特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―
第3章 新たな目標の達成に向けて
第1節 第11次交通安全基本計画における目標

目次]  [前へ]  [次へ

特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―

第3章 新たな目標の達成に向けて

第11次計画で定めた目標と,交通三要素(人,車両,交通環境)の観点から,今後,特に推進すべき対策について紹介する。

第1節 第11次交通安全基本計画における目標

道路交通事故のない社会を達成することが究極の目標であるが,一朝一夕にこの目標を達成することは困難であると考えられることから,まずは死者数及び命に関わり優先度が高い重傷者数をゼロに近づけることを目指し,本計画の計画期間である令和7年までには,以下のとおり目標を設定した。

1 世界一安全な道路交通の実現を目指し,年間の24時間死者数を2,000人以下とする。

この年間の24時間死者数2,000人に,平成28年から令和元年の間の24時間死者数と30日以内死者数の比率の平均(1.20)を乗ずると,2,400人となる。年間の30日以内死者数が2,400人となると,人口10万人当たりの30日以内死者数は1.96人となる。国際道路交通事故データベース(IRTAD)がデータを公表している34か国中の人口10万人当たりの30日以内死者数をみるに,我が国は平成30(2018)年では3.29人と8番目に少ないが,この目標を達成した場合には,他の各国の交通事故情勢が現状と大きく変化がなければ,最も少ない国となる。

2  年間の重傷者数を22,000人以下にする。

本計画における最優先の目標は死者数の減少であるが,重傷者が発生する事故防止への取組が,死者数の減少にもつながることから,本計画においては,命に関わり優先度が高い重傷者に関する目標値を設定するものである。また,先端技術や救急医療の発展等により交通事故の被害が軽減し,従来であれば死亡事故に至るような場合であっても,重傷にとどまる事故も少なくない。このため,日常生活に影響の残るような重傷事故を減らすことにも,更に着目していくため,目標値とするものである。

なお,将来の交通事故の状況については,正確には見極め難いところであるが,内閣府の「道路交通安全に関する基本政策等に係る調査」(令和2年3月)により長期予測を実施したところ,令和7年における交通事故死者数(24時間以内,30日以内),重傷者数の予測値は,死者数(24時間以内)2,214~2,578人,死者数(30日以内)2,608~3,111人,重傷者数23,407~23,727人となっている。上記目標については,従前から実施されている各種交通安全施策の延長のみならず,最近導入されたばかりの施策から,今後発現してくるであろう効果や,今後新たに行われる交通安全施策による効果等を見込みつつ設定されたところである。この目標達成のためには,国の関係行政機関及び地方公共団体は,国民の理解と協力の下,第11次計画に掲げる道路交通の安全に資する諸対策を総合的かつ強力に推進する必要がある。

目次]  [前へ]  [次へ