、適性試験や運転免許証の更新時における適性検査の適正な実施に努めるなど、悪質危険な運転者の早期排除を図る。

(2)運転免許制度の改善

 交通事故の傾向等、最近の交通情勢を踏まえた運転免許制度の見直し、検討を行う。運転免許試験については、現実の交通環境における能力の有無を的確に判定するための試験方法等の見直しを図る。
 また、国民の立場に立った運転免許業務を行うため、手続の簡素化の推進により更新負担の軽減を図るとともに、運転免許試験場における身体障害者等のための設備・資機材の整備及び運転適性相談活動の充実を図る。
 さらに、運転免許証の偽変造防止、運転免許業務運営の合理化等を図る観点から、高度なセキュリティ機能を有する電子技術を応用した運転免許証のICカード化について本格的に検討を行い、その早期導入を図る。

(3)安全運転管理の推進

 安全運転管理者及び副安全運転管理者に対する講習を充実するなどにより、これらの者の資質及び安全意識の向上を図るとともに、事業所内で交通安全教育指針に基づいた交通安全教育が適切に行われるよう安全運転管理者等を指導する。
 また、安全運転管理者等の未選任事業所の一掃を図り、企業内の安全運転管理体制を充実強化し、安全運転管理業務の徹底を図る。
 さらに、事業活動に関してなされた道路交通法違反等についての使用者等への通報制度を十分活用するとともに、使用者、安全運転管理者等による下命、容認違反等については、使用者等の責任追及を徹底し適正な運転管理を図る。

(4)自動車運送事業者等の行う運行管理の充実

ア 運行管理者制度の充実
 運行管理者の資質及び安全意識の向上を図るため、貨物自動車運送事業に導入されている運行管理者試験制度を旅客自動車運送事業にも導入する。また、貨物自動車運送事業及び一般貸切旅客自動車運送事業において導入されている営業所の車両数に応じた運行管理者の最低数を、一般乗合旅客自動車運送事業及び一般乗用旅客自動車運送事業にも導入する。

イ 自動車運送事業者等に対する指導監督の充実
 自動車運送事業者等に対して、運行管理の徹底を図るため、監査体制の強化、監査対象の重点化等により指導監督を強化するとともに、事業者団体等関係団体を通じての指導を行う。
 また、貨物自動車運送事業者については、貨物自動車運送適正化事業実施機関を通じての過労運転・過積載の防止等運行の安全を確保するための指導の徹底を図る。
 このほか、高速バス、トラック、タクシー等について、高速道路等における事故時の被害を軽減するため、シートベルト着用の徹底等の指導の強化を図る。

ウ 事故情報の多角的分析の実施
 事業用自動車の事故に関する情報の充実を図るため、自動車事故報告規則(昭和26年運輸省令第104 号)について、報告対象事故、報告内容等の見直しを行うとともに、陸運支局を活用した自動車運送事業者に係る事故やニアミス情報の収集を充実強化する。
 また、これら事故情報のデータベース化を図ることにより、様々な観点から事故情報の集計・分析・検索を行うとともに、その結果の有効活用を図る。

エ 運行管理者等に対する指導講習の充実
 運行管理者等に対する指導講習について、事故情報の多角的分析の結果の活用等により、講習内容を充実するとともに、講習水準の向上を図り、視聴覚機材の活用等による効果的な講習を実施し、過労運転・過積載の防止等運行の安全を確保するための指導の徹底を図る。また、事故を惹起した運行管理者等に対する特別な講習の導入等運行管理者講習の充実を行う。

(5)交通労働災害の防止等

ア 交通労働災害の防止
 交通労働災害防止のためのガイドラインの周知徹底を行うことにより、事業場における管理体制の確立、適正な労働時間等の管理、適正な走行管理、運転者に対する教育、健康管理、交通労働災害防止に対する意識の高揚等を促進する。
 また、これらの対策が効果的に実施されるよう関係団体と連携して、事業場における交通労働災害防止担当管理者の配置、交通労働災害防止のためのガイドラインに基づく同管理者及び自動車運転業務従事者に対する教育の実施を推進するとともに、交通労働災害防止指導員による事業場に対する個別指導等を実施する。

イ 運転者の労働条件の適正化
 自動車運転者の労働時間、休日、割増賃金、賃金形態等の労働条件の改善を図るため、労働基準法(昭和22年法律第49号)等の関係法令及び「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)の履行を確保するための監督指導を実施する。
 また、関係行政機関相互の連絡会議の開催及び監督指導結果等の相互通報制度等の活用を図る。

(6)道路交通に関する情報の充実

ア 道路交通情報の充実
 多様化する道路利用者のニーズにこたえるため、道路利用者に対し必要な道路交通情報を提供することにより、安全かつ円滑な道路交通を確保するとともに、光ファイバーネットワーク、マイクロエレクトロニクス等の新たな情報技術を活用しつつ、車両監視用テレビ、路側通信システム、車両感知器、道路標識、交通情報板等の既存の情報収集・提供体制の充実を図る。
 また、民間事業者が、警察や道路管理者により収集された道路交通情報を一層活用できるよう措置し、正確な道路交通情報の適切な提供を促進する。
 さらに、高度道路交通システム(ITS)の一環として、運転者に渋滞状況等の道路交通情報を提供する道路交通情報通信システム(VICS)の整備・拡充を積極的に図ることにより、交通の分散を図り、交通渋滞を解消し、交通の安全と円滑化を推進する。
 加えて、高度化された交通管制センターを中心に、個々の車両等との双方向通信が可能な光ビーコンを媒体とし、高度な交通情報提供、動的経路誘導、車両の運行管理、公共車両の優先、交通公害の減少、安全運転の支援、歩行者の安全確保等を図ることにより交通の安全及び快適性を確保しようとする新交通管理システム(UTMS)の構想に基づき、システムの充実、キーインフラである光ビーコンの整備等の施策の推進を図る。

