平成18年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第1編 陸上交通
第2部 鉄道交通
第2章 鉄道交通安全施策の現況
第2節 鉄道の安全な運行の確保
第1編 陸上交通
第2部 鉄道交通
第2章 鉄道交通安全施策の現況
第2節 鉄道の安全な運行の確保
1 乗務員及び保安要員の教育の充実及び資質の向上
動力車操縦者(以下、「運転士」という。)の資質の確保を図るため、動力車操縦者運転免許試験を実施した。また、運転士の資質の向上を図るため、運転士の資質向上検討委員会を開催し、運転士の教育手法の在り方や職場環境の改善方策等について検討を進めた。
鉄道事業者は、乗務員及び保安要員に必要な知識及び技能を習得させるため、教育機関において教育訓練を実施するとともに、現場において事故防止の徹底を図るためビジュアル教材の活用等教育内容の充実を図り、講習会・研究会を実施した。また、乗務員及び保安要員の適性の確保を図るため、定期的に適性検査を実施した。
2 列車の運行及び乗務員等の管理の改善
大規模な事故又は災害が発生した場合に、迅速かつ的確な情報の収集・連絡を行うため、国及び鉄道事業者において、夜間・休日における連絡体制の充実、通信手段の拡充を図った。
運行管理体制については、運転指令と乗務員間の無線設備及びCTCの導入等を促進し、迅速かつ的確な運転指令体制づくりに努めるよう鉄道事業者を指導した。
乗務員等の管理については、乗務員等の安全意識を高めるとともに、乗務員等がその職務を十分に果たし、安全運転を確保することができるように、就業時における心身状態の把握を確実に行い、安全管理に努めるよう鉄道事業者を指導した。なお、鉄道事業法(昭61法92)等を改正し、運転管理者や乗務員指導管理者等の選任を義務付けた。
3 鉄道交通の安全に関する知識の普及
鉄道事業者は、学校、沿線住民、道路運送事業者等に対し、全国交通安全運動等の機会をとらえて、ポスターの掲示、チラシ類の配布等による踏切事故防止キャンペーンを実施することにより、踏切道の安全通行や鉄道事故防止に関する知識の普及及び意識の高揚を図った。
また、建設工事・保守作業等施設の建設・保守に携わる作業員についても、安全対策の徹底を図るよう、鉄道事業者を指導した。
4 鉄道事業者に対する保安監査等の実施
鉄道の安全運行を確保するため、鉄道事業法等を改正し、安全管理規程の作成及び安全統括管理者の選任等を義務付けるとともに、鉄道事業者に対し保安監査を実施し、輸送の安全確保の取組状況、施設及び車両の保守管理の状況、運転取扱いの状況、乗務員等に対する教育訓練の状況等について適切な指導を行った。また、JR西日本福知山線列車脱線事故が発生したことなどを踏まえ、更なる鉄道安全監査官を増員するなど保安監査の強化・充実についても取り組んだ。
また、経営トップから現場まで一丸となった安全管理体制の構築状況を国が評価する「運輸安全マネジメント評価」を導入した。
5 気象情報等の充実
鉄道交通に影響を及ぼす自然現象について、的確な実況監視を行い、適時・適切に予報・警報等を発表・伝達して、事故の防止及び被害の軽減に努めるとともに、これらの情報の内容の充実と効果的利用を図るため、第1編第1部第2章第3節7(3)で述べた施策を講じた。緊急地震速報については、列車の緊急停止等への活用を希望する事業者に対して提供を開始した。
また、平成17年12月に発生したJR東日本羽越線列車脱線事故を踏まえ、「鉄道強風対策協議会」を開催し、強風対策についてソフト・ハードの両面から検討を行っていたが、18年9月には、風速計の設置など、風の観測態勢の一層の強化などを内容とする中間取りまとめを行った。
6 鉄道事故等原因究明及び体制の強化等
航空・鉄道事故調査委員会は、鉄道事故及び鉄道事故の兆候(重大インシデント※)の原因究明を行うことにより、事故の再発防止に寄与することを目的としており、鉄道事故等が発生した場合には、運行の状況、鉄道施設及び車両等について多角的な事実調査を行うとともに、必要な試験や研究を行い、これらの結果を総合的に解析して報告書を公表している。
また、鉄道事故及び重大インシデントの原因究明の調査を迅速かつ適確に行い、鉄道事故の防止に寄与するため、事故調査を担当する職員の専門調査技術の向上を図るとともに、鉄道事故調査官及び地方運輸局の関係職員の研修等を実施し、各種調査用機器の活用による分析能力の向上に努めている。
さらに、鉄道事故等報告規則等に基づいて報告される鉄道事故等の情報についても収集整理し、鉄道事業者等の関係者で共有することにより、事故の未然防止を図るとともに、安全施策への反映に努めた。
※重大インシデント
結果的には事故に至らなかったものの、事故が発生するおそれがあったと認められる事態のうち重大なもの。
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