特集 「交通安全対策の歩み~交通事故のない社会を目指して~」
第2章 人・車両・道路 各々の側面から見た交通安全
第2節 「車両」と社会をめぐる変化

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特集 「交通安全対策の歩み~交通事故のない社会を目指して~」

第2章 人・車両・道路 各々の側面から見た交通安全

第2節 「車両」と社会をめぐる変化

1 「車両」の観点からみた交通事故の特徴
(1)当事者別(第1当事者)事故件数の推移

「自動車」の死亡事故は一貫して減少―第1当事者別死亡事故件数の推移

「車両」に着目し,「当事者別(第1当事者)」に平成元年から30年までの死亡事故件数をみると,この間を通じて,第1当事者が「自動車」である事故が,全体の7割以上を占めているが,平成初期の7千件台(平成4年:7,985件最多)以降,ほぼ一貫して減少し続けた(30年:2,693件)。次いで「自動二輪車」(元年:1,190件,30年:265件),「原動機付自転車」(元年:699件,4年:739件,30年:141件)と各々大きく減少した(特集-第23図)。

特集-第23図 当事者別(第1当事者)死亡事故発生状況。その他、歩行者、自転車、原動機付自転車、自動二輪車、自動車。死亡事故の件数は、年々減少している。自動車は、全体の7割以上を占めている

「自転車」による死亡事故件数は,30年間で半減したが(元年:453件,30年:191件),13年に「歩行者」を,25年に「原動機付自転車」を上回り,「自動二輪車」に次ぎ3番目に多くなった。「歩行者」が第1当事者の死亡事故件数は,平成4年のピークの後,減少し続けた(元年:577件,4年:646件,30年:150件)。

「自動車」の事故は16年がピーク―第1当事者別全事故件数

次に,死亡及び負傷を合わせた全ての交通事故件数について,「当事者別(第1当事者)」にみると,第1当事者が「自動車」である事故は,平成の間を通じて事故件数全体の約8~9割を占め,平成元年の約56万件から16年の約84万件(最多)を経て30年には半減した(39万427件)。平成初期に「自動車」に次いで件数が多かった「原動機付自転車」の事故(元年:4万98件)は,12年に約4万5千件を超えた後減少し,24年には「自転車」を下回り,30年には1万件を下回った(9,271件)。「自転車」による事故は平成元年の2万6,837件から16年に最多(2万8,556件)となった後,30年には1万5,119件まで減少したが「自動車」に次いで2番目に多くなった。「歩行者」が第1当事者の事故件数は,平成元年の1万5,894件から一貫して減少し続け,平成30年には1,070件となった(特集-第24図)。

特集-第24図 当事者別(第1当事者)交通事故発生状況。その他、歩行者、自転車、原動機付自転車、自動二輪車、自動車。交通事故の件数は、平成16年をピークに減少している。自動車は、全体の8割以上を占めている
(2)事業用・自家用別(第1当事者)事故件数の推移

事業用・自家用別第1当事者別死亡事故件数の推移

事故の大半を占める「自動車」による事故について,「事業用・自家用別(第1当事者)」にみると,平成の30年間を通じて,「自家用乗用車」,「自家用貨物車」,「事業用貨物車」,「事業用乗用車」の順に多く,死亡事故件数,交通事故件数ともに自家用車(自家用乗用車及び自家用貨物車)が全体の約9割を占めている。事故件数の構成割合の,30年間の変化をみると,死亡事故件数,全事故件数ともに,「自家用乗用車」の割合は大きくなり(死亡事故件数:平成元年57.6%,30年65.0%,全事故件数:元年61.6%,30年77.7%),「自家用貨物車」の割合は大きく減少した(死亡事故件数:元年31.1%,30年22.6%,全事故件数:元年30.4%,30年14.4%)。

特集-第25図 事業別・自家用別(第1当事者)死亡事故発生状況(割合)の推移。自家用貨物、自家用乗用、事業用貨物、事業用乗用。自家用貨物、自家用乗用を合わせると、全体の約9割を占めている
特集-第26図 事業用・自家用別(第1当事者)交通事故発生状況(割合)の推移。自家用貨物、自家用乗用、事業用貨物、事業用乗用。自家用貨物、自家用乗用を合わせると、全体の約9割を占めている

このことは,車両保有台数における自家用乗用車の割合の増加(及び,自家用貨物車の割合の減少)に伴うものと考えられる。

2 「車両」に関する動向

自動車の普及の動向を振り返ると,戦後,戦前の航空機メーカーなどが二輪車を製造開始するとともに,昭和21年からトラックの製造,24年から乗用自動車の製造が解禁された。