イ 危険物輸送に関する情報提供の充実等
 危険物の輸送時の事故による大規模な災害を未然に防止し、災害が発生した場合の被害の軽減に資する情報提供の充実等を図るため、イエローカード(危険有害物質の性状、処理剤及びその調達先等事故の際必要な情報を記載した緊急連絡カード)の携行、関係法令の遵守、乗務員教育の実施等について危険物運送事業者の指導を強化する。
 また、危険物運搬車両の交通事故による危険物の漏洩等が発生した場合に、安全かつ迅速に事故処理等を行うため、危険物データベース及び危険物に対応することの可能な装備資器材の整備を図る。
 さらに、危険有害物質運搬車両に関しては、国連勧告に基づく危険有害物質の表示・特定の仕組みも含め、その表示の在り方について検討する。

ウ 気象情報等の充実
 道路交通に影響を及ぼす自然現象を的確に把握し、気象警報・注意報・予報及び津波警報・注意報並びに台風、大雨、地震、津波、火山噴火等の現象に関する情報の質的向上と適時・適切な発表及び迅速な伝達に努める。また、道路の降積雪や路面などの状況等を収集し、道路利用者に提供する気象情報システムの整備を推進する。
 さらに、気象、地震、津波、火山現象等に関する観測施設を適切に整備・配置し、維持するとともに、防災関係機関等との間の情報の共有や情報通信技術(IT)を活用した観測・監視体制の強化を図るものとする。このほか、広報や講習会等を通じて気象知識の普及に努める。

エ 災害発生時における情報提供の充実
 災害発生時において、道路の被災状況や道路交通状況を迅速かつ的確に収集・分析・提供し、復旧対策の早期立案や緊急交通路、緊急輸送路等の確保及び道路利用者等への道路交通情報の提供等に資するため、地震計、車両監視用テレビ、車両感知器、道路交通に関する情報提供装置・通信施設、道路管理情報システム等の整備を推進するとともに、インターネット等情報通信技術(IT)を活用した道路・交通に関する災害情報等の提供を推進する。

4 車両の安全性の確保

 現在、エレクトロニクス技術の自動車への利用範囲の拡大を始めとして、自動車に関する技術の進歩は目覚ましく、車両の安全対策として効果が期待できる範囲は確実に拡大していることから、今後車両の安全対策を拡充強化することが必要である。
 このような認識の下、車両構造に起因するとされる事故について対策を講ずるとともに、主に運転ミスなどの人的要因に起因するとされる事故についても、車両構造面からの対策によりできる限り交通事故の未然防止を図る。
 また、不幸にして発生してしまった事故についても、車両構造面からの被害軽減対策を拡充するとともに、事故発生後の車両火災防止や車両からの脱出容易性の確保など、被害拡大防止対策を併せて進めていく。
 なお、これらの対策については、自動車製作者や研究機関などによる安全な自動車の開発を促進する方策のみならず、使用者による安全な自動車の選択を促進する方策など、基礎研究から実用・普及までの各段階に応じた検討を行う必要がある。
 さらに、自動車が使用される段階においては、自動車には走行に伴い磨耗・劣化する部品や走行しなくても時間の経過とともに劣化する部品等が多く使用されており、適切な保守管理を行わなければ、不具合に起因する事故等の可能性が大きくなることから、自動車の適切な保守管理を推進する必要がある。
 自動車の保守管理は、一義的には、自動車使用者の責任の下になされるべきであるが、自動車は、交通事故等により運転者自身の生命、身体のみでなく、第三者の生命、身体にも影響を与える危険性を内包しているため、自動車検査により、各車両の安全性の確保を図る。

(1)車両の安全性に関する基準等の改善の推進

ア 道路運送車両の保安基準の拡充・強化等

  1. 車両の安全対策の推進
     今後の自動車の安全対策による交通事故死者数の低減目標やその推進の在り方等が盛り込まれた運輸技術審議会答申「安全と環境に配慮した今後の自動車交通政策のあり方について」(平成11年6月)を踏まえ、事故時における自動車の構造・装置、乗員被害等の状況を交通事故総合分析センターを活用して詳細に調査・分析し、自動車事故の実態を的確に把握するとともに、自動車使用の態様の変化、新技術の開発状況、諸外国の自動車安全対策の動向等を勘案し、具体的な安全対策を立案・実施していく。このため、これらの安全対策に係る方針、対策の具体的な内容、対策の事前効果予測・事後効果評価、対策を体系的に実施するための長期計画等について継続的に検討することを目的として、産・官・学が参加する車両安全対策総合検討会で効率的・体系的に検討を進める。さらに、毎年シンポジウムを開催するなどして、その検討結果を公表し、安全対策の策定過程の透明性を確保するとともに、関係者からの意見を踏まえて適宜対策の内容の見直しを行っていく。
  2. 道路運送車両の保安基準の拡充・強化
     車両の安全対策の基本である自動車の構造・装置等の安全要件を定める道路運送車両の保安基準について、車両安全対策総合検討会の検討結果を踏まえつつ、事故を未然に防ぐための予防安全対策、万が一事故が発生した場合においても乗員、歩行者等の保護を行うための被害軽減対策、その際に火災の発生等の二次災害が起こることを防止するための災害拡大防止対策のそれぞれの観点から、適切に拡充・強化を図る。
     なお、保安基準の拡充・強化の推進に当たっては、保安基準が自動車の国際的な流通を阻害することがないよう国際的に連携して検討を進める。

イ 先進安全自動車の開発、普及等
 エレクトロニクス技術や情報通信技術(IT)などの新技術により、自動車を高知能化して安全性を格段に高めるとともに、高度道路交通システム(ITS)技術の自動車としての受皿となる先進安全自動車(ASV)の研究、開発の促進を図る。
 また、先進安全自動車(ASV)のシステムのうち実用化段階にあるものについては、安全上のガイドラインとして技術指針を策定するとともに、特に死亡事故等の防止に大きく寄与するものについては保安基準を策定するなど、ASVを普及促進するための環境整備を図る。
 さらに、高信頼化された通信技術を用いて多様な道路環境の下で、道路側や他の車両と確実に情報交換を行う車両技術について、実道環境下での走行試験等により必要なデータの収集を行い、実用化のための指針・仕様の策定を図る。

