特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―
第2章 近年の道路交通事故の状況
第3節 歩行者及び自転車の交通事故の傾向

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特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―

第2章 近年の道路交通事故の状況

第3節 歩行者及び自転車の交通事故の傾向

状態別人口10万人当たりの交通事故死者数をみると,着実に減少しているものの,歩行中,自動車乗車中が依然として高い水準となっている(特集-第22図)。

特集-第22図 状態別人口10万人当たり交通事故死者数の推移。自動車乗車中、自動二輪車乗車中、原付乗車中、自転車乗用中、歩行中。いずれも減少傾向にある

欧米諸国と比べて,我が国は交通事故死者数に占める歩行中及び自転車乗用中の割合が高い(特集-第23図)。

特集-第23図 主な欧米諸国の状態別交通事故死者数の構成率(平成30(2018)年)。歩行中、自転車乗用中、二輪車乗車中、乗用車乗車中、その他、不明。日本、イギリス、スウェーデン、ドイツ、フランス、アメリカ毎に示している。日本は、歩行中が最も多い。欧米諸国では、乗用車乗車中が最も多い
◇歩行者事故

歩行中交通事故死者数(第1・第2当事者)において,横断中の死者は69.3%(令和2年。平成22年~令和2年平均71.3%)を,また,歩行中交通事故重傷者数(第1・第2当事者)において,横断中の重傷者は68.0%(令和2年。平成22年~令和2年平均67.3%)を占めている(特集-第24図,第25図)。

特集-第24図 歩行中交通事故死者数(第1・第2当事者)の推移。歩行中、うち横断中。減少傾向にある
特集-第25図 歩行中交通事故重傷者数(第1・第2当事者)の推移。歩行中、うち横断中。減少傾向にある

横断中の交通事故死者数(第1・第2当事者)については,横断歩道を横断中に事故に遭っているケース及び横断歩道以外を横断中に事故に遭っているケースいずれも減少傾向にあり,横断歩道横断中は,平成22年と比較して約3分の2まで減少しているものの,横断歩道以外を横断中と比較して減少割合は小さい。横断中の交通事故重傷者数(第1・第2当事者)については,横断歩道を横断中に事故に遭っているケースは微減傾向にある(特集-第26図,第27図)。

特集-第26図 事故類型別歩行中交通事故死者数(第1・第2当事者)の推移。横断歩道横断中、横断歩道以外横断中、横断中以外。いずれも減少傾向にある
特集-第27図 事故類型別歩行中交通事故重傷者数(第1・第2当事者)の推移。横断歩道横断中、横断歩道以外横断中、横断中以外。いずれも減少傾向にある

横断歩道横断中事故における歩行中死者数のうち,歩行者側の法令違反についてみると,違反なしが7割であるが,3割は信号無視の違反があった。一方で,横断歩道以外横断中事故における歩行中死者数のうち,歩行者側の法令違反についてみると,走行車両の直前・直後の横断等の横断違反が58%,信号無視が6%等,約7割に法令違反があった(特集-第28図)。

特集-第28図 横断歩道横断中事故における法令違反別歩行中死者数(第1・第2当事者)(令和2年),横断歩道以外横断中事故における法令違反別歩行中死者数(第1・第2当事者)(令和2年)。横断歩道横断中では、歩行者は信号無視、車両等は横断歩行者妨害等が多い。横断歩道以外横断中では、歩行者は走行車両の直前・直後の横断、車両等は前方不注意が多い

歩行中死者数,重傷者数を年齢別にみると,65歳以上の高齢者がそれぞれ,74.2%,57.4%(令和2年)を占めている。

令和2年中の歩行者(第1・第2当事者)の事故類型別死者数を年齢別にみると,65歳以上の高齢者では,横断中が76%を占めているのに対し,65歳未満は横断中が占める割合は50%となっており,大きく異なっている(特集-第29図)。

特集-第29図 年齢層別歩行中死者数の推移,年齢層別歩行中重傷者数の推移,歩行者(第1・第2当事者)の事故類型別死者数(令和2年)。65歳以上では、横断中が76%となっているが、65歳未満では、50%になっている
◇自転車事故
【自転車乗用中の被害】

