特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―
第4章 第11次交通安全基本計画の概要
第5節 踏切道における交通の安全

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特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―

第4章 第11次交通安全基本計画の概要

第5節 踏切道における交通の安全

1 踏切事故のない社会を目指して

踏切事故は,長期的には減少傾向にある。しかし,一方では,踏切事故は鉄道運転事故の約3割を占め,また,改良をすべき踏切道がなお残されている現状である。こうした現状を踏まえ,引き続き,踏切事故防止対策を総合的かつ積極的に推進することにより踏切事故のない社会を目指す。

2 踏切道における交通の安全についての目標
(1)踏切事故の状況

踏切事故(鉄道の運転事故のうち,踏切障害及びこれに起因する列車事故)は,長期的には減少傾向にあり,令和2年の発生件数は173件,死傷者数は124人となっている。

踏切事故は長期的には減少しており,これは踏切道の改良等の安全対策の積極的な推進によるところが大きいと考えられる。しかし,依然,踏切事故は鉄道の運転事故の約3割を占めている状況にあり,また,改良するべき踏切道がなお残されている現状にある。

(2)第11次計画における目標

令和7年までに踏切事故件数を令和2年と比較して約1割削減することを目指す。

3 踏切道における交通の安全についての対策
(1)今後の踏切道における交通安全対策を考える視点

踏切道における交通安全対策について,踏切事故件数,踏切事故による死傷者ともに減少傾向にあることを考えると,第10次計画に基づき推進してきた施策には一定の効果が認められる。

しかし,踏切事故は,一たび発生すると,令和元年度に京浜急行電鉄で発生した列車走行中に踏切道内でトラックと衝突した列車脱線事故のように重大な結果をもたらすものである。そのため,立体交差化,構造の改良,歩行者等立体横断施設の整備,踏切保安設備の整備,交通規制,統廃合等の対策を実施すべき踏切道がなお残されている現状にあること,これらの対策が,同時に渋滞の軽減による交通の円滑化や環境保全にも寄与することを考慮し,開かずの踏切への対策や高齢者等の歩行者対策等,それぞれの踏切の状況等を勘案しつつ,より効果的な対策を総合的かつ積極的に推進することとする。

(2)講じようとする施策

ア 踏切道の立体交差化,構造の改良及び歩行者等立体横断施設の整備の促進

遮断時間が特に長い踏切道(開かずの踏切)や,主要な道路で交通量の多い踏切道等については,抜本的な交通安全対策である連続立体交差化等により,除却を促進するとともに,道路の新設・改築及び鉄道の新線建設に当たっては,極力立体交差化を図る。

加えて,立体交差化までに時間の掛かる「開かずの踏切」等については,早期に安全・安心を確保するため各踏切道の状況を踏まえ,歩道拡幅等の構造改良や歩行者等立体横断施設の設置等,カラー舗装や駅周辺の駐輪場整備等の一体対策を促進する。

また,歩道が狭隘な踏切についても,踏切道内において歩行者と自動車等が錯綜することがないよう歩行者滞留を考慮した踏切拡幅など,事故防止効果の高い構造への改良を促進する。

さらに,平成27年10月の高齢者等による踏切事故防止対策検討会の取りまとめを踏まえ,平滑化等のバリアフリー化を含めた高齢者等が安全で円滑に通行するための対策を促進する。

以上のとおり,立体交差化等による「抜本対策」と構造の改良等による「速効対策」の両輪による総合的な対策を促進する。

また,従前の踏切対策に加え,駅の出入口の新設や踏切周辺道路の整備等,踏切横断交通量削減のための踏切周辺対策等を推進する。

イ 踏切保安設備の整備及び交通規制の実施

踏切遮断機の整備された踏切道は,踏切遮断機の整備されていない踏切道に比べて事故発生率が低いことから,踏切道の利用状況,踏切道の幅員,交通規制の実施状況等を勘案し,着実に踏切遮断機の整備を行う。

また,高齢者等の歩行者対策としても効果が期待できる,全方位型警報装置,非常押ボタンの整備,障害物検知装置の高規格化を推進する。

ウ 踏切道の統廃合の促進

踏切道の立体交差化,構造の改良等の事業の実施に併せて,近接踏切道のうち,その利用状況,う回路の状況等を勘案して,第3,4種踏切道など地域住民の通行に特に支障を及ぼさないと認められるものについて,統廃合を進めるとともに,これら近接踏切道以外の踏切道についても同様に統廃合を促進する。

エ その他踏切道の交通の安全及び円滑化等を図るための措置

緊急に対策の検討が必要な踏切道は,「踏切安全通行カルテ」を作成・公表し,効果検証を含めたプロセスの「見える化」を推進し,透明性を保ちながら各踏切の状況を踏まえた対策を重点的に推進する。

また,ICT技術の発展やライフスタイルの変化等,社会を取り巻く環境の変化を見据え,更なる踏切道の安全性向上を目指し,対策を検討する。

平常時の交通の安全及び円滑化等の対策に加え,災害時においても,踏切道の長時間遮断による救急・救命活動や緊急物資輸送の支障の発生等の課題に対応するため,関係者間で遮断時間に関する情報共有を図るとともに,遮断の解消や迂回に向けた災害時の管理方法を定める取組を推進する。

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