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鉄道交通安全対策の今後の方向-第9次交通安全基本計画より-

<1> 基本的考え方

 人や物を大量に、高速に、かつ、定時に輸送できる鉄道は、国民生活に欠くことのできない交通手段であり、国民が安心して利用できる、一層安全で安定した鉄道輸送を目指し、重大な列車事故やホームでの事故への対策等、各種の安全対策を総合的に推進していく必要がある。

<2> 目標

  • 乗客の死者数ゼロを目指す。
  • 運転事故全体の死者数減少を目指す。

<3> 対策

(1)視点

 鉄道の運転事故は長期的には減少傾向にあるものの、一層安全で安定した鉄道輸送を目指し、重大な列車事故の未然防止とともに、利用者等の関係する事故を防止するため、効果的な対策を講ずるべく、総合的な視点から施策を推進する。

(2)講じようとする施策

<1> 鉄道交通環境の整備

 鉄道交通の安全を確保するためには、鉄道施設、運転保安設備等について常に高い信頼性を保持し、システム全体としての安全性を確保する必要がある。このため、運転保安設備の整備等の安全対策の推進を図る。

<2> 鉄道交通の安全に関する知識の普及

 安全設備の正しい利用方法の表示の整備等により、利用者等へ安全に関する知識を分かりやすく、適確に提供する。また、学校、沿線住民、道路運送事業者等を幅広く対象として、鉄道の安全に関する正しい知識を浸透させる。

<3> 鉄道の安全な運行の確保

 運転士の資質の保持、事故情報及びリスク情報の分析・活用、地震発生時の安全対策、気象情報等の充実を図る。また、鉄道事業者への保安監査等を実施し、適切な指導を行う。

<4> 鉄道車両の安全性の確保

 科学技術の進歩を踏まえつつ、適時、適切に鉄道車両の構造・装置に関する保安上の技術基準を見直す。また、事故発生時における乗客、乗務員の被害軽減のための方策や、鉄道車両の電子機器等の誤動作防止のための方策の検討を行い、その活用を図る。

<5> 救助・救急活動の充実

 鉄道の重大事故等の発生に対して、避難誘導、救助・救急活動を迅速かつ適確に行うため、主要駅における防災訓練の充実や鉄道事業者と消防機関、医療機関、その他の関係機関との連携・協力体制を強化する。

<6> 被害者支援の推進

 被害者団体等の参画を得ながら、我が国において求められる交通事故被害者等支援の内容、事業者・自治体・国等の関係機関における役割分担のあり方、交通事故被害者等への一元的な窓口機能のあり方等について検討し、我が国の実情に沿った支援の仕組みや体制の整備に向けて必要な取組を行う。

<7> 鉄道事故等の原因究明と再発防止

 鉄道事故及び鉄道事故の兆候(鉄道重大インシデント)の原因究明調査を迅速かつ適確に行うため、調査を担当する職員に対する専門的な研修を充実させ、調査技術の向上を図るとともに、各種調査用機器の活用により分析能力の向上に努め、もって鉄道事故の防止に寄与する。

<8> 研究開発及び調査研究の充実

 交通安全環境研究所が行う施設、車両、運転等に関する新技術の評価や、鉄道総合技術研究所が行う事故及び災害時の被害軽減に関する技術開発等、鉄道の安全性向上に関する研究開発を推進する。

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