事例1:多摩地域ユース・プラザ(仮称)整備等事業(事業概要)

(東京都 人口12,082,143人(平成16年))

多摩地域ユース・プラザの上空から撮影した写真

「多摩地域ユース・プラザ(仮称)整備等事業」は、これまでの「青年の家」に代わる新しい青少年社会教育施設である「ユース・プラザ」を、平成15年度末に閉校した都立高校を改修し、文化・学習施設、スポーツ施設、野外活動施設、宿泊施設等により構成される施設として整備する事業です。本事業は、施設の設計、改修及び10年間にわたる運営・維持管理に加えて、社会教育事業の実施を含む全てをPFI事業者にゆだねるRO(Rehabilitate-Operate)方式を採用しています。
当施設は、平成17年4月1日に「高尾の森わくわくビレッジ」としてオープンする予定です。

1.事業化までの検討経緯・庁内体制の流れ

:多摩地域ユース・プラザ(仮称)の事業化までの検討経緯・庁内体制の流れを現した図
  • (平成8年より、ユース・プラザ事業の構想等について基本的検討を実施済み)
  • 平成11年当時、「区部ユース・プラザ」と「多摩地域ユース・プラザ」の2事業を計画。
  • 平成11年度に、ユース・プラザの事業手法について社会教育課で検討を開始。(兼務3名により内部検討を実施)
  • ユース・プラザ事業へのPFI導入の効果について、定性的なメリットがあると判断されPFI導入可能性調査の実施が決定された。
  • 平成12年、先行して、区部ユース・プラザ事業について、PFI導入可能性調査を実施。
  • 社会教育課に事務局(3名、兼務)を設置し、区部ユース・プラザと多摩地域ユース・プラザの2つのPFI事業を検討。
  • 多摩地域ユース・プラザについては、同年、基本構想を策定。(施設内容等の決定)
  • 平成13年度、多摩地域ユース・プラザ事業について、PFI導入可能性調査を実施。
  • 指名競争入札によりPFIアドバイザリー業務(導入可能性調査を含む)を(株)三菱総合研究所に外部委託。
  • 事業者選定等については、区部ユース・プラザ事業が先行。(平成13年4月、実施方針の公表)ここでの検討ノウハウを、多摩地域ユース・プラザ事業に活用。
  • 平成13年8月、多摩地域ユース・プラザ事業について、PFI導入可能性調査を完了。
  • 引き続き、実施方針(案)、要求水準書(案)、契約書(案)等を作成。
  • 平成14年7月、PFI導入を組織決定。同7月末、実施方針の公表に至る。

2.本事業における課題とその解決策

既存施設の施設劣化状況について民間事業者への情報開示に努めました

本事業は、施設の建設後、約15年を経過した高校校舎を改修して、多摩地域ユース・プラザとして整備する事業であるため、既存施設の劣化状況に関する民間事業者への情報開示について特に注意が必要でした。具体的には、既存施設の建物・設備等に関する情報として、施設の図面一式、過去の施設補修・改修の履歴、加えて施設の適正評価情報(デューディリジェンス情報)として、当時、既に判明していた施設の不具合箇所を記載した図面と個々の不具合箇所の写真を一式、入札公告の際に都庁舎にて民間事業者へ配布しました。
また、施設公開(現場見学)についても、3日間の期間を設定し、都職員立ち会いのもと、希望する民間事業者に現地見学をしていただきました。現地見学の期間については、できるだけ時間をかけて、民間事業者に開放することが望ましいと考えますが、当時はまだ、既存の高校の閉鎖前であり制約がありました。
図面や改修履歴の開示や現地見学の実施により、民間事業者に事前に既存施設の状況を、より深く理解、把握してもらうことは、改修後に施設供用を開始した際のトラブル発生防止のために必須であると考えます。

既存施設の瑕疵に関する責任(リスク)分担について注意が必要です

既存施設の改修を行うRO(Rehabilitate-Operate)方式のPFI事業において、最も注意すべき官民のリスク分担項目の一つが、既存施設の瑕疵に関するリスク分担です。当事業では、主要な梁や柱等の主要構造部については、原則として、民間事業者の改修に含まれないことを想定しており、主要構造部の瑕疵については、都のリスクとしました。一方、本事業の実施に当たり民間事業者が改修した部分については、民間事業者のリスクとしました。
施設の改修を伴うPFI事業においては、既存施設の瑕疵に関するリスク分担について、契約書に規定することは非常に重要なポイントになります。

民間事業者が参加しやすい事業スキームを構築して、多数の応札者による競争環境を確保しました

本事業より約1年先行して実施した区部ユース・プラザ事業では、事業期間を20年という、かなり長期間とした結果、入札に参加した民間事業者は1グループのみという結果となりました。PFI事業においては、多数の民間事業者の入札参加を受け、事業者間の競争原理をより一層働かせることが、コスト削減のみならず事業提案の内容向上の観点からも、大変重要なポイントです。多摩地域ユース・プラザ事業においては、区部ユース・プラザ事業での経験を踏まえ、施設運営期間を10年に変更しました。その結果、5グループという多数の入札参加者を得て、10%を超えるVFMが達成されました。