ウ 車両の安全性等に関する日本工業規格の整備
 車両の安全性に関する日本工業規格については、従来から車両のハード面からの安全性を考慮し規格の整備を進めてきているが、さらに、ソフト面からの安全性を考慮して、直接運転視界試験方法、間接運転視界試験方法、高度道路交通システム(ITS)など、自動車と人間の接点部分の安全性に着目した日本工業規格の整備を行うとともに、国際的な基準・規格の整備活動と調和を図りつつ、交通事故防止に寄与するため、その整備に努める。

(2)自動車アセスメント情報の提供等

 自動車の安全装置の正しい使用方法、装備状況等の一般情報とともに、自動車の車種ごとの安全性に関する比較情報を公正中立な立場で取りまとめ、これを自動車使用者に定期的に提供する自動車アセスメント事業を自動車事故対策センターと共に推進する。これにより、自動車使用者の選択を通じて、より安全な自動車の普及拡大を促進すると同時に、自動車製作者のより安全な車造りの研究開発を促進する。
 また、チャイルドシートについても、型式ごとの安全性に関する比較情報等を自動車使用者に提供することにより、その選択を通じて、より安全なチャイルドシートの普及拡大を図る。
 さらに、継続検査時に整備工場の自動車検査員が整備を必要とすると判断した装置と部位について「自家用乗用車の型式別点検結果(ストロング・ウィークポイント)」として取りまとめ、これを自動車使用者の保守管理の参考情報として定期的に提供する。

(3)自動車の検査及び点検整備の充実

ア 自動車の検査体制の充実
 道路運送車両の保安基準の拡充・強化に合わせた検査体制の整備を推進することにより、道路運送車両法(昭和26年法律第185号)に基づく新規検査等の自動車検査の確実な実施を図る。また、街頭検査体制の充実強化を図ることにより、不正改造車両を始めとした整備不良車両の排除等を推進していく。
 指定自動車整備事業制度の適正な運用・活用を図るため、事業者に対する指導監督を強化する。さらに、軽自動車の検査については、その実施機関である軽自動車検査協会における検査の効率化を図るとともに、検査体制の充実強化を図る。

イ 型式指定制度の充実
 車両の構造に起因する事故の発生を防止するため、装置型式指定制度により新型自動車の安全性の審査体制の充実を図る。

ウ 自動車点検整備の充実

  1.  自動車点検整備の推進
     自動車使用者の保守管理意識を高揚し、点検整備の促進を図るため、自動車点検整備推進運動を関係者の協力の下に全国的に展開するなど、自動車使用者による保守管理の徹底を強力に促進する。
     また、自動車運送事業者の保有する事業用車両の安全性を確保するため、整備管理者等に対しても、監査、研修等のあらゆる機会をとらえ、その確実な実施を指導する。さらに、車両故障に起因する事故防止を図るため、整備管理上の問題点について調査を行い、整備管理者制度の改善に努める。
  2.  不正改造車の排除
     道路交通に危険を及ぼすなど社会的問題となっている暴走族の不正改造車や過積載を目的とした不正改造車等を排除し、自動車の安全運行を確保するため、関係機関の支援及び自動車関係団体の協力の下に「不正改造車を排除する運動」を全国的に展開し、広報活動の推進、関係者への指導、街頭検査等を強化することにより、不正改造防止について、自動車使用者及び自動車関係事業者等の認識を高める。
  3.  自動車整備技術の向上
     電子機器、新素材等新技術を採用した自動車の出現や自動車使用者の要請の多様化等に伴い、自動車整備事業における整備技術の向上が必要であり、近代化計画に基づく構造改善計画の推進を自動車分解整備事業者に指導すること等により、情報技術を活用した整備技術情報の提供、技術者の教育及び養成等を推進する。

(4)リコール制度の充実

 設計等に起因する基準不適合自動車について、自動車製作者等に対して改善措置の届出等を確実かつ早期に行うよう指導するなどリコール制度の適正な運用を図り、自動車の安全確保について自動車製作者等の指導監督の徹底に努める。
 また、国として、24時間受付システム、フリーダイヤル及びインターネット受付専用サイト等を活用し、自動車使用者からの自動車不具合情報の収集・分析の強化を図り、リコール対象車両の早期発見に努めるなど、リコール制度の充実を図る。

(5)自転車の安全性の確保

 自転車の安全な利用を確保し、自転車事故の防止を図るため、自転車利用者に対し定期的に自転車安全整備店において点検整備を受ける気運を醸成するとともに、点検整備の確保及び自転車の正しい利用方法等の指導を目的とした自転車安全整備制度の拡充を図り、あわせて、付帯保険により被害者の救済に資することを目的とするTSマークの普及に努める。
 さらに、夜間における交通事故の防止を図るため、灯火の取付けの徹底と反射器材の普及促進を図り、自転車の被視認性の向上を図る。

5 道路交通秩序の維持 

 年々増加している交通ルール無視による交通事故を防止するためには、交通指導取締り、交通事故事件捜査、暴走族取締り等を通じ、道路交通秩序の維持を図る必要がある。
 このため、交通事故実態等を的確に分析し、死亡事故等重大事故に直結する悪質・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いた交通指導取締りを推進する。
 また、事故原因の徹底究明を求める国民意識の高まり等を踏まえ、各種の交通犯罪及び交通事故事件捜査を適正かつ迅速に行うため、捜査の合理化並びに初動捜査及び科学的捜査の充実強化を図る。
 さらに、暴走族対策を強力に推進するため、関係機関・団体が連携し、地域ぐるみでの暴走族追放気運の高揚に努め、暴走行為をさせない環境づくりを推進するとともに、取締り体制及び資機材の充実強化を図る。

