交通事故被害者の支援 第5章 交通事故被害者支援関係者の対応
IV.死亡告知
日本では、多くの場合、警察による犯罪被害者初期支援制度が行われているため、現段階では事故直後に支援センターが死亡告知することはない。しかし、将来的には役割として出てくる可能性もあると思われる。そこで、アメリカの被害者支援センターで実践されている方法を紹介することとする。
被害者支援の危機介入プログラムにおいては、亡くなったことを遺族に伝えることが支援者の役割としてある。実践活動を行ってきた経験上、被害者がどのような形で亡くなったかというのは、遺族の精神的回復に大きな影響を及ぼしていると思われる。
被害者や遺族は、事件に関する記憶の細かい部分は抜け落ちることが多いが、死亡を知らされた方法やそのときの状況は鮮明に記憶に残っている。
1.実際の方法
死亡の告知は、電話ではなく自宅へ出向いて直接、家族などに伝える。夜遅く伝えるときは警察にも一緒に行ってもらう。
(1) 自己紹介をする
(2) 死亡告知内容
- だれが
- いつ
- どこで
- どのような形で亡くなったか
(3) 死亡告知の手順
- 自己紹介
- 家へ入ってよいかどうかを確認してから、家に入れてもらう。
- このとき家へ入れてもらうことが大切。
- 玄関先で少し話したあとに、戸を閉められると正確に伝えることができない。
- 玄関に出てきた家族以外にも、家族がいるか否かを聞く。
- 他にも家族がいる場合は、呼んでもらって全員に一緒に伝える。
- 告知をするときは座ってもらう。
- 立ったままでいられず倒れるようなことがあれば、正確に伝えることができない場合もある。
- はっきりした表現で伝える
- 「大変お気の毒です。ご家族の○○さんが△△(殺人事件・傷害事件・交通事故・その他)で亡くなりました。」とはっきり言う。
- 「大変です」とか、「深刻な状態です」などとは言わない。
(4) 告知後
- 伝えた後、聞いた側の反応を待つ。
- 無表情の人
- 怒りをあらわにする人
- 泣きわめく人
- 取り乱す人など、さまざまである。
- 抱きかかえたりせず一緒にいる。
- 遺族側から訊かれなければ、具体的情報があっても伝えない。
- 遺族側の質問に対し、はっきりしていることは答えるが、推測では決して伝えない。
- 質問で多いのは「誰が犯人なのか」と聞かれること。
- 質問するときは、はっきりした答えを求めているので、後で訂正すると信頼感を失うことになる。
- あいまいなことを伝えることは遺族を混乱させ、その後の回復に影響がある。
2.終了のタイミング
親戚、友人、被害者の会の人たちが来れば終了する。
3.告知を通じて常に配慮すること
人間が本来持っている"自己回復力"を削(そ)がない。
4.その他
(1) 滞在時間
- 遺族の状況により異なる。
- 一般的には、親戚や友人、被害者の支援組織や自助グループなどが来れば終了する。
(2) 手渡す資料など
- 被害者に関する小冊子(交通事故被害者の手引き、全国の被害者支援組織一覧パンフレット、検察の被害者支援)など、必要な資料を渡す。
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