平成26年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第2編 海上交通
第2章 海上交通安全施策の現況
第4節 船舶の安全性の確保
1 船舶の安全基準等の整備
船舶の安全性確保のため,国際海事機関(IMO)において「1974年の海上における人命の安全のための国際条約」(SOLAS条約)等に基づいて国際的な安全基準が定められるとともに,我が国では船舶安全法(昭8法11)及びその関係省令において関連の構造・設備等の基準を規定している。
SOLAS条約等については船舶のより一層の安全性向上のため,IMOにおいて随時見直しが行われているが,我が国は,世界有数の造船・海運国としてIMOにおける審議に積極的に参画しており,技術革新等に対応した合理的な国際基準の策定に向け,主導的な役割を果たしている。
平成26年度は,ガス燃料船の安全基準(IGFコード)の策定,船舶の復原性に関する新基準(第二世代復原性基準)の策定,旅客船の避難解析に関するガイドラインの改正,船上揚荷装置に関する安全基準の策定等について,技術的な検証等に基づきIMOに提案を行う等積極的な対応を行った。
また,国内においては,SOLAS条約の改正を我が国国内法令で担保するため,平成26年7月には,騒音に対する保護要件の追加,36人以下の旅客船における隔壁及び甲板の防火要件等に関する技術基準の改正を行った。
2 船舶の検査体制の充実
海難事故が発生した場合には,人命及び船舶の損失,海洋への汚染等多大な影響を社会に及ぼすこととなる。このため国土交通省海事局では関係法令に基づき,海事技術専門官が人命及び船舶の安全確保,海洋環境の保全を目的とした検査を実施している。
近年の技術革新,海上輸送の多様化に応じた従来の設計とは異なる船型を有する船舶の増加や,国際的な規制強化に伴い,高度で複雑かつ広範囲にわたる検査が必要となっている。こうした状況に適切に対応していくため,ISO9001に準じた品質管理システムに則り,船舶検査体制の品質の維持向上を図っている。
また,危険物の海上輸送について,IMOで定められる国際的な安全基準に基づき国内規則の整備を図るとともに,危険物運搬船に対して運送前の各種検査や立入検査を実施することにより,安全審査体制の充実を図り,海上輸送における事故防止に万全を期している。
さらに,海上における人命の安全の観点から,船舶及びそれを管理する会社の総合的な安全管理体制を確立するための国際安全管理規則(ISMコード)は,ヒューマンエラーの防止等に極めて有効であるため,同コード上強制化されていない内航船舶に対しても,事業者等が構築した安全管理システムを認証するスキームを運用しており,ヒューマンエラーに起因する海難事故の防止を図っている。
3 外国船舶の監督の推進
船舶の構造・設備等については,SOLAS条約等の国際条約に定められているが,我が国近海において,依然としてサブスタンダード船による海難が発生しているため,重大事故が発生した場合には人命の安全や海洋環境等に多大な影響を及ぼす可能性があることから,これらの海難を防止し,船舶航行の安全を図るため,関係条約に基づき外国船舶の監督(PSC)を推進した。さらに,東京MOUの枠組みに基づき,アジア太平洋域内の加盟国と協力して効果的なPSCを実施し,サブスタンダード船の排除を図った。