(1)交通の指導取締りの強化等

ア 一般道路における効果的な指導取締りの強化等
 一般道路においては、歩行者及び自転車利用者の事故防止並びに事故多発路線等における重大事故の防止に重点を置いて、交通指導取締りを効果的に推進する。このため、指導取締り体制を充実し、高齢者、身体障害者等の保護の観点に立った交通取締りを推進し、事故多発路線等における街頭指導活動を強化するとともに、無免許運転、飲酒運転、著しい速度超過、著しい過積載等の悪質・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いた取締りの強化を図る。
 また、事業活動に関してなされた過積載、過労運転等の違反については、自動車の使用者等に対する責任追及を徹底するとともに、必要に応じ自動車の使用制限命令や荷主等に対する再発防止命令を行い、さらに、事業者の背後責任が明らかとなった場合は、それらの者に対する指導、監督処分等を行うことにより、この種の違反の防止を図る。

イ 高速道路における指導取締りの強化等
 高速道路においては、重大な違反行為はもちろんのこと、軽微な違反行為であっても重大事故に直結するおそれがあることにかんがみ、交通の指導取締り体制の整備に努め、交通流や交通事故発生状況等の交通の実態に即した効果的な機動警ら等を実施することにより、違反の未然防止及び交通流の整序を図る。
 また、交通指導取締りは、悪質・危険性、迷惑性の高い違反を重点とし、特に、著しい速度超過、車間距離不保持、著しい過積載、過労運転、路肩走行、駐停車違反等の取締りを強化する。
 さらに、最高速度の異なる自動車の取締りを効果的に行うため、車種判別装置付自動速度違反取締装置の整備を推進する。

ウ 科学的な指導取締りの推進
 交通事故分析システムの高度化を図るとともに、取締り用装備資機材の改良等科学技術の進歩に対応した研究開発に努めるなど、交通事故実態に的確に対応した科学的かつ効率的な指導取締りを推進する。

(2)交通犯罪捜査及び交通事故捜査体制の強化

 ひき逃げ事件その他各種の交通犯罪の捜査及び交通事故事件捜査を適正かつ迅速に行うため、捜査の合理化を推進するとともに、次により要員、装備等の充実強化を図る。

ア 専従捜査体制の強化等
 交通犯罪捜査及び交通事故事件捜査体制を強化するため、専従職員の捜査能力の一層の向上及び体制の充実に努める。

イ 初動捜査体制及び科学的捜査体制の強化
 初動捜査体制及び科学的捜査体制を強化するため、事故処理車その他の車両、交通事故自動記録装置等の鑑識装備資機材、交通事故捜査支援システム等の整備を推進する。

(3)暴走族対策の強化

 凶悪化する暴走族による各種不法事案を未然に防止し、交通秩序を確保するとともに、青少年の健全な育成に資するため、関係機関・団体が連携し、次の暴走族対策を強力に推進する。

ア 暴走族追放気運の高揚及び家庭、学校等における青少年の指導の充実
 暴走族追放の気運を高揚させるため、地方公共団体における「暴走族根絶条例」等の制定を促進するとともに、報道機関等に対する資料提供を積極的に行い、凶悪化する暴走族の実態が的確に広報されるよう努めるなど、広報活動を積極的に行う。また、家庭、学校、職場、地域等において、青少年に対し、暴走族に加入しないよう適切な指導等を促進する。この場合、暴走族問題と青少年の非行等問題行動との関連性にかんがみ、青少年育成団体等との連携を図るなど、青少年の健全育成を図る観点から施策を推進する。

イ 暴走行為をさせないための環境づくり
 暴走族及びこれに伴う群衆のい集場所として利用されやすい施設の管理者に協力を求め、暴走族等をい集させないための施設の管理改善等の環境づくりを推進するとともに、地域における関係機関・団体が連携を強化し、暴走行為等ができない道路交通環境づくりを積極的に行う。
 また、事前の情報の入手に努め、集団不法事案に発展するおそれがあるときは、早期に暴走族と群衆を隔離するなどの措置を講ずる。

ウ 暴走族に対する指導取締りの強化
 暴走族取締りの体制及び装備資機材の充実を図るとともに、集団暴走行為、爆音暴走行為その他悪質事犯に対しては、あらゆる法令を適用して検挙及び補導を徹底し、併せて解散指導を積極的に行うなど、暴走族に対する指導取締りの強化を図る。
 また、「不正改造車を排除する運動」等を通じ、街頭検査において不法改造車両の取締りを行う。
 さらに、複数の都府県にまたがる広域暴走族事件に迅速かつ効率的に対処するため、関係都府県警察相互の捜査協力を積極的に行う。

エ 暴走族関係事犯者の再犯防止
 暴走族関係事犯の捜査に当たっては、個々の犯罪事実はもとより、組織の実態やそれぞれの被疑者の非行の背景となっている行状、性格、環境等の諸事情をも明らかにしつつ、厳正な処分が行われるよう努める。
 また、暴力団とかかわりのある者については、その実態を明らかにするとともに、暴力団から離脱するよう指導を徹底する。
 保護処分に付された暴走族少年の処遇に当たっては、交通道徳のかん養、家族関係、交友関係の調査、暴走族組織からの離脱等、再犯防止に重点を置いた個別指導・教育の実施に努める。
 さらに、暴走族に対する運転免許の行政処分については、特に迅速かつ厳重に行うとともに、処分者講習については、特別学級を編成するなど、再犯防止のための講習内容の充実を図る。

オ 車両の不正改造の防止
 暴走行為を助長するような車両の不正な改造を防止するよう、また、車両の部品等が不正な改造に使用されることがないよう、「不正改造車を排除する運動」等を通じ、全国的な広報活動の推進及び企業、関係団体に対する指導を積極的に行う。
 また、車両の運転者だけでなく、改造等を行った業者に対しても背後責任の追及を徹底する。

