特集 高齢者の交通事故防止について
第2章 高齢者の交通事故防止に向けた取組
第2節 高齢運転者による交通事故防止のための取組
特集 高齢者の交通事故防止について
第2章 高齢者の交通事故防止に向けた取組
第2節 高齢運転者による交通事故防止のための取組
1 高齢者の安全運転を支える対策の推進
(1)高齢運転者に対する教育等の現状
運転免許証の更新期間が満了する日における年齢が70歳以上の者には,更新期間が満了する日前6月以内に高齢者講習を受講することが義務付けられている。
また,運転免許証の更新期間が満了する日における年齢が75歳以上の者については,運転免許証の更新期間が満了する日前6月以内に,認知機能検査を受けることが義務付けられている。
加えて,高齢運転者による交通事故情勢を踏まえ,道路交通法の一部を改正する法律(令2法42)により,令和4年5月から,普通自動車に対応する運転免許保有者のうち一定の違反歴がある75歳以上の者は,同じく6月以内に,運転技能検査に合格しなければ,運転免許証が更新されないこととされた(特集-第40図)。
運転技能検査では,一時停止や信号通過等の課題が課され,検査の結果が一定の基準に達しない者は不合格となるが,更新期日まで繰り返し受検することができる。
また,認知機能検査については,三つの区分によりなされていた結果の判定が,認知症のおそれの有無のみの二つの区分によることとされたほか,高齢者講習については,認知機能検査の結果にかかわらず内容が一本化され,講義,運転適性検査器材による指導及び実車指導を内容とする2時間の講習となった。
なお,普通自動車を運転することができない運転免許(原動機付自転車免許,普通自動二輪車免許,小型特殊自動車免許等)のみを受けている者又は運転技能検査対象者に対しては,実車指導を除いた1時間の講習※を行っている。
このほか,運転に不安を覚える高齢運転者等に対して,運転免許証の自主返納だけでなく,より安全な自動車に限って運転を継続するという中間的な選択肢として,運転免許に,運転できる自動車の種類をサポートカー※に限定するなど一定の条件を付すことを申請することができることとされた。
※高齢運転者による交通死亡事故の多くは,普通自動車により発生していること,また,高齢者講習の実車指導においては,運転技能検査と同様に客観的指標を用いた評価を行うことから,普通自動車を運転することができない運転免許のみを受けている者又は運転技能検査対象者については,高齢者講習における実車指導を免除している。
※サポートカー
安全運転サポート車のうち,他の車両や歩行者に接近した場合にブレーキが作動する衝突被害軽減ブレーキ及びブレーキとアクセルを踏み間違えた場合の急発進を防ぐペダル踏み間違い急発進抑制装置の先進安全技術が搭載された自動車をいう。
(2)運転免許証の自主返納制度等の周知
高齢運転者等が身体機能の低下等を理由に自動車等の運転をやめる際には,申請により運転免許を取り消し,運転免許証を返納することができるが,その場合には,返納後5年以内に申請すれば,運転経歴証明書の交付を受けることができる。
また,運転免許証の更新を受けずに失効した場合でも,失効後5年以内に申請すれば,運転経歴証明書の交付を受けることができる。運転経歴証明書の交付を受けた者は,バス・タクシーの乗車運賃の割引等の様々な特典を受けることができる。
警察では,自主返納及び運転経歴証明書制度の周知を図るとともに,運転免許証の返納後又は運転免許の失効後に運転経歴証明書の交付を受けた者への支援について,関係機関・団体等に働き掛けを行い,自動車の運転に不安を有する高齢者等が自主返納等をしやすい環境の整備に向けた取組を進めている。
(3)安全運転相談の充実・強化
警察では,自動車等の安全な運転に不安のある高齢運転者やその家族等からの相談を受け付けるため,安全運転相談窓口を設けて,加齢に伴う身体機能の低下を踏まえた安全運転の継続に必要な助言・指導や,自主返納制度及び自主返納者等に対する各種支援施策の教示を行っており,全国統一の専用相談ダイヤル「♯8080(シャープハレバレ)※」を導入し,安全運転相談の認知度及び利便性の向上に努めている。
また,安全運転相談窓口では,看護師の資格を有する医療系専門職員を始めとする専門知識の豊富な職員を配置し,適切な相談場所を確保するなどして,相談者のプライバシー保護のために特段の配慮をしているほか,相談終了後も運転者等に連絡して継続的な対応を図ったり,患者団体や医師会等と密接に連携し,必要に応じて相談者に専門医を紹介するなど,安全運転相談の充実を図っている。