自転車乗用中の死者・重傷者数(第1・第2当事者)のうち,自転車対自動車の事故によるものは約8割(令和2年79.4%)を占める。自転車対自動車の事故を事故類型別にみると,出会い頭衝突が55%(令和2年)を占めている。

自転車対自動車の出会い頭事故について,自転車側の法令違反の状況をみると,78%(令和2年)が安全不確認等の法令違反を犯している(特集‐第30図)。

特集-第30図 相手当事者別自転車乗用中死者・重傷者数(第1・第2当事者)の推移,自転車対自動車事故における事故類型別自転車の死者・重傷者数(令和2年),自転車対自動車の出会い頭事故における法令違反別自転車の死者・重傷者数(令和2年)。出合い頭事故では、自動車、自転車とも安全不確認が多い

年齢層別に,自転車及び駆動補助機付自転車による交通死亡事故(第1当事者)を件数割合でみると,65歳以上の割合は,駆動補助機のない自転車については, 平成23年から27年の合計では59.2%,28年から令和2年の合計では67.9%と増加傾向にあり,駆動補助機付自転車については23年から27年の合計では84.3%,28年から令和2年の合計では83.0%でいずれも8割以上と高い割合を占めている(特集‐第31図)。

特集-第31図 自転車(第1当事者)の年齢層別交通死亡事故件数割合。65歳未満、65~69歳、70~74歳、75~79歳、80~84歳、85歳以上。自動車、駆動補助機付自転車毎に示している。自転車では、65歳未満が多い。駆動補助機付自転車では、85歳以上が多い

ヘルメット非着用の自転車乗用中死者の損傷主部位別の割合をみると,半数以上(56%)が頭部損傷によるものであり,負傷者の損傷主部位別の割合と比較すると,頭部損傷の割合が顕著であることが明らかである。このことからも頭部を保護するヘルメットを着用することの重要性が明確となっている。ヘルメット着用状況別の致死率を比較しても着用した場合に比べ非着用は致死率が約3倍となっている。

ヘルメット非着用者率(死傷者)の推移をみると,中学生,小学生の比率が減少傾向であるのに対し,高校生以上の年代は,微減にとどまり,かつ,高い水準のままである。道路交通法(昭35法105)第63条の11において,「児童又は幼児を保護する責任のある者は,児童又は幼児を自転車に乗車させるときは,当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。」とされていること,また,中学校では,自転車による登下校時のヘルメット着用が校則等で定められていることなどにより,小・中学生の非着用率の低下に結び付いているものと考えられ,自転車乗用中の死者数も低く抑えられている(特集‐第32図)。

特集-第32図 ヘルメット非着用の自転車乗用中死者・負傷者の損傷主部位別比較(令和2年),ヘルメット着用状況別の致死率比較(令和2年),ヘルメット非着用者率(死傷者)の推移。損傷主部位別比較では、死者は頭部が多く、負傷者は脚部が多い
【自転車と歩行者の事故】

自転車対歩行者事故における衝突地点別歩行中死者・重傷者数をみると,歩道での衝突が43%を占めている。また,法令違反別(自転車側)では,前方不注意や安全不確認が多いなど,自転車の道路通行の法令遵守意識が問われる結果となっている(特集‐第33図)。

特集-第33図 自転車対歩行者事故における衝突地点別歩行中死者・重傷者数(令和2年),自転車対歩行者事故における自転車の年齢層別歩行中死者・重傷者数(令和2年),自転車対歩行者事故における自転車の法令違反別歩行中死者・重傷者数(令和2年)。歩行中死者・重傷者数では、歩道が多い

令和2年の自転車対歩行者の交通事故件数は,令和元年と比較して7%減少しているものの,平成28年と比較した場合,15.5%増加している(平成28年 :2,281件→令和2年:2,634件)(特集‐第34図)。

特集-第34図 自転車対歩行者交通事故件数。増加傾向にあるが、令和2年は減少している

一方で,令和2年中,自転車に乗って仕事をしていた人(業務)と歩行者の交通事故は,全国で対前年約6割増の156件であった(特集‐第35図)。

特集-第35図 自転車対歩行者の交通事故における自転車の通行目的別交通事故件数(令和元年,2年)。業務、通勤、通学等、その他。令和元年より令和2年は減少している
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