6 救助・救急体制等の整備

 交通事故による負傷者の救命を図り、また、被害を最小限にとどめるため、高速自動車国道を含めた道路上の交通事故に即応できるよう、救急医療機関、消防機関等の救急関係機関相互の緊密な連携・協力関係を確保しつつ、救助・救急体制及び救急医療体制の整備を図る。特に、負傷者の救命率・救命効果の一層の向上を図る観点から、救急現場又は搬送途上において、医師、看護婦・士、救急救命士、救急隊員等による一刻も早い救急医療、応急処置等を実施するための体制整備を図るほか、事故現場からの緊急通報体制の整備や事故現場における応急手当の普及等を推進する。

(1)救助・救急体制の整備

ア 救助体制の整備・拡充
 交通事故に起因する救助活動の増大及び事故の種類・内容の複雑多様化に対処するため、救助体制の整備・拡充を図り、救助活動の円滑な実施を期する。

イ 救急現場及び搬送途上における応急処置等の充実
 交通事故に起因する負傷者の救命効果の向上を図るため、救急救命士の養成・配置等の促進、一般の救急隊員の行う応急処置等の充実、ドクターカーの活用の促進を図り、救急現場及び搬送途上における応急処置等の充実を図る。また、医師の指示又は指導・助言の下に救急救命士を含めた救急隊員による応急処置等の質を確保するメディカルコントロール体制の充実を図る。

ウ 救急業務実施市町村の拡大
 救急業務未実施町村については、広域市町村圏の振興整備と併せて、一部事務組合又は事務委託等の広域的共同処理方式によるなど、救急需要の実態等に即した救急業務の実施体制づくりを推進する。また、これにより難い町村については、消防組織法(昭和22年法律第 226号)に基づく隣接市町村からの応援、消防法(昭和23年法律第 186号)に基づく他市町村に対する知事の要請による救急業務の実施、消防団等による救急搬送の実施等による補完体制を強化する。

エ 高速自動車国道等における救急業務実施体制の整備
 高速自動車国道における救急業務については、日本道路公団が道路交通管理業務と一元的に自主救急として処理するとともに、沿線市町村においても消防法の規定に基づき処理すべきものとして、両者は相協力して適切かつ効率的な人命救護を行う。
 このため、関係市町村、日本道路公団が共に通信連絡体制等の充実を図るなど連携を強化するとともに、日本道路公団が自主救急実施区間外のインターチェンジ所在市町村等に財政措置を講じ、当該市町村においても、救急業務実施体制の整備を促進する。
 また、本州四国連絡道路(瀬戸中央自動車道及び神戸淡路鳴門自動車道)においても、救急業務について本州四国連絡橋公団が関係市等に同様の財政措置を講ずるとともに、関係市等も救急業務に万全を期するよう、その実施体制の整備を促進する。
 さらに、日本道路公団、本州四国連絡橋公団及び関係市町村は、救急業務に必要な施設等の整備、従業者に対する教育訓練の実施等を推進する。

オ 集団救助・救急体制の整備
 大規模道路交通事故等の多数の負傷者が発生する大事故に対処するため、連絡体制の整備及び救護訓練の実施等、集団救助・救急体制を推進する。

カ 救助・救急設備等の整備
 救助工作車、救助資器材、高規格救急自動車、高度救命処置用資器材等の整備を推進するとともに、救急指令装置、救急医療情報収集装置、救急業務用地図等検索装置を一体化した消防緊急通信指令施設の導入を推進する。
 また、消防・防災ヘリコプターの全国配備を促進するとともに救急業務におけるヘリコプターの積極的活用を強力に推進する。
 さらに、救急医療機関等へのアクセスを改善するため、高速自動車国道における緊急開口部の整備、サ-ビスエリア等における緊急離着陸用ヘリポートの整備等を促進する。

キ 救助隊員及び救急隊員の教育訓練の充実
 複雑多様化する救助・救急事象に対応すべく救助隊員及び救急隊員の知識・技術等の向上を図るため、教育訓練の充実を強力に推進する。

ク 救急救命士の養成
 プレホスピタルケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の向上のために、全国の消防機関において救急救命士を計画的に配置できるようにその早期養成を図るとともに、救急医療施設における救急救命士の実地訓練、救急救命士養成所における教官への指導講習やカリキュラムの見直しを行うなど、教育訓練の充実を促進し、救急救命士の資質の向上を図る。

ケ 応急手当の普及
 交通事故による負傷者の救命効果を向上させるためには、心臓停止後3~4分以内に心臓マッサージを含む心肺そ生法等の応急手当を行うことが効果的であり、事故現場に居合わせた関係者等により、負傷者に対する迅速かつ適切な応急手当等が一般に行われるようにする必要がある。
 このため、平成12年度に策定された心肺そ生法に関する基準等の応急手当の知識・実技の普及を図ることとし、消防機関、保健所、医療機関、日本赤十字社、民間団体等の関係機関においては、指導資料の作成・配布、講習会の開催等を推進するとともに、救急の日、救急医療週間等の機会を通じて広報啓発活動を積極的に推進する。また、応急手当指導者の養成を強力に行っていくほか、救急要請受信時における応急手当の指導を推進する。さらに、自動車教習所における教習及び取得時講習、更新時講習等において応急救護処置に関する知識の普及に努める。加えて、学校においては、中学校、高等学校の教科「保健体育」において止血法や包帯法、心肺そ生法等の応急手当について指導の充実を図るとともに、心肺そ生法の実習を含む各種講習会の開催により教員の指導力の向上を図る。