※♯8080(シャープハレバレ)
安全運転相談ダイヤルに電話すると,都道府県警察の安全運転相談窓口に直接つながるようになっている。
(4)高齢運転者標識の普及啓発
高齢運転者標識※は,他の車両の運転者に注意を喚起するとともに,高齢運転者標識を表示した自動車を保護することなどによって交通事故防止を図るものであり,高齢運転者標識を表示した自動車に対する幅寄せや割込みは禁止されている。
このため,70歳以上の運転者に対する高齢運転者標識の表示の促進を図るとともに,高齢運転者の特性を理解し,高齢運転者標識を取り付けた自動車への保護意識を高めるよう,他の年齢層に対しても,広報啓発に努めている。
※高齢運転者標識は,平成23年2月に様式が変更されたが,変更前の標識(「もみじマーク」)についても,当分の間,表示することができる。
(5)高速道路における逆走対策の推進
第1章第3節で見たとおり,高速道路において高齢運転者等による逆走に起因する交通死亡事故が発生しているところであり,国土交通省においては,令和元年9月に策定した「高速道路における安全・安心基本計画」を踏まえ,11年までに逆走による重大事故ゼロを目指して,高速道路における逆走対策に取り組んでいる。
具体的には,インターチェンジ,ジャンクション部等におけるラバーポールや大型矢印路面標示の設置,カラー舗装の実施等といった物理的・視覚的対策を進めているほか,民間企業から公募・選定した逆走対策技術の積極的な展開を進めている(特集-第41図,第42図)。
また,官民連携による画像認識技術の開発・普及へ向けた取組として,東北道旧蓮田サービスエリアの試験コースを活用した試験や自動車関連メーカー各社へのヒアリングを行い,「画像認識技術を用いた逆走防止対策ガイドライン(案)」 を作成した(特集-第43図)。
令和5年7月からは,本州四国連絡高速道路の一部の区間において,逆走検知システムが逆走車を検知した場合,逆走車への警告及び順走車への注意喚起をスピーカー(音),回転灯(光)及び警告表示板(文字)により行う逆走検知・警告システムの試行を開始している(特集-第44図)。
警察では,高速道路の安全利用のため,関係機関・団体等と連携し,サービスエリア等において,高速道路を通行する際の注意点や逆走・誤進入の危険性等に関するチラシを配布するなど広報啓発活動を行うとともに,車両故障や交通事故等により運転が困難となった場合の措置等に関する参加・体験・実践型の交通安全教育を行っている。
また,逆走の危険性や逆走時の対応について,運転免許更新時の講習等で周知を図っている。
(6)衝突被害軽減ブレーキの基準策定等
第1章第3節で見たとおり,交通死亡事故件数全体に占める65歳以上の運転者による交通死亡事故件数の割合が増加するなどしているところであり,衝突被害軽減ブレーキ等の先進安全技術は,高齢運転者を始めとした運転者による交通事故の防止や事故時の被害軽減の効果が期待されている。
乗用車等の衝突被害軽減ブレーキに関する国際基準の発行を受けて,国内においては,令和2年1月に道路運送車両の保安基準(昭26運輸省令67,以下「保安基準」という。)を改正し,世界に先駆け3年11月以降の乗用車等※の国産新型車から段階的に対自動車及び対歩行者への衝突被害軽減ブレーキの装備を義務付けることとした※。
また,令和3年9月に乗用車等の衝突被害軽減ブレーキの要件を対自動車及び対歩行者から対自転車へも拡充しており※,引き続き,自動車の安全性向上に向けて,更なる保安基準の拡充・強化を図ることとしている。
このほか,市販されている自動車等の安全性能評価試験を行い,その結果を公表することで, ユーザーが安全な自動車等を選択できる環境をつくり,安全な自動車等の普及を図ることを目的として,自動車アセスメント情報の提供を行っている。
自動車の安全性能評価試験では,衝突被害軽減ブレーキ(対自動車,対歩行者及び対自転車), ペダル踏み間違い急発進抑制装置(対自動車及び対歩行者),車線逸脱抑制装置,フルラップ前面衝突,側面衝突等に係る評価を行っており,令和5年度(令和6年3月31日時点)は,8車種について「自動車安全性能2023」の結果を公表した。
※乗用車等