事業名 事業期間 入札参加者数 VFM※
多摩地区ユース・プラザ 10年 5グループ 約11%
区部ユース・プラザ 20年 1グループ 約6%

予定総額及びその内訳の事前公表は、民間事業者の事業計画作成のヒントになります

本事業では、予定総額及びその内訳を公表したことにより、都として考えている事業のイメージを民間事業者に伝えることができたと考えます。特に本事業で整備、運営する社会教育施設について、都が想定する事業イメージを伝えるのに、一定の効果があったのではないかと考えています。

予定価格公表の内訳(下記3項目別の予定価格を参考値として公表)

  1. 主として運営期間中の本件施設における継続的なサービス提供に要する経費
    • 人件費的な費用(人件費、清掃警備・設備保守等委託費等)、物件費的な費用(物品、光熱水費、経常修繕等)
  2. 本件施設の改修工事費・備品購入費(開業時に整備するもの)、開業費に要する経費
    • 設計費、工事監理費、改修工事費、備品購入費(開業時に整備するもの)、開業前経費、金利
  3. 本件施設の改修工事費・備品購入費(開業時に整備するもの)、開業費に要する経費
    • 下水道接続工事費を含む(分担金を除く)

3.事業開始後の状況

(1) 設計・建設モニタリングの方法

民間事業者の設計業務に関する監視(モニタリング)については、都の他部局の技術職職員(建築・電気・機械職)の協力を得て行いました。また、建設モニタリングについても、同様に、他部局の技術職職員の支援の下、都直営の体制で実施しています。施設整備期間中は、現地で定期的に民間事業者、事務局(社会教育課)、技術職職員の三者合同で専門部会を開き、事業を進めていきました。
なお、現在はまだ施設運営が開始されていないので、実際の事業品質に対して評価はできません。本事業では運営の質や量が重要視されると考えるので、評価は運営開始後の数年先に行われるべきと考えます。よって、今後は運営のモニタリングを行政としてしっかりやることが大切と考えています。

(2) PFI導入のメリット

多くの民間の創意工夫やノウハウを取り込むことができました

施設整備面では、宿泊施設の内装など意匠・デザイン的には非常に良い提案を受けることができました。特に浴室や食堂等は、本施設が、元は高校校舎であるというイメージを大幅に払拭しています。
運営面では、多摩地域ユースプラザの周囲の環境をうまく反映したProject Adventureという協力や挑戦を学ぶ屋外プログラムの優れた提案がありました。これについては、従来型の手法により事業を実施した場合、行政側からはなかなか出てこないアイデアであると思います。また、プログラムを指導する体制もしっかりしていると考えています。

(3) PFI導入のデメリット

一般的に言われているデメリットですが、行政職員の事務負担が増えるといった面や検討スケジュールが長くなるということが、やはり実感としてあります。
また、PFI方式のデメリットとまで言えるかどうかはっきりしませんが、RO方式の事業は、既存施設を改修する事業なので、大幅な施設内容の向上はそもそも望めないかもしれません。施設整備面から見ると、主要な構造物は変わらないわけで、その点限界があると思います。

4.PFI事業を振り返って

PFI導入を目指されている他団体へのアドバイス

寺内顕さん(左)と鈴木幸夫さん(右)のお写真

お話をお伺いした
東京都教育庁社会教育課の
寺内顕さん(左)と鈴木幸夫さん

1点目として、設計・施工の着手から施設オープンまでの期間は十分に余裕を持つ必要があると思います。特に、行政にとって不慣れな新しい事業方式であるPFI事業の場合、何らかの障害等が発生した際に、対処するための時間的な余裕が必要と考えます。
次に、事業者選定過程の初めから最終段階である契約交渉及び契約締結まで、行政側の人員体制をしっかり確保することが必要です。PFI事業の場合は、最終段階の契約締結に至るまで行政の事務作業負担は重く、事業内容に見合った適切な人員体制の構築が必要であると考えます。
最後に、本事業では、社会教育という公共サービスの実施を民間事業者にゆだねることとなるわけですが、社会教育に関するサービスの提供については、今まで民間事業者があまり行っていない業務分野です。したがって、行政が求めるサービスの理念や水準といった点を、民間事業者にすぐには理解して貰えないこともありました。この点については、継続的な協議により、民間事業者の理解を得て、民間事業者の持つ創意工夫やノウハウをより有効に事業へ反映できるように働きかけなければならないと考えます。

事業担当者

東京都 教育庁 生涯学習スポーツ部
社会教育課 ユース・プラザ担当係長 寺内 顕氏
東京都 教育庁 生涯学習スポーツ部
社会教育課 施設係 主任 鈴木幸夫氏

〒163-8001 東京都新宿区西新宿2-8-1
TEL:03-5320-6857
PFI事業への取組(東京都教育委員会)

キーワード:既存施設の改修事業、社会教育施設、RO(Rehabilitate-Operate)方式、ミックス型(サービス対価+利用料金収入)、運営維持管理期間10年

事例1:多摩地域ユース・プラザ(仮称)整備等事業