コ 緊急通報システムの拡充
 交通事故等緊急事態発生時における負傷者の早期救出及び事故処理の迅速化のため、新交通管理システム(UTMS)の構想等に基づき、事故車両等から自動的に緊急通報等を行うシステムの普及を図る。
 また、緊急車両が現場に到着するまでのリスポンスタイムの縮減及び緊急走行時の交通事故防止のため、経路誘導情報の伝送及び緊急車両優先の信号制御を行うシステムの整備を図る。

(2)救急医療体制の整備

ア 救急医療機関等の整備
 救急医療体制の基盤となる初期救急医療体制を整備・拡充するため、休日夜間急患センターの設置の促進及び在宅当番医制の普及定着化を推進する。また、初期救急医療体制では応じきれない重症救急患者の診療を確保するため、原則として第二次医療圏単位に地域設定し、地域内の医療施設の実情に応じた方式(病院群輪番制又は共同利用型病院)で第二次救急医療体制の整備を図るとともに、重篤な救急患者を受け入れるための第三次救急医療体制として、複数科にまたがる診察機能を有する24時間体制の救命救急センターの整備を進め、評価事業によりその質の向上を図る。
 さらに、救急医療施設の情報を収集し、救急医療情報を提供することにより、これらの体制が有効に運用されるよう調整を行う救急医療情報センターの整備・充実を図る。
 また、大学における救急医学に関する教育の充実及び研究の促進のため、救急医学講座等の整備・充実を図る。

イ 救急医療担当医師・看護婦等の養成等
 救急医療に携わる医師を確保していくために、医師の卒前教育・臨床研修において、救急医療に関する教育研修の充実に努める。また、救命救急センター等で救急医療を担当している医師に対しても、救急患者の救命率をより向上させるために必要な呼吸・循環管理等の研修を拡充し、救急医療従事者の確保とその資質の向上を図る。
 看護婦・士についても、救急時に的確に医師を補助できるよう養成課程における救急医療実習を充実するとともに、養成課程終了後も救急医療研修を実施することにより、救急医療を担当する看護婦・士の確保を図る。また、保健所に勤務する保健婦等を対象に救急そ生法指導者講習会を実施し、保健所等において国民に対する救急そ生法の普及啓発を図る。

ウ ドクターヘリ事業の推進
 救急患者への救命医療を救急現場から直ちに行い、救急医療施設へ一刻も早く搬送し、交通事故等で負傷した患者の救命率の向上や後遺症を軽減させるため、医師等が同乗し救命医療を行いながら搬送できるドクターヘリを配備し、全国展開を図る。

(3)救急関係機関の協力関係の確保等

 救急医療施設への迅速かつ円滑な収容を確保するため、救急医療機関、消防機関等の関係機関における緊密な連携・協力関係の確保を推進するとともに、救急医療機関内の受入れ・連絡体制の明確化等を図る。
 また、医師、看護婦・士等が救急現場及び搬送途上に出動し、応急処置を行うことにより救急患者の救命効果の向上を図るため、医師等が同乗する救急用自動車の医療機関への配置を進めるほか、医師の判断を直接救急現場に届けられるようにするため、救急自動車に設置した自動車電話又は携帯電話により医師と直接交信するシステム(ホットライン)等を活用するなど、医療機関と消防機関が相互に連携を取りながら効果的な救急体制の整備を促進する。

7 損害賠償の適正化と被害者対策の推進

 交通事故被害者は、交通事故により多大な肉体的、精神的若しくは経済的打撃を受け、又は掛け替えのない生命を絶たれるなど、大きな不幸に見舞われており、交通事故発生後における諸対策がますます重要になっている。
 自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)は、自動車の運行による交通事故について、加害者側の損害賠償責任を強化し、この損害賠償の履行を確保するため、原則としてすべての自動車に対して自動車損害賠償責任保険(共済)の契約の締結を義務付けるとともに、政府において、ひき逃げや無保険(無共済)車両による事故の被害者を救済するための自動車損害賠償保障事業及び政府再保険等の運用益を活用した被害者救済対策事業等を行うこと等により、自動車事故による被害者の保護、救済を図っており、今後も更なる交通事故被害者の保護の充実を図るよう措置する。特に、交通事故による重度後遺障害者が最近著しく増加していることから、今後は重度後遺障害者に対する救済対策の充実を図る。
 また、交通事故被害者は、精神的にも大きな打撃を受けている上、交通事故に係る知識、情報が乏しいことが少なくないことから、交通事故に関する相談を受けられる機会を充実させるとともに、交通事故の概要、捜査経過等の情報を提供し、被害者対策を積極的に推進する。

(1)自動車損害賠償保障制度の充実等

 交通事故による被害者の救済対策の中核的役割を果たしている自動車損害賠償保障制度については、今後とも、社会経済情勢の変化、交通事故発生状況の変化等に対応して、その改善を推進し、被害者救済の充実を図る。

ア 自動車損害賠償責任保険(共済)の充実

  1. 保険会社及び自動車保険料率算定会調査事務所等における保険金(共済金)の査定、支払等の業務の適正化を推進する。
  2. 交通事故に係る医療費支払の適正化を推進する。

イ 政府の自動車損害賠償保障事業の充実
 自賠責保険(自賠責共済)による救済を受けられないひき逃げや無保険(無共済)車両による事故の被害者に対する救済制度である自動車損害賠償保障事業についても、自賠責保険(自賠責共済)に準じたてん補基準の見直し等により、その充実を図る。

ウ 無保険(無共済)車両対策の徹底
 自賠責保険(自賠責共済)の期限切れ、掛け忘れに注意が必要であることを広報活動等を通じて広く国民に周知するとともに、街頭における指導取締りの強化等を行い、無保険(無共済)車両の運行の防止を徹底する。

エ 任意の自動車保険(自動車共済)の充実等
 自賠責保険(自賠責共済)と共に重要な役割を果たしている任意の自動車保険(自動車共済)は、自由競争の下、補償範囲や金額、サービスの内容も多様化してきており、交通事故被害者の救済に大きな役割を果たしているが、被害者救済等の充実に資するよう、制度の改善及びその普及率の向上について引き続き指導を行う。