専ら乗用の用に供する自動車(二輪自動車,側車付二輪自動車,三輪自動車,カタピラ及びそりを有する軽自動車並びに被牽引自動車を除く。)であって乗車定員10人未満のもの及び貨物の運送の用に供する自動車(三輪自動車,カタピラ及びそりを有する軽自動車並びに被牽引自動車を除く。)であって車両総重量が3.5トン以下のもの。
※乗用車等の対自動車及び対歩行者への衝突被害軽減ブレーキの装備義務化について,適用日は,新型車が令和3年11月1日(輸入自動車は6年7月1日),継続生産車が7年12月1日(輸入自動車は8年7月1日,貨物の運送の用に供する軽自動車は9年9月1日)となっている。
※乗用車等の衝突被害軽減ブレーキの要件を対自動車及び対歩行者から対自転車へ拡充することについて,適用日は,新型車が令和6年7月1日,継続生産車が8年7月1日となっている。
(7)安全運転サポート車の普及促進
第1章第3節で見たとおり,ペダルの踏み間違いなど運転操作ミス等に起因する高齢運転者による事故が発生していることや,高齢化の進展により運転者の高齢化が今後も加速していくことを踏まえ,高齢運転者が自ら運転する場合の安全対策として,安全運転サポート車(サポカー※)の普及促進に取り組んでいる。
経済産業省及び国土交通省においては,令和元年度補正予算において,高齢運転者の交通安全対策の一環として,65歳以上の者を対象に,先進安全技術を搭載したサポカーの購入等を補助するサポカー補助金を創設した。具体的には,歩行者及び車両に対する衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い急発進抑制装置を搭載したサポカーの購入に最大10万円,後付けのペダル踏み間違い急発進抑制装置の購入・設置に最大4万円の補助を実施した(現在は終了)。
また,経済産業省では,高齢運転者等に対して,サポカーの機能や使用方法等を分かりやすく伝えるため,ポスター・チラシの配布,ガイドブックの作成,サポカーポータルサイトの運営のほか,全国での「サポカー実感試乗会」を開催するなどしている。「サポカー実感試乗会」は,令和2年1月から2月に北海道,宮城県,埼玉県,愛知県,大阪府,広島県,香川県及び福岡県の全国8か所の運転免許センター等で開催したほか,5年2月に埼玉県で開催した。
サポカーの普及促進等により,先進安全技術を搭載した自動車の普及促進に取り組んだ結果,ほぼ全ての新車乗用車に衝突被害軽減ブレーキ等の先進安全技術が搭載されている。
※安全運転サポート車の愛称であるセーフティ・サポートカーの略称。
2 高齢者の移動を伴う日常生活を支える施策の推進
(1)自動運転技術を活用した新しい移動手段の実用化
ア 道の駅等を拠点とした自動運転サービス
中山間地域では高齢化が進んでおり,日常生活における人流・物流の確保が喫緊の課題となっている。一方,全国約1,200か所に設置された「道の駅」については,その多くが中山間地域に設置されており,物販を始め診療所や行政窓口等,生活に必要なサービスも集積しつつある。
こうした課題を解決するため,国土交通省では,平成29年度から令和2年度まで中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービス実証実験を全国18か所で実施した。
実証実験では,一般車両も混在する空間における自動運転車両の円滑な走行や,積雪路面における走行の安全性等の技術的な検証のほか,地域の特色を踏まえたビジネスモデルを検討するため, 貨客混載による農作物や加工品等の集落から道の駅への配送や,自動運転車で集荷した農作物を高速バスと連携して他地域に配送するなどの実験にも取り組んだ。
令和元年11月に道の駅「かみこあに」(秋田県)において社会実装を開始したほか,3年4月に道の駅「奥永源寺渓流の里」(滋賀県),7月に「みやま市山川支所」(福岡県),10月に道の駅「赤来高原」(島根県)において社会実装を開始した。
イ ラストマイル自動走行等
最寄駅等と目的地を結ぶラストマイル自動走行は,運転手不足を解消するとともに,高齢者等の安全かつ円滑な移動に資するものとして,地方部等において自治体や地域交通事業者,地域住民からの期待が大きいことから,経済産業省及び国土交通省において平成28年度から実証実験を開始した。
