平成14年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第1編 陸上交通 第1部 道路交通
第1章 道路交通事故の動向
第2節 平成14年中の道路交通事故の状況
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第1章 道路交通事故の動向
第2節 平成14年中の道路交通事故の状況
1 概況
平成14年中の交通事故(人身事故に限る。以下同じ。)発生件数は93万6,721件で、これによる死者数は8,326人、負傷者数は116万7,855人であった。
前年と比べると、死者数は421人(4.8%)、発生件数は1万448件(1.1%)、負傷者数は1万3,100人(1.1%)といずれも減少した。
交通事故による死者数が、過去最悪であった昭和45年の1万6,765人の半数以下になるとともに、発生件数及び負傷者数も12年ぶりに減少した。
2 交通死亡事故等の特徴
(1)年齢層別交通事故死者数及び負傷者数
平成14年中の交通事故死者数を年齢層別にみると、65歳以上の高齢者(3,144人)が10年連続で最も多く、次に16~24歳の若者(1,316人)となっており、この二つの年齢層で全交通事故死者数の53.6%を占めている。
また、これらの年齢層の死者数が全死者数に占める割合を、当該年齢層の人口に占める割合と対比すると、それぞれ、2.0倍、1.4倍と他の年齢層に比べて高くなっている。
年齢層別に交通事故死者数を前年と比べると、50~59歳の者(106人減)、16~24歳の若者(86人減)、65歳以上の高齢者(72人減)が特に減少している(第1-5図)。
年齢層別に昭和54年以降の人口10万人当たりの交通事故死者数の推移をみると、15歳以下の年齢層は減少傾向が続いていたが、平成13年に増加し、14年は減少している。
また、16~24歳の若者は平成2年以降減少傾向にあり、65歳以上の高齢者も8年から7年連続減少している(第1-6図)。
交通事故負傷者数を年齢層別にみると、16~24歳(24万9,902人)が最も多く、全負傷者数の21.4%を占めている。前年に比べると、16~24歳(1万2,943人減)、25~29歳(7,261人減)、40~49歳(3,377人減)が特に減少し、65歳以上(5,344人増)、30~39歳(4,406人増)が特に増加している(第1-7図)。
(2)状態別交通事故死者数及び負傷者数
平成14年中の交通事故死者数を状態別にみると、自動車乗車中が3,438人と最も多く、全交通事故死者数の41.3%を占めている(第1-8図)。
前年と比べると、自動車乗車中(273人減)、歩行中(72人減)、自動二輪車乗車中(40人減)を始め、すべての状態で減少している。
最近の状態別の交通事故死者数の推移をみると、以下のような特徴がみられる(第1-9図)。
- 自動車乗車中については、平成8年から4年連続減少後、12年に増加し、13年から2年連続で減少している。また、依然として全交通事故死者数の40%を超えている。
- 歩行中については、平成8年から7年連続減少した。自転車乗用中については、最近ほぼ横ばいであったが、12年に減少後、13年は増加し、14年は減少している。
- 自動二輪車乗車中については、平成7年以降減少傾向にあったが、12年から増加傾向を示した後、14年は減少している。
- 原動機付自転車乗車中については、最近ほぼ横ばいであったが、12年に増加後、13年から2年連続で減少している。
平成14年中の交通事故負傷者数を状態別にみると、自動車乗車中が72万1,137人と最も多く、全負傷者数の61.7%を占めている。前年と比べると、自転車乗用中以外のすべての状態で減少している(第1-10図)。
(3)状態別・年齢層別の交通事故死者数
平成14年と13年の状態別・年齢層別の交通事故死者数を比較してみると、50~59歳の自転車乗用中(26人増)、30~39歳の自動二輪車乗車中(20人増)で増加し、50~59歳の歩行中(61人減)、50~59歳の自動車乗車中(54人減)、65歳以上の自動車乗車中(54人減)、30~39歳の自動車乗車中(50人減)で減少している。
さらに、平成14年中の状態別の交通事故死者数を年齢層別にみると、以下のような特徴がみられる。
- 自動車乗車中の死者数については、16~24歳の若者が全体の21.8%を占め、特に、20~24歳の年齢層で14.0%を占めている(第1-11図)。
