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交通事故被害者の支援 第1章 総論

VI.今後の課題

 交通事故の発生が多いために、その被害も社会全体では非常に大きなものとなる。交通事故の被害者に対してはさまざまな対策もなされている一方、犯罪被害者に対する支援策と比して、遅れている部分もある。われわれは交通事故被害者に対する、よりよい支援活動を行う必要がある。
 とりわけ精神的支援活動については、これを充実させる必要がある。以下では、交通事故の被害者に対する支援活動を充実させるために、特に留意すべき事柄について述べることとする。


1.交通事故被害者調査

 交通事故の被害者が直面している被害の実態については、数多くのルポルタージュや手記などが発表されている。また、多数の被害者を対象とした調査票による調査や面接調査も実施されるようになった。
 これらの調査の結果については第2章で詳しく紹介されるが、これらの調査などを通じて被害の実態は次第に明らかにされている。しかし、これで十分というわけではない。今後さらにさまざまな実態調査が行われることが期待される。


2.警察官の対応

 交通事故は発生件数が多いため、警察官は現場検証や調書の作成に追われ、これから進行する刑事手続きについて説明したり、自動車損害賠償制度などについて説明したりする余裕はほとんどない。
 1996年に制定された「被害者対策要綱」に基づき、刑事手続きや精神的支援に関する事柄を説明する「被害者の手引き」が作成され、被害者に手渡されるようになった。また、被害者や遺族と接触する警察官が、被害者の受ける精神的打撃の大きさをより正確に理解できるよう、警察官に対する講習なども充実してきた。このように警察による対応は改善されているが、今後もさらに充実した対応がなされることが期待される。
 一方で、交通事故、特に死亡事故を担当する警察官のストレスは非常に大きなものである。今後、被害者に対する手厚い配慮を行うことが期待されると、ストレスはさらに大きくなると予想される。そこで、警察官に対する十分なケアを行う必要がある。
 さらに、諸外国で実施されているように、関係者に対する死亡の告知などは、警察官ではなく、訓練を積んだボランティアに任せるという仕組みを作ることも検討する必要がある。


3.保険会社、各種相談窓口、民間機関

 交通事故に基づく損害賠償については、保険会社の果たす役割が非常に大きいことはすでに指摘したとおりである。
 保険会社やその関係団体は、各種の相談窓口を持っているし、その他のさまざまな公的・私的機関も相談窓口を設けている。保険会社やこれらの相談窓口の担当者は、必ずしも被害者の深刻な精神的打撃を十分理解し、かつそれに配慮しているわけではない。

イラスト

 また、精神的な問題について適切に対応できるように、特別に訓練されているわけではない。したがって、これらの担当者に対するより充実した訓練・教育を行うことが重要である。
 以上に加えて、犯罪被害者等に対する支援活動を行っている民間機関やその他の関連機関と協力・連携して活動を行うことが極めて重要である。この問題についても、後に詳しく論じられる。


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