実証実験では,福井県永平寺町,沖縄県北谷町等において,長期の移動サービス実証を通じて技術開発や事業性の検討を行うなどし,このうち, 永平寺町においては,令和2年12月に国内で初めて遠隔監視室にいる1人の遠隔操作者が,遠隔型自動運転システム※を活用して3台の無人自動運転車を遠隔監視・操作する試験運行を開始した。
その後,更なる車両の高度化等を進め,令和3年3月に,国内で初めて,遠隔型自動運転システムについて自動運行装置※(レベル3※)としての認可を受け,当該システムによる無人自動運転移動サービスを開始した。
さらに,北谷町においても,令和3年3月に海岸線走路(町有地)において1人の遠隔操作者が2台の無人自動運転車を遠隔監視・操作する形でサービスを開始した。
また,これらの実証実験は,小型自動運転カートや小型自動運転バスを用いて実施していたが, 事業性を向上するため,多数の乗客を運ぶことができる中型自動運転バスを用いた実証実験を令和2年度に実施した。
この実証実験では,5つのバス運行事業者を選定して,多様な走行環境を有する全国5地域(茨城県日立市,神奈川県横浜市,滋賀県大津市,兵庫県三田市及び福岡県北九州市・苅田町)において実施し,中型自動運転バスによる公共移動サービスの事業化に向け,技術やサービスの検証を行った。
このほか,自動運転による地域公共交通実証事業を実施し,その持続可能性について検証したほか,自動運転移動サービスの実証実験における技術的支援を行った。
※遠隔型自動運転システム
自動運転技術を用いて自動車を自律的に走行させるシステムで,緊急時等に備えて自動車から遠隔に存在する監視・操作者が電気通信技術を利用して当該自動車の運転操作を行うことができるもの。
※自動運行装置
プログラムにより自動的に自動車を運行させるために必要な装置であって,当該装置ごとに国土交通大臣が付する条件(使用条件)で使用される場合において,自動車を運行する者の操縦に係る認知,予測,判断及び操作に係る能力の全部を代替する機能を有するもの。
※レベル3
「自動運転に係る制度整備大綱」等で採用されている,SAE(Society of Automotive Engineers)InternationalのJ3016における運転自動化レベルのうち,システムが全ての動的運転タスク(操舵,加減速,運転環境の監視,反応の実行等,車両を操作する際にリアルタイムで行う必要がある機能)をシステムが機能するよう設計されている特有の条件内で実施するが,システムの作動継続が困難な場合は,システムの介入要求等に対して,運転者の適切な応答が期待されるもの。
ウ 特定自動運行の許可制度の創設
運転者がいない状態での無人自動運転のうち, 限定地域における遠隔監視のみの無人自動運転移動サービスを念頭に置いた許可制度の創設等を内容とする道路交通法の一部を改正する法律が令和4年4月に成立し,当該許可制度の創設に係る規定は5年4月に施行された。
この改正により,自動運行装置のうち同装置の使用条件を満たさなくなった場合に直ちに自動的に安全な方法で自動車を停止させることができるものを適切に使用して自動車を運行することが「特定自動運行」と定義され,「運転」の定義から除外されたことで,運転者の存在を前提としないレベル4※に相当する自動運転のうち一定の許可基準を満たすものの実施が可能となった。
特定自動運行を行おうとする者は,特定自動運行を行おうとする場所を管轄する都道府県公安委員会に,経路や交通事故発生時の対応方法等を記載した特定自動運行計画等を提出し,許可を受けなければならないこととされたほか,許可を受けた者(特定自動運行実施者)は,車内又は遠隔監視を行うための車外の決められた場所に特定自動運行主任者を配置した上で,特定自動運行計画に従って特定自動運行を行う義務を負うとともに, 当該特定自動運行主任者は,交通事故があった場合に必要な措置を講じなければならないなどとされた(特集-第45図)。
※レベル4
「自動運転に係る制度整備大綱」等で採用されている,SAE(Society of Automotive Engineers)InternationalのJ3016における運転自動化レベルのうち,システムが全ての動的運転タスク(操舵,加減速,運転環境の監視,反応の実行等,車両を操作する際にリアルタイムで行う必要がある機能)及びシステムの作動継続が困難な場合への応答をシステムが機能するよう設計されている特有の条件内で実施し,システムの作動継続が困難な場合,運転者が介入要求等に応答することが期待されないもの。