(2)損害賠償の請求についての援助等

ア 地方公共団体の設置する交通事故相談所の活動の強化
 地方公共団体の設置する交通事故相談所の業務については、次の措置により、その充実強化を図る。

  1.  地域における交通事故相談活動を充実するため、都道府県及び政令指定都市の交通事故相談所の相談業務の充実を図るとともに、市町村相談窓口に対する都道府県交通事故相談所の指導を充実する。
  2.  交通事故相談所業務の円滑かつ適正な運営を図るため、関係援護機関、団体等との連絡協調を促進する。
  3.  相談内容の多様化・複雑化に対処するため、研修等を通じて相談員の資質の向上を図る。
  4.  交通事故相談所において各種の広報を行うほか、地方公共団体の広報誌の積極的な活用等により交通事故相談活動の周知徹底を図り、交通事故当事者に対し広く相談の機会を提供する。

イ 損害賠償請求の援助活動等の強化
 警察においては、交通事故被害者に対する適正かつ迅速な救助の一助とするため、救済制度の教示や交通事故相談活動を積極的に推進する。また、法務局、地方法務局及び人権擁護委員による人権相談の一環として交通事故に関する相談を積極的に取り扱うとともに、交通事故紛争処理センター、交通安全活動推進センター、法律扶助協会及び日弁連交通事故相談センターにおける交通事故の損害賠償請求についての相談及び援助に関する業務の充実を図る。

(3)交通事故被害者対策の充実強化

ア 自動車事故被害者等に対する援助措置の充実
 政府再保険等の運用益で行っている被害者救済対策事業等については、今後も各事業の内容の見直しを図りつつ、社会的必要性の高い事業を充実していく。
 また、自動車事故対策センターが行う交通遺児等に対する生活資金貸付け、交通遺児育成基金の行う交通遺児育成のための基金事業及び都道府県の行う高等学校交通遺児授業料減免事業等に対する援助を行う。
 さらに、重度後遺障害者に対する救済策を推進するため、自動車事故対策センターによる重度後遺障害者に対する介護料の支給及び重度後遺障害者の治療・看護を専門に行う療護センターの設置・運営に対する援助措置の充実を行う。

イ 交通事故被害者等の心情に配慮した対策の推進
 交通事故被害者等の心情に配慮した相談業務を、警察署の交通相談係、交通安全活動推進センター、検察庁の被害者支援員等により推進するとともに、関係機関・団体との連携を図る。
 また、被害者等に対して交通事故の概要、捜査経過、事件処理結果、不起訴記録等の情報を提供するとともに、刑事手続きの流れ等をまとめた「交通事故被害者の手引」を作成し、活用する。特に、ひき逃げ事件、交通死亡事故等の被害者等については、被疑者の検挙、送致状況、裁判の結果等を連絡する被害者連絡制度の充実を図る。
 さらに、行政処分に関する情報についても、交通死亡事故の被害者の遺族等による問い合わせに応じ、その適切な提供を図る。

8 科学技術の振興等

 交通事故は人・道・車の3要素に気象条件等の外部環境要因が絡んで発生するものといわれ、また、その要因は近年ますます複雑化、多様化してきており、直接的な要因に基づく対症療法的対策のみでの解決は難しくなりつつある。そのため、より根元的な要因分析に立ち入り、それら要因に対応した新たな交通安全対策の立案・開発が必要である。
 また、交通安全対策の主体が公的機関である場合、厳しい財源状況、公共事業における透明性の確保、国民の情報公開に対する関心の高まりといった情勢の中、より効率的・効果的で、かつ国民に対して説得力のある交通安全対策の実施が必要となっており、我が国における交通安全対策についても、データを用いた事前評価、事後評価等の客観的分析に基づいて実施されることが必要とされている。
 今後、より客観的かつ合理的な交通安全対策を推進していくためには、関連データの整備、分析方法の高度化等、交通安全対策に係る調査研究についてその充実を図ることがますます重要となってきている。

(1)道路交通の安全に関する研究開発の推進

 交通事故の発生要因が複雑化、多様化していること及び道路交通事故のすう勢、道路交通安全対策の今後の方向を考慮して、それぞれの分野における研究開発を計画的に推進する。また、交通の安全に関する研究開発を分担する独立行政法人の試験研究機関について、研究費の充実、研究設備の整備等を図るとともに、研究開発に関する総合調整の充実、試験研究機関相互の連絡協調の強化等を図る。さらに、交通の安全に関する研究開発を行っている大学、民間試験研究機関との緊密な連携を図る。
 加えて、交通の安全に関する研究開発の成果を交通安全施策に取り入れるとともに、民間に対する技術指導、資料の提供等によりその成果の普及を図る。また、交通の安全に関する調査研究についての国際協力を積極的に推進する。
 特に、以下の事項について研究開発を行う。

ア 高度道路交通システムに関する研究開発の推進
 最先端の情報通信技術(IT)を用いて人と道路と車両とを一体のシステムとして構築することにより、安全性を始め輸送効率、快適性の飛躍的向上を実現するとともに、渋滞の軽減等の交通の円滑化を通し環境保全に大きく寄与するものとして、以下の研究開発を推進する。