- 自動二輪車乗車中の死者数については、16~24歳の若者が全体の37.0%と、依然として高い構成率となっている。また、原動機付自転車乗車中の死者数については、16~19歳の年齢層と65歳以上の高齢者層を合わせた構成率が56.5%と高くなっている。
- 自転車乗用中の死者数については、65歳以上の高齢者が他の年齢層に比べ圧倒的に多く、全体の58.3%となっている。なお、負傷者数については、65歳以上の高齢者が最も多く(全体の16.0%)、また16~19歳の年齢層の割合も高くなっている。
- 歩行中の死者数については、65歳以上の高齢者が最も多く、全体の62.9%となっている。なお、負傷者については、12歳以下の子供の占める割合が65歳以上の高齢者とともに高くなっている。
次に、交通事故死者数の過半数を占める16~24歳の若者と65歳以上の高齢者について、昭和54年以降の状態別の交通事故死者数の推移をみると、以下のような特徴がみられる。
- 16~24歳の若者については、自動車乗車中が昭和63年以降増加傾向にあったが、平成4年から減少傾向に転じ、8年から4年連続減少し、12年はわずかに増加したが、13年から2年連続で減少している。
また、自動二輪車乗車中については、平成元年以降減少傾向が続いており、7年から8年連続減少している(第1-12図) - 65歳以上の高齢者については、状態別で最も多い歩行中が平成8年から減少傾向にあり、14年も減少している。また、最近の傾向として自動車乗車中は、7年に自転車乗用中と順位が入れ替わって以来、増加の傾向にある(第1-13図)。特に、自動車運転中の増加が著しく、14年には492人と前年に比べ減少したものの、なお平成元年の2.8倍になっている(第1-14図)。
さらに、平成14年中の死者数を男女別にみると、男性では自動車乗車中、自転車乗用中など歩行中以外が67.5%を占め、女性では歩行中が65.7%を占めている。
(4)シートベルト着用の有無別死者数
平成14年中の自動車乗車中の死者数をシートベルト着用の有無別にみると、非着用は1,973人で、前年に比べて194人(9.0%)減少している。これを年齢別にみると、特に、16~24歳の若者の非着用の死者数は499人で、全非着用死者数の25.3%を占めているが、前年に比べると5人(1.0%)減少している。
平成5年以降の自動車乗車中の死者をシートベルト着用の有無別にみると、シートベルト着用者率(死傷者数中のシートベルトを着用している者の割合)の向上に伴い、6年以降、増加傾向にあった着用の死者数は13年から減少し、非着用の死者数も減少を続けている(第1-15図)。
自動車乗車中の死傷者について着用者率をみると、平成5年以降上昇している。着用者の致死率(交通事故死傷者数に占める死者数の割合)は、非着用者の致死率の約11分の1であり、シートベルト着用者率の向上が、自動車乗車中の交通事故死者数の減少に結びついている(第1-16図)。
(5)チャイルドシート着用の有無別死者数
平成14年中の6歳未満幼児の自動車同乗中の死者数は、前年より9人減少の35人であり、車両大破事故を除いた死者15人のチャイルドシート着用の有無は、着用3人、非着用12人であった。
以上の15人について、チャイルドシート着用有無等から算出した致死率は、チャイルドシート着用者が0.04%、非着用者は、0.26%であり、チャイルドシート非着用者の致死率は着用者の約6.5倍となっており、チャイルドシートの効果を十分に確認することができる(第1-2表)。
(6)月別、曜日別、昼夜別交通事故発生状況
- ア 月別交通事故発生状況
- 平成14年中の交通事故発生状況を月別にみると、そのピークは発生件数、死者数ともに12月となっており、年の後半に多くなる傾向が続いている(第1-17図)。
- イ 曜日別交通死亡事故発生件数
- 平成14年中の交通死亡事故発生件数を曜日別にみると、月曜日から日曜日までの全体の平均は1日当たり21.9件であるのに対し、土曜日が23.9件、日曜日が22.0件と週末に交通死亡事故が多発している(第1-18図)。
- ウ 昼夜別交通事故発生状況
- 平成14年中の交通事故発生状況を昼夜別にみると、夜間の発生件数が事故全体の29.5%であるのに対して、夜間の交通死亡事故発生件数は死亡事故全体の53.0%を占めている(第1-19図)。これを交通事故1,000件当たりの交通死亡事故発生件数(死亡事故率)でみると、夜間が15.3件、昼間が5.7件で夜間は昼間の2.7倍になっている。
