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小型船舶の安全対策について

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海上保安庁では,小型船舶等の事故調査結果を基に,発生隻数(頻度),死傷事故発生数(リスク)等に着目した課題の洗い出しを行い,令和元年度から,①プレジャーボートの運航不能(機関故障),②ミニボートの転覆・浸水,③漁船・遊漁船の衝突の3つの事故を重点ターゲットに定め,安全対策を強力に推進している。

令和2年度においては,重点ターゲットに対するきめ細やかな安全対策を検討するため,従来の事故調査項目を更に深堀したバックグラウンド調査を実施し,同調査結果を基に,重点ターゲットの背景にある活動環境や社会的要因等に即した安全対策を新たに策定の上,以下の各種海難防止活動を実施した。

1.プレジャーボートの運航不能(機関故障)については,バックグラウンド調査を実施した結果,調査期間中に発生した約8割の事故船舶が発航前点検で防ぐことができない箇所の故障が原因であることが判明するなど,同種海難の防止を図るためには,定期的な点検整備が極めて重要であることから,関係省庁,民間団体等との連名によるリーフレットを作成の上,海難防止講習会,訪船指導等の各種機会を通じて,ユーザーに対する定期的な点検整備の推奨,適切なタイミングでの機関整備の啓発を実施した。

2.ミニボートの転覆・浸水については,乗船者の動きや波の影響が複合的に重なった結果,船のバランスが崩れ,転覆・浸水に至る事故が多く見受けられたため,同種海難の防止を目的として,令和2年10月,横浜海上防災基地において「ミニボートの安全運航に係る検証」を実施した。

検証では,リジットタイプ,インフレータブルタイプという2種類のミニボートを使用し,乗船者の動きや人工的に発生させた波がミニボートに及ぼす影響を確認した。

今後,同検証映像を「ウォーターセーフティガイド(ミニボート編)」に掲載することで,海に関する基礎知識やミニボートの特性等を正しく理解していないユーザー等に対する理解の促進を図ることとしている。

3.漁船・遊漁船の衝突事故については,見張り不十分によるものが大半を占めている実態を踏まえ,作業中におろそかになりがちな見張りの徹底等を啓発するため,関係省庁,民間団体等と連携の上,パトロール活動,免許更新講習等の各種講習会,訪船指導等のあらゆる機会を通じて適切な見張りの徹底等を呼び掛けることで,漁業者の安全意識の高揚・啓発を図っている。

今後も引き続き,事故減少を図るとともに,事故調査結果を詳細に分析し,事故実態を踏まえた適時適切な安全対策を推進していくこととしている。

機関故障防止リーフレット。「プレジャーボートの安全運行のために 海難事故の3分の1以上が故障や点検不足によるものです」とある
ミニボート検証の様子。プールでミニボートに乗っている人
訪船指導の様子。漁船に指導する海上保安庁の職員
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