  1.  ナビゲーションシステムの高度化
     目的地までのより安全で、より快適な移動の実現による利用者の利便性の向上を図るため、渋滞、所要時間、交通規制等の情報をリアルタイムに収集・提供するシステムの構築等、ナビゲーションの高度化に関する研究開発を推進する。
  2.  自動料金収受システム
     渋滞の改善が期待される自動料金収受システムの普及を促進するため、同技術の高度化を進めるとともに、駐車場等道路以外でも利用可能とする技術の開発を推進する。
  3.  安全運転の支援
     交通事故の発生・拡大の防止等を図るため、道路上の車両感知器、衝突防止用レーダー、各種センサーにより道路・交通の状況や周辺車両の状況を把握するとともに、道路等のインフラと車、車と車の間の情報通信等により、周辺車両の状況、突発事象等をリアルタイムに把握し、運転者に対する必要な情報の提供や警告、運転者の操作支援等適切な安全運転支援を可能とするシステムの研究開発を推進する。
  4.  交通管理の最適化
     交通流・量の積極的かつ総合的な管理を行い、交通の安全性・快適性の向上と環境の改善を図るため、次の研究開発を行う。
    1. 交差点での効率的な信号制御を行う最適制御アルゴリズム(処理手順)の研究開発
    2. 交通流の分散等を目的として、車載装置等への交通情報を提供するシステムの研究開発
    3. 公共車両優先信号制御手法等の改善
    4. 目的地情報の活用による最適な車両配分を考慮した、動的経路誘導の研究開発
    5. 車両の動態把握等による業務車両等の効率的運用を支援する手法の研究開発
    6. 交通公害の低減を目指す迂回情報提供や信号制御手法の研究開発
    7. 将来の交通渋滞状況等の予測と最適経路の計算等による最適な運転の支援技術の研究開発
  5.  道路管理の効率化
     道路管理の迅速かつ的確な対応による道路交通の危険の防止を図るため、路面状況、気象状況等の情報を迅速に収集・提供するシステム、特殊車両等の許可システム及び実際の通行経路を自動的に把握するシステム等の研究開発を推進する。
  6.  公共交通の支援
     公共交通機関の利便性・快適性の向上や交通の円滑化を図るため、公共交通機関の運行状況を把握し、事業者及びその利用者に情報を提供するシステム、公共交通機関の円滑な運行を確保するシステム等の研究開発を推進する。
  7.  商用車の効率化
     輸送効率の飛躍的な向上、業務交通量の低減、輸送の安全性向上を図るため、商用車の効率的な運行管理の支援に資するシステムの研究開発を推進する。
  8.  歩行者等の支援
     高齢者、身体障害者等の歩行者等が安心して通行できる安全で快適な道路交通環境の形成を図るため、携帯用端末や光通信、磁気、音声等を利用した情報提供装置等を用い、高齢者、身体障害者等に経路案内・誘導を行うシステムや、高齢者、身体障害者等のための信号機の高度化等の研究開発を推進する。
  9. 緊急車両の運行支援
     災害等に伴う迅速かつ的確な復旧・救援活動の実現を図るため、交通状況及び道路の被災状況等をリアルタイムに収集し、関係機関への伝達、復旧用車両等の現場への誘導・案内等を迅速に行うとともに、交通管理等に活用するシステムの研究開発を推進する。

イ 交通行動特性等に関する研究の推進

  1. 高齢者の交通行動等に関する研究の推進
     高齢化の進行に伴う交通事故情勢の推移に対応して、高齢者の交通行動に即したきめ細かい対策を講ずるため、道路交通社会における高齢者の交通行動等に関する研究の推進を図る。
  2. 歩行者の行動特性を踏まえた交通安全に関する研究の推進
     我が国の交通事故発生形態の特徴の一つである歩行者事故を削減するため、歩行者の行動特性に関する研究及びそれを踏まえた交通安全対策の立案に関する研究を推進する。

ウ 安全運転の確保に関する研究の推進

  1. 交通安全関係資機材の開発
     実践的な運転者教育を効果的に行うための運転シミュレーターその他関係資機材の研究開発を一層推進する。
  2. 運転免許証のICカード化に関する研究開発の推進
     運転免許証のICカード化については、近年の技術革新により、ICカードが安価で極めて高機能なものとなってきていることを踏まえ、ICカード運転免許証の要求条件と仕様について調査研究を行うほか、交通取締り等における交通警察業務の効率化等に資するシステムに関し、必要な研究開発を行う。
  3. ナンバープレートのIC化に関する研究開発の推進
     ナンバープレートのIC化について、要求条件及び仕様並びにこれを用いた交通安全対策に関し、調査研究を行う。

エ 車両の安全に関する研究の推進

  1. 車両に係る予防安全技術の研究の推進
     交通事故を未然に防ぐために必要な車両に係る予防安全技術の研究を推進する。
  2. 車両に係る被害軽減技術等の研究の推進
     万が一事故が発生した場合の乗員、歩行者等の保護を行うために必要な車両に係る被害軽減技術等の研究開発を推進する。

オ その他の研究の推進

  1. 交通安全対策に関する効果予測・評価の充実
     多様な側面を有する交通安全対策のより効率的、効果的、重点的な推進を図るため、各種の対策による交通事故発生件数の低減効果及び人身傷害等事故発生後の被害の軽減効果について、予測及び評価の充実を図る。
  2. 交通事故に伴う社会的・経済的損失に関する研究の推進
     交通事故の発生とこれによる人身傷害、これらに伴う社会的・経済的損失等、交通事故による被害の全容の総合的な把握及び分析を行うための研究を推進する。
  3. 交通事故被害者の視点に立った交通安全対策に関する研究の推進
     民事裁判事例等を用いて、交通事故被害者の視点から、交通安全対策を検討する研究を推進する。

(2)道路交通事故原因の総合的な調査研究の充実強化

 交通事故の実態を的確に把握し、効果的な交通安全施策の検討、立案等に資するため、交通事故総合分析センターによるマクロデータベースの構築、ミクロ調査の実施等の充実強化を図るとともに、同センターを積極的に活用して、人、道路及び車両について総合的な観点からの事故分析を行う。
 また、工学、医学、心理学等の分野の専門家、大学、民間研究機関等との連携・協力の下、科学的アプローチによる交通事故の総合的調査研究を推進し、事故発生メカニズムの解明と事故予防の施策の確立に向けた体制を充実させる。
 さらに、官民の保有する交通事故調査・分析に係る情報を国民に対して積極的に提供することにより、交通安全に対する国民の意識の高揚を図る。