昭和30年代に入ると,自動車交通の中心は,貨物自動車中心から二輪車中心となり,40年代は乗用自動車を中心に自動車保有台数が急増し,昭和45年には,合計1,859万台と30年に比べて15年間で約13倍となった。これらとあいまって,自動車走行キロも増加し続ける。昭和50年代に入ると,貨物自動車や自動二輪車が中心であった自動車交通は,乗用自動車が中心となっていく(特集-第27図)。

特集-第27図 車種別自動車保有台数構成率の推移。その他、二輪車、乗用車、貨物車。保有台数は年々増加しているが、平成半ば以降は緩やかになっている

車種別保有台数の推移をみると,昭和30年には約45%を貨物車が,4割近くを二輪車が占めていたのに対し,50年には貨物は35%となり,乗用車が60%となる。乗用車の割合は増え続け,平成元年には約57%,30年には約76%と,道路を走る車の大多数が乗用車となる(特集-第28図)。保有台数をみても貨物車の保有台数は平成を通じて3分の2程度に減少した一方,平成の時代は乗用車の保有台数が倍増した時代といえる。

特集-第28図 車種別自動車保有台数構成率の推移。その他、二輪車、乗用車、貨物車。昭和30年頃は、貨物車、二輪車が多数を占めている。昭和40年頃は、貨物車が多数を占めている。昭和50年頃以降は、乗用車が多数を占めている

なお,自動車走行キロは,平成元年の6,002億kmから,29年には7,399億kmに増加した。(特集-第29図)

特集-第29図 自動車保有台数及び自動車走行キロの推移。どちらも年々増加しているが、平成半ば以降は緩やかになっている
3 交通安全に資する平成の30年間の主な車両に関する取組

平成の間,車両に係る技術面において交通安全に資する大きな進展がみられた。例えば,平成初期には,平成3年には先進安全自動車(ASV)推進計画が始まり8,エアバッグの普及などもみられた。以上のような技術のほか,交通安全に深く関わる事項としては,チャイルドシートに関する基準の整備,アンチロックブレーキシステム(ABS)の装着義務化,衝突被害軽減ブレーキ等の先進技術の普及などが挙げられる。

8 トピックス「先端技術について」参照。

チャイルドシートに関する基準の整備については,平成6年に組み込み式のチャイルドシートの基準が整備され,その後18年にはチャイルドシートの取り付けに関する基準が整備された。また,26年には国際基準調和により年少者用補助乗車装置に係る協定規則が導入された。チャイルドシートの使用率は,14年の52.4%から30年には66.2%まで向上した9

9 警察庁/日本自動車連盟(JAF)調べ。6歳未満の使用状況。2002年から調査方法が変更となったため,それ以降の数字。

急ブレーキをかけた時などにタイヤの回転が止まることを防ぐアンチロックブレーキシステム(ABS)については,平成2年に大型トラックなどへの装着が開始され,装着義務対象が順次拡大した。その後25年にトラック,トレーラ,バスへの装着が義務化され,さらには27年に自動二輪車への装着も義務化されている。

障害物との衝突を予測して警報し,衝突被害を軽減する制動を制御する衝突被害軽減ブレーキについては,平成24年にトラック,バスに関する基準が整備され,その後は順次,義務付けが行われた。一方,乗用車に関する基準については,現在国際基準策定に向けた議論が進められているところであるが,29年の新車乗用車装着率は77.8%となっている。

衝撃吸収性能に関する基準については,平成5年に前面衝突時,8年に側面衝突時の基準を整備するとともに,16年には歩行者頭部保護基準を整備するなどの取組を進めている。

特集-第30図 平成の30年間の道路運送車両の保安基準の改正(交通安全対策に関わる主な改正)(見出し)
改正年月 改正内容
H2. 8 大型車へのアンチロックブレーキシステム(ABS)の基準を整備
H5. 4 乗用車の前面衝突時の衝撃吸収性能の基準を整備
H6. 3 組み込み式チャイルドシートの基準を整備
H8. 9 乗用車及び軽・小型貨物車の側面衝突時の衝撃吸収性能の基準を整備,前面衝突時の衝撃吸収性能の対象車種の拡大
H18. 3 チャイルドシートの取付に関する基準を整備
H19. 11 電気自動車等の感電保護基準を整備
H24. 4 衝突被害軽減ブレーキの基準を整備
H25. 1 衝突被害軽減ブレーキの装備対象車種の拡大
H25. 8 制動装置に係る協定規則を導入しアンチロックブレーキシステム(ABS)の装備を義務化
H25. 11 衝突被害軽減ブレーキに係る協定規則を導入
H26. 1 年少者用補助乗車装置に係る協定規則を導入
H26. 2 衝突被害軽減ブレーキの基準強化及び装備対象車種の拡大
H27. 1 二輪車へ先進制動システム(アンチロックブレーキシステム/コンバインドブレーキシステム)の装備を義務化
H28. 10 ハイブリッド車等の車両接近通報装置に係る基準を整備
H30. 12 年少者用補助乗車装置に係る基準を改正
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