特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―
第4章 第11次交通安全基本計画の概要
第7節 航空交通の安全

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特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―

第4章 第11次交通安全基本計画の概要

第7節 航空交通の安全

1 航空事故のない社会を目指して

我が国における民間航空機の事故の発生件数は,長期的には減少傾向にあり,特定本邦航空運送事業者(客席数が百又は最大離陸重量が5万キログラムを超える航空機を使用して行う航空運送事業を経営する本邦航空運送事業者)における乗客死亡事故は,昭和60年の日本航空123便の御巣鷹山墜落事故以降は発生していない。しかしながら,航空運送事業の中心となる大型機の事故は,乱気流に起因する機体の動揺に伴うものを中心に,年間数件程度ではあるものの依然として発生しており,下げ止まりの傾向も見られる。また,ヒューマンエラー,機材不具合等による重大インシデントや安全上のトラブルが発生しているほか,我が国内での外国航空会社による航空事故も発生しており,航空事故を減らすため,また事故につながりかねない安全上のトラブルの未然防止を図るため,航空交通安全についての対策を着実に実施し究極的には航空事故のない社会を目指す。

2 航空交通の安全についての目標

1 本邦航空運送事業者が運航する定期便について,死亡事故発生率及び全損事故発生率をゼロにする。

2 航空事故発生率,重大インシデント発生率及び地上作業,施設等に起因する人の死傷又は航空機が損傷した事態の発生率に関する21の指標で,5年間で約17%の削減を図る(特集-第2表)。

特集-第2表 航空交通の安全についての目標
【死亡事故発生率及び全損事故ゼロ】
令和7年度目標値
1定期便を運航する本邦航空運送事業者の死亡事故発生率(回数あたり)
※ICAO加盟の各国定期航空運送事業者との比較が可能な指標
0
2定期便を運航する本邦航空運送事業者の全損事故発生率(回数あたり)
※IATA(国際航空運送協会)加盟の各国定期航空運送事業者との比較が可能な指標
0
【21の指標 5年間で約17%削減】
業務提供者の区分 令和7年度目標値
航空
運送
分野
(1)定期便を運航する本邦航空運送事業者 1航空事故発生率(時間あたり) 0.50
2-1(回数あたり) 1.00
2-2(回数あたり)(定期便に限る)(2-1の内数)
※ICAO加盟の各国定期航空運送事業者との比較が可能な指標
0.86
3重大インシデント発生率(時間あたり) 1.51
4(回数あたり) 2.99
(2)(1)以外の航空運送事業者及び航空機使用事業者 4航空事故発生率(時間あたり) 12.15
4(回数あたり) 8.75
4重大インシデント発生率(時間あたり) 27.26
4 (回数あたり) 18.94
航空
運送
分野
国,地方公共団体 4航空事故発生率(時間あたり) 12.34
4(回数あたり) 14.80
4重大インシデント発生率(時間あたり) 3.53
4(回数あたり) 4.23
個人 4航空事故発生率(時間あたり) 114.03
4(回数あたり) 109.79
4重大インシデント発生率(時間あたり) 50.68
4(回数あたり) 48.80
交通
管制
分野
航空保安業務等提供者 4交通管制分野に関連する又は関連するおそれのある航空事故発生率(管制取扱機数あたり) 0.00
4交通管制分野に関連する又は関連するおそれのある重大インシデント発生率(管制取扱機数あたり) 0.64
空港
分野
空港管理業務等提供者 4空港分野に関連する又は関連するおそれのある航空事故発生率(着陸回数あたり) 0.00
4空港分野に関連する又は関連するおそれのある重大インシデント発生率(着陸回数あたり) 0.00
㉑制限区域内において,地上での作業又は地上の施設若しくは物件に起因する人の死傷,又は航空機が損傷した事態の発生率(着陸回数あたり) 17.58
注 1
国土交通省資料による。
2
「時間あたり」は,100万飛行時間あたりを示す。「回数あたり」は,100万飛行回数あたりを示す。
3
「管制取扱機数あたり」は,管制取扱機数100万機あたりを示す。「着陸回数あたり」は,100万着陸回数あたりを示す。
4
平成30年度の目標値を起点として,15年間で50%減とする安全目標を設定していることから,この5年間では約17%減としている。
3 航空交通の安全についての対策
(1)今後の航空交通安全対策を考える視点

