トピックス
令和2年改正道路交通法(高齢運転者対策)の施行について

目次]  [前へ]  [次へ

高齢運転者による痛ましい交通事故の発生等を受け,平成29年7月の交通対策本部決定において,80歳以上の運転リスクが特に高い者への実車試験の導入や「安全運転サポート車」限定免許の導入といった高齢者の特性等に応じたきめ細かな対策の強化に向けた運転免許制度の更なる見直しについて検討を行うこととされた。

また,令和元年6月の「昨今の事故情勢を踏まえた交通安全対策に関する関係閣僚会議」で決定された「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」においても,安全運転支援機能を有する自動車を前提として高齢者が運転できる運転免許制度の創設に向け,検討を行うこととされた。

これらの政府決定等を踏まえ,警察庁においては,平成29年以降,調査研究を進め,高齢運転者の運転免許制度の在り方に関する検討を行った。そして検討結果等に基づき,令和2年6月,第201回国会において,

① 75歳以上で一定の違反歴のある高齢運転者に対する運転技能検査の導入

② 申請によるサポートカー限定免許の導入

等の高齢運転者対策の充実・強化等を主な内容とする道路交通法の一部を改正する法律(令2法42。以下「改正法」という。)が成立し,令和4年5月13日に施行された。

①運転技能検査

従来,高齢運転者対策としては,主に認知機能に着目した対策が講じられ,一定の成果を上げてきたが,より一層の事故の防止を図るためには,認知機能検査以外にも,加齢に伴う運転技能の低下に着目した対策を講じる必要があった。

このため,改正法では,75歳以上で一定の違反歴のある者は,運転免許証更新時に運転技能検査を受けていなければならず,その結果が一定の基準に該当する者に対しては,運転免許証の更新をしないこととされた。

検査の対象となる一定の違反歴の内容は,将来において死亡・重傷事故を起こす危険性が高い者を抽出する観点から,過去3年間に基準違反行為(普通自動車等の運転に関し行われた信号無視等の違反行為)をしたことがあることとされた。

検査では,普通自動車を用いてコース等を走行し,一時停止ができるか,信号を守れるかなどの基本的な運転技能について,減点方式で採点する。第一種運転免許は70点以上,第二種運転免許は80点以上がそれぞれ合格となるが,不合格となった場合でも,検査は繰り返し受検可能とされている。

②サポートカー限定免許

近年の高齢運転者による事故等を踏まえ,警察では,自動車の運転に不安を有する高齢者等が運転免許証の自主返納等をしやすい環境の整備を行っているが,一方で,自主返納により自動車を運転することができなくなることで,特に公共交通機関が十分に整備されていない地域などでは生活に影響を及ぼすおそれもある。そこで,自己の運転能力の低下を自覚した高齢者等が,自主的な申請によって,運転することができる車両をより安全な自動車に限定するなど,自主返納までの中間的な選択肢を設けることが,高齢者等の安全運転やモビリティの確保に資すると考えられた。

このため,改正法では,申請により,運転することができる車両を一定の安全運転支援機能を備える自動車に限定するなどの条件を運転免許に付与等する制度を導入することとされた。

申請することができる条件は,普通自動車免許により運転することができる普通自動車の種類を「サポートカー」(①衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置を備えており,これらの装置について性能認定を受けている普通自動車又は②令和3年11月以降,国産の新型車から順次義務化される道路運送車両の保安基準に適合する衝突被害軽減ブレーキを備えた普通自動車)に限定する条件とされている。

「サポートカー」には,一定の交通事故抑止効果が期待されるが,衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置はあくまで安全運転を支援するための装置であることから,運転者は,これらの機能を過信することなく,安全運転に努める必要がある。

令和2年改正道路交通法リーフレット(高齢運転者対策)。「高齢運転者の免許証更新時の運転技能検査が義務化されます!」とある
令和2年改正道路交通法リーフレット(高齢運転者対策)。「高齢者の運転免許証の更新制度が変わります」とある
目次]  [前へ]  [次へ