エ 自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト
レベル4等の先進モビリティサービスの実現・普及は,環境負荷の低減,移動課題の解決等に貢献することが期待される。
経済産業省及び国土交通省では,高齢者等の交通事故防止や移動手段の確保等に資する地域の無人自動運転移動サービスの社会実装等に向けて, 令和3年度に「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト」(RoAD to the L4)を立ち上げた。
このプロジェクトでは,無人自動運転移動サービスを実現・普及させるため,令和4年度を目途に限定エリアにおいて車両に対し遠隔監視のみ(レベル4)による無人自動運転移動サービスを実現することや,7年度を目途に多様なエリアで, 多様な車両を用いた無人自動運転移動サービスを50か所程度の地域で実現すること等を目標に掲げ,先行事例の創出や,サービスの横展開のための知見の共有に取り組んでいる。
福井県永平寺町においては,令和3年3月から開始した遠隔型自動運転システムによるレベル3の無人自動運転移動サービスについて,更に車両等の開発を進め,国内で初めて,道路運送車両法(昭26法185)に基づき運転者を必要としない自動運転車(レベル4)としての認可を受けるとともに,道路交通法(昭35法105)に基づき特定自動運行の許可を取得し,5年5月21日から運転者を必要としない遠隔監視のみを行う形でのレベル4に相当する無人自動運転移動サービスを開始した。
茨城県日立市では,公道交差を含む専用道区間等におけるレベル4無人自動運転移動サービスの実現に向け,ひたちBRT※路線内で中型自動運転バスを用いて技術面やサービス面に関する実証実験を行っている。
また,今後,より大規模かつ複雑な交通環境での新たな無人自動運転移動サービスの開始が見込まれ,こうしたサービスの早期実現に向けては,事業者及び関係省庁間での適切な情報共有の促進等のための環境整備が必要であるとの観点から, 「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト」の下に「レベル4モビリティ・アクセラレーション・コミッティ」 を令和5年10月に立ち上げた。
同コミッティでは,国内におけるレベル4の自動運転タクシーサービスの早期実現に向けて,関係省庁間での情報共有を図りつつ,取組の進捗管理を行っている(特集-第46図)。
※BRT:Bus Rapid Transit(バス高速輸送システム)の略。
(2)地域公共交通の「リ・デザイン」
人口減少等による長期的な需要の減少に加え, 運転手等の人手不足による供給の減少により,バスを始めとする地域公共交通を取り巻く状況は厳しいものとなっている。
他方,高齢者の運転免許の返納件数は依然高い水準にあり,受け皿としての移動手段を確保することの重要性を増している。
これまで,高齢者を含む地域住民の移動手段の確保に向け,地方公共団体が中心となって,地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(平19法59)に基づき,令和5年度末までに1,021件の地域公共交通計画が作成されるなど,持続可能な地域旅客運送サービス提供の確保に資する取組が進められている。
また,依然として厳しい状況を踏まえ,地域の関係者の連携と協働の促進を国の努力義務として位置付けるとともに,ローカル鉄道の再構築に関する仕組みの創設・拡充,エリア一括協定運行事業の創設,道路運送高度化事業の拡充等を盛り込んだ地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律(令5法18)が令和5年10月に全面施行されたほか,地域の多様な関係者の連携・協働(共創)による実証運行の支援や交通事業者によるDX・GXによる経営改善支援,社会資本整備総合交付金による鉄道施設・バス施設の整備等,地域公共交通の再構築を図るための所要の予算が措置された。
引き続き,あらゆる政策ツールを最大限活用しつつ,デジタル田園都市国家構想実現会議の下に立ち上げた地域の公共交通リ・デザイン実現会議(議長:国土交通大臣)における議論も踏まえ, 関係省庁と連携して利便性・生産性・持続可能性の高い地域公共交通への「リ・デザイン」(再構築)を加速化させていくこととする。