我が国においては,航空安全プログラム(SSP)を導入し,国が航空全体の安全目標指標及び達成に向けた管理計画を定め,各業務提供者と個々の安全目標指標等について合意した上で,その安全管理システム(SMS)を継続的に監視,監督,監査を行う等により,安全の向上を図る取組を推進してきた。今後は,安全目標の達成状況等,SSPの実施状況の変化に対応したSSPの改定を適時に実施し,更なる航空安全対策の深化・高度化を進める。なお,令和元年度末より新型コロナウイルス感染症拡大に伴い,その影響を踏まえ,一部の監査や検査について延期又は書面等の対面以外の代替手段により実施する等,柔軟な対応を実施してきたところであるが,今後は航空需要の早期回復に向けて,安全レベルを維持しつつ状況に応じ業務提供者とも十分に連携した安全管理を実施してゆく必要がある。

(2)講じようとする施策

ア 航空安全プログラムの更なる推進

SSPを導入し,SSPに関連する各施策に取り組むことにより,これまでの法令遵守型の安全監督に加え,国が安全指標及び安全目標値を設定してリスクを管理し,義務報告制度・自発報告制度等による安全情報の収集・分析・共有等を行うことで,航空安全対策を更に推進する。

イ 航空機の安全な運航の確保

操縦士等の養成・確保に向け,技量向上に資する技能証明等諸制度の適切な運用及び必要な見直し等を含めた取組を推進する。また,操縦士の日常の健康管理(アルコール摂取に関する適切な教育を含む。)の充実や身体検査の適正な運用に資する知識(航空業務に影響を及ぼす疾患や医薬品に関する知識を含む。)の普及啓蒙を図る。

ウ 航空機の安全性の確保

航空機に対する型式証明等における設計検査の充実や国の検査に代わり基準適合性の確認を行う民間事業者の指導・監督等に万全を期す等,航空機検査体制の充実を図る。国産航空機については,設計製造国として安全・環境基準への適合性の審査を適切かつ円滑に実施するとともに,運航開始後も安全性が維持・継続されるよう,的確に対応する。

エ 航空交通環境の整備

安全かつ効率的な運航を維持しつつ管制処理能力を向上させるため,国内の航空路空域等の抜本的な再編を行う。

また,管制処理能力の向上によって増大する航空需要に対応するため,統合管制情報処理システムについてハードウェアとソフトウェア両面での機能向上を図る。

オ 無人航空機等の安全対策

無人航空機の有人地帯での補助者無し目視外飛行の実現に向け,機体認証・操縦ライセンス・運航管理ルール等に係る制度の検討・整備を進める。

また,「空飛ぶクルマ」の社会実装実現に向けて,諸外国の動向を注視し,国際的な調和に努めつつ,機体の安全基準,操縦者の技能証明,運航安全基準等の安全の確保を推進する。

カ 救助・救急活動の充実

航空機の遭難,行方不明等に際して,迅速かつ的確な捜索救難活動を行うため,救難調整本部と関係行政機関の連携を強化するとともに,隣接国の捜索救難機関と連携した捜索救難体制を確立する。

キ 被害者支援の推進

公共交通事故による被害者等への支援の確保を図るため,国土交通省に設置した公共交通事故被害者支援室では,外部の関係機関とのネットワークの構築,公共交通事故被害者等支援フォーラムの開催,公共交通事業者による被害者等支援計画作成の促進等,公共交通事故の被害者等への支援の取組を着実に進めていく。

ク 航空事故等の原因究明と事故等防止

航空事故及び航空事故の兆候(航空重大インシデント)の原因究明をさらに迅速かつ的確に行うため,調査を担当する職員への専門的な研修を充実させ,調査技術の向上を図るとともに,ドローン等を活用した新たな調査手法の構築,過去の事故等調査で得られたノウハウや各種分析技術,同種事故の比較分析など事故調査結果のストックの活用等により,調査・分析手法の高度化を図る。

ケ 航空交通の安全に関する研究開発の推進

関連研究開発機関相互の連絡協調体制の強化による総合的な研究開発等を推進する。

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