昼夜別に交通死亡事故発生件数の推移をみると、近年一貫して夜間の発生件数が昼間の発生件数を上回っているが、年々その差は減少している(第1-20図)。
(7)道路形状別交通死亡事故発生件数
平成14年中の交通死亡事故発生状況を道路形状別にみると、交差点内が最も多く(37.9%)、次いで一般単路(交差点、カーブ、トンネル、踏切等を除いた道路形状をいう。)(33.9%)、カーブ(16.7%)の順になっている(第1-21図)。
(8)第1当事者の交通死亡事故発生件数
平成14年中の第1当事者(交通事故の当事者のうち、過失が最も重い者又は過失が同程度の場合は被害が最も軽い者をいう。)の交通死亡事故発生件数を車種別にみると自家用乗用車(50.0%)、自家用貨物車(19.1%)の割合が多い(第1-22図)。
第1当事者の法令違反別に交通死亡事故発生件数をみると、最高速度違反(13.5%)、漫然運転(12.3%)、脇見運転(11.0%)の順に多い(第1-23図)。
自動車運転者が第1当事者となった死亡事故件数は、減少傾向で推移している。これを運転者の年齢別にみると、16~24歳の若者は、平成14年には元年の0.50倍に減少しているのに対し、65歳以上の高齢者はほぼ一貫して増加しており、14年には元年の2.97倍に増加している(第1-24図)。
(9)事故類型別交通死亡事故発生件数
平成14年中の事故類型別に交通死亡事故発生件数をみると、車両相互事故が最も多く(47.5%)、以下、人対車両(28.9%)、車両単独(22.9%)、列車(注)(0.7%)となっている。さらに、細分類でみると、出会い頭衝突(16.8%)、工作物衝突(15.9%)、その他横断中(横断歩道・横断歩道付近以外での横断中)(12.7%)、正面衝突(12.2%)の割合が高くなっている(第1-25図)。
(注)列車が当事者となった踏切上の事故
3 高速自動車国道等における交通事故発生状況
(1)概況
高速自動車国道等(高速自動車国道及び指定自動車専用道路(道路交通法第110条第1項の規定により国家公安委員会が指定する自動車専用道路)をいう。以下同じ。)における平成14年中の交通事故発生状況は、高速自動車国道では、交通事故7,480件(うち死亡事故216件)が発生し、死者数259人、負傷者数1万2,942人である(第1-26図)。また、指定自動車専用道路では、交通事故6,603件(うち死亡事故74件)が発生し、死者数79人、負傷者数9,933人となっている。高速自動車国道等において、これを前年と比較すると、死者数は51人(13.1%)減少し、負傷者数は1,013人(4.2%)減少した。
(2)死亡事故率
高速自動車国道等は自動車専用の道路であり、原則として上下線が分離されていることから事故率は低く、高速自動車国道についてみれば、平成14年で1億走行台キロ当たりの交通事故は10.9件である。
しかし、高速自動車国道等は高速走行となるため、わずかな運転上のミスが事故に結びつきやすく、しかも一たび事故が発生すると被害が大きく、関係車両や死者数も多数に及ぶ重大事故に発展することが多い。このため、交通事故発生件数に占める死亡事故件数の割合(死亡事故率)は、その他の道路の約2.5倍となっている。
(3)事故類型別及び法令違反別発生状況
平成14年中の高速自動車国道等における事故類型別発生状況は、車両相互の事故が事故全体の82.6%、車両単独事故が16.3%、その他の事故が1.1%で、車両単独事故の割合が一般道路(5.7%)に比べ高い。
車両相互の事故では、車線上の停止車への追突が最も多く、次いで走行車への追突の順になっている。
車両単独の事故では、防護さく等への衝突が最も多く、次いで中央分離帯への衝突の順になっている。
また、平成14年中の高速自動車国道等における法令違反別発生状況は、前方不注意が交通事故全体の42.3%で最も多く、次いで動静不注視(15.4%)、ハンドル操作不適(8.1%)の順となっている。
(4)昼夜別交通事故発生状況
平成14年中の高速自動車国道等における昼夜別交通事故発生状況をみると、夜間は発生件数が全体の35.3%であるのに対し、死亡事故件数は55.5%を占めている。これを交通事故発生件数に占める死亡事故件数の割合(死亡事故率)でみると、夜間が3.2%、昼間が1.4%で、夜間は昼間の約2.